デッドエンドウォー シンフォニア

紅雪

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53.壊れ始めた、日常

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-CAZH社 自社データセンター サーバールーム 管理室-

「これ、まずいんじゃないのか?」
アリシアがユアキスに打ち明ける状況を見ながら、美馬津の顔に不安が浮かぶ。
「大丈夫だろー。雪待晶社が・・・いや、普通のプレイヤーは、はいそうですかって受け入れられる現実じゃない。」
「それはそうだろうが、露呈はプロジェクトの頓挫に繋がりかねんぞ。」
八鍬も現状の不安を口にする。
「心配ない、想定内だ。」
だが、八鍬と美馬津の不安など小事とばかりに禍月は不敵な笑みを浮かべる。それでも、二人の不安を払拭するには至らない。
「想定内だと?」
「二人とも考えが甘いなー。どうして本人が話さないと思ってんだー?かけ離れた現実だ、気付かない方がおかしいだろー。」

禍月がそう言うと、二人とも黙り込んだ。気付いていない事は無かったが、禍月の言う通り、何処かに甘い考えがあった事も事実だったからだ。

「そんな事より、二人に朗報があるぞー。」
「朗報だと?」
「どういう事だい?」
話しを切り替えた禍月に、八鍬も美馬津も疑問を口にした。朗報と言われても、期待を持つような態度にはなれずに。
「二人とも、本社復帰が決定だ。良かったなー。」
「なんだって?」
美馬津は驚いて、椅子から勢いよく立ち上がる。だが八鍬は美馬津の様子を見た後に、目を細めて禍月を見据えた。
「どういう事だ。」

「どういう事も何も、仕事を受けるとき言われているだろー。召喚と半年程度の経過観察ってなー。順調な場合は召喚から2ヵ月程経過で、追加召喚。いわゆるフェーズ2だな。そこからも特に問題なく、もう半年くらいだ、別におかしな話しじゃないだろー?」

禍月の説明に、二人とも黙したまま考えていたが、八鍬が先にその沈黙を破った。
「確かに、禍月の言う通りだ。だが、失敗すれば先は無いと言われて来たんだ。覚悟を決めて来たのに、たった半年程度でお役御免というのも気の抜けた話だが、逆にその先の話しもされていない。」
「僕も同じだ、こんな中途半端な状態で、突然外される方が不自然だよ。」
続く美馬津も不満を口にする。

「先が見えないのはどうしようも無かった。ただ、ここまで順調に来たんだ。本社復帰になんの不満があるんだー?」
「不満しかないな。」
面倒そうに言う禍月に、八鍬はきっぱりと言った。
「僕も同じだ。一度手掛けた以上、中途半端で放り出したくはない。」
「そもそも人二人を殺したようなものだ、どの面を下げて本社勤務に行けと言うのか。」
美馬津も八鍬の言葉に続き、八鍬自身は今更だと加えた。

「別に中途半端じゃない。後はあたしとまりあで何とかなるからなー。」
「他人の人生を狂わせておいて、のうのうと暮らせと言うのか!?」
八鍬は声を大きくし、禍月を睨め付ける。だが禍月には、八鍬の態度もまるで、暖簾に腕押しのようだった。プレッツェルを齧りながら、終始変わらぬ態度に八鍬も美馬津も苛立ちを感じ始めていた。

「うん、そう。此処の事は忘れて、普通に暮らせばいいだろー。自分から危険に飛び込む必要も無いしなー。」
「今更自分の身を案ずる事などどうでもいい。これは気持ちの問題だ。」
「そうは言ってもなー。そもそも、プロジェクトの全容を知らないだろー。これは最大限の譲歩だ。」
食い下がり続ける八鍬に、禍月も正面から見返して目を細めて言う。その態度には、いい加減聞き分けろと含みを持たせて。

「そう、僕はそこが気になっていたんだ。そもそも、ゲーム内で生きて行けるのが分かったところで何が得られるんだい?どっちにしろ歳は取るし、病気や怪我だってする。むしろゲーム内の方が悪環境じゃないか。」
美馬津は今まで抱えていた疑問を口にした。禍月はその美馬津に、冷たい目を向けて睨む。
「この先はフェーズ3に移行するが、内容に関しては秘匿事項だ。部外者に教えられるわけがないだろー。」
「なっ・・・部外者ってなんだよ!今まで加担して来たんだぞ。主任の言う通り、他人の人生を狂わせてまで。それなのにここに来てその扱いはなんなんだ!」
禍月の態度に、納得できない感情を剥き出しにした美馬津は、声を大きくして捲し立てると掌を机に打ち付けた。
「熱くなるなよあっきー。その分の報酬は当然支払われるし、無かった事にして本社復帰出来るんだぞ。何が不満なんだー?」

「私は、既に平穏なぞ望んでおらん。いや、諦めたと言うべきか、このプロジェクトに加担した時点でな。聞いた事で始末が必要ならするといい。だが、聞かずに離れるのは納得できん。」
「僕も、主任と同じ気持ちだ。」
頑として譲らない二人に、禍月は態度を和らげた。アリシアがベッドに横たわる姿が映るディスプレイに目を向けると、プレッツェル齧る。

「二人とも面倒くさい奴らだなー。」
そう零した禍月の声は、二人には優しさが混じっているように感じ取れた。その感覚に戸惑い、次の言葉が出ず禍月の次の言葉を待つ。

「あたしなー、出来ればしゅにんもあっきーも普通に生きて欲しいって、思うようになったんだー。」
突然言い出した内容に、八鍬も美馬津も何も言えず見守る。
「来た当初はどうでも良かったけどさー。」
禍月はそう付け足すと苦笑した。もしかすると、自分の感情に対しての自嘲かもしれなかったが。
その態度に、二人の戸惑いは消える事が無く、むしろ余計に膨らんでいった。
「あたしのためにも、ここらで引き返してくれないかなー。」
そう言って二人に顔を禍月向ける禍月の表情は、優しいようで何処か物悲しそうに見えた。

管理室内には沈黙が流れ、室外にあるサーバーの稼働音だけが聞こえ続ける。その中で、八鍬も美馬津も視線を床に落として何かを考え続けていた。
何のために此処に来たのか。
禍月のために提案を飲むのか。
自分はどうしたいのか。
葛藤は、八鍬も美馬津も同様だった。

「まぁ、まだ時間はあるかならー。ゆっくり考えたらいい。」
「いや、その必要は無い。」
沈黙を破って言った禍月に、八鍬は顔を上げて即答した。
「私はこの場所を離れるつもりは無い。」
「あ、僕も同じことを言おうと思ってました。」
どこか吹っ切れたような八鍬の言葉に、美馬津も笑みを浮かべて続いた。
「例え情報が開示されずとも、遂行の邪魔だと消されようともな。」
「という事だよ禍月、どうする?」
死を覚悟した、というよりは自分のやりたい事をする意思を以て、この場所に居るように禍月には見えた。それは決死の顔ではなく、なんとなく表情が晴れやかだったからだ。

「馬鹿な奴らだなー。」
「一蓮托生、だろ。」
「利口ならそもそもこの場所には居らん。」
呆れて笑う禍月に、美馬津も八鍬も表情を崩した。禍月にとっては願いが聞き入れてもらえたなかった形になったが、この結末も悪くないかと思えていた。

「それで、フェーズ3って?」
「気が早いぞあっきー。」
蟠りが消え去った事で、早速美馬津が先程出た内容について禍月に問いかけるが、禍月は呆れた目で言い返す。
「その前に、最終確認だ。」
禍月は真面目な表情になって言う。その態度に八鍬と美馬津は多少緊張した。言われる内容は概ね予想はしているが、面と向かって口にされる事に。
「ここから先はもう引き返せない。あたしからじーさんには言うけど、是非はじーさんの判断だ。不要となれば即消される可能性も十分にある。それでもいいのかー?」
「今更だな。」
「もう覚悟は出来てるよ。」
八鍬も美馬津も、禍月の問いに迷いなくはっきりと答えた。

「まったく、呆れるほど馬鹿だなー。」
「心外だな。」
「禍月に言われる筋合いはないって。」

「分かった。まずはあっきーの質問に答えようかー。」
二人の答えを聞いた禍月は、早速内容について話し始める。
「プロジェクトだからな、当然此処だけで動いているわけじゃない。複合的に同時検証しなければ、一つの結果は得られないわけだ。」
「つまり、此処はゲーム内での生活に適応できるかだけを確認するために存在している、という事か。」
「その通りだしゅにん。」
八鍬がこのデータセンターの役割を確認すると、禍月は頷いて肯定した。
「他にはどんな検証があるんだい?」

「聞きたいのか?ここのプロジェクトが人でいられるギリギリのラインだぞー?」
美馬津の質問に、禍月は目を細めて警告する。
「あぁ。大丈夫だ。」

「そうだなー、例えば脳だけ取り出して、ゲーム内で活動出来るか、とかなー。」
「馬鹿なっ!」
「・・・」
八鍬は怒りを露わにしたが、美馬津は嫌悪感で気分が害されたようだった。
「だから言っただろー。ここは精神的にまだましなんだ。召喚出来たということは、戻せる可能性も残っている。だけどな、人体から切り離された脳の再接続は難しい。」
「このプロジェクトは、そんな人体実験までしているのか・・・」
「それは此処も一緒だろう。」
嫌気を吐き出すように言う美馬津だったが、八鍬が同じ穴のムジナだと、呆れを含んで言った。
「そう、ですね。」

「でも、それを言うなら、脳移植が当たり前の様に可能な現代なら戻すのは造作もない事じゃないのか?むしろ元居た場所に還すプログラムの方が大変だよ。」
「あのなあっきー、移植ってのは移植先が機能している事が前提だ。脳を取り出したあと、入っていた器に別の脳を入れるわけにはいかないんだよ。」
「あ・・・」
禍月にも呆れられて説明を受ける美馬津は、聞いた後に愚問だったと思い声を漏らす。が、それだけじゃないと思い話そうとするが、禍月の方が先に口を開いた。
「人工的に創り出した脳で一時的に身体機能の維持、若しくは器の冷凍保存も可能だが、それにはその人間の環境を維持再現、若しくは周囲を納得させなければならない。そんな手間も金もかかる事をするのは大変だろう。」
「じゃぁ、どうするんだ?」
「破棄に決まってんだろー。」
プレッツェルを美馬津に突き付けて禍月は言うが、美馬津は内容に気分が悪くなり目を逸らした。


「だが、そんな大掛かりな実験なんて、CAZH社では出来ないだろう?」
ゲーム会社であるCAZH社に、人体実験をするほどの設備が無い事は八鍬も勘づいていた。脳を取り出すともなれば、それなりの医療設備が必要になるからだ。
「そこは西園寺グループだからな。」
「余計に目立つんじゃ?」
「西園寺グループに列挙されていない架空会社があってな、勿論出資はじーさん個人だ。この架空会社が清命館製薬の株を5割近くも保有している。」
「5割!?完全に筆頭株主じゃないか。」
淡々と説明する禍月の内容に、美馬津が驚きで割り込んだ。
「民間の製薬会社を利用しているわけか・・・しかも、清命館製薬と言えば、日本でも指折りの製薬会社だな。」
美馬津に続き、八鍬も思い出すような仕草をして言う。
「そう。製薬工場1つくらい自由にしても、問題無いわけだ。当然、表向きは・・・というより、表ではちゃんと製薬工場としての機能は維持してるけどなー。」

禍月の話しに、八鍬も美馬津も気持ちが重くなり、表情も暗くなっていた。
「今更後悔しても遅いぞー。」
「別に後悔などしておらん。」
目を細めて煽る禍月に、八鍬は真剣な眼差しで返した。
「そうかー。」

「それより、このフェーズ2が終わるとなると、これからは何をするんだい?」
「あっきー、気付いてないのか?」
美馬津の問いに禍月は呆れてプレッツェルを投げつけた。
「な、何すんだよ。」
「環境の問題か。」
「さっすがしゅにん。」
美馬津の事は無視をして話しを進める禍月と八鍬。美馬津は何のことかまだ分からないでいた。
「アリシア嬢のお陰で生存環境としての検証は十分だ。だがな、それ以前にゲームの方に問題があるだろう?」
「あ、そうか。強制ログアウト・・・」
「そうだ。本来は想定していない問題だったんだけどなー、引き続き此処はその調査と安全性の確保に重点を置く必要があるわけだ。」
そこで一同の表情が曇る。
「いい加減、何か当たりを付けないと厳しいね。」
「痕跡は残らない、だが現状は目の当たりにした。そこから何か解析出来ればいいんだがなー。」
見通しのきかない現状を口にするだけで、空気が重くなる。
「とりあえず気持ちを落ち着けるか、私は一服してくる。」
八鍬は逃げ出すように、言うなり管理室を出て行った。その行動を美馬津が目で追う。
「行ってきていいぞー。」
「そうか、じゃ遠慮なく。」
察した禍月が美馬津に言うと、八鍬の後を追って管理室を出て行った。

「やれやれ、面倒な事になったなー。」
一人になった管理室で、禍月は溜息を吐くように漏らすと、プレッツェルを口へ運んだ。






部屋のドアがノックされる音で、俺は目が覚めた。外は明るいが陽射しは窓から殆ど入り込んでいない。
時計を確認すると、もうすぐ午後の1時になろうとしていた。
重たい意識を無理やり起こしてベッドから起き上がる。

停止していた思考が動き出す。

(そうか、いつの間にか寝ちまったのか・・・)

もう一度ドアがノックされる。

気怠い身体を動かし、部屋のドアを開けると怒り気味のヒナがそこには居た。

「おにぃ、いつまで寝てんのさ。」
「あぁ、悪ぃ・・・なんか寝付けなくてさ、寝たの朝方だったんだ。」

「ふーん。」
「なんだよ・・・」
こちらには目を向けずに、不貞腐れたような態度を取る。意味がわからん、寝起きになんでこんな扱いうけなきゃならないんだ。
「俺が起きるの、待ってたのか?」
まさかな、と思ったが聞いてみる。待ってなけりゃ、わざわざ俺の部屋に来たりはしないだろう。そう思ったのだが、言った瞬間ヒナは俺の方を見て睨んできた。
「キモっ!!ばっかじゃないの、なんでおにぃを待たなきゃなんないのよ!」
・・・

まぁ、いつも通りか。
「今お昼休憩中、様子を見に来たからって調子に乗んな、うざ。」
そこまで言うと、ヒナは顔を背けた。
じゃぁ来なけりゃいいじゃねぇか、めんどくせー。
「午後はどうすんの?」

どうする、か・・・

気が重い・・・

「行くよ。」
「あっそ。」

ヒナは素っ気なく返事をすると、扉を勢いよく閉めて行った。いや、俺は飯を食いに行きたいんだが・・・



気分は乗らなかったが、いつも通りDEWSにログインしてみんなと合流する。

「オルデラに負けたのがそんなにショックでしたの?軟弱な精神ですわね。」
軟弱な精神か・・・
「確かにそうかもしれないな。」
ふと口にしてしまったが、アヤカはそんな俺に驚きの表情を向ける。
「良い精神科を紹介してあげますわ。」
「いらんわ!」
憐みを込めて言うな。別に病気じゃねぇっての。
「聞きましたよ、結局行ったんですね。」
「あぁ、散々な結果だったがな。」
「ほんと、酷かったよね。本編よりかなり強かったよ。」
実際、タッキーの言う通り、サブクエストのオルデラはかなり強化されていた。ほんと、サブで良かったよ。

それでもオルデラ戦は正解だったと思える。なにしろ装備作成が優先だと本人も納得してくれたからだ。これで暫くは静かになるだろう。

しかし、一人で悶々としているよりも、こっちの方が気楽だな。そう思うと、ログインして正解だったと思える。

「大丈夫?」
マリアがそれだけ言って、俺の顔を覗き込んでくる。
たった一言。
でも、その一言は俺の現状を見透かされているような気がした。いや、気付かれているんだろうな。
「お姉さんで良ければ、聞いてあげるよ。」
やっぱり・・・

マリアはこちらを見ずに、小さな声で言った。他のメンバーに聞こえないように。

そんなの、昨夜からずっと悩んでるよ。
でも、俺の妄想かもしれないと思うと、気が引ける。
頼ってしまうのも悪い気がするし。
未だにどうしていいのか、自分でも分からない。

「さあユアキス、わたくしが必要だと言いなさい。」
・・・
待て・・・
「熱はどうした。」
「今朝薬が届いたので、治りましたわ。」
「お嬢様、それは薬が効いているだけで、治ったわけじゃないと思います。」
エメラの言う通りだな。

「何を言ってますのエメラ?完全復活ですわ。」
んなわけあるか。

普段と変わらずに現れたアリシアを見て、もやもやする。

どうして、何時もと同じ態度で現れたんだよ。
それが出来るなら何故、昨日俺にあんな話しをしたんだよ。
あの話しが本当なら、俺はどう向き合っていいのか分からねぇよ。
あの涙を見せられた後だと、無理をしているようにしか見えねぇよ。

なぁアリシア、お前は本当に、この中にしか存在してないのか。

そう心の中で問い掛けてアリシアに目を向ける。

両手を腰に当てて偉そうにしているアリシアは、俺の視線に気付くと、一瞬だけ切なそうな目をした。それに気付くと思わされる。

きっと、冗談じゃないんだな・・・


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