これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

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前略、名前と学園と…………と

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「ストーム……いや、インフィニティ……?」

「…………」

 ここ何日か、ずっと武器やらなんやらの事で散々騒いだので、リリアンはもはやあたしの呟きに何の反応も返さない。

「あえてのフィニッシュ……?」

 はぁ……、少し大きめのため息。
 意地でも振り返る気はないのか、足を止めないままにリリアンは聞いてくる。

「何だって言うんですか、さっきから、そろそろ怒り……へし折りますよ」

「なんで言い直したの!?」

 なぜ怒るのままじゃダメだったのか、どこを、どうやって。
 聞きたいことはいっぱいだが、墓穴を掘りそうなのでこのぐらいにしておく。

「いやね、必殺技の名前をちょっとね」

 そう、忘れかけていたが、あたしには必殺技がある。

 『疾風のブーツまーくすりー』による、とんでも跳躍により飛び、斬る。
 この刹那の斬撃、名を『セツナドライブ』という、ダジャレじゃない、偶然だ。
 さらに今では最速の踏み込みを経て、『セツナドライブ・改』に進化した、最強である。

「アニキさんを倒した超ラッシュ、これはもう必殺技ではないかと」

 『テンカ』の街でなんか勢いのままに繰り出した、最速、連続の装備変更によるラッシュ。
 あれは今のあたしにできる、最強の攻撃手段だろう、ならば必殺技と呼ぶのがふさわしい。

「なるほど、あなたにしてはまともな悩みですね」

 あたしの悩みが真剣なものだと分かったからか、リリアンはこちらを向く。
 意外な話だが、リリアンは必殺技に名前を付けることに肯定的だ、むしろ推奨まである。

「でしたらストーム、嵐はなかなかいい表現なのでは?」

 しばらく考えた後、リリアンはあたしの案の中から1つをチョイスした、静かだったけどしっかりと聞いてたみたい。

「じゃあ『セツナストーム』で決定しちゃおうかな!」

 うん、いい名前だ、やはり必殺技は叫ぶものだろう。

「……止まりなさい」

 ピタッ、とリリアンは立ち止まり、あたしにも呼びかける。
 嫌な予感がする、恒例の、よく当たる。

「なぜつけたんですか、わざわざ、この世界にある数ある言葉の中から、その……セ……」

 おかしい、同意は得たはずなのにリリアンが今更苦情を言い出した。
 それに。

 そうですか、そんなに恥ずかしいですか、あたしの必殺技は。
 アニキさんといい、リリアンといい、頑なにあたしの必殺技を認めない。
 
 おそらく、言い淀んだ、セ、は技名に入ってるセツナだ。
 アニキさんと一緒だ、ダサいから言いたくない、納得がいかない。

「もしかして、最近言葉に詰まるのはあたしの必殺技に文句があると……?」

「…………そうです」

 やっぱりか!
 何か間があったのは気になるけど、今大事なのはそこじゃない!

「いい?『セツナドライブ』のセツナは、あたしの名前じゃないんだよ」

「そうなんですか?」

 そうなんだ、刹那には極めて短い時間という意味があり、そのぐらい速く、というイメージでつけた。
 つまり正確には『刹那ドライブ』だ。

 あたしの名前と被っているのは偶然だと伝えた、リリアンは刹那という単語自体知らなかった。

「だからそんなにダサくないと思うんだけど…」

 いやどうだ?リリアンの事だ、ここでバッサリと……

「刹那……刹那……セツナ……」

 なんだろう?ぶつぶつと必殺技の名前を呟いている、審議中かな?

「いい名前ですね」

 ゆっくりと顔を上げて、意外な答えが返ってきた

「あなたの……あなたの必殺技はいい名前です」

「やっと分かってくれたね」

 長かったここまで……本当に長かった……
 この安堵は顔に出さない、代わりに当然!といった自信ありげな顔を作る。

「目的地はすぐです、行きましょう、セツナ、ドライブ」

「名前みたいに言わないでもらっていいかな!?」

 いくらなんでもそれはダサい、というよりヤバイ。

 リリアンの楽しげな表情を見ながらついていく、否定と訂正をしながら。


「うわーお……」

 なるほど、人は本当に驚くとこんな声がでるのか、覚えておこう。

 森を抜け、光が見える、その光の中には……

「学園というか、お城だね」

 周りを澄んだ水に囲われたお城があった。
 おそらくここが目的地、『アロロア』だろう。

「キレイですね、私も来るのは初めてです」

 リリアンも見とれているのか、あたしではなくお城を見て言う。
 いや、あたしを見てるな、目があった、なんの用だろうか。

「見てよリリアン、魔法陣」

 あたしはお城の上、空を指差す。
 流石の魔法学園、幾何学的とでも言うのだろうか、とにかくあたしが想像する魔法陣がお城の……いや、学園の空にあった。

「……見たことのない魔法陣ですね」

 んん?珍しい、リリアンは事戦闘においてとても詳しい。
 そのリリアンが知らない魔法陣が、学園の空に浮かぶだろうか?

「なんだか嫌な予感がしますね」

 あたしも同感だ、そしてそれはよく当たる。

「行ってみようか」

 リリアンに伝え、歩き出そうとした時。
 揺れた、地面が。
 震えた、大気が。
 感じた、崩壊を。

「ドラゴン……」

 魔法陣からはドラゴンが現れた。
 まさに、ドラゴンと聞けば誰もが想像する漆黒の鱗をもったドラゴンが。
 
 そりゃあ異世界だ、ドラゴンぐらいいる。
 でも、今はマズい、この状況はダメだ。
 急げ!急げ!走れ!走れ!間に合わなくなるぞ!

「いた!おーい!」

 何を言ったらいいのか分からなくて、とりあえず呼びかける。
 生徒だろうか、白いローブの人たちはあたしに気が付かない、みんな空を見上げて何かを言ってる。

 あたしが行ってもできる事はないかもしれない、でも手が届く!その足があるから!

「セツナドラ……」

「ッ!」

 間に合わせる、その一心で飛ぼうとした時、首を引かれる、リリアンが引っ張ったんだ。
 その事を糾弾すべく振り返る前に、空から落ちてきた炎はあたしの目に映る全てを焼き尽くした。
 学園も命も、なにもかも。

「嘘でしょ……」

「…………」

 会いたかったけど会いたくなかった、こんな状況で。

「ラルム君……」

 ゆっくりと、あたしが視認できる距離までドラゴンは降りてくる。
 久しぶり、なんて言えなかった、言いたくなかった。

 その背には、かつて共に戦い、同じ夢を追うと約束した戦友が乗っていた。
 どうやら彼は夢を叶えたらしい、最悪の形で。
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