51 / 58
【おまけ話】乱れたあとの朝
しおりを挟む
グラキエスに抱かれた夜から朝を迎えたイグニスは、ぼんやりと白銀のふわふわした髪を眺めていた。
初めてシたとき以外で、聖女の癒やしを施されて体は痛くない。けれど、精神的な疲労までは取り去るほど万能じゃないため、げっそりすることだ。
そして、横では幸せそうな顔をして見つめてくる恋人がいる。いつもイグニスが目を覚ます前に起きて、寝顔を見られていた。グラキエスの寝顔を見られるのは、穢れで体調を崩したときくらいという完璧な男だ。
「あっ、イグニス~。目ぇ覚めて良かったぁ。昨日はやり過ぎたかなーて心配してたんだよねー」
恋人になっても性根が変わることはなく、相変わらず軽い男代表でもある。見た目に騙されるなというのも体現しているかもしれない……。
ふわふわした白銀の髪は綿毛のように儚げで、垂れ下がった空色の瞳に映し出されたら、誰もがときめくほどの容姿端麗さだ。いままでチラついていた疑問が再びイグニスの頭を過ぎる。
「――どうして、俺は……こいつに抱かれてんだ」
「えっ? な~に~? イグニスはいつも可愛いよ?」
「てめぇ……いい加減回数を減らしやがれ‼」
叫んだあと、枕じゃない骨ばった感触で枕元を見上げた。色白の細長い腕が頭の下にある。当の本人は満足げな笑みを浮かべているだけで何も言わない。腕枕されてることに気づくと、一呼吸置いてから手で持ち上げて退かす。
そのまま上半身を起こすと、上目遣いのグラキエスが見つめてきた。
こんな爽やかで優しそうに見えるこの男は、絶倫だった――。
腰の痛みや体力の疲労はないが、いつも一度に三回は抱かれている。聖女の癒やしがなかったら次の日まともに動けないはずだ。
「えー? それでも少ないはずなんだけどなぁ……。イグニスは、体も引き締まって美味し……体力的にも丈夫かなって」
「…………いま、美味しいって言わなかったか? しかも、あれで少ないとかふざけんな!」
「怒らないでよー。今日は誠心誠意尽くすからさぁ……」
うっとりした表情で起き上がるグラキエスの手が重ねられる。優しく撫でられるだけで、肩が揺れた。
もうすっかりグラキエスの虜になってしまっている体は言うことを聞いてくれない。反対の腕が腰へ回されると、近くなる距離に心臓の音もうるさくなる。
聖女の感情を読み取る能力も厄介だ。この男は、イグニスが絆されているのを分かった上で体に触れて甘やかそうとしている。
ギュッと唇を噤んだまま、おもむろに頭を胸板へ寄せた。その行動に一瞬驚いた表情をするグラキエスも満面の笑みで脳天へ口づける。
「……俺は、お前には敵わないみたいだ……」
「ん……そんなことないよ。イグニスは、いつも僕を守ってくれようとして……仕事も頑張り過ぎてるからね。たまには、こうやって……甘えてほしいな」
すりっと頬を寄せるイグニスの髪を梳くように撫でる手は優しく、自然と唇が重なり合った。深い口付けじゃなく、啄むように何度も触れ合わせる。
もう自分が抱かれていることに対する疑問すら忘れて、自ら舌を出して誘惑した。すぐに応えるような舌で絡め取られると、卑猥な音が鼓膜を震わせる。
頭がぼんやりしてくると、そのまま目を閉じた。額に触れる優しい口付けで心が溶かされていく。グラキエスによって寝衣を着ていたイグニスは、心地良い腕の中で再び意識を手放した。
ただ、そのあとも改心することのないグラキエスは一度で最高五回もイグニスを抱いて、精神を歪ませていった――。
***
本編は完結しましたが、本日合計で【後日談】4話。【番外編】(サブキャラ勢)の3話(此方は求められているか不明の為、一気に)更新して完結となります。【完結】は20:10予定です。
此処まで読んで下さり有難うございました。楽しんで頂けたら幸いです。物語は一旦終わりますが、今後もイグニスとグラキエスを始め、他の面々も応援して頂けると嬉しいです。(長々とした作者コメントは近況ボードにて)
初めてシたとき以外で、聖女の癒やしを施されて体は痛くない。けれど、精神的な疲労までは取り去るほど万能じゃないため、げっそりすることだ。
そして、横では幸せそうな顔をして見つめてくる恋人がいる。いつもイグニスが目を覚ます前に起きて、寝顔を見られていた。グラキエスの寝顔を見られるのは、穢れで体調を崩したときくらいという完璧な男だ。
「あっ、イグニス~。目ぇ覚めて良かったぁ。昨日はやり過ぎたかなーて心配してたんだよねー」
恋人になっても性根が変わることはなく、相変わらず軽い男代表でもある。見た目に騙されるなというのも体現しているかもしれない……。
ふわふわした白銀の髪は綿毛のように儚げで、垂れ下がった空色の瞳に映し出されたら、誰もがときめくほどの容姿端麗さだ。いままでチラついていた疑問が再びイグニスの頭を過ぎる。
「――どうして、俺は……こいつに抱かれてんだ」
「えっ? な~に~? イグニスはいつも可愛いよ?」
「てめぇ……いい加減回数を減らしやがれ‼」
叫んだあと、枕じゃない骨ばった感触で枕元を見上げた。色白の細長い腕が頭の下にある。当の本人は満足げな笑みを浮かべているだけで何も言わない。腕枕されてることに気づくと、一呼吸置いてから手で持ち上げて退かす。
そのまま上半身を起こすと、上目遣いのグラキエスが見つめてきた。
こんな爽やかで優しそうに見えるこの男は、絶倫だった――。
腰の痛みや体力の疲労はないが、いつも一度に三回は抱かれている。聖女の癒やしがなかったら次の日まともに動けないはずだ。
「えー? それでも少ないはずなんだけどなぁ……。イグニスは、体も引き締まって美味し……体力的にも丈夫かなって」
「…………いま、美味しいって言わなかったか? しかも、あれで少ないとかふざけんな!」
「怒らないでよー。今日は誠心誠意尽くすからさぁ……」
うっとりした表情で起き上がるグラキエスの手が重ねられる。優しく撫でられるだけで、肩が揺れた。
もうすっかりグラキエスの虜になってしまっている体は言うことを聞いてくれない。反対の腕が腰へ回されると、近くなる距離に心臓の音もうるさくなる。
聖女の感情を読み取る能力も厄介だ。この男は、イグニスが絆されているのを分かった上で体に触れて甘やかそうとしている。
ギュッと唇を噤んだまま、おもむろに頭を胸板へ寄せた。その行動に一瞬驚いた表情をするグラキエスも満面の笑みで脳天へ口づける。
「……俺は、お前には敵わないみたいだ……」
「ん……そんなことないよ。イグニスは、いつも僕を守ってくれようとして……仕事も頑張り過ぎてるからね。たまには、こうやって……甘えてほしいな」
すりっと頬を寄せるイグニスの髪を梳くように撫でる手は優しく、自然と唇が重なり合った。深い口付けじゃなく、啄むように何度も触れ合わせる。
もう自分が抱かれていることに対する疑問すら忘れて、自ら舌を出して誘惑した。すぐに応えるような舌で絡め取られると、卑猥な音が鼓膜を震わせる。
頭がぼんやりしてくると、そのまま目を閉じた。額に触れる優しい口付けで心が溶かされていく。グラキエスによって寝衣を着ていたイグニスは、心地良い腕の中で再び意識を手放した。
ただ、そのあとも改心することのないグラキエスは一度で最高五回もイグニスを抱いて、精神を歪ませていった――。
***
本編は完結しましたが、本日合計で【後日談】4話。【番外編】(サブキャラ勢)の3話(此方は求められているか不明の為、一気に)更新して完結となります。【完結】は20:10予定です。
此処まで読んで下さり有難うございました。楽しんで頂けたら幸いです。物語は一旦終わりますが、今後もイグニスとグラキエスを始め、他の面々も応援して頂けると嬉しいです。(長々とした作者コメントは近況ボードにて)
10
あなたにおすすめの小説
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
氷鉄の騎士団長に拾われたスラムのオメガは、無自覚な溺愛に溶かされる
水凪しおん
BL
スラム街で泥とハーブの匂いにまみれ、オメガであることを隠して生きてきた少年ノア。
ある雨の日、発情の熱と寒さに震える彼を拾い上げたのは、王国最強と謳われる「氷鉄の騎士」ヴァレリウスだった。
「お前からは、雨に濡れた花のような匂いがする」
冷徹と恐れられる騎士団長は、ノアを汚いものとして扱うどころか、その匂いに安らぎを見出し、不器用ながらも全力で愛を注いでくる。
温かい食事、ふかふかのベッド、そして何よりも甘く強烈なアルファの庇護。
これは、孤独な二人が運命の番として惹かれ合い、心と体を溶かし合っていく、極上の溺愛救済BL。
※本作は性的な描写(キスや愛撫、発情期の描写など)を含みます。15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる