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#side サイラス ~攫ってしまいたい姫君~
姫君のお目覚め
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「おはようございます。お嬢様」
(お・・・!やっとフローラ様のお部屋に入ったかな・・・?)
仕掛けた盗聴器から声色が少し高くなったメイドの様子と文言に、ようやくお目当ての姫君の様子が窺えるとドキドキが収まらない俺は・・・盗聴器の感度から察するに恐らくフローラ様のお部屋である場所の窓に視線を上げると中の様子に思いを馳せた。
「アーニャ・・・おはよう。ーーーゴホゴホ・・・っ、ゴホゴホゴホッ、!!!」
「お、お嬢様?!どうなさったのですか・・・?!」
(おぉ・・・!始まったな・・・!)
やはり予想通り・・・フローラ様は最終手段で有る〝仮病〟を使うつもりで居る様だった。
「あぁ・・・大変だわ!アーニャ・・・、私、どうやら今日は体調が優れない様だわ・・・!」
「まぁ・・・!でもお嬢様、今日は大切な・・・殿下との初デートの日ですよね?何とかしないとー」
「いやいやいや!絶対に何とかなんてならないわ!頭痛と寒気と関節痛と目眩と・・・あと、ついでに吐き気もするわ!デートなんて絶対に無理だし・・・殿下に移してしまったら大変ですもの・・・。ええ、本当に本当に残念だけれど・・・王宮に使いを出して本日のデートは丁重にお断りしてくれるかしら・・・?」
(凄いな・・・。本当にそんな症状が出ていたら、新手の流行病か何かだと勘違いされて治療院に監禁されると思うんだけど・・・。)
相変わらず予想外の言葉が続くフローラ様とメイドのやり取りに思わず笑みが溢れる。
本当にこの人には茶会の時から笑かして貰いっぱなしで有る。
「それが、その・・・お嬢様、大変申し上げにくいのですが・・・殿下の使いの方が既にお屋敷にお嬢様をお迎えに来ております。」
「ーーーえ?こんな朝早くに?」
「はい。あの・・・『きっとフローラ様の体調が悪くなるでしょうから、ここで医者と待機しておきます』と仰って・・・旦那様もご存知だった様で・・・その・・・」
(おや・・・?これは、窓からフローラ様のパジャマ姿でも拝めるかな?)
そう思った矢先に凄い勢いで窓が開いたかと思えば、物凄い形相のフローラ様と目が合った。
思わず満面の笑みで手を振ると・・・フローラ様は頭を抱えたまま部屋へと引っ込んでしまった。
「あの・・・お嬢様、お医者様をお連れ致しましょうか・・・?」
「あら?あらららら?ーーーごめんなさい、アーニャ・・・どうやら私の勘違いだった様だわ!もうすっかり元気になったので、お医者様は大丈夫だとサイラス様に伝えて来てくれるかしら?」
「ーーーっぷ、あははは!!!!」
もう我慢が出来なかった俺はとうとう声に出して笑ってしまった。
(何だよそれーーー!面白過ぎるだろう・・・?!!)
まさかそう来るとは思わなかった俺は・・・生まれて初めてこんな大声で笑い、
そして、自分がとことんフローラ様にのめり込んでしまっている事に気付き始めていたーーー。
「あの・・・サイラス様・・・?」
「あぁ、アーニャ殿。フローラ様は如何でしたか?」
まさか盗聴器で聴いていたので全部分かってますよ。とも言えないので、一応聴いておく。
「あのお嬢様ですが、その・・・お目覚めの際は体調が優れなかった様なのですが、お医者様は大丈夫なのでお帰り頂いて構わないとの事でした・・・。」
「そうですか、それは良かった。」
俺がいつもの様に笑みを浮かべてそつ無く会話を進めるのが、腑に落ちない様子のフローラ様付きメイドはエプロンの端でモジモジとさせていた手をギュッと固く握ると、意を決した様子で俺に聞いてきた。
「あの・・・!ーーー何故、お嬢様の体調が悪くなる事をご存知だったのですか・・・?」
「え?あぁ・・・まぁ、それはーーー」
「サイラス殿!!」
メイドに答えるよりも先にこの屋敷の主人であるアナスタシア公爵の言葉が聞こえ、会話が強制終了となる。
「これはこれは・・・アナスタシア公爵、お早うございます。」
私が胸に手を当て礼をすると、すっと私の近くまで来た公爵が耳元で囁く。
「人が悪いでは無いですか・・・!メイド長から聞いて飛び起きましたぞ・・・!」
「すみません。フローラ様の行動が予測出来なかったので・・・万全を期させて頂きました故・・・」
(アナスタシア公爵・・・気付いていないのかもしれませんが、フローラ様のリアクションの大きさと思った事がそのまま顔に出る様子は完全に貴方の遺伝ですよ・・・?)
故に、公爵に言えば作戦は筒抜けも同然な訳である。
朝から大変な目に遭わせて申し訳ないが、これは公爵の為でもある。理解して貰いたい。
「ま、まぁ・・・良いのですが!それより、折角来て頂いたのですから・・・朝食を一緒にどうですか?」
「お気遣い有難うございます。喜んで頂きます」
「ーっという事だ!アーニャ!フローラも早く朝食の席に来れる様に支度を進めなさい。」
(あぁ~・・・。それは、多分・・・地雷な気もするのだが・・・。)
「かしこまりました、旦那様。では私はこれで失礼させて頂きます。」
礼をするとメイドは小走りで屋敷の中へと消えて行ったーーー。俺は、頼むから先程の地雷っぽい言葉だけは伝えないでくれと引き止めて一言言いたかったが・・・公爵に腕を掴まれてしまい、エプロンに仕掛けておいた盗聴器をすれ違い様に回収する事しか出来なかった。
「サイラス殿~!フローラは・・・フローラは、大丈夫でしょうか・・・?!」
「アナスタシア公爵・・・。とりあえず、今のところはデートへ行くつもりの様ですよ?」
王城の執務室で2人きりでやり取りをしている時と同じ様な・・・先程までの威厳有る姿からは想像もつかない様な、頼りない姿に変貌してしまった公爵の手を自分の腕からゆっくりと引き剥がす。
「絶対に行ってくれねば困るのです・・・!あぁ・・・殿下から何とお叱りを受けるか・・・!」
(ルーク・・・。お前、アナスタシア公爵に何と言ったんだ・・・。本当にもうーーー)
表情はいつもの笑みを浮かべていたが、内心は頭を抱えたくなる様な気持ちで一杯になったーーー。
(お・・・!やっとフローラ様のお部屋に入ったかな・・・?)
仕掛けた盗聴器から声色が少し高くなったメイドの様子と文言に、ようやくお目当ての姫君の様子が窺えるとドキドキが収まらない俺は・・・盗聴器の感度から察するに恐らくフローラ様のお部屋である場所の窓に視線を上げると中の様子に思いを馳せた。
「アーニャ・・・おはよう。ーーーゴホゴホ・・・っ、ゴホゴホゴホッ、!!!」
「お、お嬢様?!どうなさったのですか・・・?!」
(おぉ・・・!始まったな・・・!)
やはり予想通り・・・フローラ様は最終手段で有る〝仮病〟を使うつもりで居る様だった。
「あぁ・・・大変だわ!アーニャ・・・、私、どうやら今日は体調が優れない様だわ・・・!」
「まぁ・・・!でもお嬢様、今日は大切な・・・殿下との初デートの日ですよね?何とかしないとー」
「いやいやいや!絶対に何とかなんてならないわ!頭痛と寒気と関節痛と目眩と・・・あと、ついでに吐き気もするわ!デートなんて絶対に無理だし・・・殿下に移してしまったら大変ですもの・・・。ええ、本当に本当に残念だけれど・・・王宮に使いを出して本日のデートは丁重にお断りしてくれるかしら・・・?」
(凄いな・・・。本当にそんな症状が出ていたら、新手の流行病か何かだと勘違いされて治療院に監禁されると思うんだけど・・・。)
相変わらず予想外の言葉が続くフローラ様とメイドのやり取りに思わず笑みが溢れる。
本当にこの人には茶会の時から笑かして貰いっぱなしで有る。
「それが、その・・・お嬢様、大変申し上げにくいのですが・・・殿下の使いの方が既にお屋敷にお嬢様をお迎えに来ております。」
「ーーーえ?こんな朝早くに?」
「はい。あの・・・『きっとフローラ様の体調が悪くなるでしょうから、ここで医者と待機しておきます』と仰って・・・旦那様もご存知だった様で・・・その・・・」
(おや・・・?これは、窓からフローラ様のパジャマ姿でも拝めるかな?)
そう思った矢先に凄い勢いで窓が開いたかと思えば、物凄い形相のフローラ様と目が合った。
思わず満面の笑みで手を振ると・・・フローラ様は頭を抱えたまま部屋へと引っ込んでしまった。
「あの・・・お嬢様、お医者様をお連れ致しましょうか・・・?」
「あら?あらららら?ーーーごめんなさい、アーニャ・・・どうやら私の勘違いだった様だわ!もうすっかり元気になったので、お医者様は大丈夫だとサイラス様に伝えて来てくれるかしら?」
「ーーーっぷ、あははは!!!!」
もう我慢が出来なかった俺はとうとう声に出して笑ってしまった。
(何だよそれーーー!面白過ぎるだろう・・・?!!)
まさかそう来るとは思わなかった俺は・・・生まれて初めてこんな大声で笑い、
そして、自分がとことんフローラ様にのめり込んでしまっている事に気付き始めていたーーー。
「あの・・・サイラス様・・・?」
「あぁ、アーニャ殿。フローラ様は如何でしたか?」
まさか盗聴器で聴いていたので全部分かってますよ。とも言えないので、一応聴いておく。
「あのお嬢様ですが、その・・・お目覚めの際は体調が優れなかった様なのですが、お医者様は大丈夫なのでお帰り頂いて構わないとの事でした・・・。」
「そうですか、それは良かった。」
俺がいつもの様に笑みを浮かべてそつ無く会話を進めるのが、腑に落ちない様子のフローラ様付きメイドはエプロンの端でモジモジとさせていた手をギュッと固く握ると、意を決した様子で俺に聞いてきた。
「あの・・・!ーーー何故、お嬢様の体調が悪くなる事をご存知だったのですか・・・?」
「え?あぁ・・・まぁ、それはーーー」
「サイラス殿!!」
メイドに答えるよりも先にこの屋敷の主人であるアナスタシア公爵の言葉が聞こえ、会話が強制終了となる。
「これはこれは・・・アナスタシア公爵、お早うございます。」
私が胸に手を当て礼をすると、すっと私の近くまで来た公爵が耳元で囁く。
「人が悪いでは無いですか・・・!メイド長から聞いて飛び起きましたぞ・・・!」
「すみません。フローラ様の行動が予測出来なかったので・・・万全を期させて頂きました故・・・」
(アナスタシア公爵・・・気付いていないのかもしれませんが、フローラ様のリアクションの大きさと思った事がそのまま顔に出る様子は完全に貴方の遺伝ですよ・・・?)
故に、公爵に言えば作戦は筒抜けも同然な訳である。
朝から大変な目に遭わせて申し訳ないが、これは公爵の為でもある。理解して貰いたい。
「ま、まぁ・・・良いのですが!それより、折角来て頂いたのですから・・・朝食を一緒にどうですか?」
「お気遣い有難うございます。喜んで頂きます」
「ーっという事だ!アーニャ!フローラも早く朝食の席に来れる様に支度を進めなさい。」
(あぁ~・・・。それは、多分・・・地雷な気もするのだが・・・。)
「かしこまりました、旦那様。では私はこれで失礼させて頂きます。」
礼をするとメイドは小走りで屋敷の中へと消えて行ったーーー。俺は、頼むから先程の地雷っぽい言葉だけは伝えないでくれと引き止めて一言言いたかったが・・・公爵に腕を掴まれてしまい、エプロンに仕掛けておいた盗聴器をすれ違い様に回収する事しか出来なかった。
「サイラス殿~!フローラは・・・フローラは、大丈夫でしょうか・・・?!」
「アナスタシア公爵・・・。とりあえず、今のところはデートへ行くつもりの様ですよ?」
王城の執務室で2人きりでやり取りをしている時と同じ様な・・・先程までの威厳有る姿からは想像もつかない様な、頼りない姿に変貌してしまった公爵の手を自分の腕からゆっくりと引き剥がす。
「絶対に行ってくれねば困るのです・・・!あぁ・・・殿下から何とお叱りを受けるか・・・!」
(ルーク・・・。お前、アナスタシア公爵に何と言ったんだ・・・。本当にもうーーー)
表情はいつもの笑みを浮かべていたが、内心は頭を抱えたくなる様な気持ちで一杯になったーーー。
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