追放された成長スキル持ちと三姉妹冒険者~彼は希望を取り戻し、勇者は没落す~

シトラス=ライス

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今宵は3人まとめて……これからもずっと、ずっと一緒に……

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「するって……えっと……」

「この状況でわかりません? 先生?」

 キュウは妙に妖艶な声音で、俺の胸の辺りを優しく撫で回した。

「に、二週間も、独りで処理してたんだから……なぁ、トク兄……頼むよぉ……!」

 コンは俺の腕へギュッと抱きついてきた。

「トーさん……早く! トーさぁーん……! がっしーん!」

 背の小さなシンは大きな胸を、俺へぐりぐりと押し付けてくる。

 なんとなく何を求められているのかはわかる。
だけどのこの状況がさっぱり意味不明である!

「お、お前ら、もしかして……お互いに知ってたのか? その俺との……」

「勿論! だって私たち、仲良し姉妹ですから! ねぇー?」

「お、おう! トク兄が治癒院にいる間に、みんなで話してな」

「トーさんのエッチ。でも、そこが良い!」

「でもなんだその……お前ら、こんな状況で良いのか……?」

 3人はキョトンとした視線を向けてくる。
どうやら意味がわかっていないらしい。

「いや、女の子ってあれだろ、自分だけをちゃんと見てもらいたいっていうか……」

「それ、私たち全員に手をつけた先生がいうことですか?」

「ぐっ……!」

「ふふ、冗談ですよ。私たち、そんなこと全然気にしてません。だって、私たち元貴族ですよ?」

「……?」

「ちなみに私は第一夫人の娘です!」

 キュウは妖艶に笑った。

「あたしは第二夫人の娘……はぁ、はぁ……」

 コンは切なげにそう答え、

「シン、第三ママの娘ー!」

 シンは元気よく、大きな胸を揺らしながら飛び跳ねる。

「貴族は血を絶やさないためにたくさんの奥さんを設けて関係を持ちます! そういう環境で育った私たちですよ? それに赤の他人同士じゃなくて、ちゃんと血の繋がった姉妹ですし、全然気になりません!」

 そういや貴族ってそうだったな、と思い出す。
まぁ、俺は貴族じゃないんだけど……とは思いつつ、妙に納得してしまった俺だった。

 この状況になって。据え膳食わぬはなんとやらだ。
だから俺は勢い任せに3人をギュッと抱き寄せた。

「わかった! お前らが望むならまとめて相手をしてやる! 覚悟しろ!」

「はい、喜んで覚悟します!」

「はぁ……はぁ……トク兄ぃ……早くぅ……!」

「きゃっほー! 仲良く絡み合いー!!」

「指導開始だぁ!!」

……と、退院早々、勢いで凄いことが始まってしまった。
生まれて初めての3対1の戦いは興奮するどころか、熾烈を極めた。
想像以上に大変だった。ぶっちゃけドラゴン討伐よりも体力を使ったような気がした。

でも、まぁ……三姉妹はみんなそれぞれ違った可愛さがあって、そんな子たちをまとめて相手にできたんだから、体力云々いうのは贅沢というものだ。

そうのこうの、はげしくやり合って、なんとか全員満足させて、逆に俺は色々と散々搾り取られて……落ち着いた頃には、夜明けが近くなっていた。

「はぁ、はぁ……さすがにしんどかった……」

「お疲れ様です、先生。たくさん、私たちのことを愛してくださってありがとうございました」

 唯一起きていたキュウは俺に腕枕をされつつ、頬を赤らめていた。

「トク兄ぃ、もっと、もっとぉ……! あふ! んん! はぁ……すぴー……」

「トーさん、そこ、やっ!……ううん、違う! 良いって意味。だから止めない……すぅー……」

 ちなみにやっぱり一番激しかったコンは、同じく疲れ果てたシンを抱きしめて爆睡中である。

「なぁ、キュウ」

「なんですか?」

「お前達はこれからどうするつもりなんだ?」

楽しい時間の中でも、ずっと抱え続けていた不安を口にする。
すると、キュウは優しい笑顔を浮かべてくれた。

「どうもこうも、ずっと一緒にいますよ? 先生には冒険者としても、男性としてもご指導を賜りたいことがたくさんありますしね」

「借金返済の目処も立っているのに?」

「まだ少し残ってます」

「序列2位の青等級冒険者になったのに?」

「別に等級なんて関係ないですよ。それにこの成果は先生と一緒に暮らしたおかげなんですから……」

「そっか」

「……もしかして、先生は私たちに出ていってほしいんですか?」

 少し不安げなキュウを抱き寄せて「もっと一緒にいて欲しい」と正直に告げた。

「ありがとうございます。……たとえ借金を返し終わっても、紫等級の冒険者になっても、私たちはずっとずっと先生と一緒にいたいです」

 こんな時間がこれからも続いてくれるのか。
 別れを覚悟していただけに、すごく嬉しかった。
そして最後に、一番気になっていたことを聞くことにした。

「最後にもう一つ聞いていいか?」

「なんでもどうぞ?」

「どうしてキュウ達は俺をこんなに慕ってくれるんだ?」

「それはですねぇ……ふふ……みんな、10年前に過ごした先生との思い出が楽しかったからですよ」

「そうなのか?」

「はい。貴族の娘ってだけで色々縛られていた私たちへ、先生は世の中には色々な生き方があって、楽しいことも一杯あるって教えてくださいましたから」

 そういえばそんなことを10年前に言った気がする。
とはいえ、別に大したことじゃなくて、俺が知っているありのままを伝えただけだ。

「先生に出会ったあの日から私達三人は生まれ変わることができました。お別れした後も、私たちは先生のことが忘れられなくて、ずっとずっと想い続けていて……10年ぶりにお会いして、やっぱり私たちは先生が大好きなんだなって再確認できて……だから、今こんな状況になってます」

 なんだか分かったような、未だに分からないような。
 まぁ、でも、3人の気持ちが本物だってのは、分かっている。
なら、それを素直に受け取っておくこととしよう。

 俺とキュウはどちらともなく唇を寄せ合った。

「もうちょっと頑張っちゃいます? できます?」

「正直、ちょっと厳しい気もするけど……キュウのために頑張るかな!」

「途中でコンとシンが起きたらあの子達のことも可愛がってあげてくださいね」

「お、おう、がむばる……」

「ふふ、シンのが移っちゃいましたね」

 キュウの愛らしくて、妖艶な笑みを見て、再び昂りを感じる。

そうして俺は思い出す。
10年前も、俺は【サク三姉妹】に助けられていた。

 シオンとサフトのことがあって、自棄になっていた俺は、この子達と交流を持つことで、生きることを諦めなかった。
たとえ薄っぺらい人生になったとしても、生き続けようと誓った。
そして今……彼女達に再会して、俺は再び立ちあがろうとしていた。

「ありがとよ」

「こちらこそです。大好きです、先生……これからもどうか末永くよろしくお願いします……」

 キュウを抱きしめると、彼女も返してきてくれる。
コンとシンが起きたら同じことを伝えようと思った。

 これからもずっと、ずっと一緒に……そう願う俺なのだった。

⚫️⚫️⚫️


……ワイ、ワイ……ガヤ、ガヤ……

 なんかやけに外が騒がしく、寝ては居られなかった。
 今日は近所で祭かなんかがあったけ?

 気になった俺は、ガウンを羽織り外の様子を見にゆくことにする。

「き、来たー! 出て来たぞー!」
「トクザトレーナー! 俺たちにもご指導をぉー!」
「キャー! あれが本物! イケオジじゃん!」
「1ヶ月5万G! 5万G! この契約で如何ですかぁ!! トクザトレーナー!」

 自宅の前には主に若い世代を中心とした、男女の冒険者がごった返していた。
 
 何が起こってるんだ……?

 驚いて立ち尽くす俺へ、傍から光の明滅が当てられた。

「グレイトな写真いただきです、トクザトレーナー!」

「ササフィさん? これは一体……」

 ササフィさんはカメラを下ろし、カバンから今月号の【月間冒険者野郎ども】を取り出した。


『超一流冒険者訓練士 トクザの日常!』

 そうでかでかとタイトルが打たれた巻頭特集。
 そこには俺の活躍を中心に、サク三姉妹との関係が事細かに書き綴られている。
そして長大な特集記事の最後を飾っているのが、例の病室で撮った写真だった。

 女性に囲まれて、その中心で笑みを浮かべている自分自身の姿……今更だけどみんなに取り囲まれてるこの写真ってめっちゃ恥ずかしい……

「トクザトレーナーのおかげで、今月号の月間冒険者野郎どもは、創刊以来最高の売れ行きです! グレイトです! 弊社社長も編集長も大変お喜びですっ!」

「な、なにこの騒ぎは!?」

 ようやく起きてきた三姉妹も、さすがにこの状況を前にしてたじろいで居る。

 すると、熱気がさらに増した……主に男性陣を中心に。


「「「「うおぉぉぉー! 本物のサク三姉妹だぁぁぁ!!」」」」
 

 よーく、月間冒険者野郎どもを見てみると、雑誌の中ほどにはまるでアイドルのような扱いで、サク三姉妹のことが書き綴られている。
 てか、個別のインタビュー記事とかもあるじゃん。いつの間に……てか、みんな素敵な笑顔で、記事も良い感じじゃん。
そんな子たちと俺は昨晩……やばい、人前なのに、これはちょっとマズいかも……。

「先生、どうしましょう?」

「頭にガンガン響くからがつんといってやってくれよ、トク兄……」

「めっ! トーさんはシンたちのトーさん! め!」

「せっかく、皆さんトクザトレーナーのために集まってくださったんです。なにかお言葉を!」

 いや、ササフィさん、急にお言葉なんていわれても……

 俺はこの状況を収めるにはどうしたら良いか考えだした。
しかし全く妙案が浮かばない。
 ほんと、どうしよう……

「退け、退けぇい! 道をあけぇい! 若様の御成であらせられるぞぉ!!」

 突然、妙な声が聞こえた。
そして家の前に集まった群衆を割って、屈強な男達に完全防御された馬車が突っ込んでくる。
 不満囂々、喧々囂々。

 だけど馬車の籠に乗ってたそいつは、まるで気にした様子を見せず、俺の前へ降り立ってくる。

「すっかりお怪我が治ったようで安心しました! お久しぶりです、トクザ殿!」

「お、お前は確か……マインだっけ?」

「はい! コンスコン地方領主が嫡子の1人! そしてあなたと同じく剣豪の【マイン・レイヤー】です! いやぁー某のことを覚えていてください光栄です! さすがはトクザ殿です!」

 するとマインは突然、地面へ膝をついた。

「わ、若様! そのような行い……!」

「良いの、良いの。某はお願いに上がっているんだから!」

「しかし!」

「トクザ殿は某を助け、あまつさえお導きいただいた方なんだから、平伏するのは当然のことだよ!」

 お付きの老人へそう言って退けたマインは、俺へ仰ぎ見てくる。

「トクザ殿、本日はお願いがあり参上しました」

「お願い……?」

「はい! どうかぜひ、某をあなたの弟子とし、鬼神流を継承させてください! 貴方へ某のこの身、魂さえも捧げます! ですので、どうかよろしくお願い申し上げます!」

……なんだか、物凄いことになってきたぞ。
しかもマインって、コンスコン領主の子供だったんだ……


……
……
……


【公示】

 厳正なる審査の結果、以下の者を降格処分とする。


(旧)勇者パルディオス・マリーン


(新)紫等級冒険者パルディオス・マリーン


 ムサイ国冒険者ギルド等級審査委員会


――冒険者春秋が、この公示に飛びついたのは言うまでもない。




*まだ終わりじゃないですよ? 今のところ、もうちょっと話があります。
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