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本編 第一部 ~騎士の娘は茶会にて~
まっまさか・・・殿下なのですか?!
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「ーコンコンッ」
(思った以上に早いわね・・・?)
私の返事を聞くやいなや、彼が誰かを呼び出していたのは、恐らく5分程前の事だったと記憶している。
もう少し時間を要すると思っていた私は、慌ててクッキーを頬張る事をやめ紅茶で流し込み、体制を整えた。
「入れ。」
「失礼致します。・・・・・・、お呼びでしょうか、ルークフォン様」
入ってきたのは、王室に近しい者で有れば知らない人は居ない・・・王宮を任されている若き天才 執事のサイラス・クリプトン様だった。
年功序列が当たり前の使用人の世界で、彼は26歳という若さで王宮執事に就いた・・・今や時の人だ。オレンジ色の髪に大きなひまわり色の瞳は、とても人が良さそうな雰囲気を醸し出していて、おまけに身長も男性にしては低めで、初対面にも関わらずガードが思わず緩んでしまう様な感覚に襲われた。
「こちら、本日の茶会で公表した俺の婚約者だ。」
(あれれ・・・?何か、口調変わってない・・・?)
「勿論、存じ上げております。フローラ・アナスタシア公爵令嬢・・・申し遅れました。私はこの王宮で執事を任されております、サイラス・クリプトンと申します。以後、お見知り置きを・・・」
サイラス様に丁寧に頭を下げられ、慌てて私も淑女の礼を取った。
「こちらこそ・・・サイラス様のお噂は予予、耳にしておりましたわ。今日はお初にお目にかかれて光栄で御座います。フローラ・アナスタシアと申します。」
「勿体無いお言葉で恐縮です。私の事はサイラスと、どうぞお呼び下さい。」
(なんて眩しい笑顔なの・・・?!天使の様な微笑みって噂は本当だったのね・・・!)
時の人に会えたのは嬉しいけれど・・・何故、サイラスに会わせたかったのだろう?と疑問が頭に浮かび、影武者の方に視線をやると、私の視線に気付いた彼がソファーにジャケットを脱ぎ捨てた。
「ーーーっ?!!でっ、殿下・・・何を?」
これまた予想の斜め上所か真上をいく行動に、思わず顔が引き攣ってしまった。だが、殿下は私の言葉になど目もくれずひたすら服を脱ぎ捨てて、とうとう上半身裸になってしまわれた。
「サイラス、信じ難い事だが・・・俺は今、影武者の容疑を婚約者殿から掛けられていてな。お前に確かめて貰おうと呼んだのだ。」
(ええええええ!!!?言っちゃって大丈夫なの?!というか・・・確かめるって・・・まさか・・・)
私は今日してきた数々の無礼を思い出し、その先を考える事を明確に拒否した。
「なるほど。そうでしたか!では・・・失礼致します。」
(さっ流石・・・若き天才執事、サイラス・クリプトン!普通なら、『ええ?!何言っちゃってるんですかぁ?!』となる筈の所をあっさり飲み込んでしまっている・・・!普通に『なるほど。そうでしたか!』って言っちゃってる・・・!適応力が半端じゃないわ・・・!)
只者ではないサイラスは殿下(かもしれない)の方へと歩き、腰の辺りに顔を近付けて何かを見ていた。お目当ての物が見付かったのか、曲がっていた腰がピーンと伸び、私に向かって満面の笑みで・・・
「フローラ様、ご安心下さいませ。このお方は、影武者などでは無く・・・
本物のルークフォン・ヴェストリア第二王子ですよ?」
「な、何故・・・そんな簡単にお分かりに?」
無駄な足掻きだと分かっては居たが・・・とにかく信じたくなかった私は、サイラス様に理由を尋ねた。
「うーん・・・。フローラ様は騎士団長様の娘ですし、行く行くは王族になられるお方ですからね・・・特別にお教えしても宜しいですか?ルークフォン様。」
…いちいち動きが愛らしいサイラスは、視線を殿下の方へと向けて許可を強請ると、殿下(多分本物)が首を一度だけ縦に振った。
「あのですね~!これは絶対に他言無用でお願い致しますよ?実は・・・王族の方々の体にはそれぞれ、王家の紋章が特別なインクで彫られているのですよ~!フローラ様がお疑いになられる様に、成り済ましとか結構有るので、本物かどうかを王族がきちんと判断出来るように、隣国との戦争が始まって3年目位に当時王子だった陛下が決められたのです!」
(おお神よ・・・天にまします我らの父よ・・・どうか私をお救い下さい・・・。)
「まっまさか・・・殿下なのですか・・・?!」
「フローラ・・・帰る前に気付いて貰えて良かった。そう、俺は影武者などでは無い・・・本 物 だ!」
「もももも申し訳ございませんでした!!!殿下っ!!!」
殿下の顔を見る事すら怖くなってしまった私は、とりあえずジャンピング土下座をして、自分の視界を足元へと移動させた。
「フローラ様っ?!わわ、そんな事なさらないで下さい~!」
今回はきちんと驚いているサイラスに、体を支えられて私は何とか立ち上がり、殿下の顔を恐る恐る見ると、そこには黒い笑みが有った・・・。
「フローラ・・・俺はデートがしたいんだ。」
「・・・・・へ?」
(デ、デート?!・・・って何だっけ?あの、男女が出掛けるデートは・・・この流れで有り得ないわよね?・・・拷問器具の名前にデートなんて物が有るのかしら?)
「デートがしたいんだよ、フローラ。そうだなぁ・・・5日後なんてどうだろうか?」
「・・・・・・えと、殿下・・・私、」
(跡が残る様な拷問は嫌です・・・。婚約破棄は全然受け入れますので、何とかそれで勘弁して貰えないでしょうか・・・っ!)
「駄目だよ?フローラ、断っては・・・俺の理性がある内に返事をした方が身の為だ。」
「・・・・・・・・・ヨロコンデお受け致します。」
「それは素晴らしいですね!その様に手筈を整えておきますね!ルークフォン様、フローラ様!」
私のすぐ横でキラキラしているサイラスに、実はドSだったんだな・・・と裏切られた様な気持ちになってしまったーーー。
(思った以上に早いわね・・・?)
私の返事を聞くやいなや、彼が誰かを呼び出していたのは、恐らく5分程前の事だったと記憶している。
もう少し時間を要すると思っていた私は、慌ててクッキーを頬張る事をやめ紅茶で流し込み、体制を整えた。
「入れ。」
「失礼致します。・・・・・・、お呼びでしょうか、ルークフォン様」
入ってきたのは、王室に近しい者で有れば知らない人は居ない・・・王宮を任されている若き天才 執事のサイラス・クリプトン様だった。
年功序列が当たり前の使用人の世界で、彼は26歳という若さで王宮執事に就いた・・・今や時の人だ。オレンジ色の髪に大きなひまわり色の瞳は、とても人が良さそうな雰囲気を醸し出していて、おまけに身長も男性にしては低めで、初対面にも関わらずガードが思わず緩んでしまう様な感覚に襲われた。
「こちら、本日の茶会で公表した俺の婚約者だ。」
(あれれ・・・?何か、口調変わってない・・・?)
「勿論、存じ上げております。フローラ・アナスタシア公爵令嬢・・・申し遅れました。私はこの王宮で執事を任されております、サイラス・クリプトンと申します。以後、お見知り置きを・・・」
サイラス様に丁寧に頭を下げられ、慌てて私も淑女の礼を取った。
「こちらこそ・・・サイラス様のお噂は予予、耳にしておりましたわ。今日はお初にお目にかかれて光栄で御座います。フローラ・アナスタシアと申します。」
「勿体無いお言葉で恐縮です。私の事はサイラスと、どうぞお呼び下さい。」
(なんて眩しい笑顔なの・・・?!天使の様な微笑みって噂は本当だったのね・・・!)
時の人に会えたのは嬉しいけれど・・・何故、サイラスに会わせたかったのだろう?と疑問が頭に浮かび、影武者の方に視線をやると、私の視線に気付いた彼がソファーにジャケットを脱ぎ捨てた。
「ーーーっ?!!でっ、殿下・・・何を?」
これまた予想の斜め上所か真上をいく行動に、思わず顔が引き攣ってしまった。だが、殿下は私の言葉になど目もくれずひたすら服を脱ぎ捨てて、とうとう上半身裸になってしまわれた。
「サイラス、信じ難い事だが・・・俺は今、影武者の容疑を婚約者殿から掛けられていてな。お前に確かめて貰おうと呼んだのだ。」
(ええええええ!!!?言っちゃって大丈夫なの?!というか・・・確かめるって・・・まさか・・・)
私は今日してきた数々の無礼を思い出し、その先を考える事を明確に拒否した。
「なるほど。そうでしたか!では・・・失礼致します。」
(さっ流石・・・若き天才執事、サイラス・クリプトン!普通なら、『ええ?!何言っちゃってるんですかぁ?!』となる筈の所をあっさり飲み込んでしまっている・・・!普通に『なるほど。そうでしたか!』って言っちゃってる・・・!適応力が半端じゃないわ・・・!)
只者ではないサイラスは殿下(かもしれない)の方へと歩き、腰の辺りに顔を近付けて何かを見ていた。お目当ての物が見付かったのか、曲がっていた腰がピーンと伸び、私に向かって満面の笑みで・・・
「フローラ様、ご安心下さいませ。このお方は、影武者などでは無く・・・
本物のルークフォン・ヴェストリア第二王子ですよ?」
「な、何故・・・そんな簡単にお分かりに?」
無駄な足掻きだと分かっては居たが・・・とにかく信じたくなかった私は、サイラス様に理由を尋ねた。
「うーん・・・。フローラ様は騎士団長様の娘ですし、行く行くは王族になられるお方ですからね・・・特別にお教えしても宜しいですか?ルークフォン様。」
…いちいち動きが愛らしいサイラスは、視線を殿下の方へと向けて許可を強請ると、殿下(多分本物)が首を一度だけ縦に振った。
「あのですね~!これは絶対に他言無用でお願い致しますよ?実は・・・王族の方々の体にはそれぞれ、王家の紋章が特別なインクで彫られているのですよ~!フローラ様がお疑いになられる様に、成り済ましとか結構有るので、本物かどうかを王族がきちんと判断出来るように、隣国との戦争が始まって3年目位に当時王子だった陛下が決められたのです!」
(おお神よ・・・天にまします我らの父よ・・・どうか私をお救い下さい・・・。)
「まっまさか・・・殿下なのですか・・・?!」
「フローラ・・・帰る前に気付いて貰えて良かった。そう、俺は影武者などでは無い・・・本 物 だ!」
「もももも申し訳ございませんでした!!!殿下っ!!!」
殿下の顔を見る事すら怖くなってしまった私は、とりあえずジャンピング土下座をして、自分の視界を足元へと移動させた。
「フローラ様っ?!わわ、そんな事なさらないで下さい~!」
今回はきちんと驚いているサイラスに、体を支えられて私は何とか立ち上がり、殿下の顔を恐る恐る見ると、そこには黒い笑みが有った・・・。
「フローラ・・・俺はデートがしたいんだ。」
「・・・・・へ?」
(デ、デート?!・・・って何だっけ?あの、男女が出掛けるデートは・・・この流れで有り得ないわよね?・・・拷問器具の名前にデートなんて物が有るのかしら?)
「デートがしたいんだよ、フローラ。そうだなぁ・・・5日後なんてどうだろうか?」
「・・・・・・えと、殿下・・・私、」
(跡が残る様な拷問は嫌です・・・。婚約破棄は全然受け入れますので、何とかそれで勘弁して貰えないでしょうか・・・っ!)
「駄目だよ?フローラ、断っては・・・俺の理性がある内に返事をした方が身の為だ。」
「・・・・・・・・・ヨロコンデお受け致します。」
「それは素晴らしいですね!その様に手筈を整えておきますね!ルークフォン様、フローラ様!」
私のすぐ横でキラキラしているサイラスに、実はドSだったんだな・・・と裏切られた様な気持ちになってしまったーーー。
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