31 / 53
31.お出かけしました
しおりを挟む
それから僕はマリアさんがそろそろ準備しましょうと声を掛けてくれるまで、カイルさんと過ごした。
ゆっくりして下さいとお願いしたが、断られ、読み書きを見てもらったりしていた。
フード付きの、膝まである丈の薄手の上着を羽織る。玄関ホールで待つカイルさんの元へ、階段を下りていった。僕の姿を捉えると、目を見開いてじっと見つめられる。
やはり痛かったかな、マリアさんは大絶賛だったけど、やっぱりおかしいよね。
「あの、カイルさん?」
反応がない。
「すみません、変ですよね。外します。」
居た堪れず、それを取ろうとすると、いつになく強い力でがしっと手首を握られた。
「いや、いい。驚いただけだ。よく似合ってる。それは。」
三角の少し小さめの黒い耳。幅広の黒いリボンに縫い付けてある。そのリボンをピンで止めて動かないようにし、うなじでリボン結びになっている。マリアさんの力作だ。
また、動いた時に僕の耳が見えないように、伸びた髪の毛はピンで止めてある。
マリアさんが作ってくれたことを話すと、カイルさんは脇に控えて、にこにこしていたマリアさんの元に行き、何か言っている。
「さあ、行こうか。皆も仕事が片付いたら楽しんでくれ。出迎えはいらない。」
戻ってきたカイルさんは僕の手を取った。嬉しそうな表情をみて、僕もその手をぎゅっと握った。
今日はお祭りの付近は馬車や馬も乗り入れできないらしい。途中まで馬車で行き、そこから2人で歩いた。馬車はとってもゆっくり走らせてくれ、2回目は平気だった。
ヨーロッパの古い町並みみたいで石造りの家が続き、広い道の両脇にはたくさんの屋台が出ている。
夕焼け空に涼しい風が吹いてきて、美味しそうな色んな匂いを運んでくる。地元の縁日を思い出す。
みんなお祭りで楽しむことに夢中なのか、僕は特に目立ってはないようだった。
しかし、カイルさんは私服姿でも際立ってかっこよく、あちこちから視線を感じる。当人は全然気にしてないようだけど。
お祭りはたくさんの人がいて、とても混雑していた。キョロキョロしている僕に逸れるなよと、繋いだ手に力を入れられる。
「夕飯は何か買って食べよう。苦手だったりダメな物は俺が食べるから、遠慮しないでし好きなの何でも選べ。」
食べ物の屋台が並んでいる方へ行き、そんなこと言われても、どれも初めて見るし、美味しそう。
僕が決められないでいると、色んなお店で興味を持ったものを、カイルさんが片っ端から買っていく。
そんなカイルさんに思わず笑ってしまうと、一回手を解いて頭を撫でられた。
お店のおじさんは仲良しだねと言って、オマケしてくれた。恥ずかしいから外ではやめて欲しい。
「歩きながら食べてもいいんだが、そうすると手が足りないな。中央の広場に座れるところがあるはずだから、そっちに行こうか。」
繋いだ手を離す気のないカイルさんに苦笑するが、確かにここではぐたら出会える気がしない。
陽が落ちてたくさんのランタンに火が灯る。街がオレンジ色に染まって、とてもきれいだ。
ゆっくりして下さいとお願いしたが、断られ、読み書きを見てもらったりしていた。
フード付きの、膝まである丈の薄手の上着を羽織る。玄関ホールで待つカイルさんの元へ、階段を下りていった。僕の姿を捉えると、目を見開いてじっと見つめられる。
やはり痛かったかな、マリアさんは大絶賛だったけど、やっぱりおかしいよね。
「あの、カイルさん?」
反応がない。
「すみません、変ですよね。外します。」
居た堪れず、それを取ろうとすると、いつになく強い力でがしっと手首を握られた。
「いや、いい。驚いただけだ。よく似合ってる。それは。」
三角の少し小さめの黒い耳。幅広の黒いリボンに縫い付けてある。そのリボンをピンで止めて動かないようにし、うなじでリボン結びになっている。マリアさんの力作だ。
また、動いた時に僕の耳が見えないように、伸びた髪の毛はピンで止めてある。
マリアさんが作ってくれたことを話すと、カイルさんは脇に控えて、にこにこしていたマリアさんの元に行き、何か言っている。
「さあ、行こうか。皆も仕事が片付いたら楽しんでくれ。出迎えはいらない。」
戻ってきたカイルさんは僕の手を取った。嬉しそうな表情をみて、僕もその手をぎゅっと握った。
今日はお祭りの付近は馬車や馬も乗り入れできないらしい。途中まで馬車で行き、そこから2人で歩いた。馬車はとってもゆっくり走らせてくれ、2回目は平気だった。
ヨーロッパの古い町並みみたいで石造りの家が続き、広い道の両脇にはたくさんの屋台が出ている。
夕焼け空に涼しい風が吹いてきて、美味しそうな色んな匂いを運んでくる。地元の縁日を思い出す。
みんなお祭りで楽しむことに夢中なのか、僕は特に目立ってはないようだった。
しかし、カイルさんは私服姿でも際立ってかっこよく、あちこちから視線を感じる。当人は全然気にしてないようだけど。
お祭りはたくさんの人がいて、とても混雑していた。キョロキョロしている僕に逸れるなよと、繋いだ手に力を入れられる。
「夕飯は何か買って食べよう。苦手だったりダメな物は俺が食べるから、遠慮しないでし好きなの何でも選べ。」
食べ物の屋台が並んでいる方へ行き、そんなこと言われても、どれも初めて見るし、美味しそう。
僕が決められないでいると、色んなお店で興味を持ったものを、カイルさんが片っ端から買っていく。
そんなカイルさんに思わず笑ってしまうと、一回手を解いて頭を撫でられた。
お店のおじさんは仲良しだねと言って、オマケしてくれた。恥ずかしいから外ではやめて欲しい。
「歩きながら食べてもいいんだが、そうすると手が足りないな。中央の広場に座れるところがあるはずだから、そっちに行こうか。」
繋いだ手を離す気のないカイルさんに苦笑するが、確かにここではぐたら出会える気がしない。
陽が落ちてたくさんのランタンに火が灯る。街がオレンジ色に染まって、とてもきれいだ。
323
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
神子の余分
朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。
おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。
途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる