軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

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第二十七章 カリブ海海戦

合同作戦会議

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「そ、そんなのはダメです! 絶対に許しませんよ!」

 妙高が声を張り上げる。

「妙高ならそう言うだろうと思ってたわ」

 瑞鶴は妙高がそう反応するのに期待していた。思った通りの反応を見せてくれて安心した。

「あら、ダメなんですか、瑞鶴?」
「ダメよ。私達はそういう方針でやって来たの。まあ、あんたが私達とは関係なく動くっていうなら知らないけど」
「そ、それでもよくないです!」
「私達とは無縁の奴が何をしても、文句は言えないでしょう」

 愛宕は言う。エンタープライズは瑞鶴と一緒にいる為に月虹に臨時加入しているが、その代償として月虹の行動方針に縛られている。月虹から抜けるのであれば彼女が何をしようと勝手だ。

「そ、それはそうかもですが……」
「大丈夫よ、妙高。こいつが私から離れることはないわ」
「あらあら瑞鶴、私の愛を理解してくれたんですか?」
「んな訳ないでしょ」
「そんなあ」

 ともかく、弱い艦を沈めてソ連に耐え難い損害を与えるという作戦は拒否された。これが一番確実で現実的な作戦ではあったが、米ソ連合艦隊を止める別の方策を考えねばならない。

「エンタープライズさんの方法を受け入れられないのは確かですが、敵を止める手段を考えないといけません」

 高雄は妙高に言った。

「うん、分かってる。瑞鶴さん、敵の戦艦を大破させるのは、無理なんですよね?」

 妙高は瑞鶴に尋ねたが、瑞鶴が答える前にツェッペリンが割り込んできた。

「無理な訳がなかろうが! ソ連の戦艦ごとき、海の藻屑にしてくれる!」
「海の藻屑にはしないで欲しいんですが……」
「はいはい、無駄な強がりはやめなさい、ツェッペリン」
「つ、強がりなどではないわ!」
「はいはい。何か案でもある訳?」
「まあ、不本意ではあるが、今度も特攻を使うしかないのではないか?」
「え、あ、そう。真面目に考えてるとは思わなかったわ」

 特攻は艦載機自体の運動エネルギーや燃料の爆発を加えられるので、普通に爆撃するより大きな損害を与えられるのは確かだ。しかし魚雷と比べると、魚雷は水中で爆発することで最大の威力を発揮するので、特攻で代替することはできない。

「ツェッペリンさんの意見は検討に値するとは思いますが、特攻で戦艦を沈めるのは難しいかと……」

 高雄は言った。ツェッペリンは特に反論できず、残念そうに引き下がった。

「どうしよう。誰か、何かいい案ない?」
「て言うか、そもそも何で私達だけで何とかしようとしてるのよ。アメリカ連邦とドイツは一応味方でしょう?」

 愛宕はこの状況そのものに突っ込んだ。どうして月虹という民間団体だけで米ソ連合艦隊を相手取ろうとしているのかと。

「そうね。私達だけでやるのは失敗した訳だし、一緒に考えた方がいいわね」

 第一段攻撃を月虹だけで実施したのは、CAやドイツとの連携が取れそうにないから、単独で動いた方がよいと判断されたからであった。特に月虹とドイツ海軍は未だに仲が悪いので、それ自体は間違ったやり方ではなかった。

 瑞鶴はCA海軍やドイツ海軍と連絡を取ることにした。CAからは大西洋艦隊司令長官のケネディ中将が、ドイツからはグラーフ・ローンが、キューバの首都ハバナに集結した。船魄達は当然ではあるが、生身の身体一つでここに来た。

 キューバ政府に貸し切ってもらったホテルの広間に一行は集まり、合同作戦会議を開く。

「船魄としてはお初にお目にかかります。私はグラーフ・ローンといいます」
「瑞鶴よ。よろしく」
「はい。今だけは味方ですから、共に力を尽くしましょう」
「ええ、今だけはね」

 二人の間の空気が張り詰める。感情に流されなさそうなグラーフ・ローンであるが、大西洋海戦でシャルンホルストを沈められた時のことを今でも根に持っている。まあ、それを気にしていないのはビスマルクくらいなものではあるが。

 ケネディ中将もローンとは初めて直接顔を合わせるので、お互い軽く挨拶を済ませると、早速本題に入る。

「早速だが、報告がある。USA海軍とソ連海軍は、ハイチのポルトープランスに入港したそうだ」

 ケネディ中将はCA軍の掴んだ情報を共有する。

「ハイチ? ハイチって社会主義国だっけ?」
「そうではない。まあイデオロギーなんかより外交関係の方が問題だが、ハイチは基本的に中立だった。各国の勢力が絡み合うカリブ海では、中立が一番利益を得られるだろう。だが中立ということは、どこの後ろ盾も得られないということだ。ハイチはUSAとソ連に恐れをなして、港を無制限に利用することを許した」

 ハイチの軍事力で米ソ連合艦隊に立ち向かえる訳がないので、妥当な判断だろう。

「敵艦隊が補給を受けているということですか?」

 グラーフ・ローンが尋ねる。

「水や食糧の補給は受けているようだが、燃料や弾薬の補給はないようだ。そもそもそんなもの、ハイチには存在しないからね」
「単なる休憩という訳ですか」
「そういうことになる」

 ハイチ海軍などあってないようなものなので、略奪できる物資もない。米ソ連合艦隊の目的は単に休息を取る事のようだ。とは言え、中継地点ができたということは、彼らの作戦が柔軟になることを意味する。
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