独占欲強めの幼馴染みと極甘結婚

本郷アキ

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1巻

1-3

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「キスするの、二回目だな」
「前のあれ、キスだったの?」

 私が問うと、純也さんは顔を引きらせて「気づいてなかったのか」と呆れた声で言った。

「当たり前だろ。お前、俺のことまったく意識しないから、すっげぇイライラした」

 言いながら何度も唇をついばまれる。
 まったく意識しないなんて、そんなことあるわけがない。私は常に純也さんを意識していたのに。

「いっつも、頬にキスしてくるから、間違えたんだって思ったの……思おうと、したの」
「間違えるわけないだろ。そもそも好きでもない女にキスなんかするかよ。気づけよ」

 純也さんは私の身体を緩く抱きしめてくる。
 そしてまた唇が近づいて、今度は頬に口づけられた。言われてみれば、彼はどんなに私を可愛がっていても、お父さんとお母さんの前では決してキスをしなかったと気づく。

「何度も言っただろう? 子ども扱いなんてしてないって。でも、お前は全然信じなかった。溺愛する兄貴でいてほしかったんだろ?」
「違うっ! 私は……純也さんが、妹としか見てないんだって思って。でも、もう……お兄ちゃんじゃ、嫌だったの」
「俺はもう、幼馴染おさななじみのお兄ちゃんではいられないよ。我慢の限界だ。なぁ、ふゆ……俺が好きか?」

 唇を軽く触れあわせながら聞かれる。互いの息がかかるほどの距離にドキドキして、頬が火照ほてってくる。うっすらと目を開けると、目の前にいる彼も、彼の瞳に映った私も熱に浮かされたような顔をしていた。

「ん……好き」

 言葉にしてしまえばたったそれだけのことだ。だが、たしかに彼に気持ちは伝わったようだ。
 純也さんは今まで見たことがないほど幸福そうな顔で破顔した。

「そうか」

 唇はすぐに離れていってしまったけれど、私が手を伸ばすと今度はもう少しだけ長くついばむような口づけが贈られた。
 けれど純也さんは、それ以上なにもしてこなかった。

「襲っていいって言ったのに」

 私は名残なごりを惜しむように純也さんのシャツを掴んでしまう。
 すると身体を離した純也さんが呆れたような顔をして、私のひたいを小突いてきた。

「本気で襲うわけないだろ。おばさんの信頼を失いたくないからな」

 黙っていればばれないんじゃ、なんて私の考えはお見通しだったらしい。

「俺とキスするだけで真っ赤になるふゆが、ばれないでいられるとは思えない。それに、来年は受験だろ」
「わかってるよ!」

 私はようやく自分の進路が決まったところだ。お母さんと同じ道を目指し、看護系の大学に行くことに決めた。受かるかどうかは神のみぞ知るところだが、純也さんが国家公務員試験に合格したように、私も頑張りたい。

「卒業するまで、セックスはしないからな」

 期待してるとこ悪いけど、と彼は耳元でささやいてくる。急に男の顔を隠さなくなった幼馴染おさななじみの変貌に、一気に顔に熱が集まってきて涙が出そうだ。

「キスも……しないの?」

 私はついねだるような視線を向けてしまう。せっかく長年の片思いが成就したのに、それはあんまりじゃないか。

「セックス〝は〟って言っただろ。キスはするよ」

 しゃべりながら、どちらともなく唇を重ねる。

「一日一回な」
「なんでっ⁉」

 ひどくないか。と唇を尖らせると、こらえきれない様子で彼が笑う。

「嘘だよ。可愛いな、ふゆ」

 そしてもう一度口づけられ、開いた唇の隙間を舌先でめられる。全身がとろけてしまいそうなほど気持ちがいい。

「ん……っ」

 もっとと口を開くと「これ以上したら、いろいろとまずいからな」と苦笑した彼の顔が、離れていく。

「なぁ、ふゆ。前に言ったこと覚えてるか?」
「前?」
「約束したよな。十八歳になったら結婚しようって」
「そうだけど……」
「だめだよ。約束しただろ?」

 純也さんは折り畳んだ古い紙を机の上に広げた。
 そこには子どもの下手へたな字で『こんいんとどけ』と書いてある。そしてその下には私の名前と純也さんの名前。

(これ、まだ持っててくれたんだ)
なつかしい……」
「ふゆに、プロポーズされたんだよな」
「うん。結婚すれば、ずっと一緒にいられるって思ったから」
「ふゆが大学に受かるまでは家庭教師でいる。けど、高校を卒業したら、今度は本物の婚姻届を持ってくるから……俺と結婚しよう。そうしたら、ずっと一緒にいられる」

 左手の薬指の根元を、彼の指先がとんと突く。ここに指輪をめさせてくれと言わんばかりの仕草に、頬が熱くなった。

「高校卒業って……早くない?」
「早くない。俺は大学を卒業したら実家を出なきゃならない。そうしたらしばらく一緒にいられなくなる。離れるのが不安なんだよ。俺を安心させるためと思って結婚して。ふゆにほかの男が近づかないよう、少しは牽制けんせいになるだろ?」

 この日初めて、彼が大学卒業後に実家を出て寮で生活することを知らされた。
 純也さんの周りにはいつだって女の子がいた。私が知らない間に誰かから告白されるかもしれない。それで不安になってもすぐに会いには行けない。離れるって、そういうことだ。
 籍を入れたら、少しは私も安心できるかもしれない。
 婚姻届と指輪で彼を縛れるかもしれない。

「うん。私も……純也さんに近づいてくる女の人、いや」
「俺もだよ。お前だけでいい」

 両手のひらを重ねあわせて、ふたたび唇が触れる。全身が甘くしびれて、もっともっと触れたくなる。何度も唇をまれているうちに、陶然とうぜんとしてきて身体から力が抜けていく。

「本当は、大学なんて行かなくてもいいって思ってる。苦労させるつもりはないから、結婚して一緒に来てほしいって。勉強頑張ってるのに、こんなこと言ってごめんな」

 くたりと力が入らずもたれかかる私をきつく抱きしめて、純也さんが苦しげな声を漏らす。

「またそうやって、すぐ甘やかそうとするんだから」

 この分では私が働きたくないと言ったら、嬉々として面倒を見そうだ。さすがの私も純也さんのお荷物になるのは御免である。それに、甘やかされればされるほど頑張らねばと思うのだ。

「仕方ないだろ。そういう性分しょうぶんなんだ」
「ますますやる気出た。私、大学に現役合格して看護師になるよ。純也さんが風邪引いた時は、看病してあげるからね」

 私から唇を触れあわせると、純也さんの濡れた唇が深く重なってくる。
 徐々に息が荒くなってきても、口づけが止められない。あらぬところがもどかしくなって、私は座ったまま太ももをぎゅっと閉じた。

「……っ、ふ」

 自分の口から漏れた声がつやを含み甘く響く。
 それが合図であるかのように唇が離された。

「早く……抱きたい」

 欲情し掠れた声とうるんだ瞳、純也さんのそんな表情を見たのは初めてだった。私だって今すぐそうしたい。でも、それがだめだということもわかっている。
 私が色恋にかまけて勉強をおろそかにしたら、家庭教師である純也さんの評価が悪くなる。

「結婚したら……抱いてくれる?」
「もちろん。その日のうちにさらいに行く」

 そして約束通り、卒業式の日に迎えに来た純也さんにそのまま区役所に連れていかれ、あれよあれよという間に私は人妻になったのだ。



 区役所からの帰り道。純也さんと手を繋ぎながら住み慣れた家へと向かっていた。

「なんだか……全然実感ない……婚姻届って、出して終わりなんだね」

 左手の薬指にめられた指輪を目の前にかざしながら呟くと、純也さんが繋いだ手を持ち上げ私の手の甲にキスをした。

「まぁ、書類の手続きだけだからな」

 入籍前、お父さんとお母さんに結婚の挨拶あいさつに来た純也さんは、すぐに結婚式を挙げられないこと、私の大学生活を考えると一緒には暮らせないことを詫びた。
 お母さんは私がずっと純也さんを好きでいたのを知っていたし、私の成績がぐんぐん上昇したことで純也さんへの信頼は厚かったから小躍りしそうな雰囲気だったが、お父さんは複雑そうだった。
 それでも相手が純也さんだから、高校を卒業してすぐの入籍を反対されなかったのだ。それに滋さんと鈴子さんも、私と純也さんが結婚することを喜んでくれた。かなり前から純也さんは私と結婚するつもりでいることを話していたらしい。

「帰る家もばらばらだし」
「寂しい?」

 ねているのがばれたのか、繋いだ手をきゅっと強く握られる。

「うん……でも仕事だから、仕方ないってわかってる」

 無事、国家公務員採用総合職試験に合格した純也さんは、滋さんと同じ道を進み警察庁へと入庁した。これから警察大学校で寮生活が始まるため実家を出る。
 それから各都道府県警察か警察庁での勤務になる。つまり一つのところに留まらない。各都道府県警察はどこに行くかもわからないらしい。
 私は私で看護師になるための大学生活が始まるから気軽に会いには行けない。

「お前は本当にいい子だよな。俺を困らせるようなわがままを言ったことは一度もない。それが寂しいって言ったら驚くか?」
「いい子じゃないよ。私だって寂しい」
「俺はそれだけじゃ足りないんだよ。毎日顔を見てキスしないと、ふゆ欠乏症になりそうだ」

 純也さんがそんなことを言うものだから、こらえていた涙があふれそうになる。私だって全然足りない。恋人になっても私は受験勉強で忙しく、デートすらままならなかった。
 彼に勉強を教えてもらっているのに、いちゃいちゃしたいとか不埒ふらちなことを考えていて受験に落ちたら結婚できない。だから雑念を振り払ってひたすら勉強をした。

「じゃあ……お願い、聞いてくれる?」

 純也さんは忘れているかもしれないが、私はこの日をずっと待っていたのだ。

「ふゆのお願いなら、どんなことでも」
「部屋で二人きりになったら、いっぱいキスして」

 首が疲れるほど上を向いて背伸びをする。純也さんのシャツを掴むと、腰を支えられひょいと持ち上げられた。そしてすぐさま唇が塞がれる。

「ん、んんっ!」

 ここでしてなんて言ってない、と目を見開く。実家の近くだというのに、純也さんは構わず口腔こうこうに舌を捻じ込んでくる。

「へ、部屋でって言った!」
「部屋でもするよ。もう我慢しなくていいんだ。ようやくお前を抱ける」

 ちゃんと覚えていてくれたらしい。
 頬を染めて頷くと、その足で私の実家へ来た。今日は平日で、夕方の六時を過ぎるまでは誰も帰ってこない。今はまだお昼を過ぎたばかりで、時間はたっぷりある。
 純也さんの家は広いけれど、鈴子さんやお手伝いさんが必ずいる。
 勉強場所を純也さんの部屋に変えたのもそのせいらしい。二人きりだと思うと、つい押し倒したくなってしまうからと、ベッドの上で服に手をかけながら彼が言った。
 セーラー服を脱がされて、私は両手を交差し胸元を隠す。自分の身体が人からどう見られるかはわかっている。胸が大きいとはとても言えない、ぎりぎりのBカップ。胸もお尻も子どもみたいだ。

「ねぇ、私……本当に胸ないよ⁉ 純也さん、こんなんで興奮できる?」

 緊張し過ぎてこぼれでた言葉は、あまりにもはしたない。純也さんは珍しく顔を赤らめて、手のひらで顔をおおった。

「お前な……」

 純也さんは着ていたポロシャツを脱ぎ、私のキャミソールの肩ひもに指をかけた。キャミソールに隠れた胸の谷間をあらわにしつつ、穿いていた黒のパンツの前をくつろげる。

「興奮できるかどうか、これなら一発でわかるだろ?」

 彼の動きにつられて視線を下肢に移す。明らかに通常の状態ではない、膨らんだボクサーパンツが目に入ってきた。

「え、あ……」
「胸の大きさなんか、気にしない。好みって言うなら、ふゆの全部が好みだよ」

 キャミソールをたくし上げられ、ブラジャーのホックが外される。おおい被さってくる純也さんの重みを受け止めながら口づけを交わすと、手のひらで薄い胸元を包み込まれた。こうして触られるのは初めてで、恥ずかしいよりも感動してしまう。

「痛いとか、気持ちいいとかちゃんと言って。初めてだからわからないんだ」
「初めて……って、私が?」

 予想外の言葉に目を丸くする。

「決まってるだろ。ふゆ以外の誰とこんなことするんだよ。だからちゃんと教えて。我慢するなよ」

 言いながら彼は寒さで勃ち上がった乳首を指先で弾いてくる。

「ん……っ」
「いいな、可愛い声」

 自分でも驚くほどの甘い声が漏れでてしまう。お風呂で洗っている時はなんとも思わないのに、どうして純也さんに触られるとじんじんするのだろう。
 体重をかけないように私の顔の両側に手を突き、顔が近づいてくる。下唇を舌でねっとりとめられ、軽く噛まれる。つんと舌先で唇をノックされると、開いた隙間から舌先が滑り込んできた。

「はぁ……んっ」

 何度もキスはした。いつも純也さんとキスをするだけで、身体が甘くしびれてしまう。お腹の奥の方が切なくうずいて、はしたなくも秘めた部分がしっとりと濡れて、自分で触りたくてたまらなくなる。
 私もおずおずと舌先を差しだすと、彼の舌に絡めとられ根元からしゃぶられる。美味おいしいと言わんばかりにちゅぷちゅぷと上下に舌をしごかれ、キスだけで呼吸が上がっていく。

「はっ、ん、んっ……じゅ、んやさっ」

 全身が熱くたかぶり、頭の中で心臓の音が鳴り響く。目の奥がじんと熱くなって悲しくもないのに涙があふれそうだ。
 もっと彼に触れたくて、伸ばした手を純也さんの背中に回す。そんなつもりはなかったのに、抱きあった拍子ひょうしに純也さんの勃ち上がった陰茎に膝が触れてしまう。びくりとして慌てて膝を引く私に対し、彼はこれ見よがしにたかぶった下肢を押し当ててきた。

「ん、擦るの……っ、恥ずかしい」

 純也さんが、私で興奮してくれているのは嬉しい。でも、そうされるとなんだか足の間が落ち着かなくなって、変な声が漏れそうになる。

「恥ずかしい? 俺も、一緒だよ……触ってもいないのに、もうきそうなくらい興奮してる。なぁ、ふゆも少しは気持ちいいか?」

 気持ちいいに決まっている。私は目をうるませながらこくりと頷いた。ふたたび純也さんからキスが贈られて、今度は私から舌を絡めた。

「キス、気持ちいいな」

 興奮に掠れた声でささやかれると、重苦しいうずきがり上がってきてみだらな愛液があふれだす。ショーツが水気を含んでじっとりと肌に張りついて、知らぬ間に腰をくねらせてしまう。

「はぁ……ん、んっ、気持ちいい」
「こっちは?」

 指の腹で硬くしこる乳首を擦られた。

「あっ、んっ!」

 思わず、首をらせて反応してしまう。

「よさそうだな」

 純也さんが私の反応を見て嬉しそうに笑うから、羞恥しゅうちでいたたまれなさが増す。
 尖った乳嘴にゅうしばかりをいじられる。指の腹でねたり、少し強めに引っ張ったり。私がどのくらい感じているか観察するみたいに。
 はぁはぁと肩で息をしながら愛撫あいぶに耐えていると、今度はつんと尖った乳首を舌先で転がされた。

「あぁぁっ……」

 肩を掴んだ手に力が入る。背中が浮き上がり、腰を彼に押しつけるようにして揺らしてしまう。それに気を良くしたのか、純也さんは執拗しつように乳首ばかりを責めてくる。ちゅぱちゅぱと唇を使ってしゃぶっては、反対側を指先で弾く。

「あっ、はぁんっ……ん、んっ」

 えも言われぬ心地よさが腰から頭の先まで突き抜けてくる。四肢から力が抜けて、ねだるような甘い声が止められない。頭を左右に振りながら、彼の髪をぐしゃぐしゃにかき回す。
 熱っぽい息を漏らす純也さんが、飴玉をしゃぶるように夢中になって乳首に吸いついてくる。そして乳房を手のひらで押し上げつつ、反対側の乳首を指先で押しつぶすようにいじられた。

「はぁ、はっ、あぁっ……そこ、ばっか……もっ」

 胸をいじられているのに、秘めた部分がうずいて我慢できなくなってくる。純也さんの屹立きつりつが太ももに当たるたびに、膣からとろとろと蜜がこぼれてショーツを濡らしていく。
 純也さんにキャミソールとブラジャーを取り払われ、ショーツを引きずり下ろされる。思った以上に濡れているのか、ショーツを脱いでも下肢の濡れた感覚は収まらない。

「指……痛かったら言えよ」

 そう言われて、指先でそっと陰唇を撫でられる。ぬるりと指先が滑ったのがわかり一気に顔に熱が集まった。純也さんは、そんな私を心配げな様子でうかがい見てくる。

「ちゃんと濡れてる。感じてくれていてよかった」
「気持ちいいから……っ、言わないで」

 私が目をうるませながら訴えると、今気づいたとばかりに「ごめん」と謝ってくる。本当にただ心配していただけらしい。
 膨らんだ秘裂を上下になぞられているうちに、くちゅんくちゅんと水音が大きくなっていく。指先がつっと陰唇を滑り、ひくついた蜜穴に辿たどり着く。ぷちゅっと淫音を響かせつつ、太い指が浅く入り込んでくる。

「あぁぁっ、あっ、はぁっ」

 身体の中で異物がうごめく初めての感覚に戦慄わななき、甲高い声が上がった。隘路あいろを広げるように指で浅いところを責められる。濡れ襞を擦り上げながら、愛液のぬめりを借りて指先がぬるぬると奥へと進んでいく。

「あ、あ、あっ、ま……待って」

 指で蜜襞を擦られると徐々に下肢の中心から甘いうずきが湧き上がってきた。
 彼の指の動きに合わせて、立てた膝がびくんびくんと揺れる。同時に尖った乳首を口の中で転がされると、ほころび始めた蜜口からなにかがあふれそうになり、たまらずに彼の指を締めつけてしまう。

「あぁっ、あ……うっ……はっあぁっ」
「早く、ここにれたい」

 余裕のない純也さんの声にますますあおられる。指を増やし隘路あいろをさらに広げるようにして擦り上げられると、じゅぼじゅぼと耳を塞ぎたいほどの淫音が響く。心地よさはどんどん大きくなっていき、まるで追い立てられるように階段をのぼらされているみたいだ。
 どれくらいそうされていたのか、純也さんの指が引き抜かれた。頭がのぼせたようにぼうっとして全身に力が入らない。なんとなく視線をめぐらせると、しとどに濡れ、すっかりふやけてしまった純也さんの指が目に入る。たちまち、消え入りたいほどの羞恥しゅうちに駆られた。
 彼はパンツのポケットから四角いパッケージを取りだす。
 彼が今日、私を抱く気でいたとわかり、言いようのない喜びが湧き上がってきた。触れあいたいと思っていたのは私だけではなかったのだ。
 しかし、濡れた指では破れなかったのか、純也さんが私にパッケージを手渡してくる。

「ふゆ、開けて」
「うん……」

 端を破いて手渡すと、純也さんが中からコンドームを取りだす。さすがにつけるところは恥ずかしくて直視できなかった。
 そっと横目で見た彼の屹立きつりつは、たくましくり返り、その様にうっとりと魅了されてしまう。血管が浮きでてグロテスクな色合いだと思うのに、好きな人の身体の一部だと思うと綺麗に見えるなんて不思議だ。

れるよ」

 足を持ち上げられ、脈打つたかぶりを蜜口に押し当てられる。私は声も出せずに身体を強張こわばらせた。無意識に痛みに対して身構えてしまう。
 灼熱しゃくねつかたまり隘路あいろを広げて押し進んでくる。いくら指で慣らされたとはいえ、彼の太い陰茎は予想以上に苦しさをもたらした。

「ひっ、あぁぁ、あぁっ!」

 首をらせて純也さんの腕を掴み痛みに耐える。眉根を寄せ、目に涙を浮かべる私の表情で苦痛を察したのか、彼は一度腰を止めて荒く息を吐きだした。
 そのままやめてしまいそうな気配に、私は目に涙をにじませながらも懇願こんがんする。

「いいから……っ、やめないで。抱いて」

 この日のために受験勉強を頑張ってきた。受験が終わるまで、彼がセックスはしないと言ったから。婚姻届を提出するこの日をずっと待っていたのだ。
 早く抱きあいたかった。もっとたくさんキスをしたかった。たとえ痛くても、肌を重ねてこうしていられるのが私にとってどれだけ幸せか、純也さんにもわかってほしい。

「少しだけ……我慢しろ……っ」

 純也さんは私の足を抱え直し、今度は屹立きつりつを一気に突きれてきた。

「……っ‼」

 身を引き裂かれるような痛みが走り、私は唇を噛んで耐える。じんじんと熱い痛みが結合部から絶え間なく湧き上がってきて、目ににじんだ涙が頬を伝って流れ落ちた。

「ごめんな」

 彼がなだめるように私の髪を撫でてきた。まだ痛みはあったけれど、私は大丈夫だと純也さんの背中に腕を回す。
 一度太い部分が中に入ってしまったからか、ゆるゆると腰を動かされても挿入された時ほどの痛みはない。
 抱きあっていると、ようやく一つになれた実感が湧いた。触れあったところからどくどくと心臓の音が伝わってきて、深く繋がっているのがわかる。
 指でいじられた時のような甘いうずきはなかったが、私はこの瞬間、ただただ幸せだった。



 入籍後、私は実家から大学へ通い、純也さんは休みの間に寮への引っ越しを済ませた。
 結婚式も新婚旅行もないまま、新婚夫婦である私たちの別居生活が始まったのだ。
 それから五年経った今でも、離ればなれの生活は続いている。彼は今、ここから新幹線で二時間、さらに電車で数十分かかる公務員宿舎に住んでいる。

「え、なんで一緒に暮らしてないの? 旦那さんと離れて暮らすなんて寂しくない?」

 翔子ちゃんが車椅子の上から不思議そうに聞いてくる。
 もちろん私だって寂しい。けれど、彼の仕事の都合もあるのでどうしようもない。
 純也さんは現在、愛知あいち県警に勤務している。国家公務員に異動はつきものなのだ。
 彼からまだ一緒に暮らす話は出ていないし、ここ一ヶ月は忙しいのか電話も少なく、顔すら見ていなかった。
 私は本当に純也さんの妻なのだろうか。
 一ヶ月に一度、顔を合わせるだけ。それも丸一日一緒にいられるわけではない。移動に時間もかかるし、私の仕事のシフトがうまく調整できないこともある。
 彼は昔と変わらず態度で愛情を示してくれるけれど、そばにいないとどうしても不安になる。いくら「愛してる」「好きだ」と言われても寂しさを埋めることはできない。

「忙しい人だからね」

 私は無理やりため息を呑み込んだ。
 翔子ちゃんにではなく、自分をなぐさめるために口に出す。忙しい人だから、離れて暮らしているから仕方がないのだと。

(どうしようもないことだよね……)

 彼を好きな気持ちは変わらない。けれど、純也さんが今も私と同じ気持ちでいるかどうかはわからない。最近それに気づかされた。
 結婚したら想いは永遠だなんて、夢物語なのかもしれない、と。
 彼がまだ私を好きでいてくれているのか。それすら自信が持てなくなる。

「そっかぁ。じゃ、たまにしか会えない分、会えた時ラブラブだね」

 翔子ちゃんはウィンクしながら口元を緩めた。
 だったらいいんだけどね。と心の中で返しつつ、私は曖昧あいまいな笑みを浮かべそっと息を吐いた。


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