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第十二話
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「よし、これでいいよね」
春ヶ山駅付近に商店街にある、創業大正ん年だという和菓子屋さんで有名な大福を買う。それを片手に今、澤田税理士事務所の前までやってきた。
フジコにさんざんからかわれたが、彼女が言うようにお礼とお詫びに行くのは筋だと私も思ったのだ。
澤田税理士事務所に足を運ぶのは年二回。夏と冬のボーナス時期前だ。
今週中にでもチラシを持って伺う予定になってはいたが、さすがにそのときにお礼とお詫びをするわけにもいかないだろう。
仕事とプライベートは分けるべきだ。となれば、善は急げ。
とにかく早い時期に謝ってしまおうと足を運んだのだが……。なかなか扉を開くことができない。
六月決算の会社も多いらしいから忙しいかもしれない。今、訪問したらご迷惑になるだろうか。
色々考えていたら、ますます足が重くなる。
やっぱり後日にしようかな、と臆病風が吹いてしまう。
いやいやでも、こういうのは早ければ早い方がいいに決まっている。
ああ、もう、どうしよう。澤田税理士事務所前で悩み続けること十五分。
やっぱりやめておこうかと思った瞬間だった。
「珠美さんですか?」
「え?」
振り返るとそこは驚いて目を見開いている尚先生がいた。
まさかの登場に頭の中がパニックになる。
今日の謝罪はもちろん尚先生にもするつもりだった。しかし、本音を言えば澤田先生と奥様にお礼とお詫びをして逃げるように帰ることができたらいいなぁと思っていた。
そんなことは目の前の尚先生には口が裂けても言えないけれど。
慌てる私を見て、尚先生はにこやかにほほ笑んだ。
「やっぱり珠美さんだ。先日はお疲れさまでした」
「あ、えっと。はい、お疲れさまでした」
あれ、と思わず首を捻る。
いつもの尚先生なら、もっと強引かつ積極的に声をかけてきたはずだ。
しかし、今の尚先生はほどよい距離感を持っていて、大人の接し方のように思う。
私が尚先生に会いたくなかった理由は、どう接したらいいのかわからなくなるからだ。
私の心臓を鷲づかみされ、息さえもできなくなるほど胸がドキドキしてしまう。
イケメンの接近にいつもなら脳内妄想恋愛機が稼働し始めるはずなのに、尚先生は例外だ。だからこそ、困ってしまうのだ。
そう、尚先生にだけ脳内妄想恋愛機が作動しない。作動しないというか、フリーズして動かなくなってしまうのだ。それほど彼の言動は、ショッキングだから。
しかし、今の尚先生にはどこか他人行儀のような雰囲気も感じる。
心を乱されないことを喜ばないといけないのに、どこかでガッカリしている自分がいる。 そのことに驚きが隠せない。
しかし、そう感じたのは一瞬だけだった。突然尚先生に手首を掴まれ、そのまま尚先生の腕の中へと誘われる。そして、ギュッと抱きしめられてしまったのだ。
「ちょ、ちょっと! 尚先生!?」
ふと緊張を解いた途端の出来事に、ますます頭の中はパニックに陥っていく。
どうして今、私は尚先生に抱きしめられているのだろう。
どんなに考えたって答えなんて出てこないのだから、ますます慌ててしまう。
「ビックリしましたか?」
すぐ耳元で尚先生の声が響く。ビックリしたなんてものじゃない、口から心臓が飛び出すかと思うほどだった。
コクコクと何度も頷く私に、尚先生はクスクスと柔らかく笑う。
「珠美さんには、考える時間を与えたくないと思いましてね」
「いえ、そこはちょっと考える時間をください」
なんとか尚先生の腕の中から出ようとするのだが、がっちりと抱きしめられていて抜け出すことができない。
慌てまくる私に対し、尚先生の口調はとても冷静で悔しくなってしまう。
「総おどりがあった夜。色々と繋がったんです」
「え?」
一体それはどういうことなのだろう。
抵抗を止め、尚先生を見上げると、ゆっくと目を細める尚先生と視線が合う。
絡み合う視線はとても熱くて情熱的だ。それだけでドキドキして苦しい。
フッと表情を緩め、笑いかけてくる尚先生は反則なほどカッコいい。
のぼせ上がってしまいそうな私を、尚先生はさらに攻めてくる。
「ねぇ、珠美さん」
「な、なんですか、尚先生。とにかく手を。手を離してください!」
尚先生の腕の中でジタバタと足掻く私の耳元で、尚先生は囁いた。
「何故です?」
「な、何故って……」
まさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかった私は、思わずあんぐりと口を開いてしまった。
まぬけ面の私を見て、尚先生は真剣な表情を浮かべる。
その眼差しの強さに、私の胸はドクンと音を立てて高鳴った。
「妄想ばかりしていないで、現実の私を見てはくれませんか?」
「っ!」
尚先生の腕の中から抜けだそうと抵抗していた私だったが、少しも動けなくなった。 私は、先生の腕の中でカチンと固まったまま見上げる。
そこには尚先生の真摯な眼差しがあり、私は顔を赤らめた。だが、今は尚先生のかっこよさに見とれている場合ではない。
尚先生は恐ろしいことを言っていなかっただろうか。
妄想ばかり、そんなことを言っていた気がする。いや、言っていた。絶対に言っていた。 脳内恋愛妄想機については、真奈美さんとフジコ。この二人しか知らないことなのに……
そもそも妄想恋愛に私が行き着いた理由も二人しか知らないことだ。それなのに、どうして尚先生が『妄想』の二文字を口にしたのか。
真っ赤に熟れ上がった私の顔は、今度は真っ青に変わっていく。
「な、な、なんのことでしょう?」
しらばっくれる戦法に切り替えた私を、「おや」といった感じで尚先生は目を見開いたが、そのあとニッと口角が上がった。
尚先生お得意の意味ありげ、かつ色っぽい笑い方だ。
でも絶対に危険だ。彼から離れなくては。脳が私に信号を送ってきたが、どうやらそれは回避出来そうにもない。
尚先生は、私の頭をゆっくり撫でながら楽しげに笑った。
「まぁ、そういうことにしておきましょう」
「な、な、なんのことだか。私にはさっぱり」
念押しのように誤魔化す私の背中には、冷や汗がツゥーと流れる。
尚先生にだけは『脳内妄想恋愛機』の存在についてバレるわけにはいかない。
バレたら最後、そのことをネタに揺さぶりをかけてくるかもしれないからだ。
内心慌てながらも冷静さを装う私を、尚先生はより追い詰めていく。
「口外してほしくなければ、私のモノになってくれとお願いしましたが……その後、珠美さんは考えてくれましたか?」
「え……?」
「あの夜、私と珠美さんの間で何が起きたのか。知りたくはないですか?」
「っ!」
知りたい。喉から手が出るほどに知りたい情報だ。だけど、相手は尚先生だ。
相手が悪すぎるし、危険すぎる。
知りたいです! という言葉を呑み込み、私は目を泳がせた。
「べ、別に知りたくもありませんから」
「強がりを」
「強がりなんかじゃありません!」
顔を背ける私に、尚先生は本当に嬉しそうに笑っている。尚先生の笑い声を聞いて怒りはマックスになる。
ええ、ええ。先生にしてみたらさぞかし楽しいことでしょう
私の弱みを握り、慌てる様子を見て楽しめるのだから。
もういい加減にしてほしい。そんなに私をからかって楽しいのだろうか。
私のモノになってほしいだなんて言っているけど、それは本心なのか。
一連のやりとりを見る限りでは、どう見ても私をからかって遊んでいるようにしか見えない。
いい加減にしてください、と怒鳴ろうとした時だった。
尚先生は急に笑いを引っ込め、真剣な顔をする。両頬を包み込むように、尚先生の手が触れた。
カッと一気に頬が熱くなり、彼の腕の中にいることが居たたまれない。
内心かなり困惑しているし、尚先生に対して怒っている。それなのに身体はとても正直で、イケメンに胸キュンなことをされて喜んでいるようだ。
文句の一つも言いたいのに、それができない。尚先生のまっすぐな視線は私の心まで射貫いてしまうほどだ。
ドクドクと鼓動がうるさい。尚先生に勘づかれでもしたら厄介だ。それなのに、ますます胸の鼓動は高鳴るばかり。
「私はずっと木佐珠美さんに会いたいと思っていました。それも何年も前から」
「え……?」
尚先生の口から飛び出した言葉は、私をフリーズさせてしまうほど威力のあるものだった。
初めて尚先生に会ったのは、総おどりの練習会のときだ。あのときの尚先生の言動を思い出す。
春ヶ山信用金庫に「タマ」とつく女性はいないか。先生に何度も問われた。
あのとき、尚先生とは初めて顔を合わせたのにと違和感を覚えたのだが、やっぱり尚先生はかなり前から私の存在を知っていたというのだろうか。
「総おどりの夜。あの日、すべてが繋がったのですよ」
「繋がった……?」
どういう意味なのだろう。尚先生に問いかけてみても、優しく目を細めるだけで答えをくれない。
ただ、私の頬を包んでいる尚先生の大きな手がとても温かくて優しくて。それだけで胸がキュンと切なく鳴いたのは確かだ。
強い眼差しを注がれて、私は視線を逸らすことができない。
首を傾げる私に、尚先生はゆったりと笑ったのだ。
「ずっと貴女を愛したいと思っていました。そして貴女を愛することができるのは私だけだと。そう信じています」
そう言う尚先生の声は、今までで一番艶っぽく、そして優しかった。
春ヶ山駅付近に商店街にある、創業大正ん年だという和菓子屋さんで有名な大福を買う。それを片手に今、澤田税理士事務所の前までやってきた。
フジコにさんざんからかわれたが、彼女が言うようにお礼とお詫びに行くのは筋だと私も思ったのだ。
澤田税理士事務所に足を運ぶのは年二回。夏と冬のボーナス時期前だ。
今週中にでもチラシを持って伺う予定になってはいたが、さすがにそのときにお礼とお詫びをするわけにもいかないだろう。
仕事とプライベートは分けるべきだ。となれば、善は急げ。
とにかく早い時期に謝ってしまおうと足を運んだのだが……。なかなか扉を開くことができない。
六月決算の会社も多いらしいから忙しいかもしれない。今、訪問したらご迷惑になるだろうか。
色々考えていたら、ますます足が重くなる。
やっぱり後日にしようかな、と臆病風が吹いてしまう。
いやいやでも、こういうのは早ければ早い方がいいに決まっている。
ああ、もう、どうしよう。澤田税理士事務所前で悩み続けること十五分。
やっぱりやめておこうかと思った瞬間だった。
「珠美さんですか?」
「え?」
振り返るとそこは驚いて目を見開いている尚先生がいた。
まさかの登場に頭の中がパニックになる。
今日の謝罪はもちろん尚先生にもするつもりだった。しかし、本音を言えば澤田先生と奥様にお礼とお詫びをして逃げるように帰ることができたらいいなぁと思っていた。
そんなことは目の前の尚先生には口が裂けても言えないけれど。
慌てる私を見て、尚先生はにこやかにほほ笑んだ。
「やっぱり珠美さんだ。先日はお疲れさまでした」
「あ、えっと。はい、お疲れさまでした」
あれ、と思わず首を捻る。
いつもの尚先生なら、もっと強引かつ積極的に声をかけてきたはずだ。
しかし、今の尚先生はほどよい距離感を持っていて、大人の接し方のように思う。
私が尚先生に会いたくなかった理由は、どう接したらいいのかわからなくなるからだ。
私の心臓を鷲づかみされ、息さえもできなくなるほど胸がドキドキしてしまう。
イケメンの接近にいつもなら脳内妄想恋愛機が稼働し始めるはずなのに、尚先生は例外だ。だからこそ、困ってしまうのだ。
そう、尚先生にだけ脳内妄想恋愛機が作動しない。作動しないというか、フリーズして動かなくなってしまうのだ。それほど彼の言動は、ショッキングだから。
しかし、今の尚先生にはどこか他人行儀のような雰囲気も感じる。
心を乱されないことを喜ばないといけないのに、どこかでガッカリしている自分がいる。 そのことに驚きが隠せない。
しかし、そう感じたのは一瞬だけだった。突然尚先生に手首を掴まれ、そのまま尚先生の腕の中へと誘われる。そして、ギュッと抱きしめられてしまったのだ。
「ちょ、ちょっと! 尚先生!?」
ふと緊張を解いた途端の出来事に、ますます頭の中はパニックに陥っていく。
どうして今、私は尚先生に抱きしめられているのだろう。
どんなに考えたって答えなんて出てこないのだから、ますます慌ててしまう。
「ビックリしましたか?」
すぐ耳元で尚先生の声が響く。ビックリしたなんてものじゃない、口から心臓が飛び出すかと思うほどだった。
コクコクと何度も頷く私に、尚先生はクスクスと柔らかく笑う。
「珠美さんには、考える時間を与えたくないと思いましてね」
「いえ、そこはちょっと考える時間をください」
なんとか尚先生の腕の中から出ようとするのだが、がっちりと抱きしめられていて抜け出すことができない。
慌てまくる私に対し、尚先生の口調はとても冷静で悔しくなってしまう。
「総おどりがあった夜。色々と繋がったんです」
「え?」
一体それはどういうことなのだろう。
抵抗を止め、尚先生を見上げると、ゆっくと目を細める尚先生と視線が合う。
絡み合う視線はとても熱くて情熱的だ。それだけでドキドキして苦しい。
フッと表情を緩め、笑いかけてくる尚先生は反則なほどカッコいい。
のぼせ上がってしまいそうな私を、尚先生はさらに攻めてくる。
「ねぇ、珠美さん」
「な、なんですか、尚先生。とにかく手を。手を離してください!」
尚先生の腕の中でジタバタと足掻く私の耳元で、尚先生は囁いた。
「何故です?」
「な、何故って……」
まさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかった私は、思わずあんぐりと口を開いてしまった。
まぬけ面の私を見て、尚先生は真剣な表情を浮かべる。
その眼差しの強さに、私の胸はドクンと音を立てて高鳴った。
「妄想ばかりしていないで、現実の私を見てはくれませんか?」
「っ!」
尚先生の腕の中から抜けだそうと抵抗していた私だったが、少しも動けなくなった。 私は、先生の腕の中でカチンと固まったまま見上げる。
そこには尚先生の真摯な眼差しがあり、私は顔を赤らめた。だが、今は尚先生のかっこよさに見とれている場合ではない。
尚先生は恐ろしいことを言っていなかっただろうか。
妄想ばかり、そんなことを言っていた気がする。いや、言っていた。絶対に言っていた。 脳内恋愛妄想機については、真奈美さんとフジコ。この二人しか知らないことなのに……
そもそも妄想恋愛に私が行き着いた理由も二人しか知らないことだ。それなのに、どうして尚先生が『妄想』の二文字を口にしたのか。
真っ赤に熟れ上がった私の顔は、今度は真っ青に変わっていく。
「な、な、なんのことでしょう?」
しらばっくれる戦法に切り替えた私を、「おや」といった感じで尚先生は目を見開いたが、そのあとニッと口角が上がった。
尚先生お得意の意味ありげ、かつ色っぽい笑い方だ。
でも絶対に危険だ。彼から離れなくては。脳が私に信号を送ってきたが、どうやらそれは回避出来そうにもない。
尚先生は、私の頭をゆっくり撫でながら楽しげに笑った。
「まぁ、そういうことにしておきましょう」
「な、な、なんのことだか。私にはさっぱり」
念押しのように誤魔化す私の背中には、冷や汗がツゥーと流れる。
尚先生にだけは『脳内妄想恋愛機』の存在についてバレるわけにはいかない。
バレたら最後、そのことをネタに揺さぶりをかけてくるかもしれないからだ。
内心慌てながらも冷静さを装う私を、尚先生はより追い詰めていく。
「口外してほしくなければ、私のモノになってくれとお願いしましたが……その後、珠美さんは考えてくれましたか?」
「え……?」
「あの夜、私と珠美さんの間で何が起きたのか。知りたくはないですか?」
「っ!」
知りたい。喉から手が出るほどに知りたい情報だ。だけど、相手は尚先生だ。
相手が悪すぎるし、危険すぎる。
知りたいです! という言葉を呑み込み、私は目を泳がせた。
「べ、別に知りたくもありませんから」
「強がりを」
「強がりなんかじゃありません!」
顔を背ける私に、尚先生は本当に嬉しそうに笑っている。尚先生の笑い声を聞いて怒りはマックスになる。
ええ、ええ。先生にしてみたらさぞかし楽しいことでしょう
私の弱みを握り、慌てる様子を見て楽しめるのだから。
もういい加減にしてほしい。そんなに私をからかって楽しいのだろうか。
私のモノになってほしいだなんて言っているけど、それは本心なのか。
一連のやりとりを見る限りでは、どう見ても私をからかって遊んでいるようにしか見えない。
いい加減にしてください、と怒鳴ろうとした時だった。
尚先生は急に笑いを引っ込め、真剣な顔をする。両頬を包み込むように、尚先生の手が触れた。
カッと一気に頬が熱くなり、彼の腕の中にいることが居たたまれない。
内心かなり困惑しているし、尚先生に対して怒っている。それなのに身体はとても正直で、イケメンに胸キュンなことをされて喜んでいるようだ。
文句の一つも言いたいのに、それができない。尚先生のまっすぐな視線は私の心まで射貫いてしまうほどだ。
ドクドクと鼓動がうるさい。尚先生に勘づかれでもしたら厄介だ。それなのに、ますます胸の鼓動は高鳴るばかり。
「私はずっと木佐珠美さんに会いたいと思っていました。それも何年も前から」
「え……?」
尚先生の口から飛び出した言葉は、私をフリーズさせてしまうほど威力のあるものだった。
初めて尚先生に会ったのは、総おどりの練習会のときだ。あのときの尚先生の言動を思い出す。
春ヶ山信用金庫に「タマ」とつく女性はいないか。先生に何度も問われた。
あのとき、尚先生とは初めて顔を合わせたのにと違和感を覚えたのだが、やっぱり尚先生はかなり前から私の存在を知っていたというのだろうか。
「総おどりの夜。あの日、すべてが繋がったのですよ」
「繋がった……?」
どういう意味なのだろう。尚先生に問いかけてみても、優しく目を細めるだけで答えをくれない。
ただ、私の頬を包んでいる尚先生の大きな手がとても温かくて優しくて。それだけで胸がキュンと切なく鳴いたのは確かだ。
強い眼差しを注がれて、私は視線を逸らすことができない。
首を傾げる私に、尚先生はゆったりと笑ったのだ。
「ずっと貴女を愛したいと思っていました。そして貴女を愛することができるのは私だけだと。そう信じています」
そう言う尚先生の声は、今までで一番艶っぽく、そして優しかった。
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