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弐
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公暁に射殺されそうな視線を向けられても、紅緋の牡丹を顔に宿した実朝は気にすることなく言葉をつづける。
「彼女を危険な目にあわせたくないのなら、そうするのも方法のひとつだと言いたいだけですよ……唯子姫」
「あ、はい」
「公暁くんが大切だから、あなたは彼を拒んでいるんですよね」
その言葉に、公暁が唖然としている。唯子はすまなそうに公暁の方を向き、こくりと首を振る。
「それとも、他に誰か想う方でもいるのでしょうか?」
にこやかに問いかけられ、唯子もまた、言葉を失う。疑うように、公暁もまた、唯子に視線を向けている。
残酷な質問を前に、唯子は黙り込む。叶わぬ恋だと、心の裡に仕舞いこんでいるこの気持ちを、公暁は知らない。もしかしたら、実朝は気づいているのかもしれない。
気づいていて、唯子の気持ちを暴こうとしている。
「わたし……」
「みなまで言わなくてもわかっていますよ。ぼくはあなたが望む限り、傍にいますから」
すがるように実朝へ手を差し出せば、彼は当然のように唯子の手を摑み、指先へくちづける。
「うそだろ――唯子」
唯子が恥ずかしそうに顔を赤らめ、実朝を見つめる視線が、すべてを物語っている。
公暁は見ていられず、ふたりの世界から逃げ出していく。それを見送って、唯子は申し訳なさそうに実朝を見上げる。顔に牡丹の花を咲かせた、鎌倉三代将軍は、満足そうに彼女を抱き寄せる。
紅緋の花に吸い寄せられるように、唯子は身体を擡げ、彼の顔を見上げて、懇願にも似た言葉を耳にする。
「突然で申し訳ありません。一緒に、京都へ来てくれませんか?」
素直に命じればいいのに、彼は唯子が受け止めてくれるのを待っている。けして自分の気持ちを押し付けない……公暁と違って。
そのことに気づいて唯子は苦笑する。それを否定と捉えたのか、実朝は淋しそうに瞳を伏せる。慌てて彼の手を握り、唯子はぶんぶんと首を振る。
「……すこし、考えさせて、ください」
「彼女を危険な目にあわせたくないのなら、そうするのも方法のひとつだと言いたいだけですよ……唯子姫」
「あ、はい」
「公暁くんが大切だから、あなたは彼を拒んでいるんですよね」
その言葉に、公暁が唖然としている。唯子はすまなそうに公暁の方を向き、こくりと首を振る。
「それとも、他に誰か想う方でもいるのでしょうか?」
にこやかに問いかけられ、唯子もまた、言葉を失う。疑うように、公暁もまた、唯子に視線を向けている。
残酷な質問を前に、唯子は黙り込む。叶わぬ恋だと、心の裡に仕舞いこんでいるこの気持ちを、公暁は知らない。もしかしたら、実朝は気づいているのかもしれない。
気づいていて、唯子の気持ちを暴こうとしている。
「わたし……」
「みなまで言わなくてもわかっていますよ。ぼくはあなたが望む限り、傍にいますから」
すがるように実朝へ手を差し出せば、彼は当然のように唯子の手を摑み、指先へくちづける。
「うそだろ――唯子」
唯子が恥ずかしそうに顔を赤らめ、実朝を見つめる視線が、すべてを物語っている。
公暁は見ていられず、ふたりの世界から逃げ出していく。それを見送って、唯子は申し訳なさそうに実朝を見上げる。顔に牡丹の花を咲かせた、鎌倉三代将軍は、満足そうに彼女を抱き寄せる。
紅緋の花に吸い寄せられるように、唯子は身体を擡げ、彼の顔を見上げて、懇願にも似た言葉を耳にする。
「突然で申し訳ありません。一緒に、京都へ来てくれませんか?」
素直に命じればいいのに、彼は唯子が受け止めてくれるのを待っている。けして自分の気持ちを押し付けない……公暁と違って。
そのことに気づいて唯子は苦笑する。それを否定と捉えたのか、実朝は淋しそうに瞳を伏せる。慌てて彼の手を握り、唯子はぶんぶんと首を振る。
「……すこし、考えさせて、ください」
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