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第二十七章 カリブ海海戦
ジャマイカ沖海戦Ⅲ
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「閣下、せめて安全な艦内に避難した方がよろしいのでは……」
参謀の一人がゴルシコフ大将に警告する。確かに、艦隊司令長官たるものがこんな危険な場所にいるのは異常だし、その必要もない。
「死んだら、その時はその時だ。すぐに誰かが私の職務を引き継ぐさ」
「そ、そういう問題ではなく……」
「大丈夫だ。我らがソビエツキー・ソユーズが守ってくれる。だろう?」
「む、無論です! 同志には指一本とて触れされません!」
ゴルシコフ大将にそこまで言われると、ソユーズは根拠もないのに強気に応えた。
「頼もしいね」
「しかし、揺れるかもしれませんので、何かに掴まっておいてください」
「了解した」
「敵の爆撃機です。迎撃します」
ドイツの爆撃機Ju487が10機ばかりで編隊を組んで、ソユーズに急降下爆撃機を仕掛けようとしてくる。ソユーズは直ちに高角機関砲の照準をそれらに変更し、弾丸の雨で迎撃する。
「クッ……回避されている……」
「やはりあれはグラーフ・ツェッペリンの機体のようだね」
「そのようです。忌々しい」
ドイツが味方しているので、ツェッペリンはドイツからちゃっかり最新の攻撃機を受け取っていた。
遠距離では機関砲弾を軽々と回避するツェッペリンの機体であったが、距離が詰まるほどに命中率は増していき、高度1,000mに迫られるまでに5機を撃墜することに成功した。だが、もう時間切れである。
「落としきれない……。同志、衝撃に備えてください!」
「分かった」
高度800mでツェッペリンの航空隊が爆撃を敢行した。500kg爆弾が音速近い速度で投下され、ソユーズの上甲板後部に次々命中する。ソユーズが警告した通り、艦橋は大きな揺れに襲われた。
「大丈夫ですか、同志ゴルシコフ?」
「私なんかより君自身の心配をしたまえ」
「ご安心を。主甲板装甲は貫通されていません」
「よろしい。しかし、この調子では敵に一方的にやられるばかりだな」
「申し訳ありません、同志」
「君が謝る必要はないだろう。空母相手では戦艦は何もできない」
「はっ……」
敵を水際で食い止めることは辛うじてできているが、空は敵の独壇場である。米ソ連合艦隊は一方的に攻撃されるばかりであった。
「閣下! クロンシュタットが狙われているようです!」
「弱い者虐めとは、感心しないな」
「弱い者というほど弱くないとは思われますが……」
CA海軍は続いて、外周にいるクロンシュタット級重巡洋艦に狙いを定めた。クロンシュタット級は重巡洋艦という名前になっているが、軽めの戦艦並みの船体と防御力を持ち、実質的には巡洋戦艦と称される艦である。
「近くのソビエツカヤ・ウクライナに援護させよう。すぐに彼女に命令を」
「ウクライナは嫌がりそうですね」
ソユーズは苦笑いしながら言う。
「そうなのか?」
「ウクライナは何というか、私以外に興味がないのです」
「君にぞっこんということか」
「ま、まあ、そうとも表現できます」
とは言え、流石に大将からの命令に逆らうウクライナではない。嫌々ながらではあるが命令には忠実に従い、クロンシュタットに近寄る敵機に対空砲火を集中する。だが、敵はそんなことくらい想定済みだったようだ。
『敵がクロンシュタットに隠れて撃てないよ!』
ウクライナからソユーズの艦橋に通信が入る。
「どういうことだ、同志ウクライナ?」
『敵が低空飛行して見えなくなっちゃったんだよ!』
「そういうことか……。状況は悪いようです、同志ゴルシコフ」
敵機は海面スレスレを超低空飛行し、クロンシュタットの影に隠れたのである。ウクライナが高角砲や機関砲を撃てばもれなくクロンシュタットに命中するだろう。
「最外周の哨戒艦は、考慮にすら入れないというようだ」
「舐められたものです……」
クロンシュタットの外側にも駆逐艦などがおり、低空飛行すればそれらの対空砲火に晒される筈なのだが、敵はそんなものなど気にも留めていない様子。
『どうするの、ソユーズお姉ちゃん!』
「クロンシュタットへの援護は中止だ。射角に入った敵を適当に落としてくれ」
『分かった!』
「これでよろしいですよね、同志ゴルシコフ?」
「ああ、構わない。クロンシュタットが雷撃されてしまうが、今からではどうしようもない」
「はい……」
CA海軍の攻撃機(つまりエンタープライズの攻撃機)は超低空飛行でクロンシュタットに接近、魚雷15本ばかりを一気に放った。クロンシュタットの左舷で魚雷が次々と炸裂し、彼女は目に見えて傾いていく。
「クロンシュタットが!」
「あの程度なら、沈みはしないだろう」
「そのようですが……」
クロンシュタットは直ちに右舷に注水し、水平を取り戻す。しかし大量の水が艦内に入り込んだことで、随分と乾舷が低くなってしまった。これではマトモに航行することはできないだろう。
「敵はなおもクロンシュタットを狙っているようです!」
「クロンシュタットを沈める気なのか、或いは沈没寸前になるまで破壊して我々に警告しようとしているのか、どちらかだろうな」
「同志ゴルシコフ! 何を落ち着いているのですか!」
危機感のないゴルシコフ大将の様子にソユーズは苛立った。
「将軍たるもの、どんな時でも落ち着いていなければならないというものだ。君の気持ちは分かるがね」
「……はっ」
そうは言われても、僚艦が撃沈されるかもしれないという事態に、ソユーズは落ち着いてなどいられなかった。
参謀の一人がゴルシコフ大将に警告する。確かに、艦隊司令長官たるものがこんな危険な場所にいるのは異常だし、その必要もない。
「死んだら、その時はその時だ。すぐに誰かが私の職務を引き継ぐさ」
「そ、そういう問題ではなく……」
「大丈夫だ。我らがソビエツキー・ソユーズが守ってくれる。だろう?」
「む、無論です! 同志には指一本とて触れされません!」
ゴルシコフ大将にそこまで言われると、ソユーズは根拠もないのに強気に応えた。
「頼もしいね」
「しかし、揺れるかもしれませんので、何かに掴まっておいてください」
「了解した」
「敵の爆撃機です。迎撃します」
ドイツの爆撃機Ju487が10機ばかりで編隊を組んで、ソユーズに急降下爆撃機を仕掛けようとしてくる。ソユーズは直ちに高角機関砲の照準をそれらに変更し、弾丸の雨で迎撃する。
「クッ……回避されている……」
「やはりあれはグラーフ・ツェッペリンの機体のようだね」
「そのようです。忌々しい」
ドイツが味方しているので、ツェッペリンはドイツからちゃっかり最新の攻撃機を受け取っていた。
遠距離では機関砲弾を軽々と回避するツェッペリンの機体であったが、距離が詰まるほどに命中率は増していき、高度1,000mに迫られるまでに5機を撃墜することに成功した。だが、もう時間切れである。
「落としきれない……。同志、衝撃に備えてください!」
「分かった」
高度800mでツェッペリンの航空隊が爆撃を敢行した。500kg爆弾が音速近い速度で投下され、ソユーズの上甲板後部に次々命中する。ソユーズが警告した通り、艦橋は大きな揺れに襲われた。
「大丈夫ですか、同志ゴルシコフ?」
「私なんかより君自身の心配をしたまえ」
「ご安心を。主甲板装甲は貫通されていません」
「よろしい。しかし、この調子では敵に一方的にやられるばかりだな」
「申し訳ありません、同志」
「君が謝る必要はないだろう。空母相手では戦艦は何もできない」
「はっ……」
敵を水際で食い止めることは辛うじてできているが、空は敵の独壇場である。米ソ連合艦隊は一方的に攻撃されるばかりであった。
「閣下! クロンシュタットが狙われているようです!」
「弱い者虐めとは、感心しないな」
「弱い者というほど弱くないとは思われますが……」
CA海軍は続いて、外周にいるクロンシュタット級重巡洋艦に狙いを定めた。クロンシュタット級は重巡洋艦という名前になっているが、軽めの戦艦並みの船体と防御力を持ち、実質的には巡洋戦艦と称される艦である。
「近くのソビエツカヤ・ウクライナに援護させよう。すぐに彼女に命令を」
「ウクライナは嫌がりそうですね」
ソユーズは苦笑いしながら言う。
「そうなのか?」
「ウクライナは何というか、私以外に興味がないのです」
「君にぞっこんということか」
「ま、まあ、そうとも表現できます」
とは言え、流石に大将からの命令に逆らうウクライナではない。嫌々ながらではあるが命令には忠実に従い、クロンシュタットに近寄る敵機に対空砲火を集中する。だが、敵はそんなことくらい想定済みだったようだ。
『敵がクロンシュタットに隠れて撃てないよ!』
ウクライナからソユーズの艦橋に通信が入る。
「どういうことだ、同志ウクライナ?」
『敵が低空飛行して見えなくなっちゃったんだよ!』
「そういうことか……。状況は悪いようです、同志ゴルシコフ」
敵機は海面スレスレを超低空飛行し、クロンシュタットの影に隠れたのである。ウクライナが高角砲や機関砲を撃てばもれなくクロンシュタットに命中するだろう。
「最外周の哨戒艦は、考慮にすら入れないというようだ」
「舐められたものです……」
クロンシュタットの外側にも駆逐艦などがおり、低空飛行すればそれらの対空砲火に晒される筈なのだが、敵はそんなものなど気にも留めていない様子。
『どうするの、ソユーズお姉ちゃん!』
「クロンシュタットへの援護は中止だ。射角に入った敵を適当に落としてくれ」
『分かった!』
「これでよろしいですよね、同志ゴルシコフ?」
「ああ、構わない。クロンシュタットが雷撃されてしまうが、今からではどうしようもない」
「はい……」
CA海軍の攻撃機(つまりエンタープライズの攻撃機)は超低空飛行でクロンシュタットに接近、魚雷15本ばかりを一気に放った。クロンシュタットの左舷で魚雷が次々と炸裂し、彼女は目に見えて傾いていく。
「クロンシュタットが!」
「あの程度なら、沈みはしないだろう」
「そのようですが……」
クロンシュタットは直ちに右舷に注水し、水平を取り戻す。しかし大量の水が艦内に入り込んだことで、随分と乾舷が低くなってしまった。これではマトモに航行することはできないだろう。
「敵はなおもクロンシュタットを狙っているようです!」
「クロンシュタットを沈める気なのか、或いは沈没寸前になるまで破壊して我々に警告しようとしているのか、どちらかだろうな」
「同志ゴルシコフ! 何を落ち着いているのですか!」
危機感のないゴルシコフ大将の様子にソユーズは苛立った。
「将軍たるもの、どんな時でも落ち着いていなければならないというものだ。君の気持ちは分かるがね」
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