これがあたしの王道ファンタジー!〜愛と勇気と装備変更〜

プリティナスコ

文字の大きさ
66 / 72

前略、太陽と月と

しおりを挟む
「なんて言うか……華やかなもんだね」

 白と黒のぶつかり合い。
 いや、どっちも白くて黒いんだけどさ。

 褒め言葉になるのかは分からないけど、戦場にて映える華、とでも言えばいいのか。
 少し前にも感じたが、戦っているリリアンに対して、見とれる、美しいと感じてしまう。

 普段の様子よりも、今の方が魅力的に見えるのは、その活き活きとした表情が原因だろうか。
 それとも、いままでは、あまり大きく動いてるところが見れなかったので、その反動だろうか。
 
「あぁ、そうか」

 ふと、思いつく。
 なぜこんなにも今、リリアンに惹かれているのか、目を離せないのか。

「似てるね、なんとなくだけど」

 本当になんとなく、似ている。
 もう会えない、失われてしまった、16歳の少女に。

 外見の事じゃない、雰囲気の事じゃない。
 外見なんて身長くらいしか似てないし、雰囲気なんて真逆だ。
 まさに太陽と月、もちろんリリアンが月。

 どちらが優れているとかではない、太陽と比べるなら月の方が冷たいイメージを持つだけだ。
 そしてどちらも……

「優しい、そして」

 少し考えて、口に出す、1番の類似点。

「憧れる」

 そうだね、先輩の太陽のような温かさも。
 リリアンから感じる月のような美しさも。

 そのどちらもあたしにはないもので。
 いつかそうありたい、心から思える。

「あたしもいつかは……」

 なれるだろうか、今でも太陽を追っている、あんな風に明るく、温かくなれたのだろうか?
 きっとこれからは月も追うだろう、あんな風に強く、美しく、誰かの目に映るのだろうか?

 そんな感想をいだきながらリリアンを見る、もう1度、憧れる、そんな事を呟こうとした。

「憧れる……僕も憧れましたよ、あなたに」

 思考は遮られる、かつての戦友の声で。
 どうやら詩人の時間は終わりみたいだ。

「お久しぶりです、セツナさん」

「……久しぶりだね、ラルム君、元気だった?」

「えぇ、元気でしたよ」

 もう言える、だってあたしの戦友ではないから、もう敵だから。
 その優しい声、何事もないような言葉、穏やかに頷く仕草、その全てにもう1度腹が立つ。

 いくつか聞きたい事がある。
 いや、本当は1つだけどさ。

「シトリーって言ったっけ、あの娘はどうしたの?」

「ここまで戻る途中に出会いました、助けを求めていたので、困っている人を助けるのは主人公の仕事でしょう」

 そうだね、今はどうでもいい。

「あの服装は?ラルム君の趣味かな?」

「違います、主人公にはあんな服装の従者が必要だからです」

 苛立つ、それはあたしとリリアンの真似だろうか、そんな事がなんの意味を持つのだろう。

「ねぇ、なんでこんな事をしたのかな」

 今までの質問なんてどうでもいい。
 それだけが聞きたかったんだ。

「夢の為ですよ、そしてセツナさんのような主人公になりたかった。主人公は立ちはだかる困難を、自分とは違う思想をぶち壊すものだから」

「違う!」

 思わず叫ぶ、人が『主人公』においてどんな考えを持っていても構わない、それはその人の物語だ。
 だけどさ。

「あたしの物語は!あたしが主人公の物語はそんなものじゃない!」

 あたしの歩んだ道を否定された気持ちになった。
 それは違う、勘違いさせたなら謝ろう。
 
 それでも、そんな風に生きてきたつもりはない。
 困難と、自分とは違う思想と戦ってきた、でも分かり合う為に戦ってきた。
 
 そうだ、これまでいろんな事があった。
 その度に死にかけて、もがいて、あがいて、成長してきた、みんなの力を借りて。
 
 彼はあたしに、主人公に憧れると言った。
 ただ、彼の主人公とあたしの主人公には大きな違いがある。
 
 今こそ宣言しよう、改めて、あたしの理想の物語を!

「あたしが主人公の物語なら、誰にも悲しい思いはさせない!」

 そうだ、それがいい、それでいい。
 きっと上手くいかない、何度も躓く、何度も悲しませて、何度も泣かせてしまう、何度も、何度も。

 それでも立ち上がろう、前を向こう。
 生きてるなら諦めないで、悲しませて、泣かせてしまったなら今度は笑ってもらおう。

「もしあたしを見て、そんなのが主人公だと思うなら、そんな事をするのが主人公なら!今すぐに引きずり下ろしてやる!」

 そうだ、そんなの許さない、言葉がかなり荒くなったが仕方ない。
 まだだ、まだ言いたいことがある。

「それに、ただの人殺しに主人公を語る資格はないよ!」

 当たり前だ、言うだけ言った、もう言葉はいらない。

 真っ向から否定する、彼の主人公を。
 あたしは、そんな主人公ではないと。
 そんな憧れは、間違いだと言い切る。

「そうですか、なら…殺しますね」
 
 その目は諦めと失望と勝手な期待が宿ってる。
 殺す、久しぶりに言われた、殺意とはなかなか慣れないものだ、肌が、空気がピリピリする。

「殺しはしないよ、ぶん殴る」

 もちろん剣で、手加減はない。
 構えて、飛びかかろうとした時。

「と、言いたいところですが、魔力切れです、また後日に」

 杖を振り、消える、初めからいなかったように。 
 振り返る、絶対にそこにいたという証拠、今なお燃え続ける炎に。

 肩透かしを食らった気分だ。
 行き場のない感情が、不愉快だ。

 こんな時に、彼を追えない無力さを噛みしめながら、ひとまずリリアンと合流することにした。
 彼の言う主人公を、もう1度考えながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...