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31.お出かけしました
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それから僕はマリアさんがそろそろ準備しましょうと声を掛けてくれるまで、カイルさんと過ごした。
ゆっくりして下さいとお願いしたが、断られ、読み書きを見てもらったりしていた。
フード付きの、膝まである丈の薄手の上着を羽織る。玄関ホールで待つカイルさんの元へ、階段を下りていった。僕の姿を捉えると、目を見開いてじっと見つめられる。
やはり痛かったかな、マリアさんは大絶賛だったけど、やっぱりおかしいよね。
「あの、カイルさん?」
反応がない。
「すみません、変ですよね。外します。」
居た堪れず、それを取ろうとすると、いつになく強い力でがしっと手首を握られた。
「いや、いい。驚いただけだ。よく似合ってる。それは。」
三角の少し小さめの黒い耳。幅広の黒いリボンに縫い付けてある。そのリボンをピンで止めて動かないようにし、うなじでリボン結びになっている。マリアさんの力作だ。
また、動いた時に僕の耳が見えないように、伸びた髪の毛はピンで止めてある。
マリアさんが作ってくれたことを話すと、カイルさんは脇に控えて、にこにこしていたマリアさんの元に行き、何か言っている。
「さあ、行こうか。皆も仕事が片付いたら楽しんでくれ。出迎えはいらない。」
戻ってきたカイルさんは僕の手を取った。嬉しそうな表情をみて、僕もその手をぎゅっと握った。
今日はお祭りの付近は馬車や馬も乗り入れできないらしい。途中まで馬車で行き、そこから2人で歩いた。馬車はとってもゆっくり走らせてくれ、2回目は平気だった。
ヨーロッパの古い町並みみたいで石造りの家が続き、広い道の両脇にはたくさんの屋台が出ている。
夕焼け空に涼しい風が吹いてきて、美味しそうな色んな匂いを運んでくる。地元の縁日を思い出す。
みんなお祭りで楽しむことに夢中なのか、僕は特に目立ってはないようだった。
しかし、カイルさんは私服姿でも際立ってかっこよく、あちこちから視線を感じる。当人は全然気にしてないようだけど。
お祭りはたくさんの人がいて、とても混雑していた。キョロキョロしている僕に逸れるなよと、繋いだ手に力を入れられる。
「夕飯は何か買って食べよう。苦手だったりダメな物は俺が食べるから、遠慮しないでし好きなの何でも選べ。」
食べ物の屋台が並んでいる方へ行き、そんなこと言われても、どれも初めて見るし、美味しそう。
僕が決められないでいると、色んなお店で興味を持ったものを、カイルさんが片っ端から買っていく。
そんなカイルさんに思わず笑ってしまうと、一回手を解いて頭を撫でられた。
お店のおじさんは仲良しだねと言って、オマケしてくれた。恥ずかしいから外ではやめて欲しい。
「歩きながら食べてもいいんだが、そうすると手が足りないな。中央の広場に座れるところがあるはずだから、そっちに行こうか。」
繋いだ手を離す気のないカイルさんに苦笑するが、確かにここではぐたら出会える気がしない。
陽が落ちてたくさんのランタンに火が灯る。街がオレンジ色に染まって、とてもきれいだ。
ゆっくりして下さいとお願いしたが、断られ、読み書きを見てもらったりしていた。
フード付きの、膝まである丈の薄手の上着を羽織る。玄関ホールで待つカイルさんの元へ、階段を下りていった。僕の姿を捉えると、目を見開いてじっと見つめられる。
やはり痛かったかな、マリアさんは大絶賛だったけど、やっぱりおかしいよね。
「あの、カイルさん?」
反応がない。
「すみません、変ですよね。外します。」
居た堪れず、それを取ろうとすると、いつになく強い力でがしっと手首を握られた。
「いや、いい。驚いただけだ。よく似合ってる。それは。」
三角の少し小さめの黒い耳。幅広の黒いリボンに縫い付けてある。そのリボンをピンで止めて動かないようにし、うなじでリボン結びになっている。マリアさんの力作だ。
また、動いた時に僕の耳が見えないように、伸びた髪の毛はピンで止めてある。
マリアさんが作ってくれたことを話すと、カイルさんは脇に控えて、にこにこしていたマリアさんの元に行き、何か言っている。
「さあ、行こうか。皆も仕事が片付いたら楽しんでくれ。出迎えはいらない。」
戻ってきたカイルさんは僕の手を取った。嬉しそうな表情をみて、僕もその手をぎゅっと握った。
今日はお祭りの付近は馬車や馬も乗り入れできないらしい。途中まで馬車で行き、そこから2人で歩いた。馬車はとってもゆっくり走らせてくれ、2回目は平気だった。
ヨーロッパの古い町並みみたいで石造りの家が続き、広い道の両脇にはたくさんの屋台が出ている。
夕焼け空に涼しい風が吹いてきて、美味しそうな色んな匂いを運んでくる。地元の縁日を思い出す。
みんなお祭りで楽しむことに夢中なのか、僕は特に目立ってはないようだった。
しかし、カイルさんは私服姿でも際立ってかっこよく、あちこちから視線を感じる。当人は全然気にしてないようだけど。
お祭りはたくさんの人がいて、とても混雑していた。キョロキョロしている僕に逸れるなよと、繋いだ手に力を入れられる。
「夕飯は何か買って食べよう。苦手だったりダメな物は俺が食べるから、遠慮しないでし好きなの何でも選べ。」
食べ物の屋台が並んでいる方へ行き、そんなこと言われても、どれも初めて見るし、美味しそう。
僕が決められないでいると、色んなお店で興味を持ったものを、カイルさんが片っ端から買っていく。
そんなカイルさんに思わず笑ってしまうと、一回手を解いて頭を撫でられた。
お店のおじさんは仲良しだねと言って、オマケしてくれた。恥ずかしいから外ではやめて欲しい。
「歩きながら食べてもいいんだが、そうすると手が足りないな。中央の広場に座れるところがあるはずだから、そっちに行こうか。」
繋いだ手を離す気のないカイルさんに苦笑するが、確かにここではぐたら出会える気がしない。
陽が落ちてたくさんのランタンに火が灯る。街がオレンジ色に染まって、とてもきれいだ。
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