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54.だからやめろっての、抗争
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-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
「宇吏津くん、許可が下りたわよ。」
宇吏津の席まで来た水守は、小さな声で耳打ちした。周りに聞こえないようにとの配慮だったが、その行動に宇吏津の心拍が上がる。
「よ・・・良かったです。」
「どうしたのよ?」
「いえ。それより、こちらも準備は整っています。」
動揺を消し、真剣な目で宇吏津は言った。
「それじゃ、早速行きましょうか。」
その覚悟の中に、やるせない思いと、切さなを感じながら水守は、プロジェクト凍結へ向かう口火を切った。
-CAZH社 本社ビル16F 開発本部 キッティングルーム(水守)-
いつも通り水守と宇吏津は多重認証にてサーバーへログインをする。
「やはり、呼び掛けには応じませんね。」
ELINEAを呼び出すが、ディスプレイは接続中のまま遷移しない。
「ELINEA自身も、これ以上の会話は無意味と判断したのかしら・・・」
「応答しようがしまいが、凍結は変わりません。」
既に決定事項だと、宇吏津はその意思を言葉にした。だが裏腹に、瞳には揺らぎが見え、表情は強張っている。言葉で意思表示をしないと、今にも崩れそうな心境なのではないかと水守には思えた。
「少し、放任し過ぎましたかね。」
「問題ないわ。自由意志がなければ意味は無いもの。インターフェースから入力されたものだけ学習するなら、ただのプログラムでしょう?」
「そう・・・ですね。」
「プロジェクトが凍結になるのは、宇吏津くんの所為じゃないのよ。」
浮かない表情をしている宇吏津に、水守は気を遣ったつもりだったが、宇吏津は曖昧に笑うだけだった。
「駄目ですね・・・」
未だに現れないELINEAに対し、宇吏津は溜息混じりに言う。
「仕方がないわ。コンソールから直接停止させましょう。」
「はい。」
宇吏津は返事をすると、備え付けの小型PCを取り出し、ケーブルでサーバーと直接接続をする。間もなく、黒一色だった小型PCのディスプレイに、プロンプトが表示された。
宇吏津はそこから目的のディレクトリを表示する。
【e_pj】
ELINEAプロジェクトを略したディレクトリ名を目にすると、一瞬動作が止まる。プロジェクト開始時に、自分で作成したディレクトリであり、ELINEAを動作させている全てのファイルがここに格納されている。
それを思い出し、手の動きが止まってしまった。
「この中にある、稼働停止用ファイルを動かします。」
宇吏津はそう言うと、ディレクトリ内に移動する。一瞬でも、感傷に浸れたのは良かったと内心で思いながら。
「動作しているプログラム全てを停止させる為に作ったあれね。使う事になるなんて、思わなかったわ。」
「それは、僕も同じです。」
宇吏津は言いながら、ファイル名を入力して実行する。最後の確認が、プロンプト上に表示された。
「良いですか?」
「えぇ、実行して。」
宇吏津は水守の指示を聞くと、【y】を入力してエンターキーを叩いた。
<ファイルに対する操作権限がありません。>
「エラー?・・・」
表示された文字に、宇吏津は暫し思考が停止した。
「ちょっと、どういう事!?」
「僕にも分かりません。このサーバーにアクセス可能な管理者しか権限がない筈なんです。」
水守の声に、宇吏津は我に返って言うが、動揺までは隠せていない。
「つまり、私と宇吏津くんでしょ。」
「そうです。」
宇吏津は慌ててキーボードを叩き始める。
「権限はどうなっているの?」
「今確認しています。」
宇吏津の操作で、実行しようとしたファイルのアクセス権が画面に表示される。
「ちょっと、これって・・・」
「書き換えられています。」
表示されていたアクセス権は、サーバー管理者は存在せず、知らないユーザーのみになったいた。
「これじゃ、参照すら出来ないじゃない。」
「ELINEA・・・」
「え・・・これはELINEAがやったって言うの?」
小さく漏らした宇吏津の言葉に、水守は驚いて疑問を投げる。
そもそもディレクトリに対する権限は水守と宇吏津にしかない。その中で動かされているのがELINEAであり、そのELINEAが自らファイル操作をするなど、考えもしなかったからだ。
「ELINEAは気付いていたんでしょうか?」
「分からないわ。でも、このファイルの権限を書き換えたという事は、そうとしか思えないわね。」
「他にもあるかもしれません、上から強制的に元の状態に変更します。」
「えぇ、お願い。」
言いながら宇吏津はキーボードを叩いていく。ELINEAが何処まで権限を書き換えているか不明なため、強制的にe_pjから配下のディレクトリ、ファイルの権限を全て書き換えるために。
「ELINEAはどうやって書き換えたのかしら。」
「それは分かりません。そもそも、ログの方も改竄は分かっても、方法については未だ不明ですし。」
手を休めずに宇吏津は水守の質問に答える。このプログラムの中で動いている筈のELINEAが、どうしてこんな事をしたのか。どうやって権限の操作を実行したのか。現状では分からないと。
「行きます。」
「お願い。」
<ディレクトリに対する操作権限がありません。>
「駄目です、おそらく既に、ディレクトリ全体が書き換えられている可能性があります。」
「そんな!」
宇吏津は更にキーボードを叩き、ディレクトリ内に移動しようとするが、今度は参照する事すら出来なくなっていた。
「現在進行形で書き換えられているようです。」
「ちょっと、それじゃどうしようもないじゃない!?」
「多分、真っ先に停止ファイルを変更した後、すべての権限を書き換えたんじゃないでしょうか。ここからの操作は、もう出来ないですね。」
「まさか、そこまでするなんて、普通想像しないわよ。」
既にキーボードから手を離している宇吏津は、プロンプトが点滅するだけのディスプレイを見る。そこに映っている水守の表情は驚きのまま硬直していた。
<接続が切断されました。>
やがてディスプレイにはダイアログが浮かび上がり、サーバーとの接続が切断されたと表示される。
「最後の手段しか、無いですね。」
「こんな原始的な方法でしか対処出来ないなんてね。」
脱力して寂しそうに言う宇吏津を見て、水守も顔に悔しさを滲ませて筐体へ移動する。サーバーに接続されている電源に手を掛けると、宇吏津に確認するように顔を向けた。
「ログ、回収はどうせ無理でしょう?」
「時間を掛ければなんとかなるかもしれませんが、ネットワークからの分離だけでは不安ですからね。それが一番良いと思います。」
力なく笑う宇吏津の言葉を聞くと、水守は無停電装置からサーバーの電源を抜いた。
予期せぬ電源断から機器を守るために搭載されている補助電源が起動する。通常であれば補助電源がサーバーをシャットダウンさせるが、その傾向もみられない。
「やはり、シャットダウンシーケンスも受け付けないようにしてるようですね。」
「えぇ・・・」
補助電源の稼働時間は約90秒。
水守も宇吏津も、その90秒を無言のまま、筐体のLEDが消えるまで見続ける。
長くも感じられた時間が経過すると、サーバーは沈黙し、LEDの灯がゆっくりと消えて行った。
「・・・」
「なんと言っていいか、分からないわね。」
「そうですね・・・」
そのまま少しの間、またも沈黙が流れるが、宇吏津が別の小型PCを取りしてネットワークに接続する。
「何をするの?」
その行動を見ていた水守は、疑問に思って口にする。
「以前、ログ収集のために運用サーバーに置いたものを回収しようと思いまして。」
「あぁ、そうね。」
宇吏津はまずアインスサーバーへと接続して、作業を始めた。水守はその操作を暫し眺める。浮かない表情はしているが、淡々と操作する宇吏津を見ると自分のすべき事に向かおうとした。
「それじゃ、私は報告に向かうわね。」
「はい。」
宇吏津が作業しながら返事をするのを見ると、水守は出入り口に向かい、キッティングルームのドアレバーに手を掛ける。
「チーフ!」
扉を開けて出ようとすると、宇吏津が大きな声を出したので、水守は足を止めて振り向いた。
「どうしたのよ。」
「これ、見てください。」
水守はドアを閉め、宇吏津が操作するPCへと近付いて内容を確認する。
宇吏津が見ていたのはログインユーザー情報だったが、画面の中に見覚えのある名前が存在した。
「どういう事?」
「おそらく、こうなる事を予想して予めデータを別サーバーへコピーしていたんじゃないでしょうか・・・」
「なんて事・・・」
二人が見る画面上には、ELINEAの文字が表示され、状態はログイン中となっていた。
「あ・・・」
俺の目の前で、浮光竜が消えていく。
浮光竜はニベルレイスに多く生息する小型の龍だ。人間の身長と同程度の大きさだが、身体が発光していて洞窟内の灯りにもなっている。
単に材料が必要で相手にしているのだが。
クエストしては20体倒せばクリアになる。浮光竜自体は結構数がいるので、発生する洞窟内は通常の場所よりも明るい。そのため、戦闘もやりやすい。
が、そんな事はどうでもいい。
問題は、浮光竜が消えた場所に居る奴だ。
たまたま攻撃を食らって尻餅をついた瞬間に倒されたため、本当に目の前で敵が消えていったんだ。
その倒した奴が、凄い得意げな顔で俺を見下ろしている。
「ふふ、ユアキスはわたくしが居ないとダメですわね。」
うるせぇ。
「たまたまだろうが!」
「まぁ、強がらなくてもよろしくってよ。」
くっそぉ、勝ち誇った顔をしやがって。
「さぁ、次の標的はあれですわ!」
人の話しはまったく聞く気はないのか、アリシアはアヤカが戦っている方へと走っていった。
また面倒なところに向かって行ったな・・・
「田舎娘のくせに、よくも横取りしてくれましたわね。」
「あら、辺境娘には荷が重いかと思いましたの。」
始まったよ・・・
「瀕死の獲物を横から奪い取るなんて、見窄らしい田舎娘のやりそうな事ですわ。」
「わたくしが、倒して差し上げましたのに、辺境では礼儀という文化が無いようですわ。野蛮ですこと。」
「今日こそ刀の錆になりたいようですわね。」
「身体が穴だらけになるのが望みとは思いませんでしたわ。」
さて、無視して俺は次の浮光竜でも相手にするか。辺りを見回して、浮いている浮光竜を見つけると俺はそいつに向かって近寄り、攻撃を始める。
「うを!・・・」
連撃のフィニッシュを決めようとしたら、急に態勢が崩れる。
「ユアキスのくせに、私が見つけた獲物に攻撃するとはいい度胸ですわね。」
振り向くとアヤカが太刀を振った後だった。ってか、後ろから斬りつけやがったのか。
「嘘つけ!」
「そうですわ、先に見つけたのはわたくしですもの。」
・・・
「後から来てまた横取りとは、まるでハイエナですわ。」
「人が見つけたものを我先に取りに行く辺境娘こそ、野盗のようですわ。」
また睨み合いが始まるなか、浮光竜がゆっくりとその場から離れって行った。まるでその場から逃げる様に。
(あいつも付き合ってられないって思ったのかな。だったら面白いんだが。)
そんな事を思って、俺もその場から離れる事にした。
付き合ってられん。
『待ちなさいユアキス!』
「うが・・・」
それぞれに両腕を掴まれたらしく、視界が一瞬揺らぐ。
「何すんだよ?」
『私(わたくし)の獲物ですわよね?』
どうでもいいわ・・・
「大変そうだねぇ、ユアキス。」
離れたところで銃を撃ちながらタッキーが言ってくる。凄い楽しそうな顔で。後で覚えてろ・・・
『さぁ、どっちですの?』
言う事もやる事も同じなんだから、良いコンビじゃないか。まぁ、思っても口には出さないが。俺に火の粉が飛んで来るのは間違いない。
いや、火の粉どころじゃないな。
「知るか!」
俺はそう言うと、腕を振り解いてタッキーの方に走り出す。
ちょうどタッキーの居る辺りに浮光竜が沸いたんだよな。
「げ・・・」
笑みを浮かべていたタッキーが、俺に気付くと顔を引き攣らせ嫌そうな声を出す。その様子からすれば、あいつらも着いて来ているんだろう。そう思って一瞬だけ後ろを確認すると、予想通りアヤカとアリシアが追いかけてきていた。
何故こっちに来る・・・
仕方がない、お前も巻き込んでやる。
俺は浮光竜に攻撃してタッキーの方に押してやる。間もなく追いついて来たアホ共も攻撃に加わった。
「田舎娘には草むしりの方がお似合いですわ。」
「うわぁっ・・・」
アヤカの太刀が浮光竜を狙いつつ、どさくさに紛れてアリシアを攻撃。避けたアリシアの後ろにはタッキーが居て、もろに食らって仰け反る。
・・・
さすがにやりすぎだろ。
「辺境娘こそ、襤褸屋敷の修復がお似合いですわ。」
アリシアの攻撃はあからさまに浮光竜ではなく、アヤカへの踏み込み突きになっている。
っておい・・・
いつの間にかアヤカは、俺とアリシアの直線上に移動してた。それは、アヤカが避けると俺が巻き込まれるじゃねぇか。
「うぐっ・・・」
案の定巻き込まれた俺は、すぐに態勢を立て直して文句を言おうとしたが、アリシアのレイピアが俺に当たった瞬間、何かノイズのようなものが走った。
(なんだこれ・・・)
一瞬、視界がちらついたんだ。
(何だなんだよ、これ・・・)
気付くと、HPまで減っている。
おかしいだろ、プレイヤーの攻撃でHPが減るなんて。実際に減った量は微々たるもので、戦闘には何の影響もないが、プレイヤー攻撃でHPが減るという事実が問題だ。
だがその前に。
「お前らいい加減にしろ!」
『ユアキスは黙っていなさい!』
俺が声を張り上げるも、アホ共は聞く気は無いようだ。
「流石に今回酷いよね・・・」
タッキーすら呆れ顔で俺を見てくる。俺も同意だが、俺を見られてもどうしようもない。他のメンバーは関わりたくないのだろう、離れたところで黙々と浮光竜を狩っている。
仕方がない・・・
「アヤカ、それ以上続けるなら神石取りには付き合わないぞ。」
言った直後、アヤカは近くの浮光竜を攻撃して倒す。
「こんなクエスト、早く終わらせますわよ。」
何という変わり身の早さ。この手の文句はまだ有効なようで良かったよ。
「さすがは辺境娘、俗物的な事ですこと。」
「煽るな!続けるならもう着いてくんな。」
俺がそう言うと、アリシアはレイピアを持っている手から力を抜き、剣先を地面に向けた。怒るでもなく、寂しそうな顔しながら。
「わたくし、少し大人気なかったですわ。」
そう言うアリシアを見るとなんか、言った俺が悪いような気分になってくるな、後味が悪いというか。
いいや、そんな事はない。あいつらが悪いんだ。そう思って振り払うと、残りの浮光竜を倒すことに専念した。
ゲームを終えた後、改めて考えさせられた。
それは、やはりアリシアの告白が起因している。あんな話しをされなければ、今日の出来事だって、そこまで気にならなかったかもしれない。
アリシアはあれ以来、今までと変わらずに行動している。むしろ、悩んでいる俺が馬鹿みたいに思えるほどだ。
だが、思い起こせばおかしな事は今までにいろいろあった。
突然、何もない空間から現れたアリシア。
ゲームなんだから、イベントであっても不思議ではない。ただ、他にそんな現象は見たことがない。
名前の色がプレイヤーと同じという事に関しては、CAZH社の方でなんとでも出来そうだから気にしてもしょうがない気がする。
敵がアリシアを認識しない事に関しても、そういうキャラなんだと思えば説明はつく。
攻撃が当たらないのも同様だ。
逆に今日のように、プレイヤーにダメージが出るのも、その流れかもしれない。
やはり、一番おかしいのは病気や出血に関してだろう。そのキャラのためだけに、そんな演出をわざわざ作るだろうか。いくら調べたところで、アリシアの様なキャラの情報は一切出てこない。
だったら、アリシアが言っている事は本当なんじゃないか?
そう思わされる。
もしそうなら、何で俺なんだろうな・・・
毎晩の様にゲームを終えた後に繰り返される疑問。
なんで、こんな事を考えなきゃならないんだ・・・
「宇吏津くん、許可が下りたわよ。」
宇吏津の席まで来た水守は、小さな声で耳打ちした。周りに聞こえないようにとの配慮だったが、その行動に宇吏津の心拍が上がる。
「よ・・・良かったです。」
「どうしたのよ?」
「いえ。それより、こちらも準備は整っています。」
動揺を消し、真剣な目で宇吏津は言った。
「それじゃ、早速行きましょうか。」
その覚悟の中に、やるせない思いと、切さなを感じながら水守は、プロジェクト凍結へ向かう口火を切った。
-CAZH社 本社ビル16F 開発本部 キッティングルーム(水守)-
いつも通り水守と宇吏津は多重認証にてサーバーへログインをする。
「やはり、呼び掛けには応じませんね。」
ELINEAを呼び出すが、ディスプレイは接続中のまま遷移しない。
「ELINEA自身も、これ以上の会話は無意味と判断したのかしら・・・」
「応答しようがしまいが、凍結は変わりません。」
既に決定事項だと、宇吏津はその意思を言葉にした。だが裏腹に、瞳には揺らぎが見え、表情は強張っている。言葉で意思表示をしないと、今にも崩れそうな心境なのではないかと水守には思えた。
「少し、放任し過ぎましたかね。」
「問題ないわ。自由意志がなければ意味は無いもの。インターフェースから入力されたものだけ学習するなら、ただのプログラムでしょう?」
「そう・・・ですね。」
「プロジェクトが凍結になるのは、宇吏津くんの所為じゃないのよ。」
浮かない表情をしている宇吏津に、水守は気を遣ったつもりだったが、宇吏津は曖昧に笑うだけだった。
「駄目ですね・・・」
未だに現れないELINEAに対し、宇吏津は溜息混じりに言う。
「仕方がないわ。コンソールから直接停止させましょう。」
「はい。」
宇吏津は返事をすると、備え付けの小型PCを取り出し、ケーブルでサーバーと直接接続をする。間もなく、黒一色だった小型PCのディスプレイに、プロンプトが表示された。
宇吏津はそこから目的のディレクトリを表示する。
【e_pj】
ELINEAプロジェクトを略したディレクトリ名を目にすると、一瞬動作が止まる。プロジェクト開始時に、自分で作成したディレクトリであり、ELINEAを動作させている全てのファイルがここに格納されている。
それを思い出し、手の動きが止まってしまった。
「この中にある、稼働停止用ファイルを動かします。」
宇吏津はそう言うと、ディレクトリ内に移動する。一瞬でも、感傷に浸れたのは良かったと内心で思いながら。
「動作しているプログラム全てを停止させる為に作ったあれね。使う事になるなんて、思わなかったわ。」
「それは、僕も同じです。」
宇吏津は言いながら、ファイル名を入力して実行する。最後の確認が、プロンプト上に表示された。
「良いですか?」
「えぇ、実行して。」
宇吏津は水守の指示を聞くと、【y】を入力してエンターキーを叩いた。
<ファイルに対する操作権限がありません。>
「エラー?・・・」
表示された文字に、宇吏津は暫し思考が停止した。
「ちょっと、どういう事!?」
「僕にも分かりません。このサーバーにアクセス可能な管理者しか権限がない筈なんです。」
水守の声に、宇吏津は我に返って言うが、動揺までは隠せていない。
「つまり、私と宇吏津くんでしょ。」
「そうです。」
宇吏津は慌ててキーボードを叩き始める。
「権限はどうなっているの?」
「今確認しています。」
宇吏津の操作で、実行しようとしたファイルのアクセス権が画面に表示される。
「ちょっと、これって・・・」
「書き換えられています。」
表示されていたアクセス権は、サーバー管理者は存在せず、知らないユーザーのみになったいた。
「これじゃ、参照すら出来ないじゃない。」
「ELINEA・・・」
「え・・・これはELINEAがやったって言うの?」
小さく漏らした宇吏津の言葉に、水守は驚いて疑問を投げる。
そもそもディレクトリに対する権限は水守と宇吏津にしかない。その中で動かされているのがELINEAであり、そのELINEAが自らファイル操作をするなど、考えもしなかったからだ。
「ELINEAは気付いていたんでしょうか?」
「分からないわ。でも、このファイルの権限を書き換えたという事は、そうとしか思えないわね。」
「他にもあるかもしれません、上から強制的に元の状態に変更します。」
「えぇ、お願い。」
言いながら宇吏津はキーボードを叩いていく。ELINEAが何処まで権限を書き換えているか不明なため、強制的にe_pjから配下のディレクトリ、ファイルの権限を全て書き換えるために。
「ELINEAはどうやって書き換えたのかしら。」
「それは分かりません。そもそも、ログの方も改竄は分かっても、方法については未だ不明ですし。」
手を休めずに宇吏津は水守の質問に答える。このプログラムの中で動いている筈のELINEAが、どうしてこんな事をしたのか。どうやって権限の操作を実行したのか。現状では分からないと。
「行きます。」
「お願い。」
<ディレクトリに対する操作権限がありません。>
「駄目です、おそらく既に、ディレクトリ全体が書き換えられている可能性があります。」
「そんな!」
宇吏津は更にキーボードを叩き、ディレクトリ内に移動しようとするが、今度は参照する事すら出来なくなっていた。
「現在進行形で書き換えられているようです。」
「ちょっと、それじゃどうしようもないじゃない!?」
「多分、真っ先に停止ファイルを変更した後、すべての権限を書き換えたんじゃないでしょうか。ここからの操作は、もう出来ないですね。」
「まさか、そこまでするなんて、普通想像しないわよ。」
既にキーボードから手を離している宇吏津は、プロンプトが点滅するだけのディスプレイを見る。そこに映っている水守の表情は驚きのまま硬直していた。
<接続が切断されました。>
やがてディスプレイにはダイアログが浮かび上がり、サーバーとの接続が切断されたと表示される。
「最後の手段しか、無いですね。」
「こんな原始的な方法でしか対処出来ないなんてね。」
脱力して寂しそうに言う宇吏津を見て、水守も顔に悔しさを滲ませて筐体へ移動する。サーバーに接続されている電源に手を掛けると、宇吏津に確認するように顔を向けた。
「ログ、回収はどうせ無理でしょう?」
「時間を掛ければなんとかなるかもしれませんが、ネットワークからの分離だけでは不安ですからね。それが一番良いと思います。」
力なく笑う宇吏津の言葉を聞くと、水守は無停電装置からサーバーの電源を抜いた。
予期せぬ電源断から機器を守るために搭載されている補助電源が起動する。通常であれば補助電源がサーバーをシャットダウンさせるが、その傾向もみられない。
「やはり、シャットダウンシーケンスも受け付けないようにしてるようですね。」
「えぇ・・・」
補助電源の稼働時間は約90秒。
水守も宇吏津も、その90秒を無言のまま、筐体のLEDが消えるまで見続ける。
長くも感じられた時間が経過すると、サーバーは沈黙し、LEDの灯がゆっくりと消えて行った。
「・・・」
「なんと言っていいか、分からないわね。」
「そうですね・・・」
そのまま少しの間、またも沈黙が流れるが、宇吏津が別の小型PCを取りしてネットワークに接続する。
「何をするの?」
その行動を見ていた水守は、疑問に思って口にする。
「以前、ログ収集のために運用サーバーに置いたものを回収しようと思いまして。」
「あぁ、そうね。」
宇吏津はまずアインスサーバーへと接続して、作業を始めた。水守はその操作を暫し眺める。浮かない表情はしているが、淡々と操作する宇吏津を見ると自分のすべき事に向かおうとした。
「それじゃ、私は報告に向かうわね。」
「はい。」
宇吏津が作業しながら返事をするのを見ると、水守は出入り口に向かい、キッティングルームのドアレバーに手を掛ける。
「チーフ!」
扉を開けて出ようとすると、宇吏津が大きな声を出したので、水守は足を止めて振り向いた。
「どうしたのよ。」
「これ、見てください。」
水守はドアを閉め、宇吏津が操作するPCへと近付いて内容を確認する。
宇吏津が見ていたのはログインユーザー情報だったが、画面の中に見覚えのある名前が存在した。
「どういう事?」
「おそらく、こうなる事を予想して予めデータを別サーバーへコピーしていたんじゃないでしょうか・・・」
「なんて事・・・」
二人が見る画面上には、ELINEAの文字が表示され、状態はログイン中となっていた。
「あ・・・」
俺の目の前で、浮光竜が消えていく。
浮光竜はニベルレイスに多く生息する小型の龍だ。人間の身長と同程度の大きさだが、身体が発光していて洞窟内の灯りにもなっている。
単に材料が必要で相手にしているのだが。
クエストしては20体倒せばクリアになる。浮光竜自体は結構数がいるので、発生する洞窟内は通常の場所よりも明るい。そのため、戦闘もやりやすい。
が、そんな事はどうでもいい。
問題は、浮光竜が消えた場所に居る奴だ。
たまたま攻撃を食らって尻餅をついた瞬間に倒されたため、本当に目の前で敵が消えていったんだ。
その倒した奴が、凄い得意げな顔で俺を見下ろしている。
「ふふ、ユアキスはわたくしが居ないとダメですわね。」
うるせぇ。
「たまたまだろうが!」
「まぁ、強がらなくてもよろしくってよ。」
くっそぉ、勝ち誇った顔をしやがって。
「さぁ、次の標的はあれですわ!」
人の話しはまったく聞く気はないのか、アリシアはアヤカが戦っている方へと走っていった。
また面倒なところに向かって行ったな・・・
「田舎娘のくせに、よくも横取りしてくれましたわね。」
「あら、辺境娘には荷が重いかと思いましたの。」
始まったよ・・・
「瀕死の獲物を横から奪い取るなんて、見窄らしい田舎娘のやりそうな事ですわ。」
「わたくしが、倒して差し上げましたのに、辺境では礼儀という文化が無いようですわ。野蛮ですこと。」
「今日こそ刀の錆になりたいようですわね。」
「身体が穴だらけになるのが望みとは思いませんでしたわ。」
さて、無視して俺は次の浮光竜でも相手にするか。辺りを見回して、浮いている浮光竜を見つけると俺はそいつに向かって近寄り、攻撃を始める。
「うを!・・・」
連撃のフィニッシュを決めようとしたら、急に態勢が崩れる。
「ユアキスのくせに、私が見つけた獲物に攻撃するとはいい度胸ですわね。」
振り向くとアヤカが太刀を振った後だった。ってか、後ろから斬りつけやがったのか。
「嘘つけ!」
「そうですわ、先に見つけたのはわたくしですもの。」
・・・
「後から来てまた横取りとは、まるでハイエナですわ。」
「人が見つけたものを我先に取りに行く辺境娘こそ、野盗のようですわ。」
また睨み合いが始まるなか、浮光竜がゆっくりとその場から離れって行った。まるでその場から逃げる様に。
(あいつも付き合ってられないって思ったのかな。だったら面白いんだが。)
そんな事を思って、俺もその場から離れる事にした。
付き合ってられん。
『待ちなさいユアキス!』
「うが・・・」
それぞれに両腕を掴まれたらしく、視界が一瞬揺らぐ。
「何すんだよ?」
『私(わたくし)の獲物ですわよね?』
どうでもいいわ・・・
「大変そうだねぇ、ユアキス。」
離れたところで銃を撃ちながらタッキーが言ってくる。凄い楽しそうな顔で。後で覚えてろ・・・
『さぁ、どっちですの?』
言う事もやる事も同じなんだから、良いコンビじゃないか。まぁ、思っても口には出さないが。俺に火の粉が飛んで来るのは間違いない。
いや、火の粉どころじゃないな。
「知るか!」
俺はそう言うと、腕を振り解いてタッキーの方に走り出す。
ちょうどタッキーの居る辺りに浮光竜が沸いたんだよな。
「げ・・・」
笑みを浮かべていたタッキーが、俺に気付くと顔を引き攣らせ嫌そうな声を出す。その様子からすれば、あいつらも着いて来ているんだろう。そう思って一瞬だけ後ろを確認すると、予想通りアヤカとアリシアが追いかけてきていた。
何故こっちに来る・・・
仕方がない、お前も巻き込んでやる。
俺は浮光竜に攻撃してタッキーの方に押してやる。間もなく追いついて来たアホ共も攻撃に加わった。
「田舎娘には草むしりの方がお似合いですわ。」
「うわぁっ・・・」
アヤカの太刀が浮光竜を狙いつつ、どさくさに紛れてアリシアを攻撃。避けたアリシアの後ろにはタッキーが居て、もろに食らって仰け反る。
・・・
さすがにやりすぎだろ。
「辺境娘こそ、襤褸屋敷の修復がお似合いですわ。」
アリシアの攻撃はあからさまに浮光竜ではなく、アヤカへの踏み込み突きになっている。
っておい・・・
いつの間にかアヤカは、俺とアリシアの直線上に移動してた。それは、アヤカが避けると俺が巻き込まれるじゃねぇか。
「うぐっ・・・」
案の定巻き込まれた俺は、すぐに態勢を立て直して文句を言おうとしたが、アリシアのレイピアが俺に当たった瞬間、何かノイズのようなものが走った。
(なんだこれ・・・)
一瞬、視界がちらついたんだ。
(何だなんだよ、これ・・・)
気付くと、HPまで減っている。
おかしいだろ、プレイヤーの攻撃でHPが減るなんて。実際に減った量は微々たるもので、戦闘には何の影響もないが、プレイヤー攻撃でHPが減るという事実が問題だ。
だがその前に。
「お前らいい加減にしろ!」
『ユアキスは黙っていなさい!』
俺が声を張り上げるも、アホ共は聞く気は無いようだ。
「流石に今回酷いよね・・・」
タッキーすら呆れ顔で俺を見てくる。俺も同意だが、俺を見られてもどうしようもない。他のメンバーは関わりたくないのだろう、離れたところで黙々と浮光竜を狩っている。
仕方がない・・・
「アヤカ、それ以上続けるなら神石取りには付き合わないぞ。」
言った直後、アヤカは近くの浮光竜を攻撃して倒す。
「こんなクエスト、早く終わらせますわよ。」
何という変わり身の早さ。この手の文句はまだ有効なようで良かったよ。
「さすがは辺境娘、俗物的な事ですこと。」
「煽るな!続けるならもう着いてくんな。」
俺がそう言うと、アリシアはレイピアを持っている手から力を抜き、剣先を地面に向けた。怒るでもなく、寂しそうな顔しながら。
「わたくし、少し大人気なかったですわ。」
そう言うアリシアを見るとなんか、言った俺が悪いような気分になってくるな、後味が悪いというか。
いいや、そんな事はない。あいつらが悪いんだ。そう思って振り払うと、残りの浮光竜を倒すことに専念した。
ゲームを終えた後、改めて考えさせられた。
それは、やはりアリシアの告白が起因している。あんな話しをされなければ、今日の出来事だって、そこまで気にならなかったかもしれない。
アリシアはあれ以来、今までと変わらずに行動している。むしろ、悩んでいる俺が馬鹿みたいに思えるほどだ。
だが、思い起こせばおかしな事は今までにいろいろあった。
突然、何もない空間から現れたアリシア。
ゲームなんだから、イベントであっても不思議ではない。ただ、他にそんな現象は見たことがない。
名前の色がプレイヤーと同じという事に関しては、CAZH社の方でなんとでも出来そうだから気にしてもしょうがない気がする。
敵がアリシアを認識しない事に関しても、そういうキャラなんだと思えば説明はつく。
攻撃が当たらないのも同様だ。
逆に今日のように、プレイヤーにダメージが出るのも、その流れかもしれない。
やはり、一番おかしいのは病気や出血に関してだろう。そのキャラのためだけに、そんな演出をわざわざ作るだろうか。いくら調べたところで、アリシアの様なキャラの情報は一切出てこない。
だったら、アリシアが言っている事は本当なんじゃないか?
そう思わされる。
もしそうなら、何で俺なんだろうな・・・
毎晩の様にゲームを終えた後に繰り返される疑問。
なんで、こんな事を考えなきゃならないんだ・・・
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