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終章・らすとぱーと編
#49・【夏休み】転生TSっ娘がお姫様抱っこされるとどうなるのか?
しおりを挟む夏だ! 海だ!
そして……
「水着美少女ぉぉおおおお!! ――あでっ゛」
1人盛り上がる俺を戒めるように
アックスのチョップが入る。
「うっせーぞサユ。
変質者扱いされたらどうすんだ。
あと、この双眼鏡没収な。」
「んもうっ、男のロマンは
ドコに行ったんですか。
つまらない男に女の子は寄りませんよアック。」
「残念だったな。
俺ぁサユがいりゃそれで充分なんだよ。
てかよ、毎年それやんなきゃ
死ぬ呪いでもかかってんのか?」
「いえ。……男のロマンですので。
ほら、水着美少女囲んでビーチで
ワイワイするのって最高でしょ。」
そうだ。
レイケメイルの親父、アックス、俺という
男3人だけの虚しい夏なら5回もやってる。
そろそろ囲んでも良い頃合いの筈だ。
「おう、だったら何も問題ねーな。今年は特に。」
何も……問題ない?
「おーい! オノ君、姉たーん!」
「お嬢っ!」
「恋愛音痴ーズぅ!」
「冷えたガソリン見つけましたかー!」
「夏の百合祭りでっせーサユキちゃん!」
「こらソノハ、暴れないでくれ。」
あぁ……確かに、居るな。
よく見覚えがある水着美少女共が。
改めて考えると、
俺含めてTSっ娘含む男4人。
キュピネ、ソノハ、鶴、アイリャの女4人。
あれ? ……男女比完璧じゃね。
「おーしお前ら、よく集まったな。
さぁ、何して遊ぼうか。」
「ビーチバレーするつら!」
鶴にしてはまともな意見が出たな。
ちょうど8人居るんだし、
男組と女組で勝負出来んじゃん。
どっちが強いか気になってたんだよな。
ルールとかあんま知らんけど。
「おし、決まりだな。
じゃ、4人1組で分けていくか。」
アックスめ、こういう時だけ
執り仕切るのが上手いな。だが……
「アック! チーム分けは私に任せて下さい!」
「いや何でサユが!?」
「姉たんならいいつらよ~。」
「お嬢の仰せのままに!!」
鶴、マサ兄、ありがとう。
後でアイス一本ずつ奢ってやろう。
「……ったく、しゃーねーな。早く決めろよ。」
*
俺は先程の考え通り、
男組と女組でチーム分けした。
アックスとミミアは俺の意図が
分かったのかやれやれといった感じだった。
対して、
意外にも否定的な意見を出したのは鶴だ。
「姉た~ん。このチーム分け絶対可笑しいつら。
オノ君と家政夫君は百歩譲るけど、
私よりその獣臭い女のほうがいいつらか……
うぅ……ぐすん。」
鶴ちゃん、アイスの件無しにしていいか。
「サユキちゃん。君の妹って凄く失礼な子だね。
もしかして僕ってそんな臭ってる?」
「ごめんミミア。鶴ちゃんはこういう子なの。
臭ってないから安心して。」
まぁ、文句を出してるのは
鶴だけみたいだし普通に遊ぶか。
「……あ。」
「どうしたサユ。……あ。」
「「――ぁぁああああ!!」」
俺とアックスは息を合わせ叫んだ!
「「審判がいないぃいい!!」」
「居るわ。」
「「「――ッ!?」」」
突如現れた9人目。
……冷気を周囲に放つ水着美人な雪女。
見紛う筈もなかった。
俺の第2の人生を狂わせた張本人。
思わぬ乱入に、一同は驚愕の固唾を飲んだ。
「フィエルナっ!!」
「はっはっは! 馬鹿息子よ!
可愛い女友達がいっぱい居るじゃないか。
どの子を選ぶんだね?」
「選びませんよ!?」
「ほう。つまり吸血鬼君一択だと?」
「さっすがサユのオカン。
よく分かってるじゃないっすか!!」
「海の藻屑にしますよアック。」
「嘘です冗談冗談っ! 前言撤回っ!!」
しかし折角来てくれたんだ。
フィエルナであろうと関係ない。
利用できる奴はとことん利用してやる。
「お母様、先程の言葉……本当ですか?」
「あぁ、馬鹿息子の青春を彩るのも
母である私の務めだからね。
やってやろう……審判。」
「頼みました。」
「任された。」
*
砂浜に線を引き、
海の家からネットを貸し出し準備万端。
夏風が地砂を舞わせ、波に波紋を作る。
ネットの前では
アックスとキュピネが向き合っていた。
俺とアックスは前衛、マサ兄とミミアは後衛だ。
あちらのチームはキュピネ、ソノハが前衛。
鶴とアイリャが後衛である。
といっても、鶴は拗ねてネットの2、3倍くらいの
高さで逆さ浮遊してる。明らかに参加意欲ゼロだ。
「姉たんと同チームじゃないゲームは嫌つら。
今回は……観客やる。」
これにはアックスも頭を抱えた。
それでも、4対3の構図を避けたいのか、
アイリャの横に何かを置いてくれた。
……謎の黒い人形を。
「なぁ鶴、コイツぁなんだ?」
「よくぞ聞いてくれましたオノ君。
これは〈砂鉄の影武者〉。
私の代わりに試合してくれるゲストつら。」
「まー居ねーよりマシか。オッケーだ。」
「やったぁ!」
いやそこオッケーなんかい。
居ないよりはマシだけどさ!!
面倒事が解決して一息ついたアックスは、
再びキュピネへ向き直った。
「キュピネ、日頃の恨み晴らして
やっから覚悟しやがれ。」
「未だにくっつかない
アックス君が悪いんです。」
「両者、位置について……」
フィエルナが深く息を吸う。
ピリピリとした緊張を切り裂く声が、
試合の火蓋を切った。
「ドーンっ!!」
両者、同時に跳び上がる。
やはり先制で決めたのはアックスだ。
体格差で最初から有利が取れていた。
後衛側を貫かんとする軌道を描く球。
その鋭き威力に追いつくなど……
「斜め右43度、風向き南東、弾速約19M/S
以上の計算から導き出される
最適解……ここです。」
アイリャは謎演算を始め、移動、構えに入った。
ボールは彼女に引き寄せられるように動き、
上へと弾け飛んだ。
文句なし、見事なアンダーハンドパスだ。
舐めていた。
アンドロイドの演算力がここまでとはな。
って、これ反則じゃん。
俺らどうやって勝つん?
「決めて下さい、ソノハさんっ!」
開幕ボールの取り合いで力を使った
キュピネを見ての咄嗟の判断か。
中々に手強い。
「もちろんですっ! すーぱーソノハアタック!」
技名ダセぇ!?
見た感じいいクロススパイクなのに勿体ねぇぞ!
おっと、技名にツッコんでる場合じゃねぇ。
前衛側が狙われてポイントが取られちまう!
俺の運動神経で巻き返さねばッ!
――ザッ。
くっ、地面が砂浜の所為で
思った位置取りが出来ねぇ。
ついでに、勢いよく移動した反動で
身体の軸まで持ってかれる。
砂地の運動を甘く見過ぎた。
……が、何とか打ち上げは成功か。
なら後は、アイツに託すのみ!
「決めちゃって下さい! アックぅう!!」
「任されたぜぇ! サユぅううう!!!」
アックスは力強く跳躍し、
構えた手でボールを弾き飛ばした。
華麗なクイックスパイクだ。
*
――ピーーーーッ!!
試合終了のホイッスルが鳴る。
フィエルナ、いつどこでそれ買ったんだよ。
あっ、やっべ。
急に力が抜けてきた。
――バタンっ。
俺は背を砂地につけた。
今、とっても無防備な大の字状態である。
試合の結果は僅差でこちらの勝利だ。
ラリーが思ったより続いてキツかったし、
長期戦向きじゃない
俺はヘトヘトにならざるを得ない。
インドア派が無理に身体動かすと、
こうなるんだよ。
普段から筋トレしてるアックスと、
ザ・アウトドアなミミアはピンピンしてんなぁ。
その体力羨ましいぜ。
「ガソリン……早く私にガソリンを。」
「ミミア~、おんぶして~。」
「家政夫君、おんぶして~。」
ほら見ろ。
俺と同族のインドア派が
スタミナ切れ起こしてっぞ。
えーと。
鶴がアイリャ、ミミアがソノハ、
マサ兄がキュピネを運んでったな。
結果的に俺とアックス2人きりになったな。
この流れ、もしや俺も。
「サユ……俺も運んでやろうか?」
「私の回復を待つという考えはないんですか。」
「ちょっとは喜べよ。」
「どこに喜ぶ要素あるの。大多数の前で
男が男に運ばれるなんて屈辱でしかないわ。」
「そーかよ。色気のねぇ倒れ方しやがって。」
「TSっ娘に色気を求める
アックがバカなんです。」
うぐっ。と言ってアックスは怯んだ。
思う所あるんだな。
「ビーチバレーの時の色気は凄まじかったぞ。」
え? 普通に試合してたぞ俺。
「ずっとおっぱいぷるんぷるん
してて眼福だったぜ。」
待て待て待て。一々俺を見て
アイコンタクト取ってた理由それ?
試合を有利に運ぶ為だと思ってたんだが。
「……じゃあ、私の水着似合ってます?
ソノハちゃんやミミアちゃんと
一生懸命考えてみたんだけど。」
違ーう!? この流れで何聞いちゃってんの俺ぇ!
最強に可愛い水着姿でドギマギする
アックスをからかいてーんだよ!!
俺がコメント求めるの可笑しいだろ!?
普通はここでクレーターパンチかましてだなぁ……
「可愛いに決まってんだろ。最高に似合ってる。
そのォ……なんだ? 凄くいい。」
「えへへぇ……そうですかぁ。」
アックスは気恥ずかしそうに後頭部を掻いた。
紅潮してる顔を見るに、
俺の作戦も成功と言っていいだろう。
いやぁー、TS冥利に尽きるなぁ~。
「サユ、なんでそんなに嬉しそうなんだ。」
「――はぁっ!? ち、ちち違いますよ!?
上空に面白い形の雲があったんです!
そう! あったんです!!」
「んまぁ、そーゆー事にしといてやる。
おし、もう立てるか?」
言って、アックスは手を差し伸べる。
成る程、一連のセクハラトークは
俺が回復するまでの時間稼ぎか。
おし、俺もそろそろ立ち上がるか。
あ、身体起きあがんねーや。
想像以上に疲労してんな俺。
「どうしましょう。立てません。」
「やっぱおんぶするしかねーな。」
最早おんぶしたいだけだろコイツ。
そうはさせねーぞ。
「嫌よ。何で私がアックの背中に
おっぱい押し付けなきゃならないんですか。
……屈辱です。」
「あーそうかよ。」
アックスは、俺の背中と太ももに手を回した。
これは一体……何が始まるってんだ?
その疑問は、彼が立ち上がった
瞬間に吹き飛んだ。
といっても、俺自身は恥ずかしさで噴火しそうだ。
顔の熱も上がったし、心拍だって加速してやがる。
くそぉ! アックスの変態行為で
熱中症になったじゃねーか!! 最悪だよ!!
――誰が予想したよ。
お姫様抱っこしてくるなんて。
あのなぁ、これは漫画やアニメの美少女ヒロインが
やらされるから可愛いくて萌えるんだ。
俺のようなモブキャラTSっ娘が
やらされても地獄絵図なんよ。
「ほら見ろサユ、
これならおっぱいも密着しねーで済む……」
「~~っ!!」
「サユ?」
「さっさと休める場所に運んで下さい……
その、恥ずかしすぎてどうにかなりそうです。」
うぅっ……抵抗して動けねーのが悔しい!!
「分かったぜ。サユ。」
優しい笑みで応えたアックスは、
砂浜を駆け出した。
*
別荘に戻り、お昼に集まった9人のメンバーと
休みがてら昼食を楽しんだ。
俺たちインドア派が疲労を癒してる間。
マサ兄、フィエルナが近場の魚市場で
鮮度抜群の高級魚介を仕入れ、
料理に腕を振るってくれたのだ。
それはそれはもう豪華で美味だった。
伊勢海老っぽい海老、雲丹、いくら、
マグロ、蟹、ホタテ、ハマグリ、牡蠣。
それぞれの素材を活かした高級海鮮料理が
卓に並んだ時は圧巻だった。
今夜の縁日でお口が満足するか
心配になるレベルのクオリティーだ。
食い終わる頃には、皆の体力が完全回復してた。
後は夜の縁日に備え、
設けられた自室でゴロゴロするだけだ。
俺は歯磨きうがいを済ませ、自室に篭った。
無心で天井を眺め、篭る事はや5分。
……ノックされた。
――コンコン。
んだよ。ゴロゴロしてーっつーのに。
ダルい身体を起こし、俺は扉を開けた。
「はーい誰ですー。」
「よっ! サユキちゃん!」
「僕も来たよ!」
「ソノハ、ミミア! どうしてここに!?」
この2人もお昼前に結構消耗した筈だ。
なぜ俺の前に元気溌溂な感じで現れるんだよ。
ゆっくりしても良いんだぞ?
「どうしてって答えは一つでしょ。
今夜、縁日するんだよねサユキちゃん。」
「えぇ……まぁ。」
「という事で、僕らが協力しようと思ってね。」
「……協力?」
ソノハがグッドサインと共に口を開く。
「そうそう! 協力協力っ♪
サユキちゃんさぁ、今夜ただ浴衣着て
はい縁日わいわい終わりぃ♪……でいいの。」
いや、縁日なんてそんなもんだろ。
「はい。」
「ノーノーノー! ノーだよサユキちゃん!」
「ソノハ、あまり騒がないでくれ。」
「確かにぃー、サユキちゃんは
今のおめかしでも充分可愛いけどぉ~、
今から時間かければもっと可愛いなれるよ?」
「いやいや、可愛くなる必要性ないでしょ。
たかがお祭りだよ。」
「へー、そんな事言うんだぁ~。
折角私達で時間かけて良い浴衣選んだのに、
その浴衣に見合う女になる気ないんだぁ~。
あーあ、浴衣が可哀想だな~。
リーダーも可哀想だな~。」
「アックは関係ないでしょ!?」
くそぉ、アックスは余計だが
浴衣が可哀想なのは正論だ。
そのまま着てはい終わりじゃ、
良い浴衣を選んだ意味がない。
乗せられた感じで気に食わないが……
「で、サユキちゃんはどうするの~?」
「……行きます。ソノハちゃんやミミアちゃんが
時間をかけて一緒に決めてくれた浴衣です。
その全てを否定するような行為、
私だってしたくありません。」
俺の言葉に、
ソノハとミミアは互いに目を見合わせ
ハイタッチした。
どこが嬉しいんだ?
2人の反応の意味が分からないまま。
その時は訪れた。
*
夕陽が沈みかける頃合い。
俺は少し遅れてアックスの前に現れた。
本当は同時に行きたかったが、
ソノハとミミアの下準備に時間を削られたのだ。
「おま……本当にサユか?」
見ろ、遅れた所為で呆れられてんじゃねぇか。
「遅くてすいませんアック。
でも私だってそこまで言われたら傷つきますよ。」
「いやいや、そーゆー意味じゃねぇって!」
あたふたと手を動かし、誤解だと主張してきた。
「じゃあ何です?」
「いつもと雰囲気が違うっての。
……その、綺麗で可愛い。とてつもなく。」
「~~っ!!」
「……サユ?」
「あっ、いやー流石私ですね!
まっ! エリートTSっ娘である
私の腕にかかればこの程度楽ちんですっ!!」
あーまただ。まーた顔が熱いし、鼓動もエグいて。
早よかき氷食って冷却せねば。
「サユ、そこは出口だぞ。」
「あは! あははは!
かき氷の楽園がすぐそこにッ!!」
「待てサユぅうー! 早まるなー!
目がグルグルしててヤベーからマジで!!」
「何やってるつら。」
――ずしゅっ。
ふむふむ、このシャキシャキ感と甘酸っぱさ。
間違いない。
今俺の口に放り込まれたのは……
「いちご味のかき氷ッ!!」
「何か分かんねーけど正気に戻ったぁ!?」
「凍月で何度かやってたから試してみた。
……思いっきり遺伝してるつらね。」
遺伝? 何の話だ。
まぁいい。
「アック! 精一杯この縁日を楽しみましょ!」
「おうっ!!」
出店の種類は変わり映えしないものの、
新鮮な夏祭りに思えた。
今年はアックスだけじゃなくて、みんながいる。
俺とアックスを除く7人の愉快な奴らが。
櫓の太鼓に合わせて踊ったり、
射的や輪投げで一喜一憂したり、
美味しい焼きそばやたこ焼きで舌鼓を打ったりと。
一言でいえば、例年の10倍くらい楽しい
イベントに生まれ変わっていた。
締めの花火が打ち上がる時も、そう遅くなかった。
「ア゛ー、サユ。もうそろそろ花火の時間だな。」
「えぇ、そうですね。
みんなで見に行きましょう。」
「やだ、俺はサユと2人きりで見たい。」
そんなの5回もやったしもういいだろ。
今年はみんなと
ワイワイ見る方がいいに決まってる。
「これからやる花火! みんなでみましょう!!」
「すまないお嬢、これから別荘の
掃除をしなくてはならないんだ。」
「おっとぉ!?
私は恋縁魔導具のレポートを纏めなくてはッ!!」
「ミミアちゃーん。
私、別荘に忘れものしちゃったぁ。」
「夜道に女の子1人は危ないな。
安心してくれソノハ、僕が一緒に探そう。」
「私のライト機能も役立ちますよ!!」
「何ッ! 魔王会議だって!?
悪いな馬鹿娘! 吊るし人ちゃんを借りるよ。」
「あの魔王……許さないつら。」
愉快な7人が、
こじつけたような理由で離れていく。
つか、フィエルナ。
何故今俺を娘呼びした?
後でしっかり聞いてやっから覚えとけよ。
「ア゛ー、みんな行っちまったな。」
「これもアックの策略通りですか?」
「真っ先に疑うのやめろ!?
俺何も企ててねーぞ!!」
「ふんっ、そんなの何とでも言えるわ。」
「そーかよ。んじゃ、
花火の見晴らしが良いトコに移動しよーぜ。
もちろん、あの場所だよな。」
あの場所で2人で見るとか……
去年と変わんねーじゃん。
変わんねーけど、しないなんて選択肢はない。
夏祭りの締めを括る大イベントは、
アレしかねーんだ。
「ですよね。」
諦めにも似た声で応え、アックスと歩み出した。
*
――あの場所。
レイケメイル家の居候になってから初の夏。
この夏祭りにて俺は迷子になった。
人混みを抜けて、走り抜けて、
気がついたらこの場所に居たんだ。
座り心地の良い岩に座り、
ポツポツと天に昇る花火を1人眺めていた。
あぁ、俺。
このまま1人で終わるんだなって思いながら。
……その時だった。
耳元に何かが当たった。
何だろうと横に顔を向けると、アイツがいた。
イタズラ小僧のような笑みを返して。
「にっしっし! サユめ!
良い場所見つけんの上手ぇーじゃねーか!
迷子になったと心配したんだぜ俺!!」
「うっさい。私はそこまで子供じゃない。」
「素直じゃねーなサユは!
まっ、いいや。ほらよ、ラムネだ!」
*
「サユ、着いたぞ。」
「――ハッ!?」
俺、昔の記憶に浸ってたのか。
あっという間にあの場所へ着いちまったな。
「遠い目しやがって……何か思い出したのか。」
「まぁ、少しだけ。」
「少しってなんだよ。ほら、座るぞ。」
「うん。」
2人で座り心地の良い岩に座る。
あの時はお互い小さかったから、
広さとかを気にもしなかった岩。
……今となっては窮屈だ。
互いの身体が嫌でも密着する。
アックスの腕が暖かい。
「見ろよサユ! 花火が打ち上がってくぜ!」
「うん。」
――ヒュュウウウ! ドカァァアーン!
夜空に咲き乱れる光の花々。
それをアックスと無言で眺める。
男同士、
こういうロマンに言葉を交わす必要はない。
この美しきイルミネーションを、
目に焼き付けるだけでいい。
儚くも輝く、一夏の景色に浸る。
――これが、俺らの夏だ。
0
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