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第35輪 戸惑いと忘れたい記憶
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無事に精霊の儀式を終えてから数日後。グラキエスが珍しく王命で出払ってしまい、昼食をするため団員の集まる食堂へ出向いていた。
正直、精霊の儀式を勘違いしたことで体の関係になってしまったイグニスはホッとしている。求められて女とは体の関係だけで夜を共にしたこともあった。だが、それは自分がする側であって、断じてされる側じゃない。
しかも本番をする前に少しずつ開発されていたらしく、最後には自分でも弄ってしまったことで、快感を覚えてしまった体は止まらなかった。
自分が女のように高くて艶めかしい声を上げるなんてことも想定外だ。
行為をしてから一週間経ったことで、性感帯以外は触られても平常に戻ってホッとしていたイグニスの耳へ団員の声が聞こえてくる。
「付き合ってもいないのに、シちゃうってどうなんすかねー」
「あー、体からの関係? 俺は、可愛い子や美人なら抱きたいわ」
「体目的とか、引く……」
思わず肩が揺れるイグニスの存在に気づいた団員から背筋を伸ばした挨拶をされた。全員立ち上がってしまうほどで、座って食事をしろと言う始末。
人の少ない端の席へ座ると、ため息が漏れた。久しぶりの食堂は勝手が分からず、料理を選んでトレーに乗せる団員を眺める。グラキエスが副団長になってから五年間。食堂へ足を運ばなくなって、色々と勝手が変わっている。と言うよりも、種類が増えていた。
「盛況だな。俺は……間違った行動をしたのか」
独り言を呟いて額を押さえながら、自分たちの関係について考える。グラキエスは、ずっと飽きずに好きだと言っていた。それを、自分がはぐらかしてただけ……。なのに、心より先に体で繋がってしまった。
グラキエスは肉体から始まるのもあると言っていたことを思い出す。
「もしも……告白するなら、俺から……?」
考えただけで顔が熱くなった。そして、真面目にこれは恋心なのかと考える。自分は年上なのに、年下のグラキエスに抱かれて女のように鳴いて――。
あの夜のことを思い出してしまい、羞恥心から体中が火照って小刻みに震える。一回だけのはずが、拒んだ前戯から始まって一日で三回も挿れられて喘がされた。挙げ句……。
「…………挿れられたまま、一夜を明けるなんて……」
悶絶しそうなほどの熱に頭を掻き乱す姿は異様で、和気藹々と話していた団員も静かになっていた。そんなことへ気づくはずもないイグニスは、徐ろに立ち上がって料理の列に並ぶ。
彩りも良く、数の豊富で美味しそうな見た目と匂いのする料理を選んでいるときだった。
「――団長……。ローゼン団長‼ 緊急召集です!」
「は?」
悩んで昼食にありつけなかったイグニスは、空腹のまま緊急の任務へあたる。
闇魔法結社について動きがあったとの報告で、丁度戻ってきたグラキエスたちとも合流した。悩んで、あの日を思い出してしまったこともあって、気まずいイグニスは笑顔で走ってきたグラキエスから目線をそらしてしまう。
グラキエスは寂しそうな顔をしていたが、任務だと自分に言い聞かせたイグニスは情報を整理した。
「召集内容だが、この地区の魔物が最近減っているらしい。活動時間も異常で、闇魔法結社の魔法使いの目撃情報が出ている」
長机の上に地図を広げて見せる。以前、待ち伏せされた色墨の森とは違い常駐している団員からの情報だった。
しかも、今回は魔物の異常によるもの。穢れなどの報告もなく、ただ色墨の森に近い場所だった。
編成を決めてから準備のため一度解散したあと。一人の団員がイグニスだけに話したいことがあると言ってきた。グラキエスからも少し離れた場所で二人きりになる。
「その……メディシーナ副団長を目撃しました……」
「は……? どういうことだ」
「……魔物の活動がおかしい地区で、綺麗な女性と会ってました」
思いがけない報告に目を見張った。背中に刺さるグラキエスの視線は、団員と二人きりでいるからだろう。妹のアクアや両親以外に対して昔から執着心が強い。
女の特徴は大体同じだった。団員もグラキエスの威圧感に気付いて強張った顔で逃げていく。据わった顔で近づいてくる姿に、先ほどとは違って緊張はなくなっていた。
「団員の一人から話を聞いた。てめぇ、あのときの女とまだ会ってたのか」
「えー……と。なんのこと?」
「はぐらかすんじゃねぇ! あの女は何者で、てめぇとどんな関係だ」
「……ごめん。イグニスに迷惑かけたくないんだ……自分で解決するから」
珍しく目線を外すグラキエスは迷惑かけられないと秘密にされる。最初にはぐらされたときの悶々とした感情が湧き上がってきたイグニスは、立ち去ろうとするグラキエスの細い手首を掴んだ。
なぜかイグニスに対してだけ力の増すグラキエスだったが、振り解いたりはしない。
「……僕は、その女から聞いたんだ。と言うか、誘われた……」
「は……何を」
「魔物を使って最高の研究をしてるから、聖女の力を貸せって。――どうせ、ろくでもない男に引っ掛かったんだ……」
口振りからすぐに身近な相手だと推測できた。ふと頭に浮かんだのは、グラキエスの身元について。八歳のときに父親が連れてきてから、一度も話題を振らなかった両親の話。捨て子だと言うことはすぐに分かったイグニスも子供ながら封印していた話題だ。
「その女って、グラス……てめぇの」
「団長、副団長ー! 準備できました」
時間を忘れるほど話していたのか、答えを聞く前に優しく手を離されグラキエスは団員たちの元へ歩いていく。
魔物のことよりも、女の方が気になったイグニスは確信した。グラキエスの反応からして、確実に不幸を運ぶ存在だと――。
***
完結日の変更です(少し早まります)
詳細は近況ボードに書いてあるのでご覧ください。
正直、精霊の儀式を勘違いしたことで体の関係になってしまったイグニスはホッとしている。求められて女とは体の関係だけで夜を共にしたこともあった。だが、それは自分がする側であって、断じてされる側じゃない。
しかも本番をする前に少しずつ開発されていたらしく、最後には自分でも弄ってしまったことで、快感を覚えてしまった体は止まらなかった。
自分が女のように高くて艶めかしい声を上げるなんてことも想定外だ。
行為をしてから一週間経ったことで、性感帯以外は触られても平常に戻ってホッとしていたイグニスの耳へ団員の声が聞こえてくる。
「付き合ってもいないのに、シちゃうってどうなんすかねー」
「あー、体からの関係? 俺は、可愛い子や美人なら抱きたいわ」
「体目的とか、引く……」
思わず肩が揺れるイグニスの存在に気づいた団員から背筋を伸ばした挨拶をされた。全員立ち上がってしまうほどで、座って食事をしろと言う始末。
人の少ない端の席へ座ると、ため息が漏れた。久しぶりの食堂は勝手が分からず、料理を選んでトレーに乗せる団員を眺める。グラキエスが副団長になってから五年間。食堂へ足を運ばなくなって、色々と勝手が変わっている。と言うよりも、種類が増えていた。
「盛況だな。俺は……間違った行動をしたのか」
独り言を呟いて額を押さえながら、自分たちの関係について考える。グラキエスは、ずっと飽きずに好きだと言っていた。それを、自分がはぐらかしてただけ……。なのに、心より先に体で繋がってしまった。
グラキエスは肉体から始まるのもあると言っていたことを思い出す。
「もしも……告白するなら、俺から……?」
考えただけで顔が熱くなった。そして、真面目にこれは恋心なのかと考える。自分は年上なのに、年下のグラキエスに抱かれて女のように鳴いて――。
あの夜のことを思い出してしまい、羞恥心から体中が火照って小刻みに震える。一回だけのはずが、拒んだ前戯から始まって一日で三回も挿れられて喘がされた。挙げ句……。
「…………挿れられたまま、一夜を明けるなんて……」
悶絶しそうなほどの熱に頭を掻き乱す姿は異様で、和気藹々と話していた団員も静かになっていた。そんなことへ気づくはずもないイグニスは、徐ろに立ち上がって料理の列に並ぶ。
彩りも良く、数の豊富で美味しそうな見た目と匂いのする料理を選んでいるときだった。
「――団長……。ローゼン団長‼ 緊急召集です!」
「は?」
悩んで昼食にありつけなかったイグニスは、空腹のまま緊急の任務へあたる。
闇魔法結社について動きがあったとの報告で、丁度戻ってきたグラキエスたちとも合流した。悩んで、あの日を思い出してしまったこともあって、気まずいイグニスは笑顔で走ってきたグラキエスから目線をそらしてしまう。
グラキエスは寂しそうな顔をしていたが、任務だと自分に言い聞かせたイグニスは情報を整理した。
「召集内容だが、この地区の魔物が最近減っているらしい。活動時間も異常で、闇魔法結社の魔法使いの目撃情報が出ている」
長机の上に地図を広げて見せる。以前、待ち伏せされた色墨の森とは違い常駐している団員からの情報だった。
しかも、今回は魔物の異常によるもの。穢れなどの報告もなく、ただ色墨の森に近い場所だった。
編成を決めてから準備のため一度解散したあと。一人の団員がイグニスだけに話したいことがあると言ってきた。グラキエスからも少し離れた場所で二人きりになる。
「その……メディシーナ副団長を目撃しました……」
「は……? どういうことだ」
「……魔物の活動がおかしい地区で、綺麗な女性と会ってました」
思いがけない報告に目を見張った。背中に刺さるグラキエスの視線は、団員と二人きりでいるからだろう。妹のアクアや両親以外に対して昔から執着心が強い。
女の特徴は大体同じだった。団員もグラキエスの威圧感に気付いて強張った顔で逃げていく。据わった顔で近づいてくる姿に、先ほどとは違って緊張はなくなっていた。
「団員の一人から話を聞いた。てめぇ、あのときの女とまだ会ってたのか」
「えー……と。なんのこと?」
「はぐらかすんじゃねぇ! あの女は何者で、てめぇとどんな関係だ」
「……ごめん。イグニスに迷惑かけたくないんだ……自分で解決するから」
珍しく目線を外すグラキエスは迷惑かけられないと秘密にされる。最初にはぐらされたときの悶々とした感情が湧き上がってきたイグニスは、立ち去ろうとするグラキエスの細い手首を掴んだ。
なぜかイグニスに対してだけ力の増すグラキエスだったが、振り解いたりはしない。
「……僕は、その女から聞いたんだ。と言うか、誘われた……」
「は……何を」
「魔物を使って最高の研究をしてるから、聖女の力を貸せって。――どうせ、ろくでもない男に引っ掛かったんだ……」
口振りからすぐに身近な相手だと推測できた。ふと頭に浮かんだのは、グラキエスの身元について。八歳のときに父親が連れてきてから、一度も話題を振らなかった両親の話。捨て子だと言うことはすぐに分かったイグニスも子供ながら封印していた話題だ。
「その女って、グラス……てめぇの」
「団長、副団長ー! 準備できました」
時間を忘れるほど話していたのか、答えを聞く前に優しく手を離されグラキエスは団員たちの元へ歩いていく。
魔物のことよりも、女の方が気になったイグニスは確信した。グラキエスの反応からして、確実に不幸を運ぶ存在だと――。
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完結日の変更です(少し早まります)
詳細は近況ボードに書いてあるのでご覧ください。
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