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本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~
騎士の娘として
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その日は茶会の準備に大忙しで、あっとゆう間に就寝となった。
お父様はお仕事、お兄様はアカデミーに通っている為、昼食はいつもお母様と2人で頂くのだが、来客対応という事で1人で食べた。
そして夕食は、マナーのテストも兼ねて先生と自室で早めに頂いてしまった為、朝食後、家族と顔を合わせる事無く茶会の日を迎えてしまったーーー。
朝から入浴を済まし、念入りにマッサージや、オイルを塗りたぐられ、茶会の準備で私の部屋は大騒動だ。
急ぎ足で食堂に向かうと、既にお父様もお母様もお兄様も朝食を終え、食後のティータイムを楽しんでいた。
「おはようございます。お父様、お母様、お兄様。遅くなってしまい、申し訳ございません。」
私は軽く淑女の礼を取り、お父様の許しを得て着席する。
すると、お母様と顔を見合わせたお父様が神妙な面持ちで私に話し掛けてくる。
「フローラ・・・。その、今日の事だが・・・行かなくても良いんだよ?」
「・・・・・・え?」
これは本当に予想外のお言葉過ぎて、素の声が出てしまった。
前回迄であれば、家族には茶会を楽しんでおいでと笑顔で送り出されていた筈なのだが・・・。
「貴女が昨日、朝食の席で人が変わってしまったかの様に声を荒げたものだから・・・旦那様がとても心配なさっているのですよ。」
「フローラ・・・、嫌がらせが辛いのでは無いか?無理が祟り、昨日の様に取り乱してしまったのだろう?」
(お父様・・・。何という盛大な勘違いを・・・。)
でも、思い知りました。
私って家族にまで猫被って、徹底して本当の自分を殺していたのね。
前回の婚約破棄の際に殿下に言われた通り、私は教本に出てくる〝淑女〟を体現しただけの感情の無いハリボテ女だった訳だ・・・。
「お父様、お母様・・・ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。ですが、私は大丈夫ですわ。本日の茶会は〝騎士の娘として〟楽しんで参りますから」
私がにっこり笑うと、お父様もお母様も昨日同様、何故か狼狽えた様子で少し後退りした。
(私の長年の努力の賜物、令嬢スマイルの調子が今世は悪いわね・・・)
「えーと・・・フローラ、その〝騎士の娘〟とはどういう意味なのだ?」
「愛する者を守る為に剣を振るう。という意味で御座いますわ、お父様。」
「はっははは・・・フローラは冗談がユニークだなぁ!」
乾いた笑い声を付け加えて、私の言葉を〝冗談〟だと思いたいお父様は、額に汗を沢山浮かべて、目でお母様に必死で助けを求めている。
「フローラ・・・。まさか、本気じゃないわよね?」
「勿論ですわ、お母様。本当に剣で斬りかかったりする訳では無く、物の例えですから・・・お父様もそんな心配なさらないで下さい。」
満面の笑みで対応したにも関わらず、お父様とお母様は、相も変わらず引き攣った顔をして口角をピクピクさせている。
そして・・・そんな両親など気にも留めずに、優雅に朝食を進める私を〝ポカーン〟とした顔でお兄様が見つめていた。
(口が開きっぱなしな事すら、気付けないほど、何に驚いていらっしゃるのかしら?)
お兄様に声を掛けようとしたが、お父様の席から大きな溜息が聞こえて来たので、引っ込めた。
「あぁ・・・フローラ・・・一体、昨日からどうしてしまったんだい?花のように愛らしい子だったのに・・・。怖い笑みを浮かべたり、好戦的な事を言い出したり・・・」
この様子から察するに昨晩は、私のせいで相当悩ませてしまったに違いない・・・。
テーブルに肘を着いて、項垂れながら発したその言葉は弱々しく、隣でお母様が一生懸命ハンカチで仰いでいる。
私はナイフとフォークをお皿に置き、ナプキンで口元を拭うと、お父様の方をまっすぐと見据え、姿勢を正した。
「お父様・・・。私は今まで公爵令嬢として完璧を目指すあまり、自分を見失っておりました。昨日からの私が別人の様に映るのであれば・・・それだけ私が自分を殺して生きていたという事です。」
「フローラ・・・」
「でも、そんな事を続けても誰も幸せになんてなれません・・・。それを悟ったのです。今の私がありのままのフローラなのです・・・。」
そうだ・・・・・・。
そんな風に自己犠牲精神で何度もやり直したのに・・・最後には婚約破棄されたんだから・・・。
「旦那様・・・。確かに、近年のフローラは頑張る余り、自分を見失っている様に私も思っておりました。幼少の頃のフローラは、〝騎士になる〟と旦那様に稽古を強請る様な子でしたから・・・」
「お母様・・・」
(そんな恥ずかしい過去まで、引っ張り出さなくても良かったのですが・・・。)
「そうだな。確かにフローラは・・・正義感が強く、剣の筋も良い子だったな・・・。」
「お、お父様・・・?」
(ん・・・?剣の筋は、関係ないのでは?!)
「ぼ、僕も・・・」
ここまで静観を貫いていた(表情は豊かだったが・・・)お兄様が、初めて言葉を発した為、私だけでなくお父様もお母様も、何なら使用人達も驚いた様子だ。
「今のフローラの方が・・・好きです。出会った頃の天真爛漫なフローラの方が、君には似合っている・・・。」
「お兄様・・・」
(そんな昔の事を覚えていて下さっていたのね・・・。)
実は私は、6歳まで一人っ子だった。
私が産まれた時には既に隣国とは戦争中で、お父様は1年に1度、3日間しか会えない上に、騎士として明日はどうなるか分からない身の上・・・。
子供は、必然的に増えず私一人だけだった。
戦争終え、お父様が帰ってきた時に、戦地より連れて帰って来たのが、隣国で戦争孤児となってしまったお兄様だった。
その後、褒賞として公爵位を賜った事により、跡継ぎとして正式に養子縁組を行った。
ふと振り返って見ると・・・このループしている間、殿下の事ばかりで家族とこんな風に本音で話す事も、家族を思い出す事もしなかったかもしれない・・・。
(少し昔話に花を咲かせるのも、良いかもしれないわね・・・)
「お兄様が初めて我が家に来た日の事は、私も覚えて居ますわ。」
さて、お兄様のお話をしましょうか。
お父様はお仕事、お兄様はアカデミーに通っている為、昼食はいつもお母様と2人で頂くのだが、来客対応という事で1人で食べた。
そして夕食は、マナーのテストも兼ねて先生と自室で早めに頂いてしまった為、朝食後、家族と顔を合わせる事無く茶会の日を迎えてしまったーーー。
朝から入浴を済まし、念入りにマッサージや、オイルを塗りたぐられ、茶会の準備で私の部屋は大騒動だ。
急ぎ足で食堂に向かうと、既にお父様もお母様もお兄様も朝食を終え、食後のティータイムを楽しんでいた。
「おはようございます。お父様、お母様、お兄様。遅くなってしまい、申し訳ございません。」
私は軽く淑女の礼を取り、お父様の許しを得て着席する。
すると、お母様と顔を見合わせたお父様が神妙な面持ちで私に話し掛けてくる。
「フローラ・・・。その、今日の事だが・・・行かなくても良いんだよ?」
「・・・・・・え?」
これは本当に予想外のお言葉過ぎて、素の声が出てしまった。
前回迄であれば、家族には茶会を楽しんでおいでと笑顔で送り出されていた筈なのだが・・・。
「貴女が昨日、朝食の席で人が変わってしまったかの様に声を荒げたものだから・・・旦那様がとても心配なさっているのですよ。」
「フローラ・・・、嫌がらせが辛いのでは無いか?無理が祟り、昨日の様に取り乱してしまったのだろう?」
(お父様・・・。何という盛大な勘違いを・・・。)
でも、思い知りました。
私って家族にまで猫被って、徹底して本当の自分を殺していたのね。
前回の婚約破棄の際に殿下に言われた通り、私は教本に出てくる〝淑女〟を体現しただけの感情の無いハリボテ女だった訳だ・・・。
「お父様、お母様・・・ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。ですが、私は大丈夫ですわ。本日の茶会は〝騎士の娘として〟楽しんで参りますから」
私がにっこり笑うと、お父様もお母様も昨日同様、何故か狼狽えた様子で少し後退りした。
(私の長年の努力の賜物、令嬢スマイルの調子が今世は悪いわね・・・)
「えーと・・・フローラ、その〝騎士の娘〟とはどういう意味なのだ?」
「愛する者を守る為に剣を振るう。という意味で御座いますわ、お父様。」
「はっははは・・・フローラは冗談がユニークだなぁ!」
乾いた笑い声を付け加えて、私の言葉を〝冗談〟だと思いたいお父様は、額に汗を沢山浮かべて、目でお母様に必死で助けを求めている。
「フローラ・・・。まさか、本気じゃないわよね?」
「勿論ですわ、お母様。本当に剣で斬りかかったりする訳では無く、物の例えですから・・・お父様もそんな心配なさらないで下さい。」
満面の笑みで対応したにも関わらず、お父様とお母様は、相も変わらず引き攣った顔をして口角をピクピクさせている。
そして・・・そんな両親など気にも留めずに、優雅に朝食を進める私を〝ポカーン〟とした顔でお兄様が見つめていた。
(口が開きっぱなしな事すら、気付けないほど、何に驚いていらっしゃるのかしら?)
お兄様に声を掛けようとしたが、お父様の席から大きな溜息が聞こえて来たので、引っ込めた。
「あぁ・・・フローラ・・・一体、昨日からどうしてしまったんだい?花のように愛らしい子だったのに・・・。怖い笑みを浮かべたり、好戦的な事を言い出したり・・・」
この様子から察するに昨晩は、私のせいで相当悩ませてしまったに違いない・・・。
テーブルに肘を着いて、項垂れながら発したその言葉は弱々しく、隣でお母様が一生懸命ハンカチで仰いでいる。
私はナイフとフォークをお皿に置き、ナプキンで口元を拭うと、お父様の方をまっすぐと見据え、姿勢を正した。
「お父様・・・。私は今まで公爵令嬢として完璧を目指すあまり、自分を見失っておりました。昨日からの私が別人の様に映るのであれば・・・それだけ私が自分を殺して生きていたという事です。」
「フローラ・・・」
「でも、そんな事を続けても誰も幸せになんてなれません・・・。それを悟ったのです。今の私がありのままのフローラなのです・・・。」
そうだ・・・・・・。
そんな風に自己犠牲精神で何度もやり直したのに・・・最後には婚約破棄されたんだから・・・。
「旦那様・・・。確かに、近年のフローラは頑張る余り、自分を見失っている様に私も思っておりました。幼少の頃のフローラは、〝騎士になる〟と旦那様に稽古を強請る様な子でしたから・・・」
「お母様・・・」
(そんな恥ずかしい過去まで、引っ張り出さなくても良かったのですが・・・。)
「そうだな。確かにフローラは・・・正義感が強く、剣の筋も良い子だったな・・・。」
「お、お父様・・・?」
(ん・・・?剣の筋は、関係ないのでは?!)
「ぼ、僕も・・・」
ここまで静観を貫いていた(表情は豊かだったが・・・)お兄様が、初めて言葉を発した為、私だけでなくお父様もお母様も、何なら使用人達も驚いた様子だ。
「今のフローラの方が・・・好きです。出会った頃の天真爛漫なフローラの方が、君には似合っている・・・。」
「お兄様・・・」
(そんな昔の事を覚えていて下さっていたのね・・・。)
実は私は、6歳まで一人っ子だった。
私が産まれた時には既に隣国とは戦争中で、お父様は1年に1度、3日間しか会えない上に、騎士として明日はどうなるか分からない身の上・・・。
子供は、必然的に増えず私一人だけだった。
戦争終え、お父様が帰ってきた時に、戦地より連れて帰って来たのが、隣国で戦争孤児となってしまったお兄様だった。
その後、褒賞として公爵位を賜った事により、跡継ぎとして正式に養子縁組を行った。
ふと振り返って見ると・・・このループしている間、殿下の事ばかりで家族とこんな風に本音で話す事も、家族を思い出す事もしなかったかもしれない・・・。
(少し昔話に花を咲かせるのも、良いかもしれないわね・・・)
「お兄様が初めて我が家に来た日の事は、私も覚えて居ますわ。」
さて、お兄様のお話をしましょうか。
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