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#side サイラス ~攫ってしまいたい姫君~
姫君はご機嫌ナナメ
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「お待たせ致しました、お父様」
やはりあの言葉が地雷だったのか・・・フローラ様が食堂へ降りて来たのは、
私達がとうの昔に朝食を終えて食後のティータイムすら二杯目に突入しようとしていた時だった。
「遅いじゃないか!フローラ・・・!サイラス様がどれだけお待ちになっ」
「お父様?乙女の支度とは、時間がかかって当然のものなのですよ?焦らすなど・・・無粋ですわ」
(そっ、その仕草はーーー!?)
フローラ様の趣味では絶対に選ばないであろう・・・妖艶な扇子を広げたかと思えば、涼やかにアナスタシア公爵を睨みつけている・・・。
その姿は宛ら・・・キースランド伯爵令嬢を彷彿とさせる一連の動作で・・・俺は直視しない様に必死に視線を外した。
(どっどうしたと言うんだ・・・!フローラ様・・・!もしかして、キースランド伯爵令嬢の動作が気に入ってしまったのか?)
「それに・・・!サイラスがこ~んな朝早くから来て下さるなんて、本当にもう夢にも思わなかったもので・・・、ごめんなさいね?サイラス。」
全く申し訳なさなど伝わって来ない謝罪だったが、相手は公爵令嬢で未来の王妃。おまけに難攻不落のフローラ様と来ている。これ以上機嫌を損ねない様にと、俺は慎重に言葉を選んだ。
「フローラ様・・・御無礼をお許し下さい。ですが本日は、大切な大切な殿下とフローラ様のデートの日ですので。万全を期す為にこうして馳せ参じた訳で御座います。」
「白々しい・・・!」
(・・・・・・へ?ーーー今、なんて言った・・・?)
予想外の返答に俺は何とか外面だけは崩さない様に必死に耐えたが、頭の中では開いた口が塞がらない状態だった。
(『白々しい』って言われた様な気がしたが・・・気のせいか?何がどう白々しいのだ?え?え?)
俺は頭の中で何度も自問自答を繰り返すが、納得出来る答えを導き出せずに焦っていると・・・さらに信じ難い言葉がフローラ様の口から飛び出して来た。
「貴方がドSだって事は、もうお見通しなんですからねっ!!!」
(ーー・・・え。)
(あぁ・・・何だ・・・バレっちゃってたんだ・・・。)
思わず口から滑り出てしまったのか、言ったフローラ様本人すらも首を傾げてしまっている始末だ。
俺は焦りとかそんな感情は一切湧いて来ず・・・
むしろフローラ様が思いの外、俺をきちんと見てくれている事に少し高揚感すら覚えてしまっていた。
「おや、フローラ様は手厳しいですね。私はドSですか・・・つまりサディストという意味で間違い無いでしょうか?」
もうバレてしまっているので有れば、怖いもの無しの俺は少しばかり強気に出てみる。
「サイラス・・・ごめんなさい・・・その、間違えて心の声が出てしまっていたみたいで・・・」
「お、お嬢様!それでは更に失礼です!!」
(ーぶっ!!いや、本当に。メイドの言う通り・・・。それ、さらに失礼の上塗りだから!!)
フローラ様の百面相劇が面白過ぎて笑いを堪えられる自信がなくなって来た俺は、堪らず言葉を続けた。
「フローラ様・・・、良いのです。未来の王妃候補である貴女の評価が〝ドS〟で有るという事実を私は受け止め、改善しなくてはいけません。具体的にどこら辺がドSなのかお聞かせ願えますか?」
本当にお聞かせ願えるとも思っていないし、聞きたいとも思っていない。
これは言わば、この一連の流れの幕引きを図る為の布石の様な物だ。
フローラ様とて言いたくて言いたくて仕方がなく出た言葉では無い様子だったし、恐らく適当に誤魔化して〝ごめんなさい〟で終わるだろう。
「え・・・いや、本当に言っても宜しいのですか?」
俺は思わず笑顔のまま固まってしまったーーー。
(え・・・?え・・・?俺の聞き間違いか?)
この流れ、この空気で・・・本当に言う奴なんて居る訳が無い・・・!
これは言わば社交辞令の様な物で真に受ける奴なんて、この貴族界ではやっていけない・・・!
(フローラ様は確かに規格外だが・・・、少し前までは社交界で本音と建前をある程度弁えたご令嬢だったんだ・・・!俺の聞き間違いだ!そうに決まってー)
「フローラ・・・冷静に、冷静に考えて発言しなさい・・・な?」
「お嬢様・・・!間に受けてはいけません・・・!」
(聞き間違えーーーじゃなかった。)
公爵とメイドの耳にもバッチリ聞こえて居たらしく、二人は必死にフローラ様に言葉を投げかけているが・・・。
当の本人は、俺から視線を外さずにやけに好戦的な目付きをしている。
(ま、まさか・・・こんな公爵令嬢が存在するとは・・・!!)
俺の予想は当たって居たようで、フローラ様はその場で腰に手を当てて俺をビシッと指差すと・・・始めてしまった。
「サイラス・・・貴方、人の困った顔を見るのが大好きなのでしょう?!あと、追い詰めるのとか・・・逃げ道を塞いだりとか・・・そういう事に至高の喜びを感じている所がドSなのです!!!」
分かったーーー。
この際、フローラ様が言っている事が正しいと仮に認めよう。
別に至高の喜びまでは感じていないが・・・まぁ楽しんでやっていた事は事実だ。
でも、でもさーーー・・・
(普通言わねぇだろ!!!そんな事!!!)
俺はもう腹筋が痛みを覚える程に必死に笑い転げたい気持ちを我慢して顔をキープする。
その様子を首を傾げて覗き込むフローラ様のお顔が・・・可愛らしく俺には映るのだから、俺はもう恐らく彼女にーーー・・・。
(恋をしてしまっているーーー)
やはりあの言葉が地雷だったのか・・・フローラ様が食堂へ降りて来たのは、
私達がとうの昔に朝食を終えて食後のティータイムすら二杯目に突入しようとしていた時だった。
「遅いじゃないか!フローラ・・・!サイラス様がどれだけお待ちになっ」
「お父様?乙女の支度とは、時間がかかって当然のものなのですよ?焦らすなど・・・無粋ですわ」
(そっ、その仕草はーーー!?)
フローラ様の趣味では絶対に選ばないであろう・・・妖艶な扇子を広げたかと思えば、涼やかにアナスタシア公爵を睨みつけている・・・。
その姿は宛ら・・・キースランド伯爵令嬢を彷彿とさせる一連の動作で・・・俺は直視しない様に必死に視線を外した。
(どっどうしたと言うんだ・・・!フローラ様・・・!もしかして、キースランド伯爵令嬢の動作が気に入ってしまったのか?)
「それに・・・!サイラスがこ~んな朝早くから来て下さるなんて、本当にもう夢にも思わなかったもので・・・、ごめんなさいね?サイラス。」
全く申し訳なさなど伝わって来ない謝罪だったが、相手は公爵令嬢で未来の王妃。おまけに難攻不落のフローラ様と来ている。これ以上機嫌を損ねない様にと、俺は慎重に言葉を選んだ。
「フローラ様・・・御無礼をお許し下さい。ですが本日は、大切な大切な殿下とフローラ様のデートの日ですので。万全を期す為にこうして馳せ参じた訳で御座います。」
「白々しい・・・!」
(・・・・・・へ?ーーー今、なんて言った・・・?)
予想外の返答に俺は何とか外面だけは崩さない様に必死に耐えたが、頭の中では開いた口が塞がらない状態だった。
(『白々しい』って言われた様な気がしたが・・・気のせいか?何がどう白々しいのだ?え?え?)
俺は頭の中で何度も自問自答を繰り返すが、納得出来る答えを導き出せずに焦っていると・・・さらに信じ難い言葉がフローラ様の口から飛び出して来た。
「貴方がドSだって事は、もうお見通しなんですからねっ!!!」
(ーー・・・え。)
(あぁ・・・何だ・・・バレっちゃってたんだ・・・。)
思わず口から滑り出てしまったのか、言ったフローラ様本人すらも首を傾げてしまっている始末だ。
俺は焦りとかそんな感情は一切湧いて来ず・・・
むしろフローラ様が思いの外、俺をきちんと見てくれている事に少し高揚感すら覚えてしまっていた。
「おや、フローラ様は手厳しいですね。私はドSですか・・・つまりサディストという意味で間違い無いでしょうか?」
もうバレてしまっているので有れば、怖いもの無しの俺は少しばかり強気に出てみる。
「サイラス・・・ごめんなさい・・・その、間違えて心の声が出てしまっていたみたいで・・・」
「お、お嬢様!それでは更に失礼です!!」
(ーぶっ!!いや、本当に。メイドの言う通り・・・。それ、さらに失礼の上塗りだから!!)
フローラ様の百面相劇が面白過ぎて笑いを堪えられる自信がなくなって来た俺は、堪らず言葉を続けた。
「フローラ様・・・、良いのです。未来の王妃候補である貴女の評価が〝ドS〟で有るという事実を私は受け止め、改善しなくてはいけません。具体的にどこら辺がドSなのかお聞かせ願えますか?」
本当にお聞かせ願えるとも思っていないし、聞きたいとも思っていない。
これは言わば、この一連の流れの幕引きを図る為の布石の様な物だ。
フローラ様とて言いたくて言いたくて仕方がなく出た言葉では無い様子だったし、恐らく適当に誤魔化して〝ごめんなさい〟で終わるだろう。
「え・・・いや、本当に言っても宜しいのですか?」
俺は思わず笑顔のまま固まってしまったーーー。
(え・・・?え・・・?俺の聞き間違いか?)
この流れ、この空気で・・・本当に言う奴なんて居る訳が無い・・・!
これは言わば社交辞令の様な物で真に受ける奴なんて、この貴族界ではやっていけない・・・!
(フローラ様は確かに規格外だが・・・、少し前までは社交界で本音と建前をある程度弁えたご令嬢だったんだ・・・!俺の聞き間違いだ!そうに決まってー)
「フローラ・・・冷静に、冷静に考えて発言しなさい・・・な?」
「お嬢様・・・!間に受けてはいけません・・・!」
(聞き間違えーーーじゃなかった。)
公爵とメイドの耳にもバッチリ聞こえて居たらしく、二人は必死にフローラ様に言葉を投げかけているが・・・。
当の本人は、俺から視線を外さずにやけに好戦的な目付きをしている。
(ま、まさか・・・こんな公爵令嬢が存在するとは・・・!!)
俺の予想は当たって居たようで、フローラ様はその場で腰に手を当てて俺をビシッと指差すと・・・始めてしまった。
「サイラス・・・貴方、人の困った顔を見るのが大好きなのでしょう?!あと、追い詰めるのとか・・・逃げ道を塞いだりとか・・・そういう事に至高の喜びを感じている所がドSなのです!!!」
分かったーーー。
この際、フローラ様が言っている事が正しいと仮に認めよう。
別に至高の喜びまでは感じていないが・・・まぁ楽しんでやっていた事は事実だ。
でも、でもさーーー・・・
(普通言わねぇだろ!!!そんな事!!!)
俺はもう腹筋が痛みを覚える程に必死に笑い転げたい気持ちを我慢して顔をキープする。
その様子を首を傾げて覗き込むフローラ様のお顔が・・・可愛らしく俺には映るのだから、俺はもう恐らく彼女にーーー・・・。
(恋をしてしまっているーーー)
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