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クルライリア大陸編

十四話 またしてもハマる・・・

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(ああ、結局仕掛けた罠の半分も使わなかったわねぇ。メイの通るところが悪いのよ、無難なところばかり通って。)
などとアリィは思っていた。実際、無難なと言っても、普通に大通りなどを通っていただけなのだが、アリィはメイのことだから変な道を通るだろうと思い裏路地なんかに危険な罠をしかけていた。まあ、もうすぐ旅だってしまうのだから、罠は意味無くなるのだが。
「放っておいてもいいか♪」
などと危険な自己解決したアリィだった。アリィ専用の罠だが、何時誰がとか誤作動の危険もある。
(大丈夫、中身は対一人用の罠だし、すぐには死なないようなものばっかりだから。)
危険なものを放置して宿屋からさっさといなくなったアリィ、次のことは考えていなかった。が、とりあえずある場所へ向かった。



「ふあ~」
あたしは門をくぐり、街道へ出たところで伸びをする。
ガスッ!・・・
突然、脳天に激しい痛み受けあたしはその場に倒れ伏した。いったなんなのかよくよく考えると、この痛みはアリィだなと思う。久しくくらっていなかったカカトでももらったのだろう・・・
「ってゆーか痛ぇよ!」
あたしは倒れたまま言った。そのとき何かを感じたので急いで転がり起きる。
ズガッ!
そんなような音を立て、さっきまであたしが寝ころんでいた場所にアリィの足が打ち下ろされていた。
「危ないなぁ・・・。」
「おはよう、メイ♪」
あのまま寝てたらって思うとゾッとするが、当の本人はニコニコ顔で挨拶してくる。なんなんだ、その態度は・・・。しかし、フラフラする。
「突然なんなんだ?」
「別に、特に用も無いんだけどね、久しぶりだったからなんとなく。」
なんとなくでカカトかい・・・。
「これから何処へ行くの?」
「マルテニアだっけ?そこ。」
いい加減な返事である。しかし、こんな知らない土地まで来て、更に知らないところへ行くのだ、いい加減にもなってしまう。説明しろと言う方が無理なのよ。
「そう、気を付けなさいね。」
「アリィはどうすんのさ?」
「私は暫くここに居るわ。適当に遊んだら帰る。」
そうなのか、結局アリィはいつもなんで現れるんだろう。あたしを苛めるためにだけ来てるんじゃないよな、まさか。それって相当暇人って事になっちゃうもんね。
「暇があったら、ここで宮廷魔術師試験でも受けてみるわ。」
「へ?そんなのあったの?」
初耳だ、そんなものがあったなんて。魔術とかの知識は結構勉強したりして身につけたけど、世間の一般的なことはなんにも勉強してなかったな。
「メイもお馬鹿ね。まあ、そゆことだから、気を付けていってらっしゃい。」
「お・・・おうよ。」
なんか今日はやけに大人しいじゃん。ほんと、不気味なくらい。嵐の前の静けさってやつじゃないよね。大人しいのはありがたいけれど、逆に怖い。
「それじゃあね。」
アリィの奴、手まで振ってるよ。なんなんだ、いったい。
「んじゃ、行ってくるよ。」
アリィにそう言ってケイの方を見る。ケイが頷いたので、あたしも頷き返すとあたしたちは歩を進めた。少し歩いたところで、
ズ、ドサッ!
あたしは落とし穴に落ちた。
「あはははは~」
アリィの笑い声が聞こえてくる。おのれ、やけに大人しいと思ったらこんなとこに穴作ってたのか。まさか朝から居なかったのはこれのためか?
「アリィ!いまからはっ倒す!」
「もう居ないぞ。笑いながら去っていった。」
上からケイの声が聞こえてくる。なに!?おのれアリィ、次会ったら今度こそ沈めてやる。
「って、ケイ、あんたなんで落ちてないの?あたしと並んで歩いてたはずなのに。」
「俺はそこまでマヌケじゃない。」
なにをぉ!まるであたしがマヌケみたいな言い方して。
「そうじゃん。」
「だぁぁぁ!いいから早く上げてくれ。」

ふう、アリィめ、最後の最後までハメてくれちゃって。しかもさっさと居なくなってるし。
「まあいいか、さて、行くか。」
居なくなったアリィの事を考えてもしょうがない。マルテニアまでは七日もあれば着くって話しだし、のんびり行くか。
「待ってくれ。」
「え?なに。」
「ここから三日ほど進んだところで道が分かれている。小さな道だが、そこを行くとニュアヌという小さな村があるんだがそこに寄ってくれないか?」
あ、珍しい。今まで着いて来るだけだったのに、行きたいところがあるだなんて。
「いいけど、なんでそんなこと知ってるのさ?」
「まあ、いろいろあってな。後で話すよ。」
「わかった。とりあえず目的地はニュニュアね。」
「ニュアヌだ。」
「まあどっちでもいいじゃん。」
そのあとケイはやれやれって感じでさっさと歩き出した。なんじゃその態度は。だいたいニュアヌなんて言いにくいんだよ。ってかマジで間違ったんだけど。



「これがそうね。」
「ああ。」
あたしたちは街道から分岐してる、小さな道の前にいた。その小道を前にしたケイの顔は、いつもより暗い感じがしたのは気のせいかな。
「こっからどれくらい?」
「まる一日ってとこかな。」
そうすると、またどっか適当なところで夜を明かさないといけないわけだ。あれからケイはそこに何があるのかを、話してはいない。村に着いたときにでも話すのだろうか。

その夜、気になってしょうがないのであたしはケイに聞いてみた。
「後で話すって言ってたけどさ、ニュアニュって村にはなにがあるの?」
「ニュアヌだって。」
だって言いにくいんだもん。
「そうだな、誰にも話しちゃいないが、行けばわかってしまうことだからな。俺が生まれた村なんだ。」
へぇ・・・って、えっ!?
「ケイって、あたしたちと同じライズ生まれかと思っていた。」
「まあ、物心ついたときからいるからな。」
ってことはこの先の村にはケイの両親とかいるのかな。そう言えばケイって一人で暮らしてたな。でもなんであんな辺鄙なところに?
「自分の生まれた町を辺鄙とか言っていいのか?」
「うん、別に思ったこと言ってるだけだし、それで何か変わるわけでもないし、なんだかんだ言ったって好きだからね。」
「そうか・・・。」
ケイが軽く微笑みながらそう言った。普段ならなんか気味悪いなって思うけど、その笑いの中にどこか寂しそうな、悲しげな雰囲気があって、あたしは何も言えなかった。
「続きはまた今度な、もう寝る。」
「うん、おやすみ。」
ほんとはもっと聞きたかったけど、我慢することにする。なんか、聞きづらくなってしまった。ケイがそのうち話してくれるのを待つかな。



「小さな村ね。」
「ああ、俺が生まれたときからこんなもんだったらしい。」
その村はほんとに小さかった。家は四,五軒くらいしかない。
「ちょっと村長に会ってくるんで、そこら辺で暇を潰しててくれ。」
「うん、わかった。」
ケイは村の一番奥の建物の中に入っていった。あれが村長の家なんだな。だけど、見た目は他の民家と変わらなかった。普通に分かりずらいなと思いながら、あたしは村の中を散歩することにした。
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