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本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~
戦闘服に身を包み
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その後、1人残された私は軽めに朝食を済ませ自室に戻った。
メイドが用意してくれていた、ドレスやアクセサリーに身を包み、今は鏡台の前に座り、化粧と髪の毛の最終調整中だ。
(不思議ね・・・。この髪も化粧もドレスも、今日は全て戦闘服の様に感じるわ・・・!)
このドレスに袖を通すのは、勿論今世では初めてとなるが、私の体感としては何十回目となるのか・・・もう分からないレベルだ。
殿下から初めて頂いたプレゼントとなるこのドレスは、この後も手直しを加えて、大切なパーティーの時には必ずと言っていい程袖を通していた。
そのパーティーが悉く失敗に終わっていた為、ドレスに罪は無いと分かっていても、気分が下がってしまう代物だった筈なのに・・・
自分の気持ちが違うだけで、こうも見え方が変わるのかと、小さく笑みが零れてしまった。
「あらお嬢様、お茶会が楽しみで仕方ないのですね。」
私の小さな笑みを見逃さなかった彼女は、幼い頃から私の専属メイドとして働いてくれている、アーニャだ。
鏡越しにアーニャと目があい彼女の優しい笑みに、笑顔で返す。
「ええ・・・、とても楽しみよ。」
「本日は、お嬢様と殿下の婚約発表の為のお茶会ですからね・・・とびきり美しくして行かなくては、いけませんね!」
恐らくアーニャが想像している様なロマンチックな展開を〝楽しみ〟にしている訳では無いのだけれど・・・まぁ、そういう事にしておこうかしらね。
この国で王位継承権を持つ男性は、必ず16歳迄に婚約者を持たなくてはならない。
そして、昔からの習わしで婚約者を公に発表する場として、自身主催の茶会を開く。
つまりどういう事かと言うと・・・、16歳の王子が主催する王宮茶会は、
〝婚約者を決めました!お披露目したいので来て下さい〟
という意味も含まれているのだ。
つまり、私は本日の茶会においては、主役級に近いゲストなのだ。
よって、気合いを入れて身支度するのも、至極当然な訳なのよ!
(なのに・・・、キースランド伯爵令嬢とその取り巻きズには、毎回散々馬鹿にされるけどね~!)
キースランド伯爵家は、歴史も古く由緒正しいお家柄だ。美しいと噂のご令嬢が殿下と同い年で、私が公爵位を賜る前迄は、殿下の婚約者最有力候補として、名を馳せていたらしい・・・。
何もかも私より優れていると思い込んでいるキースランド伯爵令嬢は、私が婚約者に選ばれた事がとにかく腹立たしいらしく、今日のお茶会も含め、事ある毎に嫌がらせをして来るのだ。
勿論、私は殿下の婚約者であり公爵令嬢。おまけに歴史はたったの数年しかなく、殿下が庇ってくれる訳でも、貴族のお友達が居る訳でもない。
嫌がらせに対して、ひたすら謝罪を繰り返し、耐え忍ぶ事しか出来なかった・・・。
(ふんっ・・・!でも今日の私は、そんな事しなくても良いのよ!だって、婚約なんて・・・もうどうでも良いし、お父様からお墨付きも頂いたのだから・・・〝騎士の娘〟として闘うわ!)
思わず笑みが抑えきれずに溢れてしまい、アーニャにまた見付かってしまったが、主人の真意など分からないアーニャは、
「まぁ!ご帰宅なさったら、是非お話を聞かせて下さいませね?」
と私の髪を梳きながら、鏡越しに期待に満ちた眼差しを向けて来る。
「楽しみにしておいて頂戴・・・?とびっきりの土産話を持って帰って来るわ!」
恐らくアーニャの期待している様な、ラブもロマンスも出て来ないけれど、とても楽しいお話が出来ると思うわ・・・。
「ーーーコンコンッ」
部屋の扉をノックする音と共に、アーニャの手が私の髪から離れる。
徐に頭を下げ、「行ってらっしゃいませ」という言葉を聞き届けると、
私は立ち上がり、屋敷の前に停めてある馬車へと向かった。
(さぁ、楽しいお茶会へ行きましょうかーーーー。)
メイドが用意してくれていた、ドレスやアクセサリーに身を包み、今は鏡台の前に座り、化粧と髪の毛の最終調整中だ。
(不思議ね・・・。この髪も化粧もドレスも、今日は全て戦闘服の様に感じるわ・・・!)
このドレスに袖を通すのは、勿論今世では初めてとなるが、私の体感としては何十回目となるのか・・・もう分からないレベルだ。
殿下から初めて頂いたプレゼントとなるこのドレスは、この後も手直しを加えて、大切なパーティーの時には必ずと言っていい程袖を通していた。
そのパーティーが悉く失敗に終わっていた為、ドレスに罪は無いと分かっていても、気分が下がってしまう代物だった筈なのに・・・
自分の気持ちが違うだけで、こうも見え方が変わるのかと、小さく笑みが零れてしまった。
「あらお嬢様、お茶会が楽しみで仕方ないのですね。」
私の小さな笑みを見逃さなかった彼女は、幼い頃から私の専属メイドとして働いてくれている、アーニャだ。
鏡越しにアーニャと目があい彼女の優しい笑みに、笑顔で返す。
「ええ・・・、とても楽しみよ。」
「本日は、お嬢様と殿下の婚約発表の為のお茶会ですからね・・・とびきり美しくして行かなくては、いけませんね!」
恐らくアーニャが想像している様なロマンチックな展開を〝楽しみ〟にしている訳では無いのだけれど・・・まぁ、そういう事にしておこうかしらね。
この国で王位継承権を持つ男性は、必ず16歳迄に婚約者を持たなくてはならない。
そして、昔からの習わしで婚約者を公に発表する場として、自身主催の茶会を開く。
つまりどういう事かと言うと・・・、16歳の王子が主催する王宮茶会は、
〝婚約者を決めました!お披露目したいので来て下さい〟
という意味も含まれているのだ。
つまり、私は本日の茶会においては、主役級に近いゲストなのだ。
よって、気合いを入れて身支度するのも、至極当然な訳なのよ!
(なのに・・・、キースランド伯爵令嬢とその取り巻きズには、毎回散々馬鹿にされるけどね~!)
キースランド伯爵家は、歴史も古く由緒正しいお家柄だ。美しいと噂のご令嬢が殿下と同い年で、私が公爵位を賜る前迄は、殿下の婚約者最有力候補として、名を馳せていたらしい・・・。
何もかも私より優れていると思い込んでいるキースランド伯爵令嬢は、私が婚約者に選ばれた事がとにかく腹立たしいらしく、今日のお茶会も含め、事ある毎に嫌がらせをして来るのだ。
勿論、私は殿下の婚約者であり公爵令嬢。おまけに歴史はたったの数年しかなく、殿下が庇ってくれる訳でも、貴族のお友達が居る訳でもない。
嫌がらせに対して、ひたすら謝罪を繰り返し、耐え忍ぶ事しか出来なかった・・・。
(ふんっ・・・!でも今日の私は、そんな事しなくても良いのよ!だって、婚約なんて・・・もうどうでも良いし、お父様からお墨付きも頂いたのだから・・・〝騎士の娘〟として闘うわ!)
思わず笑みが抑えきれずに溢れてしまい、アーニャにまた見付かってしまったが、主人の真意など分からないアーニャは、
「まぁ!ご帰宅なさったら、是非お話を聞かせて下さいませね?」
と私の髪を梳きながら、鏡越しに期待に満ちた眼差しを向けて来る。
「楽しみにしておいて頂戴・・・?とびっきりの土産話を持って帰って来るわ!」
恐らくアーニャの期待している様な、ラブもロマンスも出て来ないけれど、とても楽しいお話が出来ると思うわ・・・。
「ーーーコンコンッ」
部屋の扉をノックする音と共に、アーニャの手が私の髪から離れる。
徐に頭を下げ、「行ってらっしゃいませ」という言葉を聞き届けると、
私は立ち上がり、屋敷の前に停めてある馬車へと向かった。
(さぁ、楽しいお茶会へ行きましょうかーーーー。)
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