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本編 第三部 〜乙女はアカデミーにて〜
もう迷わない・・・勝つよ。
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「お兄様・・・本日の放課後の件ですけれど!!」
アカデミーへと向かう馬車に乗り込んだ私は、早速お兄様に詰め寄った。
昨日の生徒会室での一件を終えて屋敷へと帰って来た私達は・・・
お互いに箝口令を布きあっていた為、屋敷内では何も話せず・・・私は悶々としながら今日を迎える羽目になってしまったのだ。
「殿下との決闘の件だろ?大丈夫だよ、フローラ・・・僕が上手く負けるから」
(いや・・・私が聞きたいのはそう言う事じゃなくて!!ーーーって!負ける?!)
「聞き捨てなりませんわよ?!お兄様!やると決めたからには正々堂々、騎士として闘うべきですわ!」
お兄様の返答に思わず食いついてしまった私は、人差し指でお兄様をビシっと差しながらそう言い放つが、
お兄様にピンと差した人差し指を手ですぐに下げられてしまう。
「相手は王族なんだぞ?万が一の事が有っては、父上にご迷惑がかかるし・・・フローラも殿下が負ける所は見たく無いだろう?」
(いや・・・別に。寧ろ、普通にやれば殿下が負けると思っていますけれど・・・。)
けれどお兄様は意外に頑固なのだ。
一晩考えた結果の意見がこれなのであれば・・・最早、何を言っても無駄だだろうな。
これ以上の説得を早々に諦めた私は、小さなため息をついて馬車のソファに深く座りなおした。
「分かりました・・・。お兄様がそう仰るのであれば・・・放課後は、私が殿下と決闘致します!」
「えええぇぇぇ!!?意味が分からないよ、フローラ・・・!」
「意味が分からないのは、こちらです!!一体、何を賭けて殿下と決闘すると言うのですか?そんな簡単に譲れるものなので有れば・・・さっさと殿下へと渡してしまえば良いのです!!」
そう・・・そうなのだ・・・!
一晩考えて見たが、一体、殿下とお兄様が何の為に決闘するのか・・・私には全く分からないのだ。
ずっと言いたかった言葉だったせいか私の口調は無意識のうちに少し強くなってしまっていたらしく、
お兄様は私の言葉を聞くや困り顔で俯いてしまった。
(この様子からするに・・・お兄様にとっても、譲れない大切なものだと言う事なのかしら・・・?)
「譲れないものなので有れば・・・力の限り闘うべきですわよ?お兄様が出来ないと言うので有れば、私が剣を振るいます!」
(そして・・・お兄様の陰口を言っていた奴等も殿下のついでに切ってやるわ・・・!おほほっ!)
そう昨日・・・食堂で目の当たりした光景に一番腹を立てたのは、〝私自身〟にだーーー。
過去4回、殿下に好かれる事ばかり、殿下に認めて貰う事ばかりを盲目的に追い続けていた馬鹿な自分。
結果的に婚約破棄を言い渡されるのに・・・無駄な努力ばかりに時間を費やして、お兄様の苦しみに気付けなかった愚かな自分。
毎日一緒に居たのに・・・、
自分は散々励まして貰ったのに・・・、
優しくして貰ったのに・・・!
何も出来なかった・・・
いや、何もしてすら来なかった・・・
見ようともしなかった・・・許せない自分。
だからこれは懺悔に近いのかもしれない・・・。
私は別に・・・今世で急にお兄様の事が好きなったとかそう言う訳では無い。
お兄様の事はずっと大切に思っていたし、尊敬もしていた。
だけど、殿下に好かれる事に全ての神経を注いでいた私はお兄様の『婚約者として殿下を優先させるべきだよ』と言う言葉を鵜呑みにしてしまっていた。
それはきっとーーー私を巻き込まない様にと、心配させない様にと・・・優しいお兄様が張ってくれていた予防線だったのだろう。
私はそれに甘えた。
「お兄様がそう仰るので有れば・・・」なんて、お兄様のせいにさえしていた。
ちょっと考えたら全部、全部、全部・・・!簡単に分かる事だったのに、わが身可愛さにしてこなかった・・・。
4回も有ったのに・・・!
(そうよ・・・だから、絶対に負けられないわ・・・!例え相手が誰であろうと・・・!)
「フローラらしいね・・・。僕よりも騎士に向いているよ、きっと・・・」
「ええ!だから任せて下さい!私が殿下をコテンパンにやっつけて見せますわ!!」
ずっと俯いていたお兄様から小さな笑みが溢れると、私がドンと来い!と自分の胸を叩いてそう高らかに宣言した。
「良いんだ・・・。フローラ、有難う。もう迷わないから・・・!」
「お兄様・・・?」
何だか吹っ切れた様子のお兄様は・・・強い眼差しをしていた。
その表情はいつもの温和なお兄様とは別人の様に凛々しく、言葉も力強かった。
「フローラ・・・例え許されない事だと分かっていても・・・それが欲しくて堪らない場合、君ならどうする?」
(ーーーえ?・・・何の話?なぞなぞ?!)
「え~・・・っと、それって・・・今日の決闘に関係あるのですか・・・?」
お兄様の素っ頓狂な質問に目をパチクリさせた私は、質問に質問で返してしまう。
「とても有るよ・・・。とてもね。」
薄っすら笑みを浮かべながら口許で手を組んでいるお兄様と、膝を付き合わせる形で馬車に揺られている私は、その決意すら感じるお兄様の強い瞳を暫くじっと見つめていた。
(何だか良く分からないけれど・・・お兄様が真剣に聞いていると言う事だけは分かったわ・・・。)
「私がどうのこうのと言うよりも・・・お兄様に一つ、言っておきたい事が御座います。」
首を傾げるお兄様の顔を両手て掴んだ私は、その瞳を逃がさない様にとしっかり見据える。
「例え世界中の人間が許さなくても・・・私が許します!!いいえ、私が世界中の人間を説得して見せます!」
(だからー・・・、そんな簡単に諦めないで下さい!幸せになって下さい!)
と続けたかったのだが・・・私の言葉を聞いたお兄様の顔が見た事ない程に真っ赤になっていたので、慌てて手をお兄様の頬から離し額に当てた。
「お、お兄様?!大変ですわ!とっても熱い・・・!い、医者、・・・お医者様ですわー!!!」
額に当てた手からお兄様の熱が伝わり、その予想以上の体熱感にプチパニックを起こしてしまった私は、
小窓を開けて御者に行先を学園から治療院へと変更する様に伝えようと小窓に手を伸ばしたが、お兄様に腕を掴まれて阻止されてしまう。
「だ、大丈夫だから・・・!ごめんフローラ、これは・・・体調が悪いんじゃないんだ・・・。」
「そう・・・なのですか?」
(た、確かに・・・。先程まで真っ赤だった顔が少し戻りつつあるわ。)
私の怪訝そうな顔を見たお兄様は、愛おしそうに微笑みかけると、優しく頭をポンポンの撫でてくれた。
「もう迷わない・・・今日の決闘、フローラの為にーーーー勝つよ。」
アカデミーへと向かう馬車に乗り込んだ私は、早速お兄様に詰め寄った。
昨日の生徒会室での一件を終えて屋敷へと帰って来た私達は・・・
お互いに箝口令を布きあっていた為、屋敷内では何も話せず・・・私は悶々としながら今日を迎える羽目になってしまったのだ。
「殿下との決闘の件だろ?大丈夫だよ、フローラ・・・僕が上手く負けるから」
(いや・・・私が聞きたいのはそう言う事じゃなくて!!ーーーって!負ける?!)
「聞き捨てなりませんわよ?!お兄様!やると決めたからには正々堂々、騎士として闘うべきですわ!」
お兄様の返答に思わず食いついてしまった私は、人差し指でお兄様をビシっと差しながらそう言い放つが、
お兄様にピンと差した人差し指を手ですぐに下げられてしまう。
「相手は王族なんだぞ?万が一の事が有っては、父上にご迷惑がかかるし・・・フローラも殿下が負ける所は見たく無いだろう?」
(いや・・・別に。寧ろ、普通にやれば殿下が負けると思っていますけれど・・・。)
けれどお兄様は意外に頑固なのだ。
一晩考えた結果の意見がこれなのであれば・・・最早、何を言っても無駄だだろうな。
これ以上の説得を早々に諦めた私は、小さなため息をついて馬車のソファに深く座りなおした。
「分かりました・・・。お兄様がそう仰るのであれば・・・放課後は、私が殿下と決闘致します!」
「えええぇぇぇ!!?意味が分からないよ、フローラ・・・!」
「意味が分からないのは、こちらです!!一体、何を賭けて殿下と決闘すると言うのですか?そんな簡単に譲れるものなので有れば・・・さっさと殿下へと渡してしまえば良いのです!!」
そう・・・そうなのだ・・・!
一晩考えて見たが、一体、殿下とお兄様が何の為に決闘するのか・・・私には全く分からないのだ。
ずっと言いたかった言葉だったせいか私の口調は無意識のうちに少し強くなってしまっていたらしく、
お兄様は私の言葉を聞くや困り顔で俯いてしまった。
(この様子からするに・・・お兄様にとっても、譲れない大切なものだと言う事なのかしら・・・?)
「譲れないものなので有れば・・・力の限り闘うべきですわよ?お兄様が出来ないと言うので有れば、私が剣を振るいます!」
(そして・・・お兄様の陰口を言っていた奴等も殿下のついでに切ってやるわ・・・!おほほっ!)
そう昨日・・・食堂で目の当たりした光景に一番腹を立てたのは、〝私自身〟にだーーー。
過去4回、殿下に好かれる事ばかり、殿下に認めて貰う事ばかりを盲目的に追い続けていた馬鹿な自分。
結果的に婚約破棄を言い渡されるのに・・・無駄な努力ばかりに時間を費やして、お兄様の苦しみに気付けなかった愚かな自分。
毎日一緒に居たのに・・・、
自分は散々励まして貰ったのに・・・、
優しくして貰ったのに・・・!
何も出来なかった・・・
いや、何もしてすら来なかった・・・
見ようともしなかった・・・許せない自分。
だからこれは懺悔に近いのかもしれない・・・。
私は別に・・・今世で急にお兄様の事が好きなったとかそう言う訳では無い。
お兄様の事はずっと大切に思っていたし、尊敬もしていた。
だけど、殿下に好かれる事に全ての神経を注いでいた私はお兄様の『婚約者として殿下を優先させるべきだよ』と言う言葉を鵜呑みにしてしまっていた。
それはきっとーーー私を巻き込まない様にと、心配させない様にと・・・優しいお兄様が張ってくれていた予防線だったのだろう。
私はそれに甘えた。
「お兄様がそう仰るので有れば・・・」なんて、お兄様のせいにさえしていた。
ちょっと考えたら全部、全部、全部・・・!簡単に分かる事だったのに、わが身可愛さにしてこなかった・・・。
4回も有ったのに・・・!
(そうよ・・・だから、絶対に負けられないわ・・・!例え相手が誰であろうと・・・!)
「フローラらしいね・・・。僕よりも騎士に向いているよ、きっと・・・」
「ええ!だから任せて下さい!私が殿下をコテンパンにやっつけて見せますわ!!」
ずっと俯いていたお兄様から小さな笑みが溢れると、私がドンと来い!と自分の胸を叩いてそう高らかに宣言した。
「良いんだ・・・。フローラ、有難う。もう迷わないから・・・!」
「お兄様・・・?」
何だか吹っ切れた様子のお兄様は・・・強い眼差しをしていた。
その表情はいつもの温和なお兄様とは別人の様に凛々しく、言葉も力強かった。
「フローラ・・・例え許されない事だと分かっていても・・・それが欲しくて堪らない場合、君ならどうする?」
(ーーーえ?・・・何の話?なぞなぞ?!)
「え~・・・っと、それって・・・今日の決闘に関係あるのですか・・・?」
お兄様の素っ頓狂な質問に目をパチクリさせた私は、質問に質問で返してしまう。
「とても有るよ・・・。とてもね。」
薄っすら笑みを浮かべながら口許で手を組んでいるお兄様と、膝を付き合わせる形で馬車に揺られている私は、その決意すら感じるお兄様の強い瞳を暫くじっと見つめていた。
(何だか良く分からないけれど・・・お兄様が真剣に聞いていると言う事だけは分かったわ・・・。)
「私がどうのこうのと言うよりも・・・お兄様に一つ、言っておきたい事が御座います。」
首を傾げるお兄様の顔を両手て掴んだ私は、その瞳を逃がさない様にとしっかり見据える。
「例え世界中の人間が許さなくても・・・私が許します!!いいえ、私が世界中の人間を説得して見せます!」
(だからー・・・、そんな簡単に諦めないで下さい!幸せになって下さい!)
と続けたかったのだが・・・私の言葉を聞いたお兄様の顔が見た事ない程に真っ赤になっていたので、慌てて手をお兄様の頬から離し額に当てた。
「お、お兄様?!大変ですわ!とっても熱い・・・!い、医者、・・・お医者様ですわー!!!」
額に当てた手からお兄様の熱が伝わり、その予想以上の体熱感にプチパニックを起こしてしまった私は、
小窓を開けて御者に行先を学園から治療院へと変更する様に伝えようと小窓に手を伸ばしたが、お兄様に腕を掴まれて阻止されてしまう。
「だ、大丈夫だから・・・!ごめんフローラ、これは・・・体調が悪いんじゃないんだ・・・。」
「そう・・・なのですか?」
(た、確かに・・・。先程まで真っ赤だった顔が少し戻りつつあるわ。)
私の怪訝そうな顔を見たお兄様は、愛おしそうに微笑みかけると、優しく頭をポンポンの撫でてくれた。
「もう迷わない・・・今日の決闘、フローラの為にーーーー勝つよ。」
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