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本編 第二部 ~噂の姫様は初デートにて~
デートという名の断罪ツアー
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苺騒動の後、殿下とようやく二人きりになれたのはもう日が傾き始めた頃だった・・・。
「ここは王族が所有している別荘地の庭園なんだ。フローラと二人でのんびり歩くのに良いかと思ってな・・・、」
「は、はぁ・・・。」
何故か木陰のベンチで並んで座っている私達ーーー。
(え・・・・・・。何故?何か準備でもしてるの?)
どんな拷問が待っているのかと辺りを見渡してみるが、私達以外は誰も居ない様だった。
「フローラ・・・今日が楽しみ過ぎて眠れなかったんだ。少し肩を・・・いや!膝を貸して貰っても良いだろうか?」
(やべっ!話全然聞いてなかった・・・!)
辺りを見渡すのに全神経を使ってしまっていた為、殿下の話を全く聞いてなかった私は・・・とりあえず機嫌良さそうに私を見ているので先程と同じ相槌を返しておいた。
「は、はぁ・・・。」
「ありがとう。では、失礼」
私が令嬢らしさをキープする為に置いていた最後の砦である膝上の手が退かされると、何故か殿下の頭が代わりにやって来て、思わず驚いてしまう。
「・・・・・・っ?!でっ殿下・・・?」
「とても心地良いんだ・・・少しだけ頼むよ。」
「えぇ~・・・。」
ーーーハッ!
もしやこれが・・・殿下なりの嫌がらせ、という事なのかしら?!
(だとしたら、余裕よゆー!!!超よゆー!!)
あれだけの不敬を働いたもんだから、何かもう死なない程度の凄い拷問を予想していたんだけど・・・
そうか・・・!精神系で責めてくるのか・・・!
殿下が考える断罪にしては、かなり生ぬるい様な気がしてならないけれど・・・
まぁ何にせよ体を痛め付けられると思っていたから、これなら余裕ね!
思いの外、楽勝そうなこの断罪ツアーに心底安心してしまった私は、もう顔から笑みが溢れてしまって仕方が無い。
「フローラ・・・?どうしたんだ?満面の笑みだね・・・?」
「殿下が思いの外、お優しい方だったのて・・・嬉しくて、つい・・・。」
「優しい・・・?俺が・・・ーーー。それは、サイラス・・・よりも・・・?」
何故、ここでサイラスが出て来るのだ?全くもって理解出来ない・・・。
「え?えぇ・・・そうですね、サイラスよりも殿下の方が!」
そもそもサイラスに優しくなんてされたっけな?優しくされた記憶無いのですが・・・。
「では!・・・俺の方が好きという事か?!サイラスよりも優勢だと思って良いのか?!」
急に顔を上げた殿下の真剣な表情が本当にそりゃもう・・・鼻先の少し先位の距離に来たものだから、私の顔は一気に熱を持ち始めてしまい、心臓はドキドキうるさくて仕方なくなってしまって・・・。
(ちっ、近い・・・!近いれす!殿下ぁぁぁ!!!)
質問の内容なんて吹っ飛んでしまう程に、とにかく近い殿下の整ったお顔から目が離せない・・・!
(侮っていたわ・・・!すごい試練ね・・・!これを耐えぬかねばならないとは・・・!!)
〝余裕よゆー〟と笑っていた数秒前の自分を今ここに連れて来て言ってやりたい!
全然余裕じゃないから!!!と・・・。
「フローラ?」
「きゃっ?!へ・・・?はひ?」
(こんな状態で耳元で囁くなぁぁぁ!!!)
思わず自分の声とは信じ難い甘ったるい乙女な声が出てしまった事で、私の恥ずかしさはピークへと到達してしまった。
そんな私の姿を見てニヤニヤとしている殿下・・・。
(くぅぅっ!私をこの様に辱めて嘲笑うとは・・・!!くそぅ!くそぅ!! )
そう言えば・・・先程、質問をされたな。
〝サイラスより優勢か〟とか何とか言っていた様な気がするから・・・恐らくあの何度も口論していた二人の想い人から見て、自分の方が優勢だと思うか?的な質問だよね・・・?多分。
「えーゴホンっ、先程の質問の答えですが・・・、あれですよね?どちらが優勢かと言うお話ですよね・・・?そりゃあ勿論、サイラーーーす?」
ほんの軽い気持ちでした・・・。
自分が慌てふためいている姿を面白がられている事に、少しでも一矢報いてやりたいと思ってしまったのです。
ええ、今ならば良く分かります。
これはデートという名の断罪ツアーだったのですよね?
だったら私は、そんな事を考えてはいけなかったですよね?
ひたすら殿下の望む答えを言い続けて・・・償わなくてはいけなかった立場だったにも関わらず・・・
本当に馬鹿な事をしてしまいました。
私が『サイラス』ときちんと言い終えるよりも前に・・・私はベンチに押し倒されてしまった様で、視界が急に反転しピントが合ったその景色は・・・私を見下ろす殿下とその向こう側に広がる木々と空でした・・・。
(あれ・・・手が?!手が動かない・・・っ?!)
あの一瞬の間に手の自由まで奪われてしまったらしい私は、もう冷や汗が止まらない。
「でっ殿下・・・?あの、その、・・・怒ってらっしゃいますか?」
流石にこの状況が良くない事位は、馬鹿な私でも分かった。私の顔は恐らく青ざめているに違いない。
「怒らせる様な事を言った自覚が有るのか・・・?フローラ・・・。では、特別にもう一度だけチャンスをやろうか?」
私の頬を優しく撫でながら黒い笑みを浮かべる殿下の姿に為す術もない私は、ひたすら首を縦に振りまくった。
(やばい・・・!このままでは、タコ殴りの刑に処されてしまう・・・!エレノアの様に美人という訳では無いけれど・・・顔だけは死守したい・・・っ!!!)
「おっお願い致しますわ・・・殿下。私、次はきちんと間違えませんからーっ!!」
「そうかーーー、」と呟きながら髪を搔き上げる殿下の姿の何と色っぽい事か・・・。
私は出した事が無いけれど、今ならば鼻血を出そうと思えば出せるのでは?とさえ思った・・・。
「フローラ・・・、俺を愛しているか?」
(え・・・?)
(あれ・・・?質問変わってない・・・?)
「・・・へ?あ、あああ愛ですとな・・・?!」
「そうだ。次は間違えないのだろう?さぁ、答えて見せてくれ。」
「いや殿下・・・質問が丸っと変わってしまわれているのですが・・・。」
思わず殿下から視線を外し横を見ていると、耳をカプリと食べられた。
「きゃっ?!」
(ぎゃああああ!な、ななな何をするぅぅぅ?!!!)
手が使えない私は、耳をガードしようと力いっぱい肩を上げて殿下をキッ!と思わず睨んでしまう。
「言い方が変わっただけで、趣旨は同じだ。これは俺の話をそもそも聞いていなかった罰だ。よって、意義は認めない。」
(・・・ば、バレてるーーーっ!)
図星をつかれてしまいぐうの音も出なくなってしまった私は、とにかくこの状況を早く何とかするべくもう開き直った。
「デンカー!アイシテイマスー!」
「ぶっ!・・・何だ、その棒読みは?!ちゃんと感情を込めて?さぁ、もう一回?」
(無茶言うな!私には演劇の心得なんて無いんだ!!)
だが懲りない私は・・・やはり、やられっぱなしは悔しくて・・・何とかこの殿下の黒い笑みを崩してやろうと考えて考え抜いてしまったのだ・・・。
そして実行に移してしまったーーー。
「ルーク、愛しているわ。誰よりも、何よりも・・・ね。」
トドメで〝ちゅっ〟と軽く殿下の頬にキスを続ける。
流石の殿下にも私の起死回生の攻撃は効いたらしく・・・私が唇を離して殿下の顔を見ると、本当に湯気が出ているのでは?と錯覚してしまう程、真っ赤っかになってしまっていた。
(ありゃ・・・?これは・・・やり過ぎたかしら・・・?)
と後悔しても時すでに遅いと言う事に私が気付くのは、もう少し先のお話だーーー。
「ここは王族が所有している別荘地の庭園なんだ。フローラと二人でのんびり歩くのに良いかと思ってな・・・、」
「は、はぁ・・・。」
何故か木陰のベンチで並んで座っている私達ーーー。
(え・・・・・・。何故?何か準備でもしてるの?)
どんな拷問が待っているのかと辺りを見渡してみるが、私達以外は誰も居ない様だった。
「フローラ・・・今日が楽しみ過ぎて眠れなかったんだ。少し肩を・・・いや!膝を貸して貰っても良いだろうか?」
(やべっ!話全然聞いてなかった・・・!)
辺りを見渡すのに全神経を使ってしまっていた為、殿下の話を全く聞いてなかった私は・・・とりあえず機嫌良さそうに私を見ているので先程と同じ相槌を返しておいた。
「は、はぁ・・・。」
「ありがとう。では、失礼」
私が令嬢らしさをキープする為に置いていた最後の砦である膝上の手が退かされると、何故か殿下の頭が代わりにやって来て、思わず驚いてしまう。
「・・・・・・っ?!でっ殿下・・・?」
「とても心地良いんだ・・・少しだけ頼むよ。」
「えぇ~・・・。」
ーーーハッ!
もしやこれが・・・殿下なりの嫌がらせ、という事なのかしら?!
(だとしたら、余裕よゆー!!!超よゆー!!)
あれだけの不敬を働いたもんだから、何かもう死なない程度の凄い拷問を予想していたんだけど・・・
そうか・・・!精神系で責めてくるのか・・・!
殿下が考える断罪にしては、かなり生ぬるい様な気がしてならないけれど・・・
まぁ何にせよ体を痛め付けられると思っていたから、これなら余裕ね!
思いの外、楽勝そうなこの断罪ツアーに心底安心してしまった私は、もう顔から笑みが溢れてしまって仕方が無い。
「フローラ・・・?どうしたんだ?満面の笑みだね・・・?」
「殿下が思いの外、お優しい方だったのて・・・嬉しくて、つい・・・。」
「優しい・・・?俺が・・・ーーー。それは、サイラス・・・よりも・・・?」
何故、ここでサイラスが出て来るのだ?全くもって理解出来ない・・・。
「え?えぇ・・・そうですね、サイラスよりも殿下の方が!」
そもそもサイラスに優しくなんてされたっけな?優しくされた記憶無いのですが・・・。
「では!・・・俺の方が好きという事か?!サイラスよりも優勢だと思って良いのか?!」
急に顔を上げた殿下の真剣な表情が本当にそりゃもう・・・鼻先の少し先位の距離に来たものだから、私の顔は一気に熱を持ち始めてしまい、心臓はドキドキうるさくて仕方なくなってしまって・・・。
(ちっ、近い・・・!近いれす!殿下ぁぁぁ!!!)
質問の内容なんて吹っ飛んでしまう程に、とにかく近い殿下の整ったお顔から目が離せない・・・!
(侮っていたわ・・・!すごい試練ね・・・!これを耐えぬかねばならないとは・・・!!)
〝余裕よゆー〟と笑っていた数秒前の自分を今ここに連れて来て言ってやりたい!
全然余裕じゃないから!!!と・・・。
「フローラ?」
「きゃっ?!へ・・・?はひ?」
(こんな状態で耳元で囁くなぁぁぁ!!!)
思わず自分の声とは信じ難い甘ったるい乙女な声が出てしまった事で、私の恥ずかしさはピークへと到達してしまった。
そんな私の姿を見てニヤニヤとしている殿下・・・。
(くぅぅっ!私をこの様に辱めて嘲笑うとは・・・!!くそぅ!くそぅ!! )
そう言えば・・・先程、質問をされたな。
〝サイラスより優勢か〟とか何とか言っていた様な気がするから・・・恐らくあの何度も口論していた二人の想い人から見て、自分の方が優勢だと思うか?的な質問だよね・・・?多分。
「えーゴホンっ、先程の質問の答えですが・・・、あれですよね?どちらが優勢かと言うお話ですよね・・・?そりゃあ勿論、サイラーーーす?」
ほんの軽い気持ちでした・・・。
自分が慌てふためいている姿を面白がられている事に、少しでも一矢報いてやりたいと思ってしまったのです。
ええ、今ならば良く分かります。
これはデートという名の断罪ツアーだったのですよね?
だったら私は、そんな事を考えてはいけなかったですよね?
ひたすら殿下の望む答えを言い続けて・・・償わなくてはいけなかった立場だったにも関わらず・・・
本当に馬鹿な事をしてしまいました。
私が『サイラス』ときちんと言い終えるよりも前に・・・私はベンチに押し倒されてしまった様で、視界が急に反転しピントが合ったその景色は・・・私を見下ろす殿下とその向こう側に広がる木々と空でした・・・。
(あれ・・・手が?!手が動かない・・・っ?!)
あの一瞬の間に手の自由まで奪われてしまったらしい私は、もう冷や汗が止まらない。
「でっ殿下・・・?あの、その、・・・怒ってらっしゃいますか?」
流石にこの状況が良くない事位は、馬鹿な私でも分かった。私の顔は恐らく青ざめているに違いない。
「怒らせる様な事を言った自覚が有るのか・・・?フローラ・・・。では、特別にもう一度だけチャンスをやろうか?」
私の頬を優しく撫でながら黒い笑みを浮かべる殿下の姿に為す術もない私は、ひたすら首を縦に振りまくった。
(やばい・・・!このままでは、タコ殴りの刑に処されてしまう・・・!エレノアの様に美人という訳では無いけれど・・・顔だけは死守したい・・・っ!!!)
「おっお願い致しますわ・・・殿下。私、次はきちんと間違えませんからーっ!!」
「そうかーーー、」と呟きながら髪を搔き上げる殿下の姿の何と色っぽい事か・・・。
私は出した事が無いけれど、今ならば鼻血を出そうと思えば出せるのでは?とさえ思った・・・。
「フローラ・・・、俺を愛しているか?」
(え・・・?)
(あれ・・・?質問変わってない・・・?)
「・・・へ?あ、あああ愛ですとな・・・?!」
「そうだ。次は間違えないのだろう?さぁ、答えて見せてくれ。」
「いや殿下・・・質問が丸っと変わってしまわれているのですが・・・。」
思わず殿下から視線を外し横を見ていると、耳をカプリと食べられた。
「きゃっ?!」
(ぎゃああああ!な、ななな何をするぅぅぅ?!!!)
手が使えない私は、耳をガードしようと力いっぱい肩を上げて殿下をキッ!と思わず睨んでしまう。
「言い方が変わっただけで、趣旨は同じだ。これは俺の話をそもそも聞いていなかった罰だ。よって、意義は認めない。」
(・・・ば、バレてるーーーっ!)
図星をつかれてしまいぐうの音も出なくなってしまった私は、とにかくこの状況を早く何とかするべくもう開き直った。
「デンカー!アイシテイマスー!」
「ぶっ!・・・何だ、その棒読みは?!ちゃんと感情を込めて?さぁ、もう一回?」
(無茶言うな!私には演劇の心得なんて無いんだ!!)
だが懲りない私は・・・やはり、やられっぱなしは悔しくて・・・何とかこの殿下の黒い笑みを崩してやろうと考えて考え抜いてしまったのだ・・・。
そして実行に移してしまったーーー。
「ルーク、愛しているわ。誰よりも、何よりも・・・ね。」
トドメで〝ちゅっ〟と軽く殿下の頬にキスを続ける。
流石の殿下にも私の起死回生の攻撃は効いたらしく・・・私が唇を離して殿下の顔を見ると、本当に湯気が出ているのでは?と錯覚してしまう程、真っ赤っかになってしまっていた。
(ありゃ・・・?これは・・・やり過ぎたかしら・・・?)
と後悔しても時すでに遅いと言う事に私が気付くのは、もう少し先のお話だーーー。
応援ありがとうございます!
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