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本編 第三部 〜乙女はアカデミーにて〜
決闘の行方
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お兄様の意味深な言葉を最後に、馬車から降りる事となってしまった私は・・・
昨晩と同様・・・またしても悶々と考える羽目になって居た。
『もう迷わない・・・今日の決闘、フローラの為にーーー勝つよ』
(何で?・・・何で私の名前が出てくるんだ?)
教室の机で頭を抱えてずっと考えているが・・・答えが一向に出てこない私は、思いっきり髪を掻き乱す。
(結局、分からないまま・・・放課後を迎えてしまったわ・・・。)
仕方なく帰り支度を初めてはみたものの・・・やはり、頭の中ではお兄様の今朝の言葉がループしてしまっているせいか、
すぐに手が止まってしまう私は・・・たかが鞄に教本を詰めるだけの作業に20分の時間を費やしてしまって居た・・・。
スッキリしないまま庭園広場に着いた私は・・・どうやら最後だったらしく、既にエレノアも殿下もお兄様も居た。
「遅いですわよ?フローラ・・・!」
エレノアに急かされる様にそう言われてしまった私は、思わず小走りで3人の元へと向かう。
「ご、御免なさい・・・。考え事をして居たら帰り支度が遅くなってしまって・・・」
私の言い訳に小さく溜息をつくエレノアの後ろでは・・・お兄様と殿下が木で出来た模造刀を入念にチェックしており、よくよく見れば格好も上はシャツ一枚になってしまって居た。
「では役者が全員揃った事ですし・・・始めましょうか?お二方」
エレノアが審判が本来立つべき位置へと移動し、目配せをすると殿下とお兄様はそれに応じる形で所定の位置へと足を進めた。
(ま、まさか・・・本当にお兄様と殿下が剣を交えるとは・・・。)
いざ目の前でその光景を目の当たりにした私に緊張感が走る。
「てっきり、わざと負けてくれるのかと思っていたのだが・・・心境の変化というやつかな?」
「はい。お怪我はさせませんが・・・この勝負には勝たせて頂きます!」
位置に着いた二人は何か会話を交わしているが・・・その声は小さく、私の耳にまでは届かなかった。
二人の様子を見定めて居たエレノアが、天に向かって真っ直ぐ手を挙げると緊張感は最高潮に達した。
「初め!!」
エレノアの凛々しい声と勢いよく振り下ろされた手を合図に、お兄様が一瞬で殿下の懐へと飛び込んだ。
と同時に模造刀がぶつかる木の鈍い音が響き渡る。殿下がお兄様の突きを剣で躱し受け止めた音だった。
「そんな簡単には勝たせて頂けませんか・・・っ!」
「当たり前だ・・・!フローラだけは譲れないのでな!!」
殿下が剣を弾き飛ばすと、お兄様は後ろへと飛んで下がり・・・体勢を整い直した。
(は、早・・・!そして、強・・・!二人とも、こんなに強かったの?!!)
二人の決闘から目が離せなくなってしまって居た私は・・・段違いの実力に思わず呆気に取られてしまって居た。
(私なんぞが闘える相手では無かったわね・・・。)
今朝の馬車の中で『私が代わりに剣を振るいます!』と言って居た自分の何と滑稽な事か・・・。お兄様によく笑い飛ばされなかったものである。
「あら?ギャラリーが増えて来てしまいましたわね・・・。」
エレノアがポツリと零した独り言が耳に入った私は、殿下とお兄様から視線を外して周りを見回してみる。
(うわぁ・・・!いつの間にこんな人集りが・・・っ?!決闘に夢中で全然、気付かなかったわ!)
お兄様と殿下が決闘場として使用している石畳のスペースをぐるりと取り囲む形で、アカデミーの生徒が所狭しと並んでいた。
このハイレベルな闘いとエレノアと殿下という人目を集める豪華人材が、どうやら人を集めてしまった様だ。
「おい・・・殿下のお相手をしている人って・・・」
「黒髪に赤い瞳だぞ?ーーーまさか、隣国の奴じゃ無いのか?」
「英雄が連れて返って来たという奴が学園に通っているとは小耳に挟んでいたが・・・」
「殿下と決闘など・・・恐れ多い事をするんだ、やはりロクな奴じゃ無い。」
「野蛮だ」「穢らわしい」「これだから隣国の輩は・・・」「身の程知らずね」
ギャラリーが口々に発する汚い言葉の数々は・・・聞きたくなくても、自然と耳に入って来てしまうほど、皆がみんな口々に発して居た。
(お兄様はそんな方では無いわ・・・!何も知らない癖に、こんな風に言われるだなんて納得出来ない・・・っ!!!!)
お兄様と殿下の決闘の行方を見届けたい気持ちと、この怒りをギャラリーにぶつけてしまいたい葛藤に襲われた私は、握り締めた拳がワナワナと震え出してしまう程、激情に駆られて居た。
私が勝負から目を離してしまっている一瞬の間に、お兄様の持って居た模造刀が殿下に弾き飛ばされてしまったらしく、ギャラリーの湧いた声が庭園広場にこだましている。
(お兄様・・・!!早く・・・!早く、剣を拾って下さいませ!!)
弾き飛ばされた模造刀をお兄様が素早く拾いに向かうと、宙に舞っていた模造刀が決闘を観戦して居た男子生徒の足元に落ちた。
すると・・・ニヤリと口角を上げたその男性は、模造刀が有るのに気が付かなかったという素振りで模造刀を蹴飛ばしてしまったのだ。
「なーーーっ!!?」
「こら!そこの方!!決闘中ですよ!!剣には触れない様に!!」
エレノアがすぐに指を差してその男子生徒に睨みをきかせるが・・・男性生徒は、「わざとじゃ無いです、すみません」と悪気がない様子を演じている。
ただ・・・これは公式な決闘という訳では無く、お兄様と殿下がどれだけ大事なものを賭けて真剣勝負をしてようと・・・所詮は、生徒同士のお遊びなのだ。
あの男性生徒を裁く法も術も無い・・・。だけどーーー、
(絶対にわざとだわ・・・!蹴る前に彼は、確かにニヤリと笑みを浮かべて居たもの!!!)
模造刀を未だ拾えて居ないお兄様はかなり劣勢で、模造刀を今から拾うのは困難な場所まで追い詰められて居た。
そんなギリギリの状況にも関わらず、お兄様を劣勢にしようと・・・性懲りも無く小石をお兄様の方へと蹴り飛ばして、足場を悪くしようとしている生徒が複数人いる事に気付く。
(な、なんて・・・卑劣な輩ですのーーー?!!)
その小石に足を取られてしまったお兄様がとうとう体勢を崩してしまい、絶体絶命の状態となってしまう。
殿下がその一瞬の隙を逃すまいと、降りかぶるーーー。
だが・・・お兄様の体に殿下の剣が届く事は無かった。
あの一瞬の間にお兄様の前に飛び入り、お兄様を庇う形で殿下の模造刀を受け止めた人物が居たからだーーー・・・
それはーーー・・・
私だった。
「これ以上・・・黙って見ている事は出来ません!!」
驚いて言葉を失っている殿下の剣を弾き返した私は、剣先を殿下へと向けた。
昨晩と同様・・・またしても悶々と考える羽目になって居た。
『もう迷わない・・・今日の決闘、フローラの為にーーー勝つよ』
(何で?・・・何で私の名前が出てくるんだ?)
教室の机で頭を抱えてずっと考えているが・・・答えが一向に出てこない私は、思いっきり髪を掻き乱す。
(結局、分からないまま・・・放課後を迎えてしまったわ・・・。)
仕方なく帰り支度を初めてはみたものの・・・やはり、頭の中ではお兄様の今朝の言葉がループしてしまっているせいか、
すぐに手が止まってしまう私は・・・たかが鞄に教本を詰めるだけの作業に20分の時間を費やしてしまって居た・・・。
スッキリしないまま庭園広場に着いた私は・・・どうやら最後だったらしく、既にエレノアも殿下もお兄様も居た。
「遅いですわよ?フローラ・・・!」
エレノアに急かされる様にそう言われてしまった私は、思わず小走りで3人の元へと向かう。
「ご、御免なさい・・・。考え事をして居たら帰り支度が遅くなってしまって・・・」
私の言い訳に小さく溜息をつくエレノアの後ろでは・・・お兄様と殿下が木で出来た模造刀を入念にチェックしており、よくよく見れば格好も上はシャツ一枚になってしまって居た。
「では役者が全員揃った事ですし・・・始めましょうか?お二方」
エレノアが審判が本来立つべき位置へと移動し、目配せをすると殿下とお兄様はそれに応じる形で所定の位置へと足を進めた。
(ま、まさか・・・本当にお兄様と殿下が剣を交えるとは・・・。)
いざ目の前でその光景を目の当たりにした私に緊張感が走る。
「てっきり、わざと負けてくれるのかと思っていたのだが・・・心境の変化というやつかな?」
「はい。お怪我はさせませんが・・・この勝負には勝たせて頂きます!」
位置に着いた二人は何か会話を交わしているが・・・その声は小さく、私の耳にまでは届かなかった。
二人の様子を見定めて居たエレノアが、天に向かって真っ直ぐ手を挙げると緊張感は最高潮に達した。
「初め!!」
エレノアの凛々しい声と勢いよく振り下ろされた手を合図に、お兄様が一瞬で殿下の懐へと飛び込んだ。
と同時に模造刀がぶつかる木の鈍い音が響き渡る。殿下がお兄様の突きを剣で躱し受け止めた音だった。
「そんな簡単には勝たせて頂けませんか・・・っ!」
「当たり前だ・・・!フローラだけは譲れないのでな!!」
殿下が剣を弾き飛ばすと、お兄様は後ろへと飛んで下がり・・・体勢を整い直した。
(は、早・・・!そして、強・・・!二人とも、こんなに強かったの?!!)
二人の決闘から目が離せなくなってしまって居た私は・・・段違いの実力に思わず呆気に取られてしまって居た。
(私なんぞが闘える相手では無かったわね・・・。)
今朝の馬車の中で『私が代わりに剣を振るいます!』と言って居た自分の何と滑稽な事か・・・。お兄様によく笑い飛ばされなかったものである。
「あら?ギャラリーが増えて来てしまいましたわね・・・。」
エレノアがポツリと零した独り言が耳に入った私は、殿下とお兄様から視線を外して周りを見回してみる。
(うわぁ・・・!いつの間にこんな人集りが・・・っ?!決闘に夢中で全然、気付かなかったわ!)
お兄様と殿下が決闘場として使用している石畳のスペースをぐるりと取り囲む形で、アカデミーの生徒が所狭しと並んでいた。
このハイレベルな闘いとエレノアと殿下という人目を集める豪華人材が、どうやら人を集めてしまった様だ。
「おい・・・殿下のお相手をしている人って・・・」
「黒髪に赤い瞳だぞ?ーーーまさか、隣国の奴じゃ無いのか?」
「英雄が連れて返って来たという奴が学園に通っているとは小耳に挟んでいたが・・・」
「殿下と決闘など・・・恐れ多い事をするんだ、やはりロクな奴じゃ無い。」
「野蛮だ」「穢らわしい」「これだから隣国の輩は・・・」「身の程知らずね」
ギャラリーが口々に発する汚い言葉の数々は・・・聞きたくなくても、自然と耳に入って来てしまうほど、皆がみんな口々に発して居た。
(お兄様はそんな方では無いわ・・・!何も知らない癖に、こんな風に言われるだなんて納得出来ない・・・っ!!!!)
お兄様と殿下の決闘の行方を見届けたい気持ちと、この怒りをギャラリーにぶつけてしまいたい葛藤に襲われた私は、握り締めた拳がワナワナと震え出してしまう程、激情に駆られて居た。
私が勝負から目を離してしまっている一瞬の間に、お兄様の持って居た模造刀が殿下に弾き飛ばされてしまったらしく、ギャラリーの湧いた声が庭園広場にこだましている。
(お兄様・・・!!早く・・・!早く、剣を拾って下さいませ!!)
弾き飛ばされた模造刀をお兄様が素早く拾いに向かうと、宙に舞っていた模造刀が決闘を観戦して居た男子生徒の足元に落ちた。
すると・・・ニヤリと口角を上げたその男性は、模造刀が有るのに気が付かなかったという素振りで模造刀を蹴飛ばしてしまったのだ。
「なーーーっ!!?」
「こら!そこの方!!決闘中ですよ!!剣には触れない様に!!」
エレノアがすぐに指を差してその男子生徒に睨みをきかせるが・・・男性生徒は、「わざとじゃ無いです、すみません」と悪気がない様子を演じている。
ただ・・・これは公式な決闘という訳では無く、お兄様と殿下がどれだけ大事なものを賭けて真剣勝負をしてようと・・・所詮は、生徒同士のお遊びなのだ。
あの男性生徒を裁く法も術も無い・・・。だけどーーー、
(絶対にわざとだわ・・・!蹴る前に彼は、確かにニヤリと笑みを浮かべて居たもの!!!)
模造刀を未だ拾えて居ないお兄様はかなり劣勢で、模造刀を今から拾うのは困難な場所まで追い詰められて居た。
そんなギリギリの状況にも関わらず、お兄様を劣勢にしようと・・・性懲りも無く小石をお兄様の方へと蹴り飛ばして、足場を悪くしようとしている生徒が複数人いる事に気付く。
(な、なんて・・・卑劣な輩ですのーーー?!!)
その小石に足を取られてしまったお兄様がとうとう体勢を崩してしまい、絶体絶命の状態となってしまう。
殿下がその一瞬の隙を逃すまいと、降りかぶるーーー。
だが・・・お兄様の体に殿下の剣が届く事は無かった。
あの一瞬の間にお兄様の前に飛び入り、お兄様を庇う形で殿下の模造刀を受け止めた人物が居たからだーーー・・・
それはーーー・・・
私だった。
「これ以上・・・黙って見ている事は出来ません!!」
驚いて言葉を失っている殿下の剣を弾き返した私は、剣先を殿下へと向けた。
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