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37.責められました
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午前中、今日は1人で子供向けのこの国の地理や社会についての本を読んでいた。
途中、喉が渇いたので水もらって部屋に戻るところ、玄関ホールの外から騒がしい声が聞こえてきた。
なんだろうと思いつつも、通り過ぎようとすると、扉が開いて綺麗な女の人が怒った顔をして入ってきた。
背中の真ん中まである長い髪は金色、薄い青色の瞳。映画に出てくるような、ピンク色のドレスを着ている。
「ちょっと、あなた。」
水差しを持って立つ僕の元に、つかつかとその人が近づいてくる。
「こんにちは。」
とりあえず挨拶をしてみるが、その人は無言で、上から下まで僕を見た。
「カイル様と夜市に一緒に行ったのは、あなたね。」
なぜか質問というより責められてる感じに、とりあえず頷くと、きっと睨まれる。
マリアさんが近寄ってきて応接室にって誘導したけど、その人は動かなかった。
「あなたその外見、見たことないわ。この国の出身じゃないわね。いい?出自も怪しいあなたが、カイル様と一緒にいたらご迷惑なの。子供でも分かるわね? カイル様はあなたのせいで変な噂を立てられているわ。私も将来の夫に傷が付くのは耐えられないの。ここでお世話になってるみたいだけど、身寄りがないなら教会でもどこでも、後ろ盾のしっかり施設を紹介してあげるから。ね、準備していらっしゃい。」
有無を言わせない勢いで一方的に僕に詰め寄る。
「タリア様、当家の主人がいないところで勝手なことをされては困ります。お引き取り下さい。」
呆気にとられていると、すっと僕の前に人が立った。女の人の視線から遮ってくれる。
「まあ、失礼ではありませんか。」
「主人のいない家に押しかけて、ご無理を通されようとされるのは、レディのなさることではありませんのでは?
お叱りは当主であるカイル様からお受けします。どうぞ、お引き取りを。」
譲らない意志を感じさせる静かな声で、執事のディルさんが頭を下げてた。メリッサさんとマリアさんが、少し離れたところで見守っている。
「そこのあなた、よく考えておきなさい。」
僕をもう一度睨みつけて、スカートを翻し去って行った。
ディルさんが振り向いて心配そうに僕を見た。
「ハルカ様、申し訳ありません。不快な思いをさせてしまいましたね。」
「ディルさん、ありがとうございました。僕は大丈夫です。今の方は?」
「タリア様です。バダン家という名家のお嬢様ですが、些かマナーは褒められたものではありませんね。陛下からお預かりしていることはご存知無いとはいえ、さすがにあの言動は目に余ります。ハルカ様はお気になさらずに。
さ、お部屋に戻りましょう。」
僕から水差しを受け取り、そっと背中を押して部屋に促される。
部屋に戻ると、マリアさんが甘いお茶を淹れて持ってきてくれた。あんな失礼な人のこと気にしちゃダメよ、と去っていった。
けれど、あの人言ったことは間違いじゃない。
お茶を飲んで、勉強を再開したけどその日はあまり頭に入らなかった。
途中、喉が渇いたので水もらって部屋に戻るところ、玄関ホールの外から騒がしい声が聞こえてきた。
なんだろうと思いつつも、通り過ぎようとすると、扉が開いて綺麗な女の人が怒った顔をして入ってきた。
背中の真ん中まである長い髪は金色、薄い青色の瞳。映画に出てくるような、ピンク色のドレスを着ている。
「ちょっと、あなた。」
水差しを持って立つ僕の元に、つかつかとその人が近づいてくる。
「こんにちは。」
とりあえず挨拶をしてみるが、その人は無言で、上から下まで僕を見た。
「カイル様と夜市に一緒に行ったのは、あなたね。」
なぜか質問というより責められてる感じに、とりあえず頷くと、きっと睨まれる。
マリアさんが近寄ってきて応接室にって誘導したけど、その人は動かなかった。
「あなたその外見、見たことないわ。この国の出身じゃないわね。いい?出自も怪しいあなたが、カイル様と一緒にいたらご迷惑なの。子供でも分かるわね? カイル様はあなたのせいで変な噂を立てられているわ。私も将来の夫に傷が付くのは耐えられないの。ここでお世話になってるみたいだけど、身寄りがないなら教会でもどこでも、後ろ盾のしっかり施設を紹介してあげるから。ね、準備していらっしゃい。」
有無を言わせない勢いで一方的に僕に詰め寄る。
「タリア様、当家の主人がいないところで勝手なことをされては困ります。お引き取り下さい。」
呆気にとられていると、すっと僕の前に人が立った。女の人の視線から遮ってくれる。
「まあ、失礼ではありませんか。」
「主人のいない家に押しかけて、ご無理を通されようとされるのは、レディのなさることではありませんのでは?
お叱りは当主であるカイル様からお受けします。どうぞ、お引き取りを。」
譲らない意志を感じさせる静かな声で、執事のディルさんが頭を下げてた。メリッサさんとマリアさんが、少し離れたところで見守っている。
「そこのあなた、よく考えておきなさい。」
僕をもう一度睨みつけて、スカートを翻し去って行った。
ディルさんが振り向いて心配そうに僕を見た。
「ハルカ様、申し訳ありません。不快な思いをさせてしまいましたね。」
「ディルさん、ありがとうございました。僕は大丈夫です。今の方は?」
「タリア様です。バダン家という名家のお嬢様ですが、些かマナーは褒められたものではありませんね。陛下からお預かりしていることはご存知無いとはいえ、さすがにあの言動は目に余ります。ハルカ様はお気になさらずに。
さ、お部屋に戻りましょう。」
僕から水差しを受け取り、そっと背中を押して部屋に促される。
部屋に戻ると、マリアさんが甘いお茶を淹れて持ってきてくれた。あんな失礼な人のこと気にしちゃダメよ、と去っていった。
けれど、あの人言ったことは間違いじゃない。
お茶を飲んで、勉強を再開したけどその日はあまり頭に入らなかった。
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