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第二十章 キューバ戦役
マイアミ沖海戦
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妙高達はキューバを南回りに一周してから北上し、キューバとバハマの間を通り抜け、フロリダ半島マイアミの沖合にて、アメリカの輸送船団を捕捉した。今回も妙高が戦隊の旗艦を務めることになっている。
『敵船団までの距離、およそ50kmを切りました』
高雄が妙高に報告を発する。
「うん。進路を反転、敵と同航戦に移行しよう」
『承知しました』
『分かったわ』
敵船団の上空にはエンタープライズの艦載機がおよそ200機、こちらの上空には瑞鶴とツェッペリンと鳳翔の艦載機がおよそ250機飛んでいる。両軍共に完全にお互いの存在を認知したが、未だ戦端は開かれない。
妙高、高雄、愛宕は敵船団からおよそ30kmの距離を保ちつつ単縦陣を組んで、敵と完全に平行に並んだ。敵は揚陸艦を守るようにして、妙高達に平行に巡洋艦を並べている。
『確認できました。敵はデモイン級重巡洋艦が二隻、クリーブランド級軽巡洋艦が3隻、駆逐艦が2隻です』
『私達の方が有利じゃないかしら。確か、デモイン級の主砲は9門だけでしょう?』
主砲はこちらが妙高、高雄、愛宕合わせて30門であるが、敵はデモイン、ニューポート・ニューズ合わせて18門である。
『そうとも限りませんよ、愛宕。デモイン級の装甲は非常に厚いですし、軽巡洋艦の15.5cm砲も甘く見てはいけません』
『そうかしら』
「取り敢えず、実力の分からないデモイン級は置いておいて、クリーブランド級から撃破していきましょう。高雄の言う通り、15.5cm砲でも致命傷になるかもしれないですから」
戦艦は自身の主砲に耐え得る装甲を持っていることが要求されるが、巡洋艦はその限りではない。妙高型も高雄型も、自分の主砲である20.3cm砲に撃たれたら大抵の場合は装甲を貫通されてしまうのだ。
「じゃあ……高雄、愛宕さん、時間はあまりありません。攻撃を始めましょう。距離を詰めます!」
両部隊は本当に射程のギリギリ外で対峙していた。妙高が号令を掛けて少し距離を詰めるだけで、お互いの主砲が敵を射程に収める。
「敵の軽巡を狙ってください。撃ち方始め!」
妙高達はまずクリーブランド級軽巡洋艦を狙って砲撃を始めた。ほとんど間をおかず、デモイン級も砲撃を始める。やはり射程においては重巡に利があり、軽巡はこの距離では何もできない。
お互いに斉射を行い、放たれた48発の主砲弾であるが、命中したものは敵味方共に一発もなかった。
「クッ……当たらない……」
『お互いに動き回って射程ギリギリで撃ち合うなんて、当たる訳がないでしょ』
『愛宕の言う通りですね。もう少し距離を詰めないと』
そもそも弾着まで数十秒かかるし、お互いに効果的な回避運動を常に行っており、命中を得るには未来予知をする他ないのだ。
○
さて、アメリカ海軍の護衛戦隊旗艦はデモインである。デモインの艦長ジョン・F・ケネディ少将は、ついでに護衛戦隊の司令官に任じられていた。艦長と艦隊司令長官が同一人物というのは異常な状況であるが、それだけアメリカ海軍の人材が払底しているのである。とは言え、人間の戦隊と比べれば管理すべき人間の数は大幅に減っているので、非現実的ということもない。
ケネディ少将はデモインの艦橋で麾下の艦艇から報告を受けつつ、デモイン自体の指揮も執っていた。
「お互いに命中はなしか。流石の船魄と言えども未来を読むことはできないようだな。安心した」
「しかし閣下、それも運次第です。このままではクリーブランドが一方的にやれらるかもしれません」
「分かってる。少なくともクリーブランド級の射程までは近付かないとな。全艦最大戦速! 更に距離を詰めるぞ!」
妙高と同様、ケネディ少将も距離を詰めることを選んだ。と、その時、艦橋の真ん中に座っている小さな少女が口を開いた。黒い長髪と緑の目をした何の表情も窺えないこの少女は、デモインの船魄である。
「少将、これで私の価値を証明できる?」
「ああ、その筈だ。日本の巡洋艦を排除し、輸送作戦を確実に成し遂げる。頼んだよ」
「うん。敵の巡洋艦を、沈める」
両軍最大の速度を発揮し、距離は急速に縮まっていく。お互いの距離は23kmを切り、日本軍がクリーブランド級の射程に入った。
「――よし! 駆逐艦以外は全艦撃ち方始め!」
とは言え、やはり射程ギリギリで命中弾を得ることは難しい。初弾は見当違いの海面に突入しただけであった。しかも更に悪い報せが入る。
「モントピリアが被弾! 火災が発生しています!」
「先制を許したか……。で、復旧は可能か?」
「ダメですね……。ボイラーが2つ吹き飛んでます」
「落伍することは避けられないな。ならば、モントピリアは機関停止。戦闘行動を停止させてくれ。彼女達なら、戦闘能力を失った艦を撃ちはしない筈だ」
妙高ができるだけ船魄を殺したくないというのは、アメリカ海軍でも有名な話だ。そして実際にも、妙高達はモントピリアを相手にしなかった。
しかし、敵の塗装を剥がすことすらできていない間に五隻しかない巡洋艦の一隻を失い、ケネディ少将は冷や汗を流していた。
『敵船団までの距離、およそ50kmを切りました』
高雄が妙高に報告を発する。
「うん。進路を反転、敵と同航戦に移行しよう」
『承知しました』
『分かったわ』
敵船団の上空にはエンタープライズの艦載機がおよそ200機、こちらの上空には瑞鶴とツェッペリンと鳳翔の艦載機がおよそ250機飛んでいる。両軍共に完全にお互いの存在を認知したが、未だ戦端は開かれない。
妙高、高雄、愛宕は敵船団からおよそ30kmの距離を保ちつつ単縦陣を組んで、敵と完全に平行に並んだ。敵は揚陸艦を守るようにして、妙高達に平行に巡洋艦を並べている。
『確認できました。敵はデモイン級重巡洋艦が二隻、クリーブランド級軽巡洋艦が3隻、駆逐艦が2隻です』
『私達の方が有利じゃないかしら。確か、デモイン級の主砲は9門だけでしょう?』
主砲はこちらが妙高、高雄、愛宕合わせて30門であるが、敵はデモイン、ニューポート・ニューズ合わせて18門である。
『そうとも限りませんよ、愛宕。デモイン級の装甲は非常に厚いですし、軽巡洋艦の15.5cm砲も甘く見てはいけません』
『そうかしら』
「取り敢えず、実力の分からないデモイン級は置いておいて、クリーブランド級から撃破していきましょう。高雄の言う通り、15.5cm砲でも致命傷になるかもしれないですから」
戦艦は自身の主砲に耐え得る装甲を持っていることが要求されるが、巡洋艦はその限りではない。妙高型も高雄型も、自分の主砲である20.3cm砲に撃たれたら大抵の場合は装甲を貫通されてしまうのだ。
「じゃあ……高雄、愛宕さん、時間はあまりありません。攻撃を始めましょう。距離を詰めます!」
両部隊は本当に射程のギリギリ外で対峙していた。妙高が号令を掛けて少し距離を詰めるだけで、お互いの主砲が敵を射程に収める。
「敵の軽巡を狙ってください。撃ち方始め!」
妙高達はまずクリーブランド級軽巡洋艦を狙って砲撃を始めた。ほとんど間をおかず、デモイン級も砲撃を始める。やはり射程においては重巡に利があり、軽巡はこの距離では何もできない。
お互いに斉射を行い、放たれた48発の主砲弾であるが、命中したものは敵味方共に一発もなかった。
「クッ……当たらない……」
『お互いに動き回って射程ギリギリで撃ち合うなんて、当たる訳がないでしょ』
『愛宕の言う通りですね。もう少し距離を詰めないと』
そもそも弾着まで数十秒かかるし、お互いに効果的な回避運動を常に行っており、命中を得るには未来予知をする他ないのだ。
○
さて、アメリカ海軍の護衛戦隊旗艦はデモインである。デモインの艦長ジョン・F・ケネディ少将は、ついでに護衛戦隊の司令官に任じられていた。艦長と艦隊司令長官が同一人物というのは異常な状況であるが、それだけアメリカ海軍の人材が払底しているのである。とは言え、人間の戦隊と比べれば管理すべき人間の数は大幅に減っているので、非現実的ということもない。
ケネディ少将はデモインの艦橋で麾下の艦艇から報告を受けつつ、デモイン自体の指揮も執っていた。
「お互いに命中はなしか。流石の船魄と言えども未来を読むことはできないようだな。安心した」
「しかし閣下、それも運次第です。このままではクリーブランドが一方的にやれらるかもしれません」
「分かってる。少なくともクリーブランド級の射程までは近付かないとな。全艦最大戦速! 更に距離を詰めるぞ!」
妙高と同様、ケネディ少将も距離を詰めることを選んだ。と、その時、艦橋の真ん中に座っている小さな少女が口を開いた。黒い長髪と緑の目をした何の表情も窺えないこの少女は、デモインの船魄である。
「少将、これで私の価値を証明できる?」
「ああ、その筈だ。日本の巡洋艦を排除し、輸送作戦を確実に成し遂げる。頼んだよ」
「うん。敵の巡洋艦を、沈める」
両軍最大の速度を発揮し、距離は急速に縮まっていく。お互いの距離は23kmを切り、日本軍がクリーブランド級の射程に入った。
「――よし! 駆逐艦以外は全艦撃ち方始め!」
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「モントピリアが被弾! 火災が発生しています!」
「先制を許したか……。で、復旧は可能か?」
「ダメですね……。ボイラーが2つ吹き飛んでます」
「落伍することは避けられないな。ならば、モントピリアは機関停止。戦闘行動を停止させてくれ。彼女達なら、戦闘能力を失った艦を撃ちはしない筈だ」
妙高ができるだけ船魄を殺したくないというのは、アメリカ海軍でも有名な話だ。そして実際にも、妙高達はモントピリアを相手にしなかった。
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