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開闢の始まり
不穏3
しおりを挟む「はぁ...こんなの契約に入ってないんすけど。」
左耳に付いているイヤホン状の物。
黒髪サングラスは明らかにそれに話しかけていた。
( あれって、Bluetoothイヤホンだよね?)
何かがおかしい。
ミストリアに通信技術は無い筈だ。
それは何故かというと、全て魔法で完結してしまうからだ。
電力から移動手段、はたまた保管技術までを。
つまりこれは、異世界の技術だ。
「わかりやした。やればいいんすね?」
何かスイッチが入ったのか、誰かと話しながらメイとデミドランを睨む。
どうやらバックに個人か組織が付いている様だ。
メイの推測では組織だと断定している。
それもかなり大きな組織。
クライノートを狙うという事は、それを何かに『使う』という事だ。
それに偽物のクライノート、あれは個人で作るには出来すぎている。
つまり、だ。
この組織が世界を破滅へと導こうとしている、メイ達の『敵』である可能性がかなり高い。
絶対に、この機を逃がす訳にはいかない。
「あなた達は一体何者なの?」
ド直球で聞いてみる。
「俺達もお前達も同じ組織にいるぞ。生まれた時からな。」
「っ!!!」
メイには分かった。
分かってしまった。
厳密に言えばこのサングラスの男は勘違いをしている。
しかし、それはメイとデミドランが例外だというだけ。
『お前達』。
この言葉がメイとデミドランだけじゃなく、会場にいる全ての人類を指していたのなら、事態は深刻だ。
「さっぱりわかんねぇが、オレ様を前にして『弟子』に物騒なモンをぶち込んだ礼はしなきゃな!」
パキポキと指を鳴らし、首を回すデミドラン。
張り付いた笑みでサングラスの男を見据える。
「何を言っている?」
バシュッバシュッ
バシュッ
瞬時に取り出し構えられた銃から放たれた数本の針。
デミドランの首、肩、胴へと当たる。
「その麻酔針は飛龍でさえ眠らせる。ここからは俺の任務だ。抵抗出来るなどと勘違いをするな。」
サングラスの男は冷徹な口調でそう言い放った。
しかし、麻酔針はチャリンという軽い音を響かせて地面へと落ちる。
「テメェこそ勘違いすんな。オレ様が誰だと思ってんだ?」
麻酔針はデミドランの皮膚を貫通する事は無かった。
古龍の肌は人類の何倍も硬質だ。
今回はメイの無属性防御魔法が守ったが、無くても効かなかっただろう。
「なるほど。古龍クラスの魔力を持ってればそりゃ麻酔なんて効くわけないか。俺が悪かった。」
そそくさと取り出した紫色の球体。
レプリカント・クライノート。
それを、男は飲み込んだ。
男の体を膨大な量の魔力が支配する。
その余波は皮膚を貫通し、メイ達の肌をピシピシと打った。
魔力の作用で、男の身体が変化していく。
腕を、脚を、胴体を、頭を。
黒色の龍鱗が包み、巨大化していく。
3m程の大きさの龍が、そこに生まれた。
『これが暗黒龍デミドランの力だ。大人しくしていれば殺しはしない。後ろの小僧の命は貰うがな。』
威厳のある太い声。
小さき人類の身体を震わす魔力量。
それを見て、メイは思わず吹き出した。
「...ぷっ!」
「ハハハハハハッッッ!!!アッハッハッハッハッ!!!!!マジかお前ェ!!!」
デミドランも腹を抱えて笑っている。
爆笑する二人に、困惑する黒龍。
しかし、嘲られているのを理解し、怒りが爆発する。
『貴様ら何を笑っている!!!!』
ブォンッッッと振られた前足が、メイを捉えた。
ピッ
風圧だけが通り過ぎる。
彼女の指先が、黒龍の前足を止めていた。
「ははは!あーっ!おっかしい!」
爆笑しながら、止めた前足に拳を放った。
空気の破裂する音と共に、前足が爆散する。
体勢を崩した黒龍が思わずよろけた所に、デミドランがもう一つの前足に足払いを掛けた。
ズダンッッ
もの凄い勢いで倒れる黒龍。
『なっ!?!?!?!?!?』
その黒龍の頭に、デミドランは足をかけた。
どれだけ抵抗しても、逃れる事が出来ない程の力だ。
「オイオイ、偽物ってそんなモンなのか?」
『貴様!!一体なんだ!!何者だ!!!』
「オレ様か?オレ様はなぁ...。」
黒龍が叫び、デミドランが笑いながら正体を明かそうとした時、獄炎の魔力が爆発した。
「っ!!テンニーンっ!!!」
獄炎の魔力の渦がテンニーンを包む。
『任務...失敗...か。』
魔力の渦は天高く伸び、もう一度爆発した。
そして姿を現したのは巨大な古龍。
サングラス男の黒龍よりも数倍の体躯。
熱の篭った赤黒い肌に、溢れ出る膨大な魔力。
「その姿...本当に成ったのか?テンニーン...!」
『あの姿...炎獄龍フレモヘイズ...間違いない。』
炎獄龍フレモヘイズが、再びミストリアの大地に降臨したのだ。
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