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19.少しは興味持ってくれ、装備
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(あぁ、腹減った。)
原石集めも順調に終わって、いざ作ろうとしたら、闇イノシシの素材が足りなかった。武器の方は把握していて、残りは氷墓竜の素材だけだから後回しにし、アクセサリーを作ろうとしたんだがこの様だ。素材までよく確認していなかった。
ここに来て闇イノシシかよ。
そう思って脱力したのと、丁度いい時間だったのでお昼にしようと思った。
部屋を出てリビングに向かうと、冷蔵庫まで移動する。
確か何処かに買い物に行くと言っていたので、親父も母さんも留守の筈だ。居れば何があるか聞けたんだが、自分で漁るしかないようだ。
(親子丼があるな・・・。)
スプーンさえあれば食べられる一体型は楽でいい。いっぺんに出来上がるとは言え、ご飯に味噌汁、おかずとか分かれていると、ゲームに没頭している時は億劫になる。
(味噌ラーメンか、それもいいな・・・いや、ここは親子丼にしよう。)
決めたところで親子丼に手を掛ける。
「お昼ですか。」
「!!」
突然掛けられた声にびっくりして、掴みきれていない親子丼の容器が手から滑って床に落下した。
「ご、ごめんなさい!」
声を掛けてきたのは悠美だったが、俺が親子丼を落としたことで酷く申し訳なさそうに謝って来る。
「い、いや、気にしなくていいから。それより、早く部屋に戻らないとヒナが鬼人になっちまう。」
俺はヒナの部屋の方を見て、出てくるんじゃないかと多少怯えながら言った。それを聞いた悠美は、くすりと笑みを浮かべて口を開いた。
「DEWSのプレイヤー名、教えてください。私もやっているので、良ければ一緒にどうですか?」
突然そんな事を言われても、頭が追い付かなくて固まる。
「早く戻らないと、ヒナちゃん飛び出して来そうですね。私は雪椿姫です、見かけたら声を掛けてくださると嬉しいです。」
悠美はそれだけ早口で言うと、ヒナの部屋へと戻って行こうとする。
「ユ、ユアキス・・・」
辛うじて背中に向かいそれだけを伝える。悠美は横顔だけ向け、笑顔で頷くと小走りにヒナの部屋へと戻って行った。
そっか、俺はDEWSを一緒にやろうと誘われたんだな。タッキーの時と同じようなものか。ただ、まさかヒナの友達がDEWSをやっていて、いきなりそんな事を言ってくるなんて普通は思わないよな。
(言葉は丁寧だが、大人しそうな見た目と違って物怖じしないタイプなのか?)
まぁ、それはどうでもいいが、とりあえずヒナに見つからなくて良かった。悠美と話した事よりも、その場を目撃されなかった事に安堵する。
いや、自分の家なんだけどな・・・
「あ!おにぃ!食べるなら自分の部屋で食べてよ。」
しまった・・・
予想外の事にぼーっと考え事をしながら親子丼をリビングで食べていた。落ちた親子丼は中身が大変な事になっていたが、どうせ食べるんだから大した問題じゃない。そこで、部屋から出てきたヒナが、悪さを見つけたとばかりに声を大にして近付いて来る。
「わりぃ、ぼーっとしてた。今戻るから。」
「もう、気を付けてよね。」
親子丼を持ってすぐ移動を始める俺に、ヒナはそれだけ言うとトイレの方へと向かって行った。
(なんで俺、ここまで気を使わなきゃならないんだ?)
ふとそんな事を思ったが、ヒナの言葉をもろに食らうよりはましだろうと思った。妹なんだからとかそんなものは関係ない。聞きたくないものは聞きたくないわけで、相手にするだけ疲れる。だから、逃げてるなんて思われても避ける方が楽だ。
「あ、お帰り。」
ゲームに戻るとタッキーが声を掛けてくる。
「ただいま。腹も満てたし、素材集め再開だ。」
「もうすぐ終わりそうだし、僕もお昼食べてこようかな。」
「マジか、俺まだ結構残ってるんだよなぁ・・・」
「僕の方が先に終わったら手伝うよ。」
「それも悪い気がするなぁ。」
竜相手なら一緒にってのは分かる気がするが、クリア自体が難しくないものを手伝ってもらうってもの気が引ける。
「いいよ、どうせそれ終わらなきゃ、再戦出来ないからね。」
「まぁそうだけどさ。別の事をして待っててもらうってのでも、俺は問題ないんだが。」
「でも、早いとこ再戦したいじゃん。」
「だったら、終わってなかったら頼むわ。」
素直に頼ることにして返事をすると、タッキーが頷いた。そういや、今日はまだ見かけてないが、アヤカの方はどうなってんだろ。
「アヤカは進んでんのかな?」
ふと思い出して口にする。
「私を呼びました?」
神出鬼没か。
「そんな事よりも、調子に乗っているオルデラを倒しに行きますわよ。」
おい。
装備強化の話しは何処へ行ったんだ。
「あのな・・・」
俺が突っ込もうとすると、アヤカは右手でそれを制して来た。
「私の装備欄、御覧なさい。」
両手を腰に当てて胸を反らすアヤカ。見下して挑発しているような感じが腹立つが、とりあえずシステムデバイスからアヤカの装備を確認する。
「げ・・・」
「うわ、凄い・・・」
アヤカは目標であった太刀【災禍 紫怨】を既に作成していた。だからと言ってオルデラに挑むわけにはいかない、そこは足並みを揃えてもらわなければ意味がない。
「俺らまだなんだよ。」
「遅すぎですわ。」
くっそ、アヤカに言われるとむかつくな、このゲーム音痴。
「手伝ってさしあげても、いいんですのよ?」
うっわ、完全に上から来やがった。
だがしかし、俺は見逃していない。
「アヤカ、太刀をいち早く作ったのはマジで凄いと思うぞ。」
俺がそう言うと、ふふんと言わんばかりに胸を張る。
「だけど、変わってるの太刀だけじゃねぇか、他の装備はどうしたんだよ!」
「あ、ほんとだ。」
タッキーも太刀しか見てなかったな。
「そんな話し、聞いておりませんわ。」
嘘つけ。
だったらなんで顔を横に背けてんだよ。とりあえず、無視でいいか。
「はい、じゃぁ引き続きみんなで装備強化な。」
俺はそう言うと、システムデバイスからクエストの確認をする。
「僕はお昼食べてくるね。」
「おう、行ってら。」
俺はとりあえず闇イノシシだな、今の強さならすぐ終わるだろ。そう思いながらクエストを受注してアヤカを見ると、まだ同じポーズで居た。
「行くなら、みんな目標の装備が出来てからだぞ。」
それだけ言ってクエストに向かおうとすると、アヤカの首が動いて顔を俺に向ける。
「私が制作する装備は、何でしたかしら?」
「アホか!」
思わず突っ込んでいた。いやだって、突っ込むしかないだろう。今の発言ではっきり分かった、これは断言でもいいかもしれない。
こいつは太刀が作りたいだけで、話しがまとまった直後から他の装備の事は綺麗さっぱり忘れたに違いない。
「新しい太刀の制作が可能と考えると、他の事が頭に入りませんわ。」
やっぱりな。
「何堂々と言ってくれてんだ。」
「仕方がありませんわ、太刀以外に興味が湧かないのですから。」
開き直りやがって。
いや、違うな、もとからそうだったわ。慣れてあんま意識して無かったが、太刀以外の装備にほぼ興味を示さない。いいところ、攻撃硬直を短縮してくれたりするアクセサリーくらいだ。
「まぁ、アヤカだからしょうがない。もう一度言うから、その材料集めて作るんだぞ。」
「分かりましたわ。」
何故不服そうに言う・・・。
システムデバイスでクエストを選んでいるアヤカは、若干頬を膨らませていた。ってなんか俺が悪いみたいじゃないか。
まぁ太刀作ったくらいだ、放っておいても問題ないだろう。俺はまず闇イノシシに向かわなければ。
久々の静閑の森は何処か懐かしさを感じた。クエストでもない限り、今の強さになってからは殆ど来てなかったらな。闇イノシシ程度ならものの数分で終わるだろう。
(お、居た居た。)
広場にいる闇イノシシを見ると、やっぱり懐かしさが出てくる。当初はあの突進が怖かったが、今は余裕だろ。
こちらに気付いた闇イノシシが、前足で地面を数回蹴ってから突進を始める。
(避けて切ってればすぐ終わんだろ。)
そう思って突進を始めた闇イノシシの軌道から跳び退こうとする。
(って、早!)
間一髪で避けたが、以前より速度が上がっている。いや、気のせいかもしれない、久々に戦ったからそう感じただけの可能性もある。
振り返って闇イノシシに向き合うと、闇イノシシはドリフトしながらこちらに向き直って突進をしてくる。
(おいおい、なんだそりゃ。)
回避しながら斬りつけつつ様子を見てみるか。軌道から逸れつつ片手剣での撫で斬りを入れようとしたが、闇イノシシは緩やかにこちらに曲がって来た。
(マジか!・・・っ!)
弾き飛ばされた俺は木に激突して落下する。まさかこちらに合わせて突進を曲げてくるとは思わなかった。
!!
(はっ!?)
「ちょっと待て、このモンスター強くないか!?」
雑魚だと思っていたが、今の一撃でHPが半分持っていかれてる。どういう事だ?動きといい、攻撃力といい、おかしいだろ!?
だがそんな詮索なんかしている余裕はなく、闇イノシシはまた突進を始めた。
「はぁ、はぁ・・・危なかった。」
間違いない、突進の速度、起動の修正、攻撃力、どれをとっても格段に進化していた。まさかプレイヤーに合わせて敵が強くなる?いやそんな事はない、現に素材集めをしていた時、雑魚は雑魚のままだった。
闇イノシシだけバージョンアップされたか?でもそれなら、アップデート情報に記載があってもいい筈だ。
(考えても答えが出そうにないな・・・)
唯一の救いは、闇イノシシのHPが増えてなかった事だ。もしそこまで増えていたなら、タッキーやアヤカに頼んでパーティー戦で挑む事になっていたかもしれない。
(そのうち公式やゲーム情報を見てみるか、何か分かるかもしれないし。)
それよりもまず装備作成だなと思い、とりあえずメルフェアに戻る事にした。
(そういや、今日はアリシアを見かけないな。)
アクセサリーを作った俺は、いつもなら金魚の糞の如く付きまとってくる令嬢の事を思い出した。まぁ、居ないなら居ないで問題ないが、静かだし。
NPCなんだかよく分からない存在だから、どう接していいか未だに疑問なところもある。だが、いつも一緒に居た筈のNPCが何の通知もなくいなくなる事に違和感を感じた。
(様子くらい、見に行ってもいいか。)
ふとそんな事を思い、ゲーム内の自室に向かう。アリシアに貸しているから、あれ以来行った事は無い。ぶっちゃけ、行かなくても問題ない事を考えれば、雰囲気のためにだけ存在しているんじゃないかって気がしている。
アイテム保管庫なんかあったりするが、システムデバイス上からでも出し入れ可能なんでわざわざ部屋に行く必要もないし。ネットの情報をみる限り、休憩したり仲間で集まって雑談する場所として主に使われているようだった。
「おーいアリシア、居るか?」
部屋の前に来て声を掛けてみるが、返事は無い。
「入るぞ。」
返事が無いので、とりあえず中を確認しようと扉を開けて中に入る。
「おい、どうした!?」
広くもない部屋に入ると、ベッドの上でアリシアが辛そうにしていた。顔は微かに赤みを帯びて、呼吸も多少荒い。
「女性の部屋に、無断で、入る、なんて、相変わらず、無粋ですのね・・・」
苦しそうにアホな事を言ってくるアリシア。だが今は、悪態とかどうでもいい。むしろその状態でまで言うなよ。
「何があったんだ?」
「遠出が続き、疲労が溜まって、いたのかしら。風邪を、引いたみたい、ですわ。」
は?
風邪?
おいおい、NPCが風邪?プレイヤーだったらHMDが強制ログアウトしているだろうから、こいつはプレイヤーじゃない可能性が高くなったな。まぁ、改造とかしてなければだけど。
しかし、NPCにここまでのリアル設定いるか?
「なぁアリシア。」
「なん、ですの?」
「その額に貼ってあるの、なんか見覚えがあるんだよな。」
「そう。わたくし初めて、見ましたわ。熱を、放出して、くれるそうですわ。某とする、頭が多少、楽に、なりますわ。」
熱がある時によく使う放熱シートだ。なんだそれ?リアルなNPC?現実と入り混じってねーかこいつの存在。
おかしい。
出血に絆創膏、風邪に放熱シート?NPCにしたってやりすぎだろう。この世界ってファンタジーだろ、だったらこいつの存在に違和感しか感じない。
「まぁ、ゆっくり休めよ。」
「言われなくても、そう、しますわ。」
辛いなら悪態とかやめとけよ。
覇気のないアリシアを置いて俺は部屋から出る。居たところで、ゲーム内なんだから俺に出来ることは特にない。このゲームでアリシアの存在が一番気持ち悪いと思わされた。
このもやもや感、どうにかなんないかな。
原石集めも順調に終わって、いざ作ろうとしたら、闇イノシシの素材が足りなかった。武器の方は把握していて、残りは氷墓竜の素材だけだから後回しにし、アクセサリーを作ろうとしたんだがこの様だ。素材までよく確認していなかった。
ここに来て闇イノシシかよ。
そう思って脱力したのと、丁度いい時間だったのでお昼にしようと思った。
部屋を出てリビングに向かうと、冷蔵庫まで移動する。
確か何処かに買い物に行くと言っていたので、親父も母さんも留守の筈だ。居れば何があるか聞けたんだが、自分で漁るしかないようだ。
(親子丼があるな・・・。)
スプーンさえあれば食べられる一体型は楽でいい。いっぺんに出来上がるとは言え、ご飯に味噌汁、おかずとか分かれていると、ゲームに没頭している時は億劫になる。
(味噌ラーメンか、それもいいな・・・いや、ここは親子丼にしよう。)
決めたところで親子丼に手を掛ける。
「お昼ですか。」
「!!」
突然掛けられた声にびっくりして、掴みきれていない親子丼の容器が手から滑って床に落下した。
「ご、ごめんなさい!」
声を掛けてきたのは悠美だったが、俺が親子丼を落としたことで酷く申し訳なさそうに謝って来る。
「い、いや、気にしなくていいから。それより、早く部屋に戻らないとヒナが鬼人になっちまう。」
俺はヒナの部屋の方を見て、出てくるんじゃないかと多少怯えながら言った。それを聞いた悠美は、くすりと笑みを浮かべて口を開いた。
「DEWSのプレイヤー名、教えてください。私もやっているので、良ければ一緒にどうですか?」
突然そんな事を言われても、頭が追い付かなくて固まる。
「早く戻らないと、ヒナちゃん飛び出して来そうですね。私は雪椿姫です、見かけたら声を掛けてくださると嬉しいです。」
悠美はそれだけ早口で言うと、ヒナの部屋へと戻って行こうとする。
「ユ、ユアキス・・・」
辛うじて背中に向かいそれだけを伝える。悠美は横顔だけ向け、笑顔で頷くと小走りにヒナの部屋へと戻って行った。
そっか、俺はDEWSを一緒にやろうと誘われたんだな。タッキーの時と同じようなものか。ただ、まさかヒナの友達がDEWSをやっていて、いきなりそんな事を言ってくるなんて普通は思わないよな。
(言葉は丁寧だが、大人しそうな見た目と違って物怖じしないタイプなのか?)
まぁ、それはどうでもいいが、とりあえずヒナに見つからなくて良かった。悠美と話した事よりも、その場を目撃されなかった事に安堵する。
いや、自分の家なんだけどな・・・
「あ!おにぃ!食べるなら自分の部屋で食べてよ。」
しまった・・・
予想外の事にぼーっと考え事をしながら親子丼をリビングで食べていた。落ちた親子丼は中身が大変な事になっていたが、どうせ食べるんだから大した問題じゃない。そこで、部屋から出てきたヒナが、悪さを見つけたとばかりに声を大にして近付いて来る。
「わりぃ、ぼーっとしてた。今戻るから。」
「もう、気を付けてよね。」
親子丼を持ってすぐ移動を始める俺に、ヒナはそれだけ言うとトイレの方へと向かって行った。
(なんで俺、ここまで気を使わなきゃならないんだ?)
ふとそんな事を思ったが、ヒナの言葉をもろに食らうよりはましだろうと思った。妹なんだからとかそんなものは関係ない。聞きたくないものは聞きたくないわけで、相手にするだけ疲れる。だから、逃げてるなんて思われても避ける方が楽だ。
「あ、お帰り。」
ゲームに戻るとタッキーが声を掛けてくる。
「ただいま。腹も満てたし、素材集め再開だ。」
「もうすぐ終わりそうだし、僕もお昼食べてこようかな。」
「マジか、俺まだ結構残ってるんだよなぁ・・・」
「僕の方が先に終わったら手伝うよ。」
「それも悪い気がするなぁ。」
竜相手なら一緒にってのは分かる気がするが、クリア自体が難しくないものを手伝ってもらうってもの気が引ける。
「いいよ、どうせそれ終わらなきゃ、再戦出来ないからね。」
「まぁそうだけどさ。別の事をして待っててもらうってのでも、俺は問題ないんだが。」
「でも、早いとこ再戦したいじゃん。」
「だったら、終わってなかったら頼むわ。」
素直に頼ることにして返事をすると、タッキーが頷いた。そういや、今日はまだ見かけてないが、アヤカの方はどうなってんだろ。
「アヤカは進んでんのかな?」
ふと思い出して口にする。
「私を呼びました?」
神出鬼没か。
「そんな事よりも、調子に乗っているオルデラを倒しに行きますわよ。」
おい。
装備強化の話しは何処へ行ったんだ。
「あのな・・・」
俺が突っ込もうとすると、アヤカは右手でそれを制して来た。
「私の装備欄、御覧なさい。」
両手を腰に当てて胸を反らすアヤカ。見下して挑発しているような感じが腹立つが、とりあえずシステムデバイスからアヤカの装備を確認する。
「げ・・・」
「うわ、凄い・・・」
アヤカは目標であった太刀【災禍 紫怨】を既に作成していた。だからと言ってオルデラに挑むわけにはいかない、そこは足並みを揃えてもらわなければ意味がない。
「俺らまだなんだよ。」
「遅すぎですわ。」
くっそ、アヤカに言われるとむかつくな、このゲーム音痴。
「手伝ってさしあげても、いいんですのよ?」
うっわ、完全に上から来やがった。
だがしかし、俺は見逃していない。
「アヤカ、太刀をいち早く作ったのはマジで凄いと思うぞ。」
俺がそう言うと、ふふんと言わんばかりに胸を張る。
「だけど、変わってるの太刀だけじゃねぇか、他の装備はどうしたんだよ!」
「あ、ほんとだ。」
タッキーも太刀しか見てなかったな。
「そんな話し、聞いておりませんわ。」
嘘つけ。
だったらなんで顔を横に背けてんだよ。とりあえず、無視でいいか。
「はい、じゃぁ引き続きみんなで装備強化な。」
俺はそう言うと、システムデバイスからクエストの確認をする。
「僕はお昼食べてくるね。」
「おう、行ってら。」
俺はとりあえず闇イノシシだな、今の強さならすぐ終わるだろ。そう思いながらクエストを受注してアヤカを見ると、まだ同じポーズで居た。
「行くなら、みんな目標の装備が出来てからだぞ。」
それだけ言ってクエストに向かおうとすると、アヤカの首が動いて顔を俺に向ける。
「私が制作する装備は、何でしたかしら?」
「アホか!」
思わず突っ込んでいた。いやだって、突っ込むしかないだろう。今の発言ではっきり分かった、これは断言でもいいかもしれない。
こいつは太刀が作りたいだけで、話しがまとまった直後から他の装備の事は綺麗さっぱり忘れたに違いない。
「新しい太刀の制作が可能と考えると、他の事が頭に入りませんわ。」
やっぱりな。
「何堂々と言ってくれてんだ。」
「仕方がありませんわ、太刀以外に興味が湧かないのですから。」
開き直りやがって。
いや、違うな、もとからそうだったわ。慣れてあんま意識して無かったが、太刀以外の装備にほぼ興味を示さない。いいところ、攻撃硬直を短縮してくれたりするアクセサリーくらいだ。
「まぁ、アヤカだからしょうがない。もう一度言うから、その材料集めて作るんだぞ。」
「分かりましたわ。」
何故不服そうに言う・・・。
システムデバイスでクエストを選んでいるアヤカは、若干頬を膨らませていた。ってなんか俺が悪いみたいじゃないか。
まぁ太刀作ったくらいだ、放っておいても問題ないだろう。俺はまず闇イノシシに向かわなければ。
久々の静閑の森は何処か懐かしさを感じた。クエストでもない限り、今の強さになってからは殆ど来てなかったらな。闇イノシシ程度ならものの数分で終わるだろう。
(お、居た居た。)
広場にいる闇イノシシを見ると、やっぱり懐かしさが出てくる。当初はあの突進が怖かったが、今は余裕だろ。
こちらに気付いた闇イノシシが、前足で地面を数回蹴ってから突進を始める。
(避けて切ってればすぐ終わんだろ。)
そう思って突進を始めた闇イノシシの軌道から跳び退こうとする。
(って、早!)
間一髪で避けたが、以前より速度が上がっている。いや、気のせいかもしれない、久々に戦ったからそう感じただけの可能性もある。
振り返って闇イノシシに向き合うと、闇イノシシはドリフトしながらこちらに向き直って突進をしてくる。
(おいおい、なんだそりゃ。)
回避しながら斬りつけつつ様子を見てみるか。軌道から逸れつつ片手剣での撫で斬りを入れようとしたが、闇イノシシは緩やかにこちらに曲がって来た。
(マジか!・・・っ!)
弾き飛ばされた俺は木に激突して落下する。まさかこちらに合わせて突進を曲げてくるとは思わなかった。
!!
(はっ!?)
「ちょっと待て、このモンスター強くないか!?」
雑魚だと思っていたが、今の一撃でHPが半分持っていかれてる。どういう事だ?動きといい、攻撃力といい、おかしいだろ!?
だがそんな詮索なんかしている余裕はなく、闇イノシシはまた突進を始めた。
「はぁ、はぁ・・・危なかった。」
間違いない、突進の速度、起動の修正、攻撃力、どれをとっても格段に進化していた。まさかプレイヤーに合わせて敵が強くなる?いやそんな事はない、現に素材集めをしていた時、雑魚は雑魚のままだった。
闇イノシシだけバージョンアップされたか?でもそれなら、アップデート情報に記載があってもいい筈だ。
(考えても答えが出そうにないな・・・)
唯一の救いは、闇イノシシのHPが増えてなかった事だ。もしそこまで増えていたなら、タッキーやアヤカに頼んでパーティー戦で挑む事になっていたかもしれない。
(そのうち公式やゲーム情報を見てみるか、何か分かるかもしれないし。)
それよりもまず装備作成だなと思い、とりあえずメルフェアに戻る事にした。
(そういや、今日はアリシアを見かけないな。)
アクセサリーを作った俺は、いつもなら金魚の糞の如く付きまとってくる令嬢の事を思い出した。まぁ、居ないなら居ないで問題ないが、静かだし。
NPCなんだかよく分からない存在だから、どう接していいか未だに疑問なところもある。だが、いつも一緒に居た筈のNPCが何の通知もなくいなくなる事に違和感を感じた。
(様子くらい、見に行ってもいいか。)
ふとそんな事を思い、ゲーム内の自室に向かう。アリシアに貸しているから、あれ以来行った事は無い。ぶっちゃけ、行かなくても問題ない事を考えれば、雰囲気のためにだけ存在しているんじゃないかって気がしている。
アイテム保管庫なんかあったりするが、システムデバイス上からでも出し入れ可能なんでわざわざ部屋に行く必要もないし。ネットの情報をみる限り、休憩したり仲間で集まって雑談する場所として主に使われているようだった。
「おーいアリシア、居るか?」
部屋の前に来て声を掛けてみるが、返事は無い。
「入るぞ。」
返事が無いので、とりあえず中を確認しようと扉を開けて中に入る。
「おい、どうした!?」
広くもない部屋に入ると、ベッドの上でアリシアが辛そうにしていた。顔は微かに赤みを帯びて、呼吸も多少荒い。
「女性の部屋に、無断で、入る、なんて、相変わらず、無粋ですのね・・・」
苦しそうにアホな事を言ってくるアリシア。だが今は、悪態とかどうでもいい。むしろその状態でまで言うなよ。
「何があったんだ?」
「遠出が続き、疲労が溜まって、いたのかしら。風邪を、引いたみたい、ですわ。」
は?
風邪?
おいおい、NPCが風邪?プレイヤーだったらHMDが強制ログアウトしているだろうから、こいつはプレイヤーじゃない可能性が高くなったな。まぁ、改造とかしてなければだけど。
しかし、NPCにここまでのリアル設定いるか?
「なぁアリシア。」
「なん、ですの?」
「その額に貼ってあるの、なんか見覚えがあるんだよな。」
「そう。わたくし初めて、見ましたわ。熱を、放出して、くれるそうですわ。某とする、頭が多少、楽に、なりますわ。」
熱がある時によく使う放熱シートだ。なんだそれ?リアルなNPC?現実と入り混じってねーかこいつの存在。
おかしい。
出血に絆創膏、風邪に放熱シート?NPCにしたってやりすぎだろう。この世界ってファンタジーだろ、だったらこいつの存在に違和感しか感じない。
「まぁ、ゆっくり休めよ。」
「言われなくても、そう、しますわ。」
辛いなら悪態とかやめとけよ。
覇気のないアリシアを置いて俺は部屋から出る。居たところで、ゲーム内なんだから俺に出来ることは特にない。このゲームでアリシアの存在が一番気持ち悪いと思わされた。
このもやもや感、どうにかなんないかな。
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クラリスが与えられたのは、《消去》の力――なんだそれ。
「今度こそ、過労死しない!」
そう決意したのに、見過ごせない。困っている人がいると、放っておけない。
街の診療所から始まった小さな行動は、やがて王城へ届き、王族までも巻き込む騒動に。
そして、ちょっと推してる王子にまで、なぜか気に入られてしまい……?
命を救う覚悟と、前世からの後悔を胸に――
クラリス、二度目の人生は“自分のために”生き抜きます。
気弱令嬢の悪役令嬢化計画
みおな
ファンタジー
事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?
しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?
いやいやいや。
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せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。
屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?
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