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本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~

5回目は好きにさせて頂きます!

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目を開けるとそこは見慣れた自室の天井だったーーー。

すぐさまベッドから鏡の前に移動し、自分が4回目のタイムリープに成功したと確信をした。

14歳の私は胸も膨らみきっておらず、身長も少し縮んでいた。
ミルクティブラウンの髪の長さは変わらないが、母親譲りのレッドブラウンの瞳は未だ幼さを残している。

「もう恋愛は懲り懲り・・・。女としての幸せなんてどうでもいいわ!私らしくありのまま過ごして、婚約破棄だってこっちから言ってやるわ・・・っ!」

私はこの5回目の人生を、ありのまま過ごすと固く誓い、宣誓し、拳を高らかに挙げた。

そして、これを最後にしようと思った。

(まさか、お婆さん迄巻き込んで居たなんて・・・申し訳無かったな。本当にこれで最後にしなきゃ・・・)

まさかの新事実だったが、知れて良かったのかもしれない・・・。
これを最後にするという踏ん切りも付けられたし、私も流石にもう疲れた・・・。

窓の外を眺めると、陽がかなり上がって来ておりハッ!とする。

時計を見てメイドが起こしにくる時間が迫っている事に気付き、私は慌ててベッドに戻ったーーー。








「明日は殿下がエスコートして下さる初めての公式な場だな?フローラ。」

朝食を終えて食後のティータイムに差し掛かってすぐに父上から声を掛けられる。

「そうですわね。」

素っ気ない私の返事にお父様もお母様もお兄様でさえ・・・解せない顔を浮かべる。
まぁ、前回までの私だったら満面の笑みで『楽しみ過ぎて今からドキドキしておりますぅ!』とか言うのだが・・・本当は楽しみじゃない。どちらかと言うと憂鬱な位なので、この返事が私の感情に最も適している。

「楽しみでは無いの?フローラ・・・」

お母様が心配そうに私を見つめる。

「私を目の敵にしている伯爵令嬢達がおりまして・・・また嫌がらせをされるかと考えると、楽しい気分にはなりませんわ。」

私の初めての告白に両親は驚き、お兄様は似た様な経験が有るのが・・・苦虫を噛み潰したような表情で俯いてしまった。

「そうだったのか・・・。だが、明日の茶会では殿下が守って下さるであろう?」

「殿下は王族にあらせられるのですよ? 私に終始べったりなど、有り得ませんわ。」

そこまで言うと、運ばれて来たお気に入りの紅茶に手を伸ばし、香りを堪能しながら口に運ぶ。

公爵位に賜ってまだ日の浅い我が家は、貴族社会ではまだまだ余所者扱いだ。

騎士として王族のお墨付きを頂いているお父様や、屋敷から殆ど出られないお母様は、実情をイマイチ理解していなかった様で、私の告白に落ち込んでいる様子だ。

「すまんな・・・。父はお前の騎士にはなれて居なかった様だ・・・。」

そのお父様の言葉でピーン!と閃く。

「そうですわ!そうですわよ!・・・・・・守って貰う必要など有りませんわ!」

勢いの余り手に持っていたカップをはしたなくガシャンッ、と音を立ててソーサーに戻してしまった。

いつも温厚で大人しい私が急に声を荒らげたものだから、使用人も含め全員が目を丸くしていた。

「ど、どうしたっていうの・・・?フローラ・・・?」

お母様が落ち着きなさいとジェスチャーをしながら、私に諭す様に聞いてくる。

「いえ・・・こんな簡単な事に長年気付かなかったとは、私も愚かですわね・・・。
ふふふっ。明日のお茶会、とても楽しみになって参りましたわ。」

私の笑みを見た家族は、揃いも揃って顔が引き攣っていた。何故だ?いつも通りの100点満点令嬢スマイルなのに・・・

そしてその後、誰も何も喋らなくなってしまった。
いつもティータイムはお父様が主導で会話が弾むのに・・・どうしたと言うのであろうか・・・?

「お父様、明日は〝騎士の娘〟として茶会を楽しんで参りますわ。・・・・・・では、自室へ戻らせて頂きます。」

何となく居心地が悪くなって来たので、紅茶を飲み干し、お父様へそう告げるとメイドを連れて自室へと戻った。

その後食堂で、お父様が立ちくらみを起こし、ひと騒動有った事は、後にメイドから聞いて知った。
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