【完結】殿下、5回目の婚約破棄は私の方からさせて頂きます!~やりたい放題していたら、いつの間にか逆ハー状態でした~

ゆきのこ

文字の大きさ
1 / 66

プロローグ

しおりを挟む

「フローラ、君との婚約を解消したい。」

「・・・・・・・・・。」

「えらく冷静なのだな。もっとショックを受けると思っていたのだが・・・?」

優雅に紅茶を嗜み続ける私への嫌味なのだろうが・・・お生憎様。
もう4度目ともなると、流石に耐性も付きますよ。

それに誕生パーティー前日の忙しい日に、自身が出向くのでは無くわざわざ登城を命じてきている時点で、殿下が私に対して快く思っていない事は、ひしひしと感じ取っておりましたし!!



そう私フローラ・アナスタシアは、何十年も続いていた隣国との戦争で、劣勢だった我が国を勝利に導いたお父様の活躍により、公爵位を賜った・・・成り立てほやほや公爵令嬢で、数秒前迄は目の前に居る第二王子ルークフォン・ヴェストリアの婚約者だった、シンデレラガールです。

で!ここからが、とっても重要!
実は、このやり取り・・・・・・



これで4回目です。



俄には信じられないでしょうが、私は14歳から18歳前日迄・・・つまり今日迄をもう4回繰り返しているのだ。

この後、放心状態となった私は思い切り泣ける場所を探して、城下をひたすら歩くんだけど、大通りで占い露店をしている老婆に話し掛けられるのよ。

それで老婆に〝やり直したい〟と泣いて伝えると・・・目の前の水晶に吸い込まれーーー

王家主催のお茶会の前日・・・つまり私がルークフォン様に婚約者として初めてエスコートされる前日まで戻っている。って流れをもう3回ほど繰り返している事になるわね・・・。

それで・・・私も馬鹿じゃないので、殿下に気に入られる様にとあらゆる手を尽くしたわ。

1回目は・・・可愛げが無いと婚約破棄された事を反映し、積極的に殿下に愛を伝え、媚びに媚びて纏わりついた。
結果・・・ひどく馬鹿っぽい脳内お花畑令嬢っぽくなってしまい、プライドの無い女だと破棄された。

2回目は・・・魅力的な女性になろうと美を極め、学業に励んだ。勿論、殿下へ愛を伝える事も忘れず行った。ただ、流行を過敏に追い求め過ぎて浪費がひどく、ミーハーな令嬢の一員として社交界で定着してしまい、王族になる器ではないと破棄された。

そして今回は、我ながら非の打ち所が無い位に完璧に立ち回れたと思ったのだが・・・何がご不満だったのだろうか?

優雅にティーカップをソーサーに置き、私は口を開く。

「理由を・・・お聞かせ願いますか?私には、知る権利が有ると思いますので。」

私の方をちらりと横目で見た殿下は、少しの沈黙の後、小さな溜息をついて話始めた・・・。

「・・・・・・愛の無い結婚などしたくないのだ。王族としての務めだと我慢してきたが・・・賞品の様に扱われ、この先好いた者の傍に立つことも許されないのは、生き地獄だと思ったのだ。」

「えーと・・・つまり、殿下は今、恋をしていらっしゃるという事ですか?」

「違う。そんな不埒な事はしていない。だが、君と私の間には愛が無いから・・・」

「いえ、私は殿下の事をお慕い申しておりまー」

「やめろ!そんな世辞は!君のその仮面の様な笑みと、教本とやり取りをしている錯覚を覚えるかの様な隙の無い会話に・・・もう、うんざりなのだ・・・っ!」

堰き止めていた本音が思わず出てしまったと言わんばかりに、口を覆い狼狽える殿下は、立ち上がると窓の方へと歩み私に背を向けた。



つまり・・・
私が完璧過ぎて一緒に居て疲れるって事?
それとも人形みたいで気持ち悪いって事?

愛が無い訳では無かったが、そもそも父が賜った公爵位を括弧たるモノにする為の政略結婚なのだから・・・お互いにお勤め感は否めないわよね。

「殿下、お気持ちを察しきれず御無礼を働きましたわ。お許しを・・・」

腐っても私は公爵令嬢・・・。王族に恥をかかせる訳にはいかない。
私の感情が1mmも盛り込まれていない、100点の謝罪をする。

「はぁ・・・、私の言葉はどうやら届かなかった様だな・・・。」

とぼやきながら、深いため息をついた殿下は、正面のソファーへ再度腰を掛けた。

「君はとても美しく、知性に溢れている。〝君を妻に〟と望む者は多いんだ。だから、明日のパーティーで私との婚約破棄を発表すれば、縁談が舞い込んで来るのにそう時間は掛からないであろう・・・、こんな形になってしまったが、君には幸せになって欲しい・・・。」

「勿体無いお言葉ですわ、殿下。最後までお気遣い頂き感謝致します。・・・・・・婚約破棄、お受け致しますわ。」

最早、悲しいという感情も無い。
だけど最後まで完璧な公爵令嬢で在ろうとする私は、笑顔を貼り付けたまま、出された紅茶を優雅に飲み干した。



その後、私は婚約破棄の書面に4度目のサインをしたーーーー。









城門を出て、私はひたすら考える。
もう打てる手は全て打ってきた。
やり直した所で、この婚約破棄は変わらない気がする・・・。

このまま屋敷まで帰り、明日のパーティーを迎えて見ても良いかもしれない・・・。



「ちょいと、そこのお嬢ちゃん」

「・・・あ。」

黒いローブを目深に被った老婆に話し掛けられ、自分が考え込んでいた間に随分と歩いてしまっていた事に気付く・・・。

何を隠そう・・・この老婆こそが、私を3度もタイムリープさせた占い師の老婆なのだ。

「何か悲しい事でも有ったのかい?」

「そうなの。明日が誕生パーティだと言うのに、婚約破棄を言い渡されてしまって・・・」

「やり直したいかい?」

(あれ・・・?何か前回迄とやり取り違う気がするぞ・・・?)

「やり直したとして、何をどうして良いのか分からないわ・・・」

「ありのままの自分を受け入れて、過ごせば良いと思うがね・・・クックック」

「ありのままの自分・・・。公爵令嬢としては、0点になってしまうでしょうね。」

「また、やり直せば良いさね。」

「・・・え?今、何とーーーー?」

「おやまぁ、自分だけが繰り返していると思っていたのかい?」

4回目にして驚愕の新事実だわ・・・。
全く持ってその通りです・・・。自分だけが、繰り返していると思って居ました。

「まぁ、そんな事はどちらでも良いさね。・・・さぁ、

(うーん・・・。まだ私、決めた訳でも無いのだけれど・・・)

確かに私は、〝殿下に婚約破棄されない事〟に全てを捧げていて、自分の気持ちや感情を蔑ろにしていたわね・・・。

「ありのままの自分ね・・・。やってみるわ!」

前回迄と同様、水晶に手を伸ばすと体が吸い込まれていった。



そして、5回目の14歳が始まったーーー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...