【完結】殿下、5回目の婚約破棄は私の方からさせて頂きます!~やりたい放題していたら、いつの間にか逆ハー状態でした~

ゆきのこ

文字の大きさ
9 / 66
本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~

今日の想い人、キースランド伯爵令嬢

しおりを挟む
大喝采の中、殿下のスピーチは終わった。

プチパニック状態だった私はと言うと・・・すっかり落ち着きを取り戻していた。それは喝采の中、キースランド伯爵令嬢が、見た事も無い程顔を醜く歪ませて、私を睨んでいたからだ。

(それにしても・・・今日の殿下はおかしいわ。体調でも優れないのかしら?それとも、私との茶会が嫌過ぎて影武者でも寄越したのかしら・・・?)

それならば、控え室での一連のやり取りも合点が行く・・・!見た目だけで言うと〝まるで本物〟だが、4回も繰り返している私は騙されないわよ・・・っ!

チラリと殿下の方に視線を投げると、にこりと優しく笑い返してくれた。

(ーーー決まりだ。こりゃ影武者だ!)

私は過去4回に渡る膨大なデータに基き、隣の男性は殿下の影武者だと暴いた。途端、腹の底から怒りが込み上げる。

(何だ!私に4回も偉そうに婚約破棄しておきながら・・・何が『そんな不埒な事は~』だ!自分は大事な茶会を影武者なんかに任せて・・・!!!)

「許せないわ・・・っ」

今回ばかりは心の声を留めておけず、誰にも聞こえない程度の小声では有ったが、口から漏れてしまった。

(この影武者も影武者よ・・・!今日の茶会に来た事を後悔させてやるわ・・・っ!)

私の怒りがピークになっている時に、タイミングが良いんだか、悪いんだか・・・今日の想い人キースランド伯爵令嬢が取り巻きズを連れて、私の席へとやって来た。

「この度はご婚約おめでとうございます。フローラ?・・・本当にまぁ、殿下をどう誑かしたのだか・・・っ!」

口元ではためかせていた、綺麗な扇子を「パシンっ」と音を鳴らして閉じた伯爵令嬢の手は、ワナワナと震えていた。私も席を立ち淑女の礼をとると・・・開始のゴングを鳴らした。

「本日はご出席頂き有難うございます、キースランド伯爵令嬢。フローラ嬢なんて砕けた呼び方は良して下さい。アナスタシア公爵令嬢とお呼びして頂いてかまいませんのよ?おほほっ、」

私達二人の間には、目には見えない火花がバチバチと散っていた。私の反撃に取り巻きズはタジタジで、伯爵令嬢は更に顔を赤く染め上げ、握られている扇子が可哀想になる位にミシミシと言っていた。

「まぁ・・・!殿下の寵愛を得たからって図に乗らない事でしてよ?貴女のような歴史の無いお家は、没落するのがセオリーなのですからっ・・・!」

(別に殿下の寵愛なんて得てないし、あそこに居るのは言わば〝そっくりさん〟なのだけれど・・・)

「キースランド伯爵令嬢・・・あなた、間違っていますよ?」

「んな・・・っ?!」

「貴女がそこに居る御令嬢達と〝私のドレスが派手ではしたない〟〝アクセサリーが可哀想〟と言って私を笑い者にしていた事は知っています。」

「なっ、何の事ですの?!言いがかりは良して下さい!これだから・・・」

「これだから・・・庶民出の女は!貴族が何たるかを全く分かっていないですわ!・・・と、言いたいのですか?」

私は満面の令嬢スマイルでキースランド伯爵令嬢の言いたかった言葉の先を代弁して見せる。

(何回、貴女に言われたと思っているの?貴女が思い付く言葉なんて最初の一言さえ聞けば、ぜ~んぶ、分かるのよ・・・っ!!!)

「殿下を好いていらっしゃるなら、私から奪えば宜しいでは無いですか・・・、私に嫉妬を寄せるなど、時間の無駄ですよ?」

「はぁ?・・・・・・貴女、何を仰っているの?」

おぞましい物でも見るかの様な目で私を見る、キースランド伯爵令嬢の顔を見て少しスッキリした私は、その横にへばりついて離れない癖に静観者を貫いている、周りの御令嬢達にターゲットを変える。

「それに、貴女がいつも侍らせているご令嬢達ですが・・・万が一、私を辱めた事で殿下の怒りをかった時に全て貴女のせいにしますよ?きっと・・・。現に私の前では何も発言しませんし・・・?」

私に図星をつかれたご令嬢達は、焦ってキースランド伯爵令嬢に擦り寄り、私の忠告を〝戯言ですわ!〟〝耳を貸さないで下さいませ!〟と言っていた。

その浅ましい姿に嫌悪感を覚えた私は、とっても良い事を閃いてしまい、思わず口角がニヤリと上がってしまう。

!・・・ルーク、こちらへ!」

呼ばれたのが自分だと咄嗟に判断出来なかった影武者は、私と視線が合ったのをきっかけに、談笑を切り上げてこちらへ歩いて来る・・・。



(さぁ・・・二回戦の幕開けよ・・・っ!)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...