23 / 98
22.避けさせてもらえない、戦闘
しおりを挟む
移動速度は変わりはしないものの、攻撃速度、攻撃力、衝撃波の範囲は明らかに増加した。
という分析を呑気にしているわけじゃない。
(死ぬ!!!)
必死で振り下ろされた大剣の衝撃波の範囲から逃れ、急いで回復薬を使用する。
(あぶね、死ぬとこだった・・・)
タッキーもパーティの回復が追い付かない、アヤカをメインに回復しているためだからしょうがない。役割がそれだけじゃなし、攻撃をしてもらわないとならないし。俺の場合、死なないようにオルデラの攻撃のターゲットにならなきゃ役に立たないからな。
「ユアキス、僕もう回復尽きた!」
アヤカに回復銃弾を撃ったところで、タッキーがそう叫んだ。
「こっちも残り少ねぇ、後は本人に任せろ。」
「承知しましたわ!」
オルデラに駆け寄りつつ言うと、聞こえていたアヤカがオルデラを斬りながら応答する。
オルデラのHPはまだ半分程残っている。確かにこれじゃ、6人パーティで負けるのも納得するわ。
(ってか強すぎだろ!)
内心でそう叫びながらオルデラに片手剣を振り下ろす。二撃目に移った瞬間、オルデラが目の前から消えた。オルデラが突進を開始した事により二撃目は空を斬り、当の本人は既にタッキーに向かって大剣を打ち下ろしていた。
(まずい!)
と思ったがもう遅い。ただタッキーのHPは満タンなので急いで回復すれば・・・
(くそっ!一撃かよ!)
既にオルデラとの間合いを詰めたアヤカが、背後から連撃を叩き込む。姫の火炎矢で燃えるオルデラに俺もすぐに追いつき跳躍、片手剣を両手で持って渾身の力を籠める。
「まだ死ねるかよっ!」
俺の一撃が当たった瞬間、オルデラは不自然な吹っ飛び方をした。
(なんだ?)
大剣を杖のようにして、左膝を地面につける。
「やるじゃねぇか。」
アヤカも追い掛けるのをやめ、太刀を構えたまま様子を見守っている。
「ここまで出来りゃ合格だ、この先へ進むことを認めてやってもいい。」
あ、つまりクリアか。
撃退条件はオルデラのHPを50%以下にする事だったんだな。状況を理解した俺は、片手剣を鞘に収める。それを見ていた姫も、弓を背中の留め具に留めた。
まて、姫はクリア条件知ってる筈だよな。
「だが、俺に膝を付かせた程度じゃ生き抜くのは難しい。精々精進するこったな。」
「まだ終わっていませんわ!」
オルデラが立ち上がりながら言うと、アヤカがそれに反応した。
おい。
やめろ。
「もう終わったんだって。」
今にも飛び出しそうなアヤカに無駄だと伝える。
「なんか納得いきませんわ。」
んな事を言われてもな。もう攻撃したって何も起きないっての。
「この先、もっと強いのがいるって言ってるじゃん。憂さならそいつらで晴らせよ。」
「僕、なんかやられ損じゃない?」
戦闘が終わったことで、HP1で起き上がったタッキーが不満そうに言う。だよなぁ、撃破直前で死んじまったら納得いかないよな。
「まぁ、クリア出来たんだからいいじゃねぇか。」
「そうだけどさ。」
「なんとかクリア出来ましたね。正直、4人でいけるかは不安でしたが。」
俺は途中で無理だと思ったけどな。
「でも、姫が居なかったらまた全滅してたな。」
「そうだよねぇ、ほんと。加わってくれて良かったよ。」
俺の言葉に、タッキーも同意する。
「認めざるを得ませんわね。どっかの田舎令嬢じゃなくて助かりましたわ。」
一言余計だっての。
どんだけアリシアが嫌なんだよ。
「いえ、私も正直、クリア出来るとは思って無かったので。」
「装備の違いだよね、きっと。」
そういや、上位ランクの弓を装備してたな。今回はその攻撃力にも助けられたか。
「それより、姫はクリア条件知ってた筈だよな?」
「あ!そうだよね。」
今気づいたのかよ。そう思ってタッキーに呆れた目を向ける。が、気付かれなかった。
「はい。情緒・・・言ってしまうと、面白くなくなるかと思いまして。」
正解。
「その気遣い、いい心掛けですわ。」
お前が言うな。
ヒナもそれくらいの気遣いがあったらな、家の中で俺の精神はもう少し安寧な生活を送れる気がするんだが。
「ここから先は、高純度の原石が手に入ります。私もログイン出来る時は手伝いますので。」
やっと来たか!今の武器を強化するには必要だったからな、出る時を待ってたんだよなぁ。
「本当ですの!?」
俺より食いつきのいい奴が居たよ。分かってたけどさ。
「はい。」
「ユアキス、まずは太刀に必要な原石のクエストから行きますわよ!」
さっきまでのオルデラに対する鬱憤は何処に行ったんだよ。
「えぇ、一人で行けよ、原石くらい。」
そんな効率の悪い事はしたくない。バラバラに武器強化して、ボスとか一緒に行けばいいじゃないか。
「いえ、パーティで行った方がいいと思います。高純度原石の入手は難易度が高いんですよ。強い魔獣と戦う事にもなりますし。」
マジかぁ・・・
ほいほい武器強化も出来ねぇじゃん。
「貴方に初めから選択肢なんかありませんわ。」
強制かよ!
「ほう、太刀以外の装備をろくに揃えられない奴が何言ってんだよ。」
「言ってくれますわね。でしたらここは、先達である姫に決めてもらえばいいですわ。」
お、珍しくまともな事を言ってやがる。
「僕もその案がいいと思う。」
「確かに、アヤカのくせに一理あるな。いいか?姫。」
「今なんと言いましたの?」
ちっ、聞いてやがったか。
「はい、私で良ければ。」
「さぁ、私の原石が最初に必要といいなさい。」
アホか!
一理どころか害しかねぇわ。つまり最初から姫を使って太刀の材料と言わせる気だったんだな。
「姑息な奴め。」
「ふふん、言ったもの勝ちですわ。」
ムカッ。
あの勝ち誇ったように見下げる視線が腹立つわ。
「まぁまぁ、落ち着いてください。」
苦笑いしながら姫が両手を上げて窘める。まったく大人げのない年上ばっかりだな、年下に言われるなんて。
「大人げないからやめなよ、とりあえず姫の話しを聞こうよ。」
タッキーに言われるとなんか腑に落ちないな。
「このパーティでしたら攻撃の要であるアヤカの太刀を強化する方がいいと思います。」
なるほど。言われてみればそうか。その流れだったら俺が最後の方がいいな。サポートと属性を使い分けられるタッキーの銃を次に強化させた方がいいだろう。
アヤカの視線を感じる気がするが、絶対に見てやらない。間違いなく勝ち誇った顔をしているだろうからな。
そんな事よりも。
「で、集めるなら白光原石だろ。」
「はい、それが一番効率的かと思います。」
やっぱりそうだよな。
「え?どういう事?」
「クエストを進めると一番手に入りやすかったのが、白光原石だ。それでいて、嵐皇龍と戦うクエストが多かったわけだ。」
「あ、なるほど。」
疑問を口にしたタッキーだったが、俺がそこまで言うと納得した。まぁ多分、あれは今の説明でも分かってないだろうが。と思ってアヤカを横目に見ると、まださっきの余韻に浸っているようだった。
「そうゆうこと。だから俺らの武器、敢えて作ろうと思わなければ、揃って嵐皇龍の武器だろ。強化しやすく出来ているだろうと思うし、全員が高純度の白光原石は必要になるんだよ。」
「その見解で合っています。」
俺の考えを姫が肯定する。傾向からいってそうだろうなと思ったが、間違っていなかったようだ。
「ユアキスのくせに生意気ですわ。」
お前に言われたくねーよ。
「はいはい、結果として太刀から強化なんだから問題ないだろ。」
とは言えだ、クエスト報酬は全員貰えるから、太刀が強化出来る時には俺もタッキーも強化可能になる可能性は高いな。報酬の数にもよるけどさ。
それは、黙っておこう。
面倒くさいし。
「何か馬鹿にされている気がしますわ。」
「気のせいだから。」
「まあ、次の方針が決まったんだからさ、とりあえず街に戻ろうよ。」
「そっか、クエスト報告しないとな。」
アーニルケの街にある設備は、基本的にメルフェアと殆ど変わらない。当然、クエスト屋も存在する。そんなわけでクエストの報告はアーニルケで行う事にする。
ぱっと移動出来るわけでもないのに、わざわざ時間を掛けてメルフェアまで移動するメリットは無い。
LV9-1解放
高純度な石を集めよう 補足:漆黒の巨狼
強力な回復薬を作ろう
自爆の屍20体退治
鎚滅の巨人の撃破 【BOSS】
帰ってきたゴミ掃除1
帰ってくんな!!
LV9-1のクエストを見て一番最初に目に入ってきたクエストに内心、全力で突っ込んでいた。いやアホだろ、見たくもなかったわ。
クエスト報告後にいきなり疲れさせられるとは思ってもみなかった。
「制作者の悪意を感じますわ・・・」
「嫌がらせにも程があるよね・・・」
「ぬか喜びさせやがって・・・」
それともう一つ、姫を除く三人が口々に呪いたい気分に落とされる。何故か、黒耀のオルデラの撃退報酬として、高純度原石セットをもらった。
当然、喜ぶに決まっている。しかも5個ずつというなかなか気の利いた量をもらえたんだが。
装備強化に必要な原石は、どの装備にしろ最低6個は使用する。
つまりそういう事だ。
呪いを吐きたくもなる。
「まあまあ、一度クエストに行けば、数は満たせるので。」
姫が慰めるように言ってくれるが、顔が苦笑していのは見逃してないぞ。きっとこいつらアホだなとでも思っているのかもしれないが、アホなのはアヤカだけだ。
「何か良からぬ事を考えていませんこと?」
「気のせいだって・・・」
察しのいいアヤカに俺はそう言って誤魔化す。
「それより、最初に行くクエストは原石集めだろ?」
「当然ですわ。」
「僕もそれで問題ないよ。」
まぁ、後1個原石があれば強化出来るんだから、行かないわけないよな。しかし、今までの納品クエストと違って、不吉な追記がある気がするんだよな。一体、漆黒の巨狼は何なんだ?
「なぁ姫。」
「はい?」
「漆黒の巨狼って?倒さなきゃならないのか?」
俺の疑問に、タッキーもアヤカも気になったのか、姫に視線が集まる。姫は少し考えるような素振りをして口を開いた。
「話しても?」
行く前に話してしまってもいいのか?という疑問だが、三人とも同時に頷いた。クエストの内容よりも、武器を強化したい欲望が勝った結果だな。
「倒さなくてもいいのですが、原石を採取していると、轢き逃げをしていきます。」
「うわっ、嫌なやつ・・・」
「殺った方が早そうですわ。」
アヤカの物騒な発言はおいといて、厄介な魔獣だな。手分けをしてノルマ分の原石を集め、クエストをクリアした方が良さそうだ。
そう考えて姫を見ると、頷いてくれたので、察したのだろう。なんて出来た子だ。
「倒すのは体力が多いので、採取してクエストクリアした方が断然早いと思います。」
ちなみに説明までしてくれた。分かってない奴もいるからな、誰とは言わんが。
よし、そうなれば漆黒の巨狼は、戦いたくてしょうがないアヤカに押し付ければ万事解決だな。
「じゃぁ、俺は採取に専念するから、狼はアヤカが相手してくれ。」
そう言った瞬間、アヤカが俺の肩に手を置いて鋭い眼を向けてくる。
「敵前逃亡は、武士にあるまじき行為ですわ。」
俺は武士じゃねぇっ!
「じゃぁ、僕は姫と一緒に採取しておくね。」
姫と一緒という件で、かなりのニヤケ顔でそう言ったタッキーの腕を掴んでやる。
「回復が居ないとまずよな、アヤカ。」
「当たり前ですわ。」
よし、道連れ成功。お前だけ逃がすと思うなよ。
「そんなぁ・・・」
「えっと、私が採取でいいんですか?」
俺らのやりとりを見ていた姫が、苦笑いで聞いてくる。そりゃそうだろうな、説明もしたし、採取のみで終わらせれば早いものを、わざわざ戦う方向に行ったわけだし。
「頼む。」
俺がそう言うと、姫は笑顔で頷いてくれた。
戦闘しなくていいなら、出来れば避けたかったのに、ほんとにこのアホは。
「わかりました。規定量の採取が終わったら、合流しますね。」
「なる早でね。」
タッキーが縋るように言ってみるが、姫から帰って来たのは多分、愛想笑いだ。
まぁ、効率なんか気にしていたらアヤカに付き合ってなんかいないわけで、ゲームは楽しんだ者勝ちだ。そう考えれば、戦う事はさして問題じゃない。
ただなぁ、武器の強化だけはこの戦闘を避けてもやりたかったな。戦うならその後でもいいじゃねぇか。どうせ漆黒の巨狼とか、ボスとしも出てくんだろ。
「そうと決まれば、早速行きますわよ。早く戻って太刀を強化したいですもの。」
そう思うなら戦闘を回避してくれ。
「だったら戦う必要無いじゃねぇか。」
「無理ですわ。」
俺の突っ込みにアヤカは、意味が分からないとばかりに首を傾げて言った。お前の思考回路の方が分かんねぇよ!
という分析を呑気にしているわけじゃない。
(死ぬ!!!)
必死で振り下ろされた大剣の衝撃波の範囲から逃れ、急いで回復薬を使用する。
(あぶね、死ぬとこだった・・・)
タッキーもパーティの回復が追い付かない、アヤカをメインに回復しているためだからしょうがない。役割がそれだけじゃなし、攻撃をしてもらわないとならないし。俺の場合、死なないようにオルデラの攻撃のターゲットにならなきゃ役に立たないからな。
「ユアキス、僕もう回復尽きた!」
アヤカに回復銃弾を撃ったところで、タッキーがそう叫んだ。
「こっちも残り少ねぇ、後は本人に任せろ。」
「承知しましたわ!」
オルデラに駆け寄りつつ言うと、聞こえていたアヤカがオルデラを斬りながら応答する。
オルデラのHPはまだ半分程残っている。確かにこれじゃ、6人パーティで負けるのも納得するわ。
(ってか強すぎだろ!)
内心でそう叫びながらオルデラに片手剣を振り下ろす。二撃目に移った瞬間、オルデラが目の前から消えた。オルデラが突進を開始した事により二撃目は空を斬り、当の本人は既にタッキーに向かって大剣を打ち下ろしていた。
(まずい!)
と思ったがもう遅い。ただタッキーのHPは満タンなので急いで回復すれば・・・
(くそっ!一撃かよ!)
既にオルデラとの間合いを詰めたアヤカが、背後から連撃を叩き込む。姫の火炎矢で燃えるオルデラに俺もすぐに追いつき跳躍、片手剣を両手で持って渾身の力を籠める。
「まだ死ねるかよっ!」
俺の一撃が当たった瞬間、オルデラは不自然な吹っ飛び方をした。
(なんだ?)
大剣を杖のようにして、左膝を地面につける。
「やるじゃねぇか。」
アヤカも追い掛けるのをやめ、太刀を構えたまま様子を見守っている。
「ここまで出来りゃ合格だ、この先へ進むことを認めてやってもいい。」
あ、つまりクリアか。
撃退条件はオルデラのHPを50%以下にする事だったんだな。状況を理解した俺は、片手剣を鞘に収める。それを見ていた姫も、弓を背中の留め具に留めた。
まて、姫はクリア条件知ってる筈だよな。
「だが、俺に膝を付かせた程度じゃ生き抜くのは難しい。精々精進するこったな。」
「まだ終わっていませんわ!」
オルデラが立ち上がりながら言うと、アヤカがそれに反応した。
おい。
やめろ。
「もう終わったんだって。」
今にも飛び出しそうなアヤカに無駄だと伝える。
「なんか納得いきませんわ。」
んな事を言われてもな。もう攻撃したって何も起きないっての。
「この先、もっと強いのがいるって言ってるじゃん。憂さならそいつらで晴らせよ。」
「僕、なんかやられ損じゃない?」
戦闘が終わったことで、HP1で起き上がったタッキーが不満そうに言う。だよなぁ、撃破直前で死んじまったら納得いかないよな。
「まぁ、クリア出来たんだからいいじゃねぇか。」
「そうだけどさ。」
「なんとかクリア出来ましたね。正直、4人でいけるかは不安でしたが。」
俺は途中で無理だと思ったけどな。
「でも、姫が居なかったらまた全滅してたな。」
「そうだよねぇ、ほんと。加わってくれて良かったよ。」
俺の言葉に、タッキーも同意する。
「認めざるを得ませんわね。どっかの田舎令嬢じゃなくて助かりましたわ。」
一言余計だっての。
どんだけアリシアが嫌なんだよ。
「いえ、私も正直、クリア出来るとは思って無かったので。」
「装備の違いだよね、きっと。」
そういや、上位ランクの弓を装備してたな。今回はその攻撃力にも助けられたか。
「それより、姫はクリア条件知ってた筈だよな?」
「あ!そうだよね。」
今気づいたのかよ。そう思ってタッキーに呆れた目を向ける。が、気付かれなかった。
「はい。情緒・・・言ってしまうと、面白くなくなるかと思いまして。」
正解。
「その気遣い、いい心掛けですわ。」
お前が言うな。
ヒナもそれくらいの気遣いがあったらな、家の中で俺の精神はもう少し安寧な生活を送れる気がするんだが。
「ここから先は、高純度の原石が手に入ります。私もログイン出来る時は手伝いますので。」
やっと来たか!今の武器を強化するには必要だったからな、出る時を待ってたんだよなぁ。
「本当ですの!?」
俺より食いつきのいい奴が居たよ。分かってたけどさ。
「はい。」
「ユアキス、まずは太刀に必要な原石のクエストから行きますわよ!」
さっきまでのオルデラに対する鬱憤は何処に行ったんだよ。
「えぇ、一人で行けよ、原石くらい。」
そんな効率の悪い事はしたくない。バラバラに武器強化して、ボスとか一緒に行けばいいじゃないか。
「いえ、パーティで行った方がいいと思います。高純度原石の入手は難易度が高いんですよ。強い魔獣と戦う事にもなりますし。」
マジかぁ・・・
ほいほい武器強化も出来ねぇじゃん。
「貴方に初めから選択肢なんかありませんわ。」
強制かよ!
「ほう、太刀以外の装備をろくに揃えられない奴が何言ってんだよ。」
「言ってくれますわね。でしたらここは、先達である姫に決めてもらえばいいですわ。」
お、珍しくまともな事を言ってやがる。
「僕もその案がいいと思う。」
「確かに、アヤカのくせに一理あるな。いいか?姫。」
「今なんと言いましたの?」
ちっ、聞いてやがったか。
「はい、私で良ければ。」
「さぁ、私の原石が最初に必要といいなさい。」
アホか!
一理どころか害しかねぇわ。つまり最初から姫を使って太刀の材料と言わせる気だったんだな。
「姑息な奴め。」
「ふふん、言ったもの勝ちですわ。」
ムカッ。
あの勝ち誇ったように見下げる視線が腹立つわ。
「まぁまぁ、落ち着いてください。」
苦笑いしながら姫が両手を上げて窘める。まったく大人げのない年上ばっかりだな、年下に言われるなんて。
「大人げないからやめなよ、とりあえず姫の話しを聞こうよ。」
タッキーに言われるとなんか腑に落ちないな。
「このパーティでしたら攻撃の要であるアヤカの太刀を強化する方がいいと思います。」
なるほど。言われてみればそうか。その流れだったら俺が最後の方がいいな。サポートと属性を使い分けられるタッキーの銃を次に強化させた方がいいだろう。
アヤカの視線を感じる気がするが、絶対に見てやらない。間違いなく勝ち誇った顔をしているだろうからな。
そんな事よりも。
「で、集めるなら白光原石だろ。」
「はい、それが一番効率的かと思います。」
やっぱりそうだよな。
「え?どういう事?」
「クエストを進めると一番手に入りやすかったのが、白光原石だ。それでいて、嵐皇龍と戦うクエストが多かったわけだ。」
「あ、なるほど。」
疑問を口にしたタッキーだったが、俺がそこまで言うと納得した。まぁ多分、あれは今の説明でも分かってないだろうが。と思ってアヤカを横目に見ると、まださっきの余韻に浸っているようだった。
「そうゆうこと。だから俺らの武器、敢えて作ろうと思わなければ、揃って嵐皇龍の武器だろ。強化しやすく出来ているだろうと思うし、全員が高純度の白光原石は必要になるんだよ。」
「その見解で合っています。」
俺の考えを姫が肯定する。傾向からいってそうだろうなと思ったが、間違っていなかったようだ。
「ユアキスのくせに生意気ですわ。」
お前に言われたくねーよ。
「はいはい、結果として太刀から強化なんだから問題ないだろ。」
とは言えだ、クエスト報酬は全員貰えるから、太刀が強化出来る時には俺もタッキーも強化可能になる可能性は高いな。報酬の数にもよるけどさ。
それは、黙っておこう。
面倒くさいし。
「何か馬鹿にされている気がしますわ。」
「気のせいだから。」
「まあ、次の方針が決まったんだからさ、とりあえず街に戻ろうよ。」
「そっか、クエスト報告しないとな。」
アーニルケの街にある設備は、基本的にメルフェアと殆ど変わらない。当然、クエスト屋も存在する。そんなわけでクエストの報告はアーニルケで行う事にする。
ぱっと移動出来るわけでもないのに、わざわざ時間を掛けてメルフェアまで移動するメリットは無い。
LV9-1解放
高純度な石を集めよう 補足:漆黒の巨狼
強力な回復薬を作ろう
自爆の屍20体退治
鎚滅の巨人の撃破 【BOSS】
帰ってきたゴミ掃除1
帰ってくんな!!
LV9-1のクエストを見て一番最初に目に入ってきたクエストに内心、全力で突っ込んでいた。いやアホだろ、見たくもなかったわ。
クエスト報告後にいきなり疲れさせられるとは思ってもみなかった。
「制作者の悪意を感じますわ・・・」
「嫌がらせにも程があるよね・・・」
「ぬか喜びさせやがって・・・」
それともう一つ、姫を除く三人が口々に呪いたい気分に落とされる。何故か、黒耀のオルデラの撃退報酬として、高純度原石セットをもらった。
当然、喜ぶに決まっている。しかも5個ずつというなかなか気の利いた量をもらえたんだが。
装備強化に必要な原石は、どの装備にしろ最低6個は使用する。
つまりそういう事だ。
呪いを吐きたくもなる。
「まあまあ、一度クエストに行けば、数は満たせるので。」
姫が慰めるように言ってくれるが、顔が苦笑していのは見逃してないぞ。きっとこいつらアホだなとでも思っているのかもしれないが、アホなのはアヤカだけだ。
「何か良からぬ事を考えていませんこと?」
「気のせいだって・・・」
察しのいいアヤカに俺はそう言って誤魔化す。
「それより、最初に行くクエストは原石集めだろ?」
「当然ですわ。」
「僕もそれで問題ないよ。」
まぁ、後1個原石があれば強化出来るんだから、行かないわけないよな。しかし、今までの納品クエストと違って、不吉な追記がある気がするんだよな。一体、漆黒の巨狼は何なんだ?
「なぁ姫。」
「はい?」
「漆黒の巨狼って?倒さなきゃならないのか?」
俺の疑問に、タッキーもアヤカも気になったのか、姫に視線が集まる。姫は少し考えるような素振りをして口を開いた。
「話しても?」
行く前に話してしまってもいいのか?という疑問だが、三人とも同時に頷いた。クエストの内容よりも、武器を強化したい欲望が勝った結果だな。
「倒さなくてもいいのですが、原石を採取していると、轢き逃げをしていきます。」
「うわっ、嫌なやつ・・・」
「殺った方が早そうですわ。」
アヤカの物騒な発言はおいといて、厄介な魔獣だな。手分けをしてノルマ分の原石を集め、クエストをクリアした方が良さそうだ。
そう考えて姫を見ると、頷いてくれたので、察したのだろう。なんて出来た子だ。
「倒すのは体力が多いので、採取してクエストクリアした方が断然早いと思います。」
ちなみに説明までしてくれた。分かってない奴もいるからな、誰とは言わんが。
よし、そうなれば漆黒の巨狼は、戦いたくてしょうがないアヤカに押し付ければ万事解決だな。
「じゃぁ、俺は採取に専念するから、狼はアヤカが相手してくれ。」
そう言った瞬間、アヤカが俺の肩に手を置いて鋭い眼を向けてくる。
「敵前逃亡は、武士にあるまじき行為ですわ。」
俺は武士じゃねぇっ!
「じゃぁ、僕は姫と一緒に採取しておくね。」
姫と一緒という件で、かなりのニヤケ顔でそう言ったタッキーの腕を掴んでやる。
「回復が居ないとまずよな、アヤカ。」
「当たり前ですわ。」
よし、道連れ成功。お前だけ逃がすと思うなよ。
「そんなぁ・・・」
「えっと、私が採取でいいんですか?」
俺らのやりとりを見ていた姫が、苦笑いで聞いてくる。そりゃそうだろうな、説明もしたし、採取のみで終わらせれば早いものを、わざわざ戦う方向に行ったわけだし。
「頼む。」
俺がそう言うと、姫は笑顔で頷いてくれた。
戦闘しなくていいなら、出来れば避けたかったのに、ほんとにこのアホは。
「わかりました。規定量の採取が終わったら、合流しますね。」
「なる早でね。」
タッキーが縋るように言ってみるが、姫から帰って来たのは多分、愛想笑いだ。
まぁ、効率なんか気にしていたらアヤカに付き合ってなんかいないわけで、ゲームは楽しんだ者勝ちだ。そう考えれば、戦う事はさして問題じゃない。
ただなぁ、武器の強化だけはこの戦闘を避けてもやりたかったな。戦うならその後でもいいじゃねぇか。どうせ漆黒の巨狼とか、ボスとしも出てくんだろ。
「そうと決まれば、早速行きますわよ。早く戻って太刀を強化したいですもの。」
そう思うなら戦闘を回避してくれ。
「だったら戦う必要無いじゃねぇか。」
「無理ですわ。」
俺の突っ込みにアヤカは、意味が分からないとばかりに首を傾げて言った。お前の思考回路の方が分かんねぇよ!
0
あなたにおすすめの小説
結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。
山田 バルス
恋愛
結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。
また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。
大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。
かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。
国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。
スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。
ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。
後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。
翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。
価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。
しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。
無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。
『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。
【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】
アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!
古森真朝
ファンタジー
大学生の理咲(りさ)はある日、同期生・星蘭(せいら)の巻き添えで異世界に転移させられる。その際の着地にミスって頭を打ち、いきなり流血沙汰という散々な目に遭った……が、その場に居合わせた騎士・ノルベルトに助けられ、どうにか事なきを得る。
怪我をした理咲の行動にいたく感心したという彼は、若くして近衛騎士隊を任される通称『銀鷹卿』。長身でガタイが良い上に銀髪蒼眼、整った容姿ながらやたらと威圧感のある彼だが、実は仲間想いで少々不器用、ついでに万年肩凝り頭痛持ちという、微笑ましい一面も持っていた。
世話になったお礼に、理咲の持ち込んだ趣味グッズでアロマテラピーをしたところ、何故か立ちどころに不調が癒えてしまう。その後に試したノルベルトの部下たちも同様で、ここに来て『じゃない方』の召喚者と思われた理咲の特技が判明することに。
『この世界、アロマテラピーがめっっっっちゃ効くんだけど!?!』
趣味で極めた一芸は、異世界での活路を切り開けるのか。ついでに何かと手を貸してくれつつ、そこそこ付き合いの長い知人たちもびっくりの溺愛を見せるノルベルトの想いは伝わるのか。その背景で渦巻く、王宮を巻き込んだ陰謀の行方は?
元救急医クラリスの異世界診療録 ―今度こそ、自分本位に生き抜きます―
やまだ
ファンタジー
朝、昼、夜を超えてまた朝と昼を働いたあの日、救急医高梨は死んでしまった。比喩ではなく、死んだのだ。
次に目覚めたのは、魔法が存在する異世界・パストリア王国。
クラリスという少女として、救急医は“二度目の人生”を始めることになった。
この世界では、一人ひとりに魔法がひとつだけ授けられる。
クラリスが与えられたのは、《消去》の力――なんだそれ。
「今度こそ、過労死しない!」
そう決意したのに、見過ごせない。困っている人がいると、放っておけない。
街の診療所から始まった小さな行動は、やがて王城へ届き、王族までも巻き込む騒動に。
そして、ちょっと推してる王子にまで、なぜか気に入られてしまい……?
命を救う覚悟と、前世からの後悔を胸に――
クラリス、二度目の人生は“自分のために”生き抜きます。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる