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#side ルークフォン ~初恋の人を求めて~
初恋の人の疑い
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感動的な友情劇を繰り広げてくれたフローラとキースランド伯爵令嬢を背面に俺は頭をフル稼働させていたーーー。
先ず、この友情劇に感動的な視線を向けている客人は放置していて良いだろう・・・。
だが・・・不謹慎極まりない!と今にも怒鳴り出してしまいそうな客人や、目も当てられないと呆れた様子の客人もちらほら居るのだ・・・。
(〝終わり良ければ全て良し〟と言うしな・・・。何とか挽回して気持ちよくお帰り頂かねば・・・!)
この茶会への招待客は王族が長年懇意にしている者や、影響力が有る人物に限定してしまっている。
よって社交界に彼等が出れば否応なしに今日の茶会の事を根掘り葉掘りと聞かれてしまうのだ。
例えそれが少数派の意見だったとしても・・・悪い意見を吹聴されてしまえば事が大きくなってしまう・・・。
(前回までの彼女で有れば・・・こんな簡単な事、容易に気付けそうなものだが・・・)
だが、私が愛しているフローラはそんな背景事情など無視してしまうだろうな・・・と何だかんだフローラに対して甘く対応してしまうのは、やはり惚れた男の弱みというヤツなのだろうか・・・?
振り向き様にフローラ達を視線に捉えると、キースランド伯爵令嬢は彼女らしくもなく人目も憚らずに泣き続けていた。
もうお茶会を楽しむ事が出来る状態では無いと判断した私は、キースランド伯爵令嬢を控え室に連れて行く様にメイドへ指示を出した。
何故かフローラが付いて行きたそうな顔をしていたので、思わず顔を歪めてしまったが・・・その後は婚約者としての役割を全うしてくれたので・・・不問と処す事にした。
「チッ、チッ、チッ」
(どうなる事かと思ったが、何とかなったな・・・)
茶会を何とか〝成功〟に挽回する事が出来た私達二人は再び控え室で紅茶を嗜んでいた。
茶会の撤収作業の為、使用人が入れ替わり立ち替わり入ってきているのが余程気になるのか・・・使用人が入ってくる度に残念そうな、悔しそうな顔を浮かべるフローラの百面相を気付かれない様に見ている・・・俺にとっては今日の疲れを吹っ飛ばしてしまう程の至福のひと時だ。
(ーー!おっと、彼女と目が合ってしまった・・・ずっと見ていた事を悟られぬ様にとりあえず笑っておこう)
俺が微笑むと何だか呆れた様な・・・かと思えば俺を畏怖している様な顔を浮かべる彼女を見て、笑うなという方か無理だと思うのだが・・・
「殿下、我儘を1つ・・・宜しいでしょうか?」
「おや?殿下に戻してしまうのですか?ルークと呼んでくれて、構わないのですよ?フローラ」
額に汗でも浮かべていそうな真剣な眼差しでそうお願いしてくるもんだから、思わず揶揄いたくなってしまった。
「おほほほ、お戯れを・・・。」
「僕は真剣ですよ?」
満面の笑みでフローラを見つめると彼女は後退り、明らかに狼狽えていた。
(きっと御令嬢方に〝仲良しアピール〟をしたいが為に『ルーク』と呼んでくれたのだろう・・・と算段はついているがーーー。)
俺はかつての呼ばれていたその名を今日呼ばれて・・・心臓が止まるかと思う程に驚いたのだ。
これ位の意地悪は許されて然るべきであろう。
「でっ、殿下!本日は婚約発表の日だと言うのに、あまり二人きりでお話出来ませんでしたわね!」
(何かを『察しろ!』と言わんばかりの凄い眼力と圧を感じるが・・・・・・、はて?分からんぞ・・・?)
「おや、愛称の話は何処へ行ってしまったのですか?」
上半身だけでずっこけた様子を表現している彼女の様子を見て、笑わなかった俺を褒めて欲しい・・・。
再度、フローラの察して欲しい事に想いを馳せてみたが・・・全く思い付かず本当に困った。
「殿下・・・そのお話の続きは二人きりでしたいですわ。」
(なるほど・・・!先程からチラチラと出入口を見て百面相していたのは、二人きりになれるタイミングを見計らっていたのか・・・!つまり・・・昔の事を思い出した・・・?)
「まぁ、・・・そこま言うのなら分かりました。皆、退室する様に。」
そんな事がある訳ない・・・このド鈍いフローラが俺に気付き思い出す事など・・・と自分で否定をしてみたものの、淡い期待が俺の頭の中を一瞬で支配してしまった。
すぐ様、メイド長に視線を投げてそう一言告げれば、作業中だったメイド達までもが手を止めて退室してくれた。
「それで・・・二人きりなりましたよ?」
彼女はもう少し俺がゴネるとでも思っていたのか・・・すんなりと望んだ状況になった事に驚いた様子だった。
「ゴホンッ、私は・・・貴方の秘密に気付いています。でも、気付かなかったフリをしてあげてもかまいません。」
「・・・・・・・・・え?」
俺は一瞬・・・いや今も、彼女の言っている意味が1ミリも理解できずにフリーズしてしまった。
そんな俺の様子を見てドヤ顔全開のフローラは何ともご満悦そうに薄ら笑みすら浮かべていた。
(秘密・・・?秘密?ヒミツ?ーーー秘密って何だ・・・?)
「だから、本日の茶会での出来事は全て殿下に報告しないで欲しいのです。」
「・・・・・・・・・えぇ?」
(細かい説明は無しかよっ!おいぃ!ーーー殿下、に・・・報告?・・・殿下って誰だ?殿下って俺じゃないのか?・・・・・・。駄目だ!全っっっく分からん!!!)
「私も・・・貴方が影武者だと言うことは、墓場まで持って行きましょう。」
「・・・・・・え?!か、影武者っ?!!」
思わずついていた肘から顔が外れてしまう程に俺は驚いてしまった・・・。
彼女が取引の材料にと勿体ぶっていた〝秘密〟は・・・ただの〝勘違い〟なのだが・・・、それもとびきり失礼な。
(かか、影武者?!俺が?!!凄い見当違いな事を言っているのに・・・何でそんなドヤ顔で自信たっぷりなのだ・・・フローラよ・・・)
「取り乱さなくても大丈夫です。誰にも言ったりしませんから。」
(駄目だ・・・!ルークフォン!男を見せるのだ・・・!笑っては駄目だ・・・笑っては!フローラの自尊心を傷つけてしまいかねない・・・!)
「フローラ・・・先程から何を言って・・・?」
あくまでも意味が分からないと困惑の表情に努めた私の態度は、フローラをイライラとさせてしまうものだったらしく・・・眉毛が一瞬ひどく歪んでしまっていた。
「とにかく!本日の茶会で起きた事は、全てここだけの秘密という事で、交渉成立ですわね?!」
「いや!フローラ・・・説明してくれないと・・・」
(俺が肯定したという前提で話が進んでいるのだが・・・っ?!それに彼女は何に焦っているのだ・・・?)
「だから!!もう私、貴方の正体分かっていますから!!観念しなさいと言っているのです!!!」
(えええええええ?!!怒られた?!父上にも、母上にも・・・怒鳴られた事などないのにっ!)
「後、殿下から私達二人の関係をきちんと聞いておらず知らないのでしょうが・・・私に対して優しく微笑んだり、手を取りエスコートしてみたり、甘い言葉を囁いたり・・・有り得ませんから!!!殿下は絶対にそんな事しませんから!!!」
その堰き止めていた彼女の本音を聞いた俺は、彼女と俺との間にある〝違和感〟をようやく理解する事が出来た。
彼女は今日一日かけて、俺が示してきた愛情表現全てが〝俺では無い誰か〟の仕業だと思ったのか・・・。
(確かにそうだな。フローラからして見れば・・・前回までの俺からは想像も出来ない様なことの連続だったな・・・。確かに、そうだ・・・そうだけども・・・それを言うのならーーー!)
「・・・・・・・・・それは、お互い様じゃないか。」
心の声が思わず口からポツリと溢れてしまった事に自分で驚いてしまったーーー。
そしてこれ以上、心の声が口から出てしまわない様にと意識を集中し深く深呼吸をした。
『君だって前回迄とは別人の様に変わっているじゃ無いかーーー!!!』
と本当は言い返したかったが・・・こんな美味しい状況を自ら手放す程、俺は素直な良い子では無いんだよ・・・フローラ。
タイミング良く鳴り響いたノックの音に無視を決め込む事とした俺は・・・この企みをフローラに悟られぬ様に顔を俯かせて静かに笑ったーーー。
先ず、この友情劇に感動的な視線を向けている客人は放置していて良いだろう・・・。
だが・・・不謹慎極まりない!と今にも怒鳴り出してしまいそうな客人や、目も当てられないと呆れた様子の客人もちらほら居るのだ・・・。
(〝終わり良ければ全て良し〟と言うしな・・・。何とか挽回して気持ちよくお帰り頂かねば・・・!)
この茶会への招待客は王族が長年懇意にしている者や、影響力が有る人物に限定してしまっている。
よって社交界に彼等が出れば否応なしに今日の茶会の事を根掘り葉掘りと聞かれてしまうのだ。
例えそれが少数派の意見だったとしても・・・悪い意見を吹聴されてしまえば事が大きくなってしまう・・・。
(前回までの彼女で有れば・・・こんな簡単な事、容易に気付けそうなものだが・・・)
だが、私が愛しているフローラはそんな背景事情など無視してしまうだろうな・・・と何だかんだフローラに対して甘く対応してしまうのは、やはり惚れた男の弱みというヤツなのだろうか・・・?
振り向き様にフローラ達を視線に捉えると、キースランド伯爵令嬢は彼女らしくもなく人目も憚らずに泣き続けていた。
もうお茶会を楽しむ事が出来る状態では無いと判断した私は、キースランド伯爵令嬢を控え室に連れて行く様にメイドへ指示を出した。
何故かフローラが付いて行きたそうな顔をしていたので、思わず顔を歪めてしまったが・・・その後は婚約者としての役割を全うしてくれたので・・・不問と処す事にした。
「チッ、チッ、チッ」
(どうなる事かと思ったが、何とかなったな・・・)
茶会を何とか〝成功〟に挽回する事が出来た私達二人は再び控え室で紅茶を嗜んでいた。
茶会の撤収作業の為、使用人が入れ替わり立ち替わり入ってきているのが余程気になるのか・・・使用人が入ってくる度に残念そうな、悔しそうな顔を浮かべるフローラの百面相を気付かれない様に見ている・・・俺にとっては今日の疲れを吹っ飛ばしてしまう程の至福のひと時だ。
(ーー!おっと、彼女と目が合ってしまった・・・ずっと見ていた事を悟られぬ様にとりあえず笑っておこう)
俺が微笑むと何だか呆れた様な・・・かと思えば俺を畏怖している様な顔を浮かべる彼女を見て、笑うなという方か無理だと思うのだが・・・
「殿下、我儘を1つ・・・宜しいでしょうか?」
「おや?殿下に戻してしまうのですか?ルークと呼んでくれて、構わないのですよ?フローラ」
額に汗でも浮かべていそうな真剣な眼差しでそうお願いしてくるもんだから、思わず揶揄いたくなってしまった。
「おほほほ、お戯れを・・・。」
「僕は真剣ですよ?」
満面の笑みでフローラを見つめると彼女は後退り、明らかに狼狽えていた。
(きっと御令嬢方に〝仲良しアピール〟をしたいが為に『ルーク』と呼んでくれたのだろう・・・と算段はついているがーーー。)
俺はかつての呼ばれていたその名を今日呼ばれて・・・心臓が止まるかと思う程に驚いたのだ。
これ位の意地悪は許されて然るべきであろう。
「でっ、殿下!本日は婚約発表の日だと言うのに、あまり二人きりでお話出来ませんでしたわね!」
(何かを『察しろ!』と言わんばかりの凄い眼力と圧を感じるが・・・・・・、はて?分からんぞ・・・?)
「おや、愛称の話は何処へ行ってしまったのですか?」
上半身だけでずっこけた様子を表現している彼女の様子を見て、笑わなかった俺を褒めて欲しい・・・。
再度、フローラの察して欲しい事に想いを馳せてみたが・・・全く思い付かず本当に困った。
「殿下・・・そのお話の続きは二人きりでしたいですわ。」
(なるほど・・・!先程からチラチラと出入口を見て百面相していたのは、二人きりになれるタイミングを見計らっていたのか・・・!つまり・・・昔の事を思い出した・・・?)
「まぁ、・・・そこま言うのなら分かりました。皆、退室する様に。」
そんな事がある訳ない・・・このド鈍いフローラが俺に気付き思い出す事など・・・と自分で否定をしてみたものの、淡い期待が俺の頭の中を一瞬で支配してしまった。
すぐ様、メイド長に視線を投げてそう一言告げれば、作業中だったメイド達までもが手を止めて退室してくれた。
「それで・・・二人きりなりましたよ?」
彼女はもう少し俺がゴネるとでも思っていたのか・・・すんなりと望んだ状況になった事に驚いた様子だった。
「ゴホンッ、私は・・・貴方の秘密に気付いています。でも、気付かなかったフリをしてあげてもかまいません。」
「・・・・・・・・・え?」
俺は一瞬・・・いや今も、彼女の言っている意味が1ミリも理解できずにフリーズしてしまった。
そんな俺の様子を見てドヤ顔全開のフローラは何ともご満悦そうに薄ら笑みすら浮かべていた。
(秘密・・・?秘密?ヒミツ?ーーー秘密って何だ・・・?)
「だから、本日の茶会での出来事は全て殿下に報告しないで欲しいのです。」
「・・・・・・・・・えぇ?」
(細かい説明は無しかよっ!おいぃ!ーーー殿下、に・・・報告?・・・殿下って誰だ?殿下って俺じゃないのか?・・・・・・。駄目だ!全っっっく分からん!!!)
「私も・・・貴方が影武者だと言うことは、墓場まで持って行きましょう。」
「・・・・・・え?!か、影武者っ?!!」
思わずついていた肘から顔が外れてしまう程に俺は驚いてしまった・・・。
彼女が取引の材料にと勿体ぶっていた〝秘密〟は・・・ただの〝勘違い〟なのだが・・・、それもとびきり失礼な。
(かか、影武者?!俺が?!!凄い見当違いな事を言っているのに・・・何でそんなドヤ顔で自信たっぷりなのだ・・・フローラよ・・・)
「取り乱さなくても大丈夫です。誰にも言ったりしませんから。」
(駄目だ・・・!ルークフォン!男を見せるのだ・・・!笑っては駄目だ・・・笑っては!フローラの自尊心を傷つけてしまいかねない・・・!)
「フローラ・・・先程から何を言って・・・?」
あくまでも意味が分からないと困惑の表情に努めた私の態度は、フローラをイライラとさせてしまうものだったらしく・・・眉毛が一瞬ひどく歪んでしまっていた。
「とにかく!本日の茶会で起きた事は、全てここだけの秘密という事で、交渉成立ですわね?!」
「いや!フローラ・・・説明してくれないと・・・」
(俺が肯定したという前提で話が進んでいるのだが・・・っ?!それに彼女は何に焦っているのだ・・・?)
「だから!!もう私、貴方の正体分かっていますから!!観念しなさいと言っているのです!!!」
(えええええええ?!!怒られた?!父上にも、母上にも・・・怒鳴られた事などないのにっ!)
「後、殿下から私達二人の関係をきちんと聞いておらず知らないのでしょうが・・・私に対して優しく微笑んだり、手を取りエスコートしてみたり、甘い言葉を囁いたり・・・有り得ませんから!!!殿下は絶対にそんな事しませんから!!!」
その堰き止めていた彼女の本音を聞いた俺は、彼女と俺との間にある〝違和感〟をようやく理解する事が出来た。
彼女は今日一日かけて、俺が示してきた愛情表現全てが〝俺では無い誰か〟の仕業だと思ったのか・・・。
(確かにそうだな。フローラからして見れば・・・前回までの俺からは想像も出来ない様なことの連続だったな・・・。確かに、そうだ・・・そうだけども・・・それを言うのならーーー!)
「・・・・・・・・・それは、お互い様じゃないか。」
心の声が思わず口からポツリと溢れてしまった事に自分で驚いてしまったーーー。
そしてこれ以上、心の声が口から出てしまわない様にと意識を集中し深く深呼吸をした。
『君だって前回迄とは別人の様に変わっているじゃ無いかーーー!!!』
と本当は言い返したかったが・・・こんな美味しい状況を自ら手放す程、俺は素直な良い子では無いんだよ・・・フローラ。
タイミング良く鳴り響いたノックの音に無視を決め込む事とした俺は・・・この企みをフローラに悟られぬ様に顔を俯かせて静かに笑ったーーー。
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