これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

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前略、道中と山賊と

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「それにしても」

 曰く、次の目的地である大きめの街への道中に、リリアンが唐突に。

「それにしても『セツナドライブ』は恥ずかしいですね。ありえないです」

 あたしの必殺技の悪口を言い始めた。いきなりなんてこと言うんだこのメイドは!

「自分の名前を入れるのは少し、いえ大分恥ずかしいです」
 
 冷静に淡々と、あたしの必殺技はけなされる。
 そんな時くらいこちらを見て欲しいが、リリアンは前を向いたままだ。
 だめかなぁ…カッコいいと思ったんだけどな…『セツナドライブ』…
 あたしは俯きながらも、ついていく足を緩めない。

「ですが、名前をつけるのはいいことです。あるのとないのでは大違いですよ。それより」

 気づいてますか?とリリアン、ん?なにかな?

「あなたの武器、昇格してますよ」

 言われて、スキルボードを確認する。穀物と風の村『コガラシ』を救ったこと、新種の発見と共存を選んだことを女神が気に入り、あたしの装備できる武器のランクを1つ昇格し、対応する武器をランクアップさせる旨が書かれていた。
 昇格、そんなパターンもあるのか!

「お、おぉ~~!」

 なんか嬉しい!強さが認められるより、共存を、わかり合うことを認めてもらったことが。
 装備のランクアップももちろん嬉しいけど。

「ちょっと格好良くなってる!」

 腰から片手剣を抜いてみる。
 今までのは初期装備って感じの、飾りっ気の無い剣だったけど、少しだけついた装飾が格好良い!刀身も少し伸びたみたい!
 その喜びのまま次々に装備変更、それぞれ小さくとも、確かな変化があった、これは……いいね!

 背中のカゴも軽く感じますよ!

「ん?」

 ウキウキ気分のまま歩いていると、前方に3つの人影、あたしたちとの距離はどんどん近づいて。

「お前ら、冒険者だな。金目の物をだしな」

 おぉ、テンプレの悪役のセリフ。山賊だねこりゃ
 山賊たちは、あたしたちに武器を向ける。
 その短く、刀身のうねった剣は、あたしの中の山賊像と一致する。

「ありません」

 キッパリとリリアン。確かに無一文である。

「お前には聞いてねぇよ!奴隷が!」

 確かに、少し見慣れてきたけどリリアンの服装はメイド服に首輪、両手両足の枷にそれをつなぐ鎖。
 奴隷にみえなくもない見た目だ。中身を知ればそんなことは絶対に言えないけど。知らないってことは罪である。

「面白いことを言いますね、虫ケラのくせに」

 声色はいつもどうり静かだけど、明らかな怒りを感じる…
 やってしまいなさい、とリリアンが言い、1歩下がる。

「え、あたしが戦うの?」

 ありゃ、あたしはてっきり、リリアンが制裁するものだと
 正直、あまり戦う気もないし、避けられるなら避けたい。戦い自体好きじゃないしね。

「やらないなら今日の特訓は20倍です」

「よし!かかってこい虫ケラ共め!」

 戦う面倒さと死、比べるまでもない。
 それにしても20倍はやりすぎである、それだけ苛立ちが強い、ということだろう。

「それじゃあ剥ぎ取ってやるよ!」

 飛びかかる山賊たち。
 少しだけ迷って、装備変更、双剣を構える。

「いくよ!」

 正面の山賊の剣を片手の剣でいなし、もう片方で斬る!
 すぐさま装備変更、右の山賊へは片手剣で弾いて、いつもの投石!頭突き!渾身の薙ぎ払い!
 キレイな流れだ、我ながら惚れ惚れする。

「よし!上々!まだまだいくよ!」

 向き直し、まだ距離のある左の山賊へは必殺の!

 装備変更!駆ける!飛ぶ!世界は加速する!
 大怪我させたらいけないね、1歩で。

「『セツナドライブ』!」

 あたしの最速の必殺技の前に、倒れる山賊、安心しな、峰打ちだよ!

 そして装備変更、硬直を消して振り返る。
 最初に倒した山賊が起きようとしてたので両手剣でコツン、ノシておく。

「及第点です」

 少しだけ気分良さそうなリリアンの、足元にいる山賊が起き上がる。危ないーー!

 ガッ!!→山賊の腹にリリアンの拳が刺さる

 ドンッ!→そのままリリアンが馬乗りになり

 ガスッ!ガスッ!→ひたすらタコ殴りに

「やめてリリアン!もう意識ないよ!」

 全力で止めに入る、リリアンの方を襲うなんて危ない真似を。

「失礼、虫ケラに苛立ってしまい」

「虫ケラ虫ケラって俺たちにも名前があんだよ!」 

 ボロボロの山賊たちは、よろよろと立ち上がり、主張する。
 リリアンにしこたま殴られた人は、大丈夫だろうか……

「マンティッロ!」「ディーボ!」「プリモン!」

 それぞれ珍妙なポーズを取りながら、名乗る山賊たち。
 なんで山賊のくせにちょっとオシャレな名前なんだよ。絶対モブの名前じゃないでしょ、とくにマンティッロ。
 似たような見た目なんだから、名前くらい統一してきてほしいを

「雑魚1、雑魚2、雑魚3で記憶しました」

 そうそう、これくらいに。
 ちなみにあたしがあだ名をつけるとしたら、
 総髪、バンダナ、うねうね、なんてどうだろうか。
 それぞれ名乗った順番に、頭の特徴を捉えたナイスなあだ名だと思う。

「それでは、2度と姿を見せないで下さい」

 リリアンは山賊に言い放つ。
 覚えてろーー!お決まりのセリフと共に逃げ出そうとする山賊を。

「お待ちなさい」

 呼び止めるリリアン、殴り足らないのかな?

「金目の物と食料を置いていきなさい」

「悪魔かお前!?」

 悪魔がいた。なぜ1度は行かせようとしたのか、絶望感を与える為だというなら、やはり悪魔という結論にたどり着く。

 夜になり、山賊から奪った食料で腹を満たす。ごめんね、山賊。

「火は見ておくので先に寝ていて下さい」

 少しづつ認めてくれてるのかな、前よりリリアンの優しさがわかるようになってきた。

 こういう時は下手に言い争っても負けるだけだ。お言葉に甘えよう。

「ありがとう、リリアンも早く寝なよ?」

「言われるまでもありません」

 相変わらずこちらに目を向けず、淡々と答える。
 それでも少し距離が近くなった、女の子のことを考えながら眠る。
 この旅が終わるまでに何かできることはあるのかな?

 考えても答えはでなかったので、旅の終わりまでの宿題にして、今日はもう眠る事にした。
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