本当に悪役なんですか?

メカラウロ子

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物語は思わぬところで動き始めるものだ。


「アルフレッド様と最近よくお話されているようだな。」

アルフレッドがストーリー上の都合で不在になったからか、取り巻き仲間のトムとジャンが周りを気にしながら話しかけてきた。

目で合図され人気のない部屋へ移動する。



「確かによく二人きりにはなっているけれど、勘違いされているような事はしていませんよ。」

これだから世間様のゲイフィルターというものは嫌なんだ。

男が二人きり、密室にいるからと言ってところ構わず乳繰り合ってる訳ないだろ。

実際のところは知らないけど…

アルフレッドの沽券に関わる事だししっかり否定しておいてやらないと。


しかしトムとジャンからは意外な言葉が飛び出した。

「まだ何もしていなかったのか。そろそろ…
マイク様が戻って来られると聞いているが間に合うのか?」

本当に予想外だ。

マイクというのは父の仕事を手伝っているクリスの有能な兄で、モブ一家から生まれたにしては悪役面だが整った顔をしている。

マイクという名前は如何にもモブって感じだけど。


「マイク様の事だから何か指示があったのだろう?」

どうしよう。何のことだかさっぱりだが判断を間違えたら命に関わる気がする。

トムが続ける。

「ああ、人をよこすと言われクリスが来た時は驚いた。それなのに君は一言も話さないばかりか渡した薬を使った形跡もない。おいそれと言えない話なのは分かるが我々だって準備が必要なんだぞ。」


ちょっと待ってくれ。

トムとジャンはただのモブ仲間だと思っていた。

しかし俺の…いや、クリスの兄と顔見知りどころか様を付けるような間柄で何か良からぬ計画を立てている?

薬とかいう聞き捨てならない言葉も聞こえてきたぞ。


「だが安心した。ようやく目処が立ったんだろ?」

今まで思うように事態が動かずやきもきしていた事だろう。やっと動き出したとトムは興奮気味に続ける。

「クリスも知っている通り、アルフレッド様は反王政派だ。教会に引き入れるには今しかない。」

まてまてまて。

これってまさか。

「クーデター…」


トムとジャンがギョッとしたような目で周りをキョロキョロと見回す。

人がいない事を確認してからんんっと咳払いし小声で続けた。

「我々が仲間である事は変わりないが、誤解を招くような言葉は使わない方がいい。」

何だよ、自分達は反王政派だの教会だの言ってたじゃないか。

というか、教会なんていきなり出てきたな?

確かに、王政内には教会を管理する部門があるが。

何か重要な事なんだろうが思い出せない。



今の話からすると俺の兄マイク主導の元、教会がクーデターを起こそうとしていてアルフレッドを引き入れたい。

その為にこの取り巻き二人とクリスが選ばれたのだ。

クリスがアルフレッドに薬を飲ませ、トムとジャンが教会まで手引きをする。

確かに第二王子を引き入れる事ができれば市民の関心を得て革命は起きるだろう。

現に魔法至上主義である王政は魔力が低い市民から不満が上がっているのは事実だ。

このゆるふわ乙女ゲームがまさかそんなヘビーな裏設定があったなんて!解釈違いでファンが離れてしまうのではないだろうか。


だがアルフレッドも愛の力による魔力は苦言を呈してはいたけれど、クーデターを起こそうなんて微塵も思っていないはずだ。

何より無関係な人達が巻き込まれてしまう事は火を見るより明らかだ。



「そんなのダメだ。」

「なっ!」

「一緒に居て、このまま学友として過ごす事ができたらと考えた事はないか?」

「そんな綺麗事…」
「だから薬を渡したんだろう!それを使えば精神に干渉できるってマイク様が…」

「そんな危険なもの、使えばただじゃ済まないって分かるだろ。下手したら廃人だ。」

この二人からはそこまで政治に興味があるとか、学生運動をしようという気概が感じられない。

「君たちだって分かっているはずだ。兄上は証拠を残さないだろう。実行者をどうするかなんて想像できない訳じゃないだろ?」

兄は一体何者なんだろうか。

この場を収めるため大袈裟に言ったつもりだった。

しかしこの二人の反応をみるに、本当に本物のカタギじゃないタイプの人種のようだ。


「そ、それは…。」
「実家にだって支援いただいている。それを反故にするなんて…。」

煮え切らない反応で二人は不安を口にする。

「俺が、なんとかする。」

「なんとかって、出来るわけないだろ。何か策はあるのか。」

この二人だって本当は、クリスと同じように解放されたくて、逃げ出したいに違いない。


「アルフレッド様は多分気づいている。気づいていて俺達を側に置いていたんだ。」

「アルフレッド様に協力を仰ぐという事か?確かにあの方の実力ならば教会に対峙する事はできるかも知れないが。」


そう、事実を伝えたとして、アルフレッドが気のいいアニキだったとして、俺の命が保証される訳ではない。

教会がどれ程力があるかも何も分からないのだ。
もちろん、俺一人でどうこうできる問題ではない事は理解している。

「後は、とりあえず考える時間が欲しい。兄上が戻る日にちを教えてくれないか?」




思ったよりも時間がないな。協力者が欲しい所だがこの二人はこれ以上難しいだろう。

ひとり考えに耽っているとふいにジャンが話しかけてきた。

「クリス、君もつらいだろう。愛するマイク様を裏切る事になるなんて。」

え!?誰が?それは兄弟愛とかそう言う話じゃないよね?

こういった情報はもっと小出しにして欲しいもんだ。心臓が持たない。

「おっ…、俺は兄上の事をそういう意味で愛してはいないが。」

気丈に振る舞っていると取られたのか、優しい、どこか憂いを含んだ目で二人は見てくる。


「君がこれ程までに強い意志を持っているとは思わなかった。もう少し、お互い心を開いて話し合えばもっと早く分かり合えたかも知れないのに。」

「状況が状況だし仕方ないよ。次会う時も何も変わらぬまま会えるよう祈ってくれ。」


そうだ。本当にそうなるには。

俺も腹を括らなければならないのだ。
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