拾われた後は

なか

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36.止められました

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   厨房で手伝いながら、クロスさんと話をするのは楽しい。手伝いというより、相手してもらっている感じだけど。
   僕の倍くらい皆食べるから、かなりの量になる。しかし、まかないも含めてクロスさんは1人で担っている。

   料理をしてると集中するからか、余計なことを考えないで済む。僕用に準備してくれた、ちょっと大きめのエプロンをして、ジャガイモみたいな野菜の皮むきに勤しむ。


「街の食堂みたいなとこで、僕みたいな人でも料理人見習いで雇って貰えると思います?」

   昔、街で働いていたというクロスさんに、皮むきしながら聞いてみる。

「どうした?ここを出て働きたいのか?」

   クロスさんはちょっと驚いた顔で手を止めた。

「いつまでも、ただお世話になってるのもな、と思って。」

「うーん、まぁカイル様が許すとは思えないけどな。この国はな、成人するまでの教育は国が責任持ってんだ。ハルカはよく事情は知らないが、まぁ生まれたばっかと同じだ。だから16年くらいは保護を受けて当然なわけ。分かるか?」

「そんな無茶な計算……。」

「それにな、勉強しながら俺や、ケリーの庭仕事の手伝いもやってるだろ。本当は労働の対価として、給金もらわなくちゃいけないんだ。お前が受け取らないだけで。だから、気にすんな。
   俺も弟子兼助手が居なくなると困る。それに、新しい組み合わせとか味とか、お前から学ぶこと多いし、指南料払ってもいいくらいなんだぞ。  」

  うーん、とうなっていると、クロスさんは剥き終えたものをボールに移す。

「納得してねぇみたいだけど、ハイって言わないと毎食ビード出すぞ。」

「それはやめてください。」

   ビードっていうのは独特の癖があり野菜で、僕が唯一と言っていいほど苦手なものだ。食を人質にするなんてひどいと言うと、クロスさんが歯を見せて笑った。

「分かりました。勉強も頑張るけど、料理もっと教えてください。僕の知ってる範囲で、僕が居た国の料理教えますから。」

「よし、交渉成立な!街の食堂なんかにお前を奪われてたまるか。ケリーもお前がいなくなったら寂しがるからな。出てくなんて言うなよ?
   ほら、スープの準備するぞ、こっち持ってこい。」


   相談する人間違えたような気もするけど、少しだけ僕の心が軽くなった。

   どれくらいかかるか分からないけど、しっかりここで学んで、独り立ちしよう。そしてカイルさんを重荷から解放しよう。いつか恩を返そう。
   胸が痛かったけど、密かに僕は決心した。

   


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