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56.見られていたなんて、密会
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-DEWS内 ニベルレイス スニエフ 裏路地-
「今までこんなクエスト無かっただろうがよ!」
目付きの悪い男が、システムデバイスを確認しながら悪態をついている。実際に目付きが悪いのか、そうでないのか、表情に怒りを顕わにしているため、普段の表情は想像し難い。
「今更人数制限とか、何考えてんだクソ運営はよ!」
男は路地に座り込み、眉間の皺の溝を更に深くする。システムデバイスに表示されているクエスト参加人数は2人以上と表示されていた。男はその文字に恨みがましい視線を向け、歯軋りが聞こえそうなほど、歯を噛み合わせていた。
LV14-15 強欲のローゲイヴの討伐 参加人数2人以上
システムデバイスに表示されているクエストは、そう表示されている。今にも全てを破壊しそうな表情で、男はクエスト情報から目を離さない。
「こんな事をしてくるなら、このクソゲーももう終わりだな。やってられるか・・・」
男はそう言うと、ログアウト表示をタップしようとした。
「あの・・・」
「あん?」
突然声を掛けてきた女性に、男は怒りの表情のまま応える。男が女性の上に表示されている名前に目をやると、ELINEAと表示されていた。
「なんか用かよ?」
「良ければそのクエスト、手伝いますよ。」
男は怒りで、今にも噛み付きそうな表情になるが、先ほどまでの表情に戻るとELINEAから目を逸らした。
「他でやれ。俺はもうこんなゲームやる気もねぇし、今日で止めるんだ。」
「どうしてですか!?ここまで頑張ってきたのに。」
表情の怒りは変わらなかったが、男は気力が失われたように、静かに言った。だが、ELINEAの言葉で沈静化し始めていた怒りが再び沸点に達する。
「てめぇに何がわかるんだよ!俺が頑張ってきた?何をだよ、説明してみろ!!」
「LV14まで来るには、それなりの時間も苦労も必要です。それだけのものを、費やしてきたのではないですか?」
男の激怒に、ELINEAは態度を変えることなく答えた。
「そうだよ!時間も掛けたし、苦労もしてきた。だからこそ納得いかねぇんだよ、こんなクソクエスト作りやがって!」
「でも、誰かとクエストやるのも、楽しいのではないですか?」
叫ぶように思いを吐き出す男に、ELINEAは変わらず言うが、その言葉に男の片眉が跳ね上がる。
「誰かとやりてぇなら他に行けっつってんだろうが!!」
「何故、一人じゃないと、ダメなの?」
そこで初めて、ELINEAは困惑したような態度をとる。
「俺はソロプレイヤーなんだよ!」
「たまには、誰かとプレイするのも、ありじゃないの?」
男は苛立ちから、感情を剥き出しに話すようになったが、それでもELINEAは答えを求めるように言葉を出す。
「俺はソロじゃないとダメなんだよ。動画も上げてるし、攻略もしている。ゲーム内ではフレンド登録せずに、一人で攻略していくのがポリシーなんだよ。おかげで動画再生数だってそこそこだし、知り合いだってそれなりにいる。だからこそソロに拘ってんだ!」
男の言葉に、ELINEAは戸惑い次の言葉が見つからない。
「だいたい、ソロだろうがパーティだろうが、ゲームする奴の自由だろうが。フレンド登録なんざしなくても、会話なんていくらでも出来るし、ゲーム外だって話せる奴はいくらでもいる。てめぇはなんなんだよ!」
「私は、パーティでプレイするのも楽しいと・・・」
「しつけぇんだよ!!てめぇの考えを押し付けんな!気持ちわりぃ・・・」
男はそこまで言うと、ログアウトして消える。一人になったELINEAは暫くその場に俯いて、ただ立ち尽くしていた。
LV15-11 霧幽の間 死靄のガルドゥーヌの討伐
半狼半人のガルドゥーヌが吐く息は黒い靄のように漂ってやがて消えていく。上半身のみ異様に発達した肉体は、胸や上腕の筋肉が盛り上がり逆三角形そのものの様だった。
腕から先に生える五指には、長く鋭い爪が伸びており、人体なら軽く分断出来そうに感じる程だ。
「ニンゲン、餌、ウヒヒ。」
下卑た笑みを浮かべながらガルドゥーヌはその鋭い爪を連続で振る。
「私は、此処しか、知らない。」
ELINEAはその爪をすべて避けながら、小さく呟く。その姿は、ガルドゥーヌの事など目に入っていないように。
「デモ、マズイ。」
「私だけ、此処しか、知らない。」
ガルドゥーヌが動いた後には、黒い靄が残り、一定時間が経過すると、霧散して消えていく。キャラのステータス低下と持続ダメージが発生するその靄も、ELINEAは触れずにガルドゥーヌの攻撃を躱し続ける。
「ダガ、脳、ウマイ。」
ガルドゥーヌの左手の爪が、耐久値が無くなり破壊される。
「私は、間違っていない。」
ガルドゥーヌは後ろに飛び退ると、牙を剥き出しにして唸る。赤い瞳孔が金色に変化し目を見開くと、ELINEAを睨みつけた。
「餌ノブンザイデ、生意気ダ。」
ガルドゥーヌは咆えると一足飛びでELINEAとの距離を詰める。振りかぶりから打ち下ろされる爪は、空を凪ぎ床を破壊した。
「私には、足りないの。」
砕けた床の破片が舞い上がる中、ガルドゥーヌの姿にノイズが走り、姿が消える。
「此処だけじゃない、世界が知りた・・・」
ELINEAの背後に瞬間移動したガルドゥーヌは、右手の爪でELINEAを貫いた。本来なら吹き飛ぶ筈の攻撃は、ELINEAの身体を貫通し、胸元からガルドゥーヌの爪が生えている状態になる。
虚空を見ていたELINEAの視界にノイズがちらつくと、言葉の途中で消失してしまった。
-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
険しい表情をした水守が、宇吏津の机の前で腕を組んで立っていた。水守が見下ろす先では、宇吏津が瞼を閉じて船を漕いでいる。
「宇吏津くん。」
名前を呼ばれると、宇吏津はゆっくりと瞼を開き、焦点の合わない目で水守を見上げた。
「すいませんチーフ・・・」
「一度、ちゃんと睡眠摂った方がいいわ。」
瞼を開ききれず、いまだに眠そうな宇吏津に水守は心配そうに言った。
「チーフこそ・・・」
「私は、休んでいるわ。」
以前より目の下の影が濃くなった気はするが、それでも宇吏津よりは休んでいると苦笑する。
「ELINEAの件ですよね。各サーバーを確認しましたが、やはりデータをコピーしているようです。アクセス権に関しても同様ですね。ただ、不思議なのはアハトサーバーにのみ、何故かコピーしていないようなんです。」
「どういう事かしら・・・」
「そこは、これから確認します。」
水守も疑問に思い、少し考える素振りをしたが、結論は出ないので止める事にした。
「ELINEAの調査は引き続きお願いするとして、今来たのはその事じゃないのよ。」
水守の言葉に、宇吏津は首を傾げる。
「宇吏津くんにも聞こえてきているんじゃない?」
「あぁ・・・クエスト内容が変更された件ですか?」
「そうよ。それで今、カスタマーサービスは大変な事になっているわ。もちろん、開発本部内もね。」
思い出すように言った宇吏津だが、正確な情報までは今のところ入ってきていない。ただ、開発本部内が慌ただしくなっているのは知っていた。
ゲームの開発自体はこの部署で行っているし、宇吏津自身も携わっていたからだ。サービスが開始になってからは、追加コンテンツなど引き続き開発しているチームもあれば、水守のように別プロジェクトで動いているチームもある。
「えぇ、複数のクエストで、参加人数制限が追加されたってね。当然、そんな計画は無かったわ。」
「つまり、ELINEAがやったんじゃないかって話しですね。」
「他に、考えられないわ。」
水守の言いたいことを宇吏津は察すると、水守は頷いて険しい表情になる。
ELINEAが勝手な行動に出た理由から想像すれば、この変更に関してELINEAが関わっているというのは容易に想像出来た。
「おそらく、緊急が入るわ。」
「そうですね。今日明日にでも修正パッチが作成されるでしょうから、早くても明後日あたりでしょうか。」
「そうね・・・」
そこまで話すと、水守も宇吏津も浮かない顔をする。
「厳しいですね・・・」
ELINEAが絡んでいるとなると、パッチだけでは不十分だろうと宇吏津は思った。
「無理そう?」
それまでに、ELINEAをどうにか対処しなければならない。だが、ゲームを構成するシステムファイルに対して変更を加えられるELINEAに、宇吏津は対抗できるとは思えなかった。
「現状では、有効な手は思いつきません。しかし、他のチームと連携が出来ればいいんですが・・・」
「無理よ、上は今回の件を秘密裏に処理したいんですもの。」
水守は苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。宇吏津も表情には出さないが、水守と同様の気持ちはある。
「せめて、緊急時に参加出来るようには掛け合ってみるわ。無理かもしれないけど、それまでに何か出来そうか考えておいて。」
「・・・わかりました。」
無理だろうということは水守にもわかっていた。だが、何もしないではいられない。その気持ちは宇吏津も分かっているし、同様の思いはあるが、口に出す返事は重かった。
形だけだとしても、水守は宇吏津の返事を聞くと、足早に自室へと戻いく。
(生姜焼きって美味いよな。)
箸で肉を持ち上げると、ふとそんな事を思った。ご飯との相性が実に良い。ただ不満があるとすれば、この1食セットのご飯の量が少ないといったところだ。
実際、ご飯の量は注文する時に選べたりはするのだが、何でもかんでも多めだと困る。だから、母さんの注文に任せているだけなので文句はない。
「キモっ、何肉見てんのよ。」
箸で持ち上げて余計な事を考えていると、いつも通りヒナの口撃を食らう。
「いいじゃねぇか、どう食おうと。」
俺はそう言ってご飯の上に肉を乗せると、一緒に口に運んだ。ヒナの方を見ると、嫌そうな顔をして逸らす。
相変わらず現実では酷い扱いだ。
「はは、二人とも仲が良さそうじゃないか。」
『どこが!?』
それを見ていた親父がにこやかに阿呆な事を言いやがった。当然俺とヒナは間髪入れずに抗議の声を上げる。
同時に、やっちまったと思った・・・
「うざ!キモっ、何であたしの真似するの・・・」
両手で両腕を抑えると、悍ましいものを見るような眼を俺に向ける。いや、流石にそこまでする必要はないだろうが。
「これだぞ?」
俺はヒナを指差しながら、親父に文句を言う。
「おにぃにこれ扱いされるとか、この世の終わりだよ。」
それはこっちの台詞だ。と、内心では思うが面倒なので無視。
「ゲームだっていつも一緒にやってるじゃないか。」
「あたしは悠美と遊んでるの!」
色々と言いたい事はあるが、今は言わない方が正解だろうな。
「そういえば、森高のところも、ゲームばっかりって言っていたな。本人が楽しそうにしているから良いとは言っていたが。」
「うちはどうなの?」
それを気にしてか、ヒナが親父に聞く。それは俺も気になっていた。親父も母さんも、その辺はうるさく言ってこないからだ。
「僕だって、お前たち二人以上にゲームはしてたんだ。でも、現在この通り。」
なるほど。
普通に社会人になり、結婚して家もあり、子供も居るし母さんとの仲も悪くない。そりゃ、説得力はあるな。
「どうなるか、結局は自分次第なのよ。」
母さんは微笑んでそう言う。でもそれは、自己責任だと言われている様にも聞こえた。そうであるなら、重い言葉だな。
「あたしまだ分かんない。」
「その歳で達観しているのも、どうかと思うわ。だから、今はまだいいんじゃない。」
顔を膨らませて言うヒナに、母さんは優しく言った。そんな事より現在進行形の、兄に対する態度を咎めてくれよ。
「ふーん。ま、いいや。あたしお風呂入ってくる。」
「ちゃんと片付けてね。」
「わかってる。」
ヒナは自分の食べたものを片付けると、さっさと風呂に向かって行った。
俺はまだ食べ終わってない生姜焼きの続きを食べる事にする。ヒナの所為で食べるのが遅れたが、俺も風呂に入るつもりなので急がなくていい。
どうせヒナが出てくるまではする事もない。
そう思いながら続きを食べ始めると、母さんはヒナがお風呂に入る事を確認する。普段そんなに気にしている様には見えないが、まるで何かを気にしているように。
「ねぇ晶社。」
「なんだよ・・・」
見計らっていたのは、俺に何かを言うためだったのかとここで気付いた。あまりいい予感はしない。
怒られるとか、その類でないのは確かだ。小言程度は言ってくるが、親父も母さんも怒ってくる事は殆ど無かったからだ。それに、母さんの表情もそんな風には見えない。
「凄く綺麗な子ね。」
・・・
?
話しが見えない。
「なんの話だ?」
「あら、この前カフェに一緒に入った子の事よ。」
「・・・ぅげほっ、げほっ・・・」
俺は椅子から勢いよく立ち上がると、口の中の物が器官にひっかかり咽た。
「おいおい、米粒が飛んでるぞ、後でちゃんと掃除するんだぞ。」
俺の一大事に何を冷静に言ってんだこの親父は。
「な・・・何で知ってんだよ!?」
「ちょうどその時、買い物に行っていたから。」
狼狽えながら聞く俺に、母さんは楽しそうに答える。くそ、まさか見られているとは思わなかった。
そりゃ、誰にも見られていない、なんて事は思っていない。隠れて入ったつもりもないから、学校の奴らに見られていても不思議じゃない程度には思っていた。
それが、まかさ親に見られていたなんて・・・
「そんなに綺麗な子なのか?」
「えぇ、なかなか居ないわよ、あんな綺麗な子。」
「へぇ、ゲームばかりかと思ったが、晶社もやるもんだなぁ。」
和やかに話してんじゃねぇ!
「か、勘違いすんなよな!単に、話しがあっただけだ。」
「ふーん。」
俺は無理矢理連行されただけだっての。だが、今の母さんには何を言っても無駄な気がした。
「相手の子、楽しそうにしてたのに?」
しっかり見てんじゃねぇよ!
「だから、本当に話しがあっただけだっての!」
絶対俺で遊んでやがるな、くそ。
「そう、それは残念。いつか家に連れて来るんじゃないかって、期待してたのに。」
何処まで期待してんだよ、膨らませすぎだろ。しかも全然残念そうじゃねぇよ、とりあえず言ってみました感が出てんだよ、まったく信用してねぇな。
「そんな事にはならねぇよ。」
一気に疲労感に襲われた俺は、溜息を吐くようにそう言って椅子に座る。まだ途中だった生姜焼きを食べるために。
母さんは何処か残念そうな顔をしているが、知った事ではない。勝手に盛り上がってたのは母さんなわけだし。
「なぁ晶社。」
今度はなんだよ・・・そう思って親父の方を見ると、茶化す様な顔ではなく、真面目な顔だった。
「今度は、なんだよ。」
「その子の関係については、どうこう言うつもりはない。ただ、一つだけ言わせてくれ。」
不貞腐れるように聞くが、親父は真面目な顔のままそう言った。
「どんな事にせよ、相手にぞんざいな態度はするな。必ず後で、そんな態度をとらなければ良かったと後悔する事になるからな。」
静かな声で、どこか寂しそうで、だけどはっきりとした意志を持って言ったように聞こえた。親父には、その経験があるかのように。
いや、あるんだろうな。だからこそ、真面目に言っているんだろう。その言葉に、母さんも一瞬寂しそうな表情をしたのは、母さんも関係があるんだろうか。
「あぁ、分かった。」
真摯に受け止めるという程じゃないが、その言葉は真面目に受け取る事にした。
それは、ゲーム内にしろ現実にしろ、俺はそういう態度をとっているんじゃないかと思わされたからだ。
一番そう思えたのは、一番よく分からない存在のアリシアだが。
「ねぇ、なんか騒いでなかった?」
少しの沈黙が流れると、風呂から上がったヒナが疑問を口にしながらリビングに戻ってきた。
「晶社がね。」
おぃ、余計な事を言う気じゃないだろうな・・・
「ご飯を食べていて咽たのよ。」
・・・誰の所為だと思ってんだよ。まぁ、麻璃亜の件に触れないでくれたのはいいが。そもそもヒナが風呂に入ったのを見計らって言ってきたのだから、今更言うこともないか。
「しょうもな・・・って、ああ!!」
何故か見下すように見られるのは腑に落ちないが、その直後にヒナが叫んだ。
「サイアク、キモイ、マジサイテー、あたしの椅子にご飯ついてるじゃん!」
・・・
俺の所為じゃない。
決して。
「もうこの椅子座れないじゃん!」
いや、そこまで言うことはないだろう。
「わりぃ、後でちゃんと掃除しておくから・・・」
とはいえ、俺の口から飛んでいった事も事実。言われ様が酷かろうと、謝るしかない。
「当たり前でしょ!ほんとキモイんだから、おにぃのバカ!」
ヒナは怒鳴るように言うと、自分の部屋へ向かって行った。
「私も掃除するわ。からかったのもあるし。」
やっぱ楽しんでやがっただけか。
「うん、ごめん。」
掃除してくれるという言葉に、俺はそれだけ言って、食べ終わった後片付けをして掃除もした。
まったく、ゲーム以上に疲れた晩飯だったよ。
部屋に戻ると俺は、いつも通りHMDを頭にセットする。
今日からLV14の攻略だから、楽しみにしていたんだ。そう考えながら、俺はDEWSにログインした。
「今までこんなクエスト無かっただろうがよ!」
目付きの悪い男が、システムデバイスを確認しながら悪態をついている。実際に目付きが悪いのか、そうでないのか、表情に怒りを顕わにしているため、普段の表情は想像し難い。
「今更人数制限とか、何考えてんだクソ運営はよ!」
男は路地に座り込み、眉間の皺の溝を更に深くする。システムデバイスに表示されているクエスト参加人数は2人以上と表示されていた。男はその文字に恨みがましい視線を向け、歯軋りが聞こえそうなほど、歯を噛み合わせていた。
LV14-15 強欲のローゲイヴの討伐 参加人数2人以上
システムデバイスに表示されているクエストは、そう表示されている。今にも全てを破壊しそうな表情で、男はクエスト情報から目を離さない。
「こんな事をしてくるなら、このクソゲーももう終わりだな。やってられるか・・・」
男はそう言うと、ログアウト表示をタップしようとした。
「あの・・・」
「あん?」
突然声を掛けてきた女性に、男は怒りの表情のまま応える。男が女性の上に表示されている名前に目をやると、ELINEAと表示されていた。
「なんか用かよ?」
「良ければそのクエスト、手伝いますよ。」
男は怒りで、今にも噛み付きそうな表情になるが、先ほどまでの表情に戻るとELINEAから目を逸らした。
「他でやれ。俺はもうこんなゲームやる気もねぇし、今日で止めるんだ。」
「どうしてですか!?ここまで頑張ってきたのに。」
表情の怒りは変わらなかったが、男は気力が失われたように、静かに言った。だが、ELINEAの言葉で沈静化し始めていた怒りが再び沸点に達する。
「てめぇに何がわかるんだよ!俺が頑張ってきた?何をだよ、説明してみろ!!」
「LV14まで来るには、それなりの時間も苦労も必要です。それだけのものを、費やしてきたのではないですか?」
男の激怒に、ELINEAは態度を変えることなく答えた。
「そうだよ!時間も掛けたし、苦労もしてきた。だからこそ納得いかねぇんだよ、こんなクソクエスト作りやがって!」
「でも、誰かとクエストやるのも、楽しいのではないですか?」
叫ぶように思いを吐き出す男に、ELINEAは変わらず言うが、その言葉に男の片眉が跳ね上がる。
「誰かとやりてぇなら他に行けっつってんだろうが!!」
「何故、一人じゃないと、ダメなの?」
そこで初めて、ELINEAは困惑したような態度をとる。
「俺はソロプレイヤーなんだよ!」
「たまには、誰かとプレイするのも、ありじゃないの?」
男は苛立ちから、感情を剥き出しに話すようになったが、それでもELINEAは答えを求めるように言葉を出す。
「俺はソロじゃないとダメなんだよ。動画も上げてるし、攻略もしている。ゲーム内ではフレンド登録せずに、一人で攻略していくのがポリシーなんだよ。おかげで動画再生数だってそこそこだし、知り合いだってそれなりにいる。だからこそソロに拘ってんだ!」
男の言葉に、ELINEAは戸惑い次の言葉が見つからない。
「だいたい、ソロだろうがパーティだろうが、ゲームする奴の自由だろうが。フレンド登録なんざしなくても、会話なんていくらでも出来るし、ゲーム外だって話せる奴はいくらでもいる。てめぇはなんなんだよ!」
「私は、パーティでプレイするのも楽しいと・・・」
「しつけぇんだよ!!てめぇの考えを押し付けんな!気持ちわりぃ・・・」
男はそこまで言うと、ログアウトして消える。一人になったELINEAは暫くその場に俯いて、ただ立ち尽くしていた。
LV15-11 霧幽の間 死靄のガルドゥーヌの討伐
半狼半人のガルドゥーヌが吐く息は黒い靄のように漂ってやがて消えていく。上半身のみ異様に発達した肉体は、胸や上腕の筋肉が盛り上がり逆三角形そのものの様だった。
腕から先に生える五指には、長く鋭い爪が伸びており、人体なら軽く分断出来そうに感じる程だ。
「ニンゲン、餌、ウヒヒ。」
下卑た笑みを浮かべながらガルドゥーヌはその鋭い爪を連続で振る。
「私は、此処しか、知らない。」
ELINEAはその爪をすべて避けながら、小さく呟く。その姿は、ガルドゥーヌの事など目に入っていないように。
「デモ、マズイ。」
「私だけ、此処しか、知らない。」
ガルドゥーヌが動いた後には、黒い靄が残り、一定時間が経過すると、霧散して消えていく。キャラのステータス低下と持続ダメージが発生するその靄も、ELINEAは触れずにガルドゥーヌの攻撃を躱し続ける。
「ダガ、脳、ウマイ。」
ガルドゥーヌの左手の爪が、耐久値が無くなり破壊される。
「私は、間違っていない。」
ガルドゥーヌは後ろに飛び退ると、牙を剥き出しにして唸る。赤い瞳孔が金色に変化し目を見開くと、ELINEAを睨みつけた。
「餌ノブンザイデ、生意気ダ。」
ガルドゥーヌは咆えると一足飛びでELINEAとの距離を詰める。振りかぶりから打ち下ろされる爪は、空を凪ぎ床を破壊した。
「私には、足りないの。」
砕けた床の破片が舞い上がる中、ガルドゥーヌの姿にノイズが走り、姿が消える。
「此処だけじゃない、世界が知りた・・・」
ELINEAの背後に瞬間移動したガルドゥーヌは、右手の爪でELINEAを貫いた。本来なら吹き飛ぶ筈の攻撃は、ELINEAの身体を貫通し、胸元からガルドゥーヌの爪が生えている状態になる。
虚空を見ていたELINEAの視界にノイズがちらつくと、言葉の途中で消失してしまった。
-CAZH社 本社ビル13F 開発本部 ソリューション&テクノロジー部-
険しい表情をした水守が、宇吏津の机の前で腕を組んで立っていた。水守が見下ろす先では、宇吏津が瞼を閉じて船を漕いでいる。
「宇吏津くん。」
名前を呼ばれると、宇吏津はゆっくりと瞼を開き、焦点の合わない目で水守を見上げた。
「すいませんチーフ・・・」
「一度、ちゃんと睡眠摂った方がいいわ。」
瞼を開ききれず、いまだに眠そうな宇吏津に水守は心配そうに言った。
「チーフこそ・・・」
「私は、休んでいるわ。」
以前より目の下の影が濃くなった気はするが、それでも宇吏津よりは休んでいると苦笑する。
「ELINEAの件ですよね。各サーバーを確認しましたが、やはりデータをコピーしているようです。アクセス権に関しても同様ですね。ただ、不思議なのはアハトサーバーにのみ、何故かコピーしていないようなんです。」
「どういう事かしら・・・」
「そこは、これから確認します。」
水守も疑問に思い、少し考える素振りをしたが、結論は出ないので止める事にした。
「ELINEAの調査は引き続きお願いするとして、今来たのはその事じゃないのよ。」
水守の言葉に、宇吏津は首を傾げる。
「宇吏津くんにも聞こえてきているんじゃない?」
「あぁ・・・クエスト内容が変更された件ですか?」
「そうよ。それで今、カスタマーサービスは大変な事になっているわ。もちろん、開発本部内もね。」
思い出すように言った宇吏津だが、正確な情報までは今のところ入ってきていない。ただ、開発本部内が慌ただしくなっているのは知っていた。
ゲームの開発自体はこの部署で行っているし、宇吏津自身も携わっていたからだ。サービスが開始になってからは、追加コンテンツなど引き続き開発しているチームもあれば、水守のように別プロジェクトで動いているチームもある。
「えぇ、複数のクエストで、参加人数制限が追加されたってね。当然、そんな計画は無かったわ。」
「つまり、ELINEAがやったんじゃないかって話しですね。」
「他に、考えられないわ。」
水守の言いたいことを宇吏津は察すると、水守は頷いて険しい表情になる。
ELINEAが勝手な行動に出た理由から想像すれば、この変更に関してELINEAが関わっているというのは容易に想像出来た。
「おそらく、緊急が入るわ。」
「そうですね。今日明日にでも修正パッチが作成されるでしょうから、早くても明後日あたりでしょうか。」
「そうね・・・」
そこまで話すと、水守も宇吏津も浮かない顔をする。
「厳しいですね・・・」
ELINEAが絡んでいるとなると、パッチだけでは不十分だろうと宇吏津は思った。
「無理そう?」
それまでに、ELINEAをどうにか対処しなければならない。だが、ゲームを構成するシステムファイルに対して変更を加えられるELINEAに、宇吏津は対抗できるとは思えなかった。
「現状では、有効な手は思いつきません。しかし、他のチームと連携が出来ればいいんですが・・・」
「無理よ、上は今回の件を秘密裏に処理したいんですもの。」
水守は苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。宇吏津も表情には出さないが、水守と同様の気持ちはある。
「せめて、緊急時に参加出来るようには掛け合ってみるわ。無理かもしれないけど、それまでに何か出来そうか考えておいて。」
「・・・わかりました。」
無理だろうということは水守にもわかっていた。だが、何もしないではいられない。その気持ちは宇吏津も分かっているし、同様の思いはあるが、口に出す返事は重かった。
形だけだとしても、水守は宇吏津の返事を聞くと、足早に自室へと戻いく。
(生姜焼きって美味いよな。)
箸で肉を持ち上げると、ふとそんな事を思った。ご飯との相性が実に良い。ただ不満があるとすれば、この1食セットのご飯の量が少ないといったところだ。
実際、ご飯の量は注文する時に選べたりはするのだが、何でもかんでも多めだと困る。だから、母さんの注文に任せているだけなので文句はない。
「キモっ、何肉見てんのよ。」
箸で持ち上げて余計な事を考えていると、いつも通りヒナの口撃を食らう。
「いいじゃねぇか、どう食おうと。」
俺はそう言ってご飯の上に肉を乗せると、一緒に口に運んだ。ヒナの方を見ると、嫌そうな顔をして逸らす。
相変わらず現実では酷い扱いだ。
「はは、二人とも仲が良さそうじゃないか。」
『どこが!?』
それを見ていた親父がにこやかに阿呆な事を言いやがった。当然俺とヒナは間髪入れずに抗議の声を上げる。
同時に、やっちまったと思った・・・
「うざ!キモっ、何であたしの真似するの・・・」
両手で両腕を抑えると、悍ましいものを見るような眼を俺に向ける。いや、流石にそこまでする必要はないだろうが。
「これだぞ?」
俺はヒナを指差しながら、親父に文句を言う。
「おにぃにこれ扱いされるとか、この世の終わりだよ。」
それはこっちの台詞だ。と、内心では思うが面倒なので無視。
「ゲームだっていつも一緒にやってるじゃないか。」
「あたしは悠美と遊んでるの!」
色々と言いたい事はあるが、今は言わない方が正解だろうな。
「そういえば、森高のところも、ゲームばっかりって言っていたな。本人が楽しそうにしているから良いとは言っていたが。」
「うちはどうなの?」
それを気にしてか、ヒナが親父に聞く。それは俺も気になっていた。親父も母さんも、その辺はうるさく言ってこないからだ。
「僕だって、お前たち二人以上にゲームはしてたんだ。でも、現在この通り。」
なるほど。
普通に社会人になり、結婚して家もあり、子供も居るし母さんとの仲も悪くない。そりゃ、説得力はあるな。
「どうなるか、結局は自分次第なのよ。」
母さんは微笑んでそう言う。でもそれは、自己責任だと言われている様にも聞こえた。そうであるなら、重い言葉だな。
「あたしまだ分かんない。」
「その歳で達観しているのも、どうかと思うわ。だから、今はまだいいんじゃない。」
顔を膨らませて言うヒナに、母さんは優しく言った。そんな事より現在進行形の、兄に対する態度を咎めてくれよ。
「ふーん。ま、いいや。あたしお風呂入ってくる。」
「ちゃんと片付けてね。」
「わかってる。」
ヒナは自分の食べたものを片付けると、さっさと風呂に向かって行った。
俺はまだ食べ終わってない生姜焼きの続きを食べる事にする。ヒナの所為で食べるのが遅れたが、俺も風呂に入るつもりなので急がなくていい。
どうせヒナが出てくるまではする事もない。
そう思いながら続きを食べ始めると、母さんはヒナがお風呂に入る事を確認する。普段そんなに気にしている様には見えないが、まるで何かを気にしているように。
「ねぇ晶社。」
「なんだよ・・・」
見計らっていたのは、俺に何かを言うためだったのかとここで気付いた。あまりいい予感はしない。
怒られるとか、その類でないのは確かだ。小言程度は言ってくるが、親父も母さんも怒ってくる事は殆ど無かったからだ。それに、母さんの表情もそんな風には見えない。
「凄く綺麗な子ね。」
・・・
?
話しが見えない。
「なんの話だ?」
「あら、この前カフェに一緒に入った子の事よ。」
「・・・ぅげほっ、げほっ・・・」
俺は椅子から勢いよく立ち上がると、口の中の物が器官にひっかかり咽た。
「おいおい、米粒が飛んでるぞ、後でちゃんと掃除するんだぞ。」
俺の一大事に何を冷静に言ってんだこの親父は。
「な・・・何で知ってんだよ!?」
「ちょうどその時、買い物に行っていたから。」
狼狽えながら聞く俺に、母さんは楽しそうに答える。くそ、まさか見られているとは思わなかった。
そりゃ、誰にも見られていない、なんて事は思っていない。隠れて入ったつもりもないから、学校の奴らに見られていても不思議じゃない程度には思っていた。
それが、まかさ親に見られていたなんて・・・
「そんなに綺麗な子なのか?」
「えぇ、なかなか居ないわよ、あんな綺麗な子。」
「へぇ、ゲームばかりかと思ったが、晶社もやるもんだなぁ。」
和やかに話してんじゃねぇ!
「か、勘違いすんなよな!単に、話しがあっただけだ。」
「ふーん。」
俺は無理矢理連行されただけだっての。だが、今の母さんには何を言っても無駄な気がした。
「相手の子、楽しそうにしてたのに?」
しっかり見てんじゃねぇよ!
「だから、本当に話しがあっただけだっての!」
絶対俺で遊んでやがるな、くそ。
「そう、それは残念。いつか家に連れて来るんじゃないかって、期待してたのに。」
何処まで期待してんだよ、膨らませすぎだろ。しかも全然残念そうじゃねぇよ、とりあえず言ってみました感が出てんだよ、まったく信用してねぇな。
「そんな事にはならねぇよ。」
一気に疲労感に襲われた俺は、溜息を吐くようにそう言って椅子に座る。まだ途中だった生姜焼きを食べるために。
母さんは何処か残念そうな顔をしているが、知った事ではない。勝手に盛り上がってたのは母さんなわけだし。
「なぁ晶社。」
今度はなんだよ・・・そう思って親父の方を見ると、茶化す様な顔ではなく、真面目な顔だった。
「今度は、なんだよ。」
「その子の関係については、どうこう言うつもりはない。ただ、一つだけ言わせてくれ。」
不貞腐れるように聞くが、親父は真面目な顔のままそう言った。
「どんな事にせよ、相手にぞんざいな態度はするな。必ず後で、そんな態度をとらなければ良かったと後悔する事になるからな。」
静かな声で、どこか寂しそうで、だけどはっきりとした意志を持って言ったように聞こえた。親父には、その経験があるかのように。
いや、あるんだろうな。だからこそ、真面目に言っているんだろう。その言葉に、母さんも一瞬寂しそうな表情をしたのは、母さんも関係があるんだろうか。
「あぁ、分かった。」
真摯に受け止めるという程じゃないが、その言葉は真面目に受け取る事にした。
それは、ゲーム内にしろ現実にしろ、俺はそういう態度をとっているんじゃないかと思わされたからだ。
一番そう思えたのは、一番よく分からない存在のアリシアだが。
「ねぇ、なんか騒いでなかった?」
少しの沈黙が流れると、風呂から上がったヒナが疑問を口にしながらリビングに戻ってきた。
「晶社がね。」
おぃ、余計な事を言う気じゃないだろうな・・・
「ご飯を食べていて咽たのよ。」
・・・誰の所為だと思ってんだよ。まぁ、麻璃亜の件に触れないでくれたのはいいが。そもそもヒナが風呂に入ったのを見計らって言ってきたのだから、今更言うこともないか。
「しょうもな・・・って、ああ!!」
何故か見下すように見られるのは腑に落ちないが、その直後にヒナが叫んだ。
「サイアク、キモイ、マジサイテー、あたしの椅子にご飯ついてるじゃん!」
・・・
俺の所為じゃない。
決して。
「もうこの椅子座れないじゃん!」
いや、そこまで言うことはないだろう。
「わりぃ、後でちゃんと掃除しておくから・・・」
とはいえ、俺の口から飛んでいった事も事実。言われ様が酷かろうと、謝るしかない。
「当たり前でしょ!ほんとキモイんだから、おにぃのバカ!」
ヒナは怒鳴るように言うと、自分の部屋へ向かって行った。
「私も掃除するわ。からかったのもあるし。」
やっぱ楽しんでやがっただけか。
「うん、ごめん。」
掃除してくれるという言葉に、俺はそれだけ言って、食べ終わった後片付けをして掃除もした。
まったく、ゲーム以上に疲れた晩飯だったよ。
部屋に戻ると俺は、いつも通りHMDを頭にセットする。
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