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第17輪 湯けむりに咲く薄紅色の花
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「…………イグニス……見過ぎだから」
わざとらしく恥ずかしがるような口調で、鼓膜を震わせる少しだけ高い声の持ち主は一人しかない。
反射的に後ろへ下がったイグニスは、少しだけ逆上せていたことで濡れた床に足を取られる。
「――危ない‼」
危険を知らせる声が耳に届いたのは一瞬で、気づいたときは頭へ添えられた手と腰を抱く腕の感覚だった。
滑って背後へ転倒したと思っていたが、痛みはない。代わりに自分の上にグラキエスの裸体が乗っている。
厳密には、肌と肌が触れ合わないギリギリを保っていた。
衣服を着た状態で押し倒されたことは数回あったが、今は生まれたときの姿をしている。
恋愛感情のない同性なら「有難う」で済む話だが、助けた男はイグニスを性的対象として見ている相手だ。
湯けむりで薄っすらとしか見えない肢体の中、反り立つ男の象徴がある。
確実に、この状況がそうさせたとしか思えない猛った熱の存在は、イグニスの精神を震わせた。
「……あ、ごめんね? 大丈夫だった」
「――あ、ああ……大丈夫だ。だから、退いてくれ……」
イグニスなりに丁寧な言葉で促したのだが、離れていったのは頭と腰を支えていた腕だけ。
“視姦”という言葉があるように、上から下まで流れるような目線が這う感覚に襲われる。大人になってから上半身は何度かグラキエスに見られていたが、下半身は子供のときだけだった。
イグニスの耳に獲物を見つけて興奮したときのような唾を飲み込む音が聞こえてくる。
今まで軽い接触だけで、分かりやすい性的な行為を向けられたのがこれで三回目なイグニスは身じろいだ。
行動を起こしたのはグラキエスで、伸ばされた細長い指先が逃げる腰を掴む。
「……はぁ……イグニス……。少しだけ、触れても良い……?」
「……もう、触れてんだろうが」
「腰じゃなくて……。この間、僕が触らせた……イグニスの薄紅色の小さな花とか」
緊張からか、グラキエスの視線の先にある胸元を飾る小さな花も芯を持って尖っていた。
一歩譲ってそれで諦めるのかとグラキエスの顔を見て、高揚した表情から警鐘が鳴り響く。
あのときのように、万一でも反応したときは暴走する恐れしかない男の目だ。
「……ツンツンって、するだけでも良いからさ」
「……俺は毒のある虫か」
「じゃあ、指の腹で……クニクニしたい」
「――卑猥な言葉を口にするんじゃねぇ!」
魔法で拘束するという頭が逆上せた思考には浮かばなかった。このままグラキエスが腰を落とすだけで、色んなところが密着する。それをせず、理性を保っている男は異常にすら感じられた。
一瞬だけ、ドキッと胸の高鳴りを感じて首を振る。
イグニスの体目当てに性的な眼差しを向けたり、触ろうとしてきた輩はいた。だが、グラキエスのように一線を越えそうになっても、理性で押し留める者はいないだろう。
性的欲求を満たしたいのに、精神でも繋がりたいと思っているのは、他人の感情を読む能力がないイグニスでも分かることだ。
「――この状態で、それをさせるわけねぇだろうが……」
「だよねー……ごめんね? イグニスの裸体を拝めただけでも……目の保養だった」
少しして満足したのか離れていく体に、安堵した感覚となぜか物足りなさを感じてしまう。
危ないからと、手を伸ばされて起き上がったあと、脱衣場までついてくる寂しそうな姿に絆される自分がいた。
開かれたままの扉を抜けたところで立ち止まる。グラキエスもぶつかることなく立ち止まって、首を傾げていた。
「……俺も、触ったから……後ろから、突くだけなら許してやる……」
「え……? 良いの? ツンツンする感覚か……でも、イグニス……後ろからって――僕の息子が触れちゃったら、ごめんね……」
「なっ……! それは、許さねぇぞ!」
思わず振り向いたときに、既に動いていたグラキエスの冷たい指先が、イグニスの愛らしい小さな二つの花へ触れる。
くにっと音が聞こえてきそうな少し柔らかくなっていた小さな花は、指の腹で触られて主張するように再び芯を持った。
じんわりする痺れのような感覚がイグニスの体を駆け巡る。想像していた声は溢れない。代わりに、ツンツンすると言った指先は触れたまま軽く上下に動かされた。
優しく撫でるような手つきで、一度離した指先は小さな花の周りを撫でていく。
「……此処って、以外と慣らしたり、開発しないと性感帯にならないんだって……本当だね?」
直に触れられたことで思考が停止したイグニスは、卑猥な手つきで胸筋周りを揉みほぐされていった。グラキエスも約束のことをすっかり忘れて、女で言う下胸の境界線を撫でていく。しかも、いらない説明つきで……。
「此処も性感帯の一つらしいんだ……開発するなら、此処もありかなって。やっぱり、肉が薄いから揉むのは難しいね……気持ちいい?」
さわさわと弄られる中、じんわりとしたもどかしさで意識を浮上させたイグニスは、真っ赤にした顔で自由すぎる両手を思い切り握りしめた。
揉まれすぎたことで、まだ痺れのような生温かい感覚が残る中、血管が浮き出るような形相を向ける。
「――てめぇ……人が、思考停止しているのを良いことに……。ツンツンじゃねぇ‼」
「えー……残念。意外と感じなかったか……。イグニスのために、抱いて欲しいって言ってくる沢山の女の子を相手してきたんだけどなー……。やっぱり男の体は違うんだね?」
「――――ふざけんな‼」
お馴染みの魔法が飛ぶと、全裸で縛られてしまうグラキエスが叫んだ。良いザマだと見て見ぬふりをするイグニスは、グラキエスを放置して立ち去っていく。
気持ちよさはなかったのに、グラキエスに触られたことで、じんわりと疼く感覚は下半身の一点を刺激していた。
「…………あの馬鹿」
寝衣に着替えたイグニスは、片手で自分の体を抱いたまま出ていく際、解除までの時間を少しだけ早めてやる。
「――あそこまで許してくれるなら、舐めておくんだった……」
微かに耳へ聞こえたぼやきは、開けっ放しの浴室から流れる冷たくなった湯気の微かな音で掻き消されていった。
わざとらしく恥ずかしがるような口調で、鼓膜を震わせる少しだけ高い声の持ち主は一人しかない。
反射的に後ろへ下がったイグニスは、少しだけ逆上せていたことで濡れた床に足を取られる。
「――危ない‼」
危険を知らせる声が耳に届いたのは一瞬で、気づいたときは頭へ添えられた手と腰を抱く腕の感覚だった。
滑って背後へ転倒したと思っていたが、痛みはない。代わりに自分の上にグラキエスの裸体が乗っている。
厳密には、肌と肌が触れ合わないギリギリを保っていた。
衣服を着た状態で押し倒されたことは数回あったが、今は生まれたときの姿をしている。
恋愛感情のない同性なら「有難う」で済む話だが、助けた男はイグニスを性的対象として見ている相手だ。
湯けむりで薄っすらとしか見えない肢体の中、反り立つ男の象徴がある。
確実に、この状況がそうさせたとしか思えない猛った熱の存在は、イグニスの精神を震わせた。
「……あ、ごめんね? 大丈夫だった」
「――あ、ああ……大丈夫だ。だから、退いてくれ……」
イグニスなりに丁寧な言葉で促したのだが、離れていったのは頭と腰を支えていた腕だけ。
“視姦”という言葉があるように、上から下まで流れるような目線が這う感覚に襲われる。大人になってから上半身は何度かグラキエスに見られていたが、下半身は子供のときだけだった。
イグニスの耳に獲物を見つけて興奮したときのような唾を飲み込む音が聞こえてくる。
今まで軽い接触だけで、分かりやすい性的な行為を向けられたのがこれで三回目なイグニスは身じろいだ。
行動を起こしたのはグラキエスで、伸ばされた細長い指先が逃げる腰を掴む。
「……はぁ……イグニス……。少しだけ、触れても良い……?」
「……もう、触れてんだろうが」
「腰じゃなくて……。この間、僕が触らせた……イグニスの薄紅色の小さな花とか」
緊張からか、グラキエスの視線の先にある胸元を飾る小さな花も芯を持って尖っていた。
一歩譲ってそれで諦めるのかとグラキエスの顔を見て、高揚した表情から警鐘が鳴り響く。
あのときのように、万一でも反応したときは暴走する恐れしかない男の目だ。
「……ツンツンって、するだけでも良いからさ」
「……俺は毒のある虫か」
「じゃあ、指の腹で……クニクニしたい」
「――卑猥な言葉を口にするんじゃねぇ!」
魔法で拘束するという頭が逆上せた思考には浮かばなかった。このままグラキエスが腰を落とすだけで、色んなところが密着する。それをせず、理性を保っている男は異常にすら感じられた。
一瞬だけ、ドキッと胸の高鳴りを感じて首を振る。
イグニスの体目当てに性的な眼差しを向けたり、触ろうとしてきた輩はいた。だが、グラキエスのように一線を越えそうになっても、理性で押し留める者はいないだろう。
性的欲求を満たしたいのに、精神でも繋がりたいと思っているのは、他人の感情を読む能力がないイグニスでも分かることだ。
「――この状態で、それをさせるわけねぇだろうが……」
「だよねー……ごめんね? イグニスの裸体を拝めただけでも……目の保養だった」
少しして満足したのか離れていく体に、安堵した感覚となぜか物足りなさを感じてしまう。
危ないからと、手を伸ばされて起き上がったあと、脱衣場までついてくる寂しそうな姿に絆される自分がいた。
開かれたままの扉を抜けたところで立ち止まる。グラキエスもぶつかることなく立ち止まって、首を傾げていた。
「……俺も、触ったから……後ろから、突くだけなら許してやる……」
「え……? 良いの? ツンツンする感覚か……でも、イグニス……後ろからって――僕の息子が触れちゃったら、ごめんね……」
「なっ……! それは、許さねぇぞ!」
思わず振り向いたときに、既に動いていたグラキエスの冷たい指先が、イグニスの愛らしい小さな二つの花へ触れる。
くにっと音が聞こえてきそうな少し柔らかくなっていた小さな花は、指の腹で触られて主張するように再び芯を持った。
じんわりする痺れのような感覚がイグニスの体を駆け巡る。想像していた声は溢れない。代わりに、ツンツンすると言った指先は触れたまま軽く上下に動かされた。
優しく撫でるような手つきで、一度離した指先は小さな花の周りを撫でていく。
「……此処って、以外と慣らしたり、開発しないと性感帯にならないんだって……本当だね?」
直に触れられたことで思考が停止したイグニスは、卑猥な手つきで胸筋周りを揉みほぐされていった。グラキエスも約束のことをすっかり忘れて、女で言う下胸の境界線を撫でていく。しかも、いらない説明つきで……。
「此処も性感帯の一つらしいんだ……開発するなら、此処もありかなって。やっぱり、肉が薄いから揉むのは難しいね……気持ちいい?」
さわさわと弄られる中、じんわりとしたもどかしさで意識を浮上させたイグニスは、真っ赤にした顔で自由すぎる両手を思い切り握りしめた。
揉まれすぎたことで、まだ痺れのような生温かい感覚が残る中、血管が浮き出るような形相を向ける。
「――てめぇ……人が、思考停止しているのを良いことに……。ツンツンじゃねぇ‼」
「えー……残念。意外と感じなかったか……。イグニスのために、抱いて欲しいって言ってくる沢山の女の子を相手してきたんだけどなー……。やっぱり男の体は違うんだね?」
「――――ふざけんな‼」
お馴染みの魔法が飛ぶと、全裸で縛られてしまうグラキエスが叫んだ。良いザマだと見て見ぬふりをするイグニスは、グラキエスを放置して立ち去っていく。
気持ちよさはなかったのに、グラキエスに触られたことで、じんわりと疼く感覚は下半身の一点を刺激していた。
「…………あの馬鹿」
寝衣に着替えたイグニスは、片手で自分の体を抱いたまま出ていく際、解除までの時間を少しだけ早めてやる。
「――あそこまで許してくれるなら、舐めておくんだった……」
微かに耳へ聞こえたぼやきは、開けっ放しの浴室から流れる冷たくなった湯気の微かな音で掻き消されていった。
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