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第29輪 卑猥な魔植物図鑑
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「ねぇ、イグニス。僕に隠してることあるでしょ?」
グラキエスが戻ってきてから数日後――。
何事もなかったように時間が過ぎていった。
グラキエスが、女の話を切り出すこともイグニスから問い質すこともしない。
午後から調べ物をするために訪れた書庫の中、背後から耳元で囁きかける男の手を捻り上げる。いつもと変わらない光景は、イグニスの心を優しく溶かしていた。
だが、グラキエスに秘密があるのと同じで、イグニスもそろそろ告げないといけない時期が来ている。精霊との儀式まで残り二日だった。言うタイミングは今日しかない……。
そんな中で、イグニスは導かれるように一冊の本を手に取った。
「イグニスー? あ、その本……」
「知ってるのか?」
「うーん……読んでみたら、分かるかも?」
下品な笑みを浮かべるグラスは肩に顎を乗せてくる。
「重い」と振り払おうとするイグニスは、あるページを開いてしまった。
上半身が巨大な青い花のような見た目をして、花粉の代わりに牙がある。
ただ、下半身が明らかにおかしい……。根や蔓じゃない中心に、男なら見慣れた部位がぶら下がっている。
思わず顎を乗せている男の雄を想像してしまった。
「へぇ……まさか、こんな魔植物がいるなんてねー。あ、イグニスもしかして……僕の息子のこと想像したぁ?」
「なっ……するわけねぇだろ‼」
グラキエスに言われなくても、魔植物の雄しべが人間の雄と同じ形をしていた。本来あるべき場所になかった理由が嫌な形で判明する。
ただ、雄しべであることは変わりないため、色は緑をしていた。頭の中を覗き込まれたようで顔が熱くなる。
最近のイグニスが叫ぶときは決まって図星を突かれていた。わざとらしく、さわさわと怪しい手つきで動き出した腕を拘束する。完全に遊ばれていたが、グラキエスは巧みに雰囲気を作っていた。
「ねぇ……イグニス。僕に言うことない?」
「……てめぇ、分かって言ってねぇだろうな」
「えー? そんな、心を読んだり出来ないよ。魔法を使ってたら分かるでしょー?」
いつの間にか手の平で転がされているイグニスは眉を寄せる。心を見透かしているようで、相手の隙を突くのも上手いグラキエスは手を重ねてきた。
一度だけ深呼吸したあと、意を決したように精霊の儀式があることを告げる。
イグニスの話を聞いたグラキエスは自然と手が離れていき、ふらふら後ろへ下がった。明らかな動揺に振り返るイグニスは、青ざめた顔色のグラキエスへ真剣な表情を向ける。
「――だから。俺を抱け、グラキエス」
人間は本気で驚くと声が出なくなったりする。グラキエスは声を失ったようにパクパクと口を動かしていた。
その表情が、いつも翻弄されてばかりいたイグニスのツボに入ったようで喉を震わせて笑う。
「いつもの余裕がなくなってるぞ」
「ハッ……余裕なんて、あるわけないよ……本気なの?」
「冗談で体を売る趣味はない」
「でも……僕のこと、恋愛として好きなわけじゃないよね……」
問題を指摘されると気まずそうな顔で頷いた。グラキエスは、ただイグニスを抱きたいわけじゃない。それは、イグニス本人も分かっていることだ。だからこそ変わらず接することが出来て、好意に対しても昔のような気色悪い気持ちはない。
複雑な空気が流れる中で、再び歩み寄ってくるグラキエスは正面から頬へ触れてくる。
「……良いの? 僕で……」
「…………てめぇだから、男でも……許せると思ったんだ……」
「そっか……でも、うん。体からの関係もあるからね。沢山悪戯して怒られたのに……これからは好きなだけ、えっちして良いって」
「良いわけねぇだろ! 今回限りだ」
思わず「えー!」と言う本音が漏れるグラキエスを振り解き、どこまでなら許してくれる? などと分からないことを言うグラキエスを調子に乗るなと一喝する。
その夜、準備万端なグラキエスの部屋に寝衣姿で現れたイグニスは、妖艶な笑みで迎えられた。
雰囲気を作ってか、灯りは消されて窓から漏れる月明かりだけが二人を照らす。
少しだけ緊張した顔色のイグニスの腰を自然に抱き寄せるグラキエスの手を、普段の調子で振り払おうとして押しとどまった。
自分から言い出したことで、グラキエスは応えてくれただけ……。受け身になる経験など当然ないイグニスは、大きなベッドを見て肩を揺らす。
「――怖いよね? 僕も、少し怖いんだ……。イグニスの心は僕に向いてないのを分かった上で、する行為は……気持ち良くしてあげられるかなって」
「うっ……気持ち、良くなくてもいい……。寧ろ、男同士で気持ちいいなんて世迷い言だ」
「……僕も、男同士は初めてなんだよね。でも、同性だから気持ち良くしてあげられると思ってる……」
「俺は……てめぇの体で、初めてを捨てられるなら、それでいい」
視線が交わった瞬間、グラキエスの腕で引き寄せられ、強引に体をベッドへ押し倒された。
衝撃によって肩や足を覆って布がずれて艶肌が覗く。思わず本能的に崩れた寝衣を整えようとする手は強い力で押さえつけられ、頭の上へ持ち上げられた。
血走ったような目つきで乱暴に寝衣を剥ぎ取られると、少しだけ主張して胸元を飾る二つの花が露わになる。
下半身は白いシルクの下着姿で、ゴクリと唾を飲み込む音が微かに聞こえた。
「――綺麗だよ、イグニス……」
「うっ……るさい……男の俺には、そんな言葉響かねぇんだよ」
「……そうだね。形はどうあれ、初めてだし……せっかく、雰囲気だしたのに――」
ギシッとベッドが軋む音をさせ、グラキエスは寝衣姿のまま覆い被さってくる。
視線を合わせて軽く触れるだけの口付けが贈られたあと、手を開放したグラキエスの顔は下がり、胸板で僅かに尖った小さな花の一つを咥えた。
「んっ……! 前戯はいいから……早く、挿れろよ」
「駄目だよ……処女なんだから、優しくしたいし。イグニスの体に僕のテクを記憶させないと……」
「なっ――処女とか、言うなッ……。それに……そんなのは許してねぇ……!」
自由になった両手で引き剥がそうとするが、グラキエスの体はびくともせず舌先で舐められて腰が反応して震える。今度は口に含まれて吸われると甘い声が響いた。
グラキエスが戻ってきてから数日後――。
何事もなかったように時間が過ぎていった。
グラキエスが、女の話を切り出すこともイグニスから問い質すこともしない。
午後から調べ物をするために訪れた書庫の中、背後から耳元で囁きかける男の手を捻り上げる。いつもと変わらない光景は、イグニスの心を優しく溶かしていた。
だが、グラキエスに秘密があるのと同じで、イグニスもそろそろ告げないといけない時期が来ている。精霊との儀式まで残り二日だった。言うタイミングは今日しかない……。
そんな中で、イグニスは導かれるように一冊の本を手に取った。
「イグニスー? あ、その本……」
「知ってるのか?」
「うーん……読んでみたら、分かるかも?」
下品な笑みを浮かべるグラスは肩に顎を乗せてくる。
「重い」と振り払おうとするイグニスは、あるページを開いてしまった。
上半身が巨大な青い花のような見た目をして、花粉の代わりに牙がある。
ただ、下半身が明らかにおかしい……。根や蔓じゃない中心に、男なら見慣れた部位がぶら下がっている。
思わず顎を乗せている男の雄を想像してしまった。
「へぇ……まさか、こんな魔植物がいるなんてねー。あ、イグニスもしかして……僕の息子のこと想像したぁ?」
「なっ……するわけねぇだろ‼」
グラキエスに言われなくても、魔植物の雄しべが人間の雄と同じ形をしていた。本来あるべき場所になかった理由が嫌な形で判明する。
ただ、雄しべであることは変わりないため、色は緑をしていた。頭の中を覗き込まれたようで顔が熱くなる。
最近のイグニスが叫ぶときは決まって図星を突かれていた。わざとらしく、さわさわと怪しい手つきで動き出した腕を拘束する。完全に遊ばれていたが、グラキエスは巧みに雰囲気を作っていた。
「ねぇ……イグニス。僕に言うことない?」
「……てめぇ、分かって言ってねぇだろうな」
「えー? そんな、心を読んだり出来ないよ。魔法を使ってたら分かるでしょー?」
いつの間にか手の平で転がされているイグニスは眉を寄せる。心を見透かしているようで、相手の隙を突くのも上手いグラキエスは手を重ねてきた。
一度だけ深呼吸したあと、意を決したように精霊の儀式があることを告げる。
イグニスの話を聞いたグラキエスは自然と手が離れていき、ふらふら後ろへ下がった。明らかな動揺に振り返るイグニスは、青ざめた顔色のグラキエスへ真剣な表情を向ける。
「――だから。俺を抱け、グラキエス」
人間は本気で驚くと声が出なくなったりする。グラキエスは声を失ったようにパクパクと口を動かしていた。
その表情が、いつも翻弄されてばかりいたイグニスのツボに入ったようで喉を震わせて笑う。
「いつもの余裕がなくなってるぞ」
「ハッ……余裕なんて、あるわけないよ……本気なの?」
「冗談で体を売る趣味はない」
「でも……僕のこと、恋愛として好きなわけじゃないよね……」
問題を指摘されると気まずそうな顔で頷いた。グラキエスは、ただイグニスを抱きたいわけじゃない。それは、イグニス本人も分かっていることだ。だからこそ変わらず接することが出来て、好意に対しても昔のような気色悪い気持ちはない。
複雑な空気が流れる中で、再び歩み寄ってくるグラキエスは正面から頬へ触れてくる。
「……良いの? 僕で……」
「…………てめぇだから、男でも……許せると思ったんだ……」
「そっか……でも、うん。体からの関係もあるからね。沢山悪戯して怒られたのに……これからは好きなだけ、えっちして良いって」
「良いわけねぇだろ! 今回限りだ」
思わず「えー!」と言う本音が漏れるグラキエスを振り解き、どこまでなら許してくれる? などと分からないことを言うグラキエスを調子に乗るなと一喝する。
その夜、準備万端なグラキエスの部屋に寝衣姿で現れたイグニスは、妖艶な笑みで迎えられた。
雰囲気を作ってか、灯りは消されて窓から漏れる月明かりだけが二人を照らす。
少しだけ緊張した顔色のイグニスの腰を自然に抱き寄せるグラキエスの手を、普段の調子で振り払おうとして押しとどまった。
自分から言い出したことで、グラキエスは応えてくれただけ……。受け身になる経験など当然ないイグニスは、大きなベッドを見て肩を揺らす。
「――怖いよね? 僕も、少し怖いんだ……。イグニスの心は僕に向いてないのを分かった上で、する行為は……気持ち良くしてあげられるかなって」
「うっ……気持ち、良くなくてもいい……。寧ろ、男同士で気持ちいいなんて世迷い言だ」
「……僕も、男同士は初めてなんだよね。でも、同性だから気持ち良くしてあげられると思ってる……」
「俺は……てめぇの体で、初めてを捨てられるなら、それでいい」
視線が交わった瞬間、グラキエスの腕で引き寄せられ、強引に体をベッドへ押し倒された。
衝撃によって肩や足を覆って布がずれて艶肌が覗く。思わず本能的に崩れた寝衣を整えようとする手は強い力で押さえつけられ、頭の上へ持ち上げられた。
血走ったような目つきで乱暴に寝衣を剥ぎ取られると、少しだけ主張して胸元を飾る二つの花が露わになる。
下半身は白いシルクの下着姿で、ゴクリと唾を飲み込む音が微かに聞こえた。
「――綺麗だよ、イグニス……」
「うっ……るさい……男の俺には、そんな言葉響かねぇんだよ」
「……そうだね。形はどうあれ、初めてだし……せっかく、雰囲気だしたのに――」
ギシッとベッドが軋む音をさせ、グラキエスは寝衣姿のまま覆い被さってくる。
視線を合わせて軽く触れるだけの口付けが贈られたあと、手を開放したグラキエスの顔は下がり、胸板で僅かに尖った小さな花の一つを咥えた。
「んっ……! 前戯はいいから……早く、挿れろよ」
「駄目だよ……処女なんだから、優しくしたいし。イグニスの体に僕のテクを記憶させないと……」
「なっ――処女とか、言うなッ……。それに……そんなのは許してねぇ……!」
自由になった両手で引き剥がそうとするが、グラキエスの体はびくともせず舌先で舐められて腰が反応して震える。今度は口に含まれて吸われると甘い声が響いた。
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