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#side ルークフォン ~初恋の人を求めて~
初恋とは気付かぬまま・・・ 2
しおりを挟むそれからはーーー、
約束している訳でも無いのだが、あの小高い丘の上が何となく彼女との待ち合わせ場所になっていった。
劣勢だと言われていた戦争も、有能な騎士のお陰で盛り返して来ていると、王城内では専らその話ばかりだ。
「・・・ルーク!今日は居た!会いたかった~!」
「ーーーっぇ!?あっ!」
満面の笑みで走って来た勢いそのままに抱きつかれ、思わず倒れ込んでしまった。
彼女は無表情な俺と違い、とても感情表現が豊かでスキンシップも激しめだ。
でも嫌じゃなかった・・・。
むしろ凄く嬉しかったのに、この時の俺は一度も伝える事が出来なかった。
「ルークに渡したい物が有ってね・・・ずっと、待っていたのよ!」
俺の腹の上でキラキラな瞳を向ける彼女は、フローラと言うそうだ。俺も名乗りたかったが・・・王族だと知られてしまえば、態度を変えられるのではないか?と怖くて・・・『ルーク』とだけ名乗った。
「とりあえず、俺の上から降りてくれ。」
彼女は俺の嫌がる事は聞かないし・・・何となく俺の答えられる事、しても大丈夫な事を心得てくれている・・・。
だからとても居心地が良くて、本当はフローラよりも俺の方が、会いたくて会いたくて仕方無かったのに、それすらも伝えられなかった。
「ねぇ、これじゃない?!ルークが取られたっていう懐中時計!」
「え・・・・・・?!」
それはあの日、乗合馬車で奪い取られた懐中時計だった・・・。
俺が唯一、大切に肌身離さず持ち歩いていた正にそれだった。細かい傷が沢山ついてしまっていたが、ピカピカに磨かれていた時計は・・・恐らくフローラが磨いてくれたのだろうと思うと、目頭が熱くなった。
「お父様がね、数日だけ帰って来たの!それで、時計の話をしたら『露店で売られているかも』って!それで探してみたら、本当にあったの!凄くない?!」
「・・・・・・凄いね。」
「でも残念だわ!小悪党で私の剣が如何程のものか、試し斬りしてやりたかったのに・・・っ!」
「・・・・・・それは、やめておきなよ?」
『将来は騎士になるのよ!』が口癖のフローラは、毎日剣術を磨いているらしく・・・本当にやりかねないから恐ろしい・・・。
「ありがとう、フローラ・・・。」
「どういたしまして!」
いつまでもこんな風に笑いあえると思っていた俺は・・・この日常が僅か半年で終わるとは知らず、何一つフローラに伝えられないまま・・・関係が終わってしまった。
そう・・・その半年後には、戦争の終わりが見えて来ており、王族は政を本格的に始動させなくてはいけなくなった。王城や王宮は活気的にはなったが、激務を極めていた為か幼い自分にまで公務が舞い込んで来てしまう始末・・・。城を抜け出す所か寝る間も惜しんで公務にあたっていた。
戦争が我が国の勝利で終わり・・・国は毎日お祭り騒ぎだった。騎士団の凱旋パレードに褒賞の授与、ほとぼりが冷めた頃にやっとの思いで小高い丘に行ったが・・・彼女には会えなかった。
その後も、諦めきれずに記憶を頼りに家を訪ねたが・・・もぬけの空となっており、俺はここで初めて自分の愚かさと甘さに気付いた。
そして・・・もうフローラに会う術が無いと分かった途端に、とても恋しく思っている事を明確に感じた。
俺の初恋は、初恋だと気付かぬまま・・・何一つ彼女に伝えられずに・・・静かに幕を閉じたーーー。
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