【完結】王国魔法騎士団の赤い薔薇 〜男前騎士団長は幼馴染の聖女(男)から狙われてます〜

葉瀬満月(はせみつき)

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後日談

目隠しで淫らに濡れて

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「……ぐっ……てめぇ、グラス! 調子に乗りやがって――」
「えー……。調子になんて乗ってないよー? 大好きなイグニスの、あられもない姿が見たいだけだし――」

 埃臭さだけがするベッドの上で鈍い金属音が響く。鎖が何かに当たる音……視界は暗闇で何も見えない。上半身だけ衣服を剥ぎ取られ、引き締まった肉体美を晒すイグニスは両手を上に縛られる形で、身動きが取れない格好をさせられていた。体は重く、魔力が縛られている感覚でもどかしい。手を動かす度に音が鳴っていたのは『魔封石の腕輪』だ。しかも鎖付き。

 どうしてこうなったのか、未だに理解出来ていないイグニスは、唯一自由な足を目の前にいるだろうグラキエスを蹴り飛ばす勢いで振り上げる――。


 
 ◆◆◆


 
 時は少し遡り、非番だったイグニスは仕事終わりのグラキエスを待って王城前で訓練中の団員へ睨みを利かせていた。
 くびれた腰、服からでも分かる無駄な贅肉のない肉体美――。

 華奢に見える貴族の装いは、イグニスの色気を際立たせた。

 二人が付き合ってからもう二ヶ月経ち、今日はグラキエスにとって大事な日でもある。

 汗ばむ季節に移り変わったことで、イグニスの服装は臙脂エンジ色のベストに半袖シャツという肌を露出した薄着姿だった。それもあってか、やけに視線が刺さる。
 普段は団服で季節問わず露出することが少ないため、珍しさからだろうと思って気にしていなかった。

 それなのに、通行人すら男女問わず振り向きざまで見てくるのは薄気味悪い。
 さすがに居心地が悪いイグニスも場所を移動しようとしたときだった。

「あっ、イグニス! お待たせー!」

 尻尾が見えそうな勢いで抱きつこうとするグラキエスを既で止める。腕を掴まれたグラキエスは、不服そうに頬を膨らませていた。
 顔だけ見たら、可愛らしく見える行為だが……この男はまったく逆である。綺麗な顔が嘘のように、イグニス含めて義理の両親と妹のアクア以外は正直どうでも良いと思っている非道さだ。

「……てめぇが遅いから、居心地悪くて移動しようと思っただろう」
「えー……居心地悪いって、どうして? あ、僕が来ないから寂しくて……」
「ちげーよ。ちょっと視線が痛かっただけだ」

 視線という言葉で一歩下がったグラキエスはまじまじとイグニスを観察し始める。
 思わず自分の腰に片手を回すイグニスは視線をそらした。

 グラキエスは、イグニスと違って汗ばむ季節だろうと露出をしていない。服にも付与魔法をつけたら涼しくできたり、暑さを感じなくすることも出来る。
 だが、付与魔法は高度なため高価だった。

 イグニスは貴族で団長のため金に不自由はしていないが、軟弱だと言って戦いで必要なもの以外に服を整えたりはしない。その反面、グラキエスは聖女ということもあって支給品のうちに入っていた。

 じっくりと観察される間も、じんわりと汗が滲む首元やシャツは少しだけ透けていて色気を放つ。臙脂色のベストだけで隠せる肢体じゃなかった。

「――イグニス。露出しすぎ。それだから視線を浴びるんだよ……」
「は? 男ならこれくらい普通だろう。てめぇのが暑苦し……くねぇな」
「僕のは長くても涼し気だからねー。一緒に服を見に行こう」
「ふざけんな。面倒くせぇし、無駄遣いする気はねぇ」

 無理矢理引っ張られて連れて行かれると、腕が少し覗くくらいのシャツに着替えさせられてしまう。通気性の良い素材らしく、先ほどまで着ていたシャツより涼しさを感じた。

「これ……付与魔法がついてないのに、結構涼しいな」
「でしょー? 恋人の僕から贈り物だよ。イグニスを僕好みにしてあげる」
「……調子に乗るな」

 調子に乗って腕まで組もうとするのを振り払い、並んで歩く道は黄昏たそがれ時を越えて、暗くなってきている。
 基本的に団長と副団長が二人揃って非番は滅多にない。明日非番のグラキエスは、見せたいものがあると言ってイグニスを呼び出した。

 城下町にある実家のローゼン家と反対側へ歩いていき、薄暗い路地裏を抜ける。抜けた先は大きな庭があり、旧市街との間にこじんまりしたやかたがあった。
 外観は綺麗に整えられているが、立入禁止の札が置かれている。

 館を見上げて立ち止まったグラキエスが振り返ると寂しそうな笑みを浮かべた。

「実はねー……此処、僕の実家だったんだ」
「え……。グラス……城下町に住んでいたのか……」
「うん……。だから、お父様に見つけてもらえたんだよ」

 父親はグラキエスを孤児だと言って連れ帰ってきて、あの頃はもちろん。聞く必要を感じなかったから何も知らなかった。

 呆気にとられているイグニスの手を優しく握るグラキエスへ連れられて中に入る。
 立入禁止だと言いたかった言葉は飲み込んで、導かれるまま入った館の中は埃臭さがした。

 グラキエスの母親は、温情を受けて国外追放されて二度と戻れない。さすがのグラキエスも、産みの親は死んで欲しくなかったようだった。

 無言のまま地下へ行くと、扉の前に札がある。子供部屋と書かれた札……。
 扉を開けて中に入ると、最近手入れされたような痕跡がある。

「なんの思い入れもないんだけどねー……。実は、近々壊そうと思って……その前に、なんでかイグニスを連れてきたくなってさ」
「……そうか。過去との決別は悪くねぇよ」

 軋む床下を歩きながら薄暗い中、簡易的なベッドと小さな棚だけが置かれた子供部屋は、寂しげに映った。

 ベッドは子供のにしては大きめで、足を少し曲げたらイグニスの身長でも入りそうなほど長い。ただ、埃臭さで長居はしたくない場所だと思ったときだった。
 カチャッと言う鈍い音がして、視線を下へ向ける。ぼんやりしていたつもりはなかったイグニスの左手首に、鎖のついた魔封石の腕輪が嵌められていた。

 なんの冗談かと前に向き直ると、だらしない笑みを浮かべるグラキエスが腕輪をなぞる。

「イグニス……ごめんね? なんか、取り壊す前に此処へ来たら……ムラムラしちゃって」
「てめぇ……冗談じゃ済まねぇぞ」
「今日がなんの日か分かって、わざわざ迎えに来てくれたんだよね?」
「それは……てめぇの、誕生祭だろう」

 今日はグラキエスの二十六を祝う誕生祭だった。家族も準備をして帰りを待っているだろう。

 一歩近づいてくるグラキエスへ誘導されるように後ろへ下がるとベッドが足に当たった。
 軽く胸板を押されてベッドに押し倒されると、暴れるイグニスの腕を容易に掴んで力を封じられる。無骨な手はベストとシャツを剥ぎ取るように脱がしていき、もう一方も腕輪を嵌められてパイプへ括り付けられた。
 グラキエスの奇行は今に始まったことじゃないが、遊びでやる度を超えている。誕生祭だろうと許されることじゃない。

「ふざけてんじゃねぇ! これを外せ……」
「イグニスさー……今年は、色々頑張ったから。なんでも言うこと聞いてくれるって、言ったよね?」
「ぐっ……こんな変態行為は許してねぇ!」
「お願い……今回だけ、僕の願いを聞いてよ」

 行動を起こしてから言う“お願い”に青筋を立てるイグニスは、おもむろにグラキエスの懐から取り出された黒い布を見て面食らった顔をした。グラキエスのお願いは、現状ではなかったらしい……。

 否定の言葉を浴びせるイグニスに無理矢理目隠しをしたグラキエスの表情が分からなくなる。ただ、イグニスを見る熱い視線で考えていることはすぐに分かった。

「……てめぇ……これが恋人にやることか!」
「恋人になったときも言ったけど、優しくするから……。それに、絶対イグニスも好きだと思うんだよねぇ」

 唇を噛みしめるイグニスも、グラキエスの言葉はあながち間違っていないと感じてしまう。相手が恋人だからなのか、見えないことで神経が研ぎ澄まされて、期待と不安が渦巻いていた――。


 
 ◆◆◆


 
 そして現在、振り上げた足はグラキエスの手に掴まれて邪魔だとばかりにズボンを剥ぎ取られる。

 露わになった下着の中心は艶めかしく濡れていた。イグニス自身も先走りが漏れていることは感じていて、羞恥心で足を閉じる。
 だが、すぐに下着も脱がされてしまうと、汗ばんだ季節なのに肌寒さを感じて身震いした。
 地下だから暑さを感じた外より涼しい。

「グラス……いい加減に」
「僕への贈り物はイグニスだよ? 可愛く梱包しなきゃ……」

 何かを取り出す音だけがして、イグニスの熱く猛った分身に触れた。思わず声が漏れそうになって、唇を噛みしめる。
 いつもと違って、声を出すことへ抵抗があった。

 その間で何かを嵌められて結ばれる感覚に腰が揺れる。しかも、そこは何かを嵌めて結んでいい場所じゃない――。

「グラス……この、変態聖女!」
「見えなくても分かった? 贈り物にはリボンが必要でしょ? イグニス、とってもかわいいよ……」
「なんか、変だ……」

 下半身が熱くなる感覚に身悶える体を押さえつけられ、首筋を舐められて肩が揺れる。
 恋人にする行為じゃないと頭で分かっているが、何を言っても聞く耳をもたないグラキエスへ嗜めるのは諦めた。

 全身を舐めるように這う舌先は、視覚を奪われていることで更に快感が増す。既に幾度も与えられる甘い疼きを覚えている体は、ビクビクと小刻みに震えて我慢できず、閉じた口が開いて喘ぎ声が漏れた。

「ぁっ……ゃ……に……ふ、んっ」
「……嫌じゃないからだよ。相手が、僕だからね」

 目隠しされて両手を縛られているのに、グラキエスから与えられる愛撫で絆されていく。性感帯を避けて、耳の裏から足先まで舐められた頃には、全身がビクビク震えて欲しがっていた。
 射精も出来ないことで、腰を激しく揺らす。その度に縛られている腕の鎖が金属音を鳴らした。

 自由もなく、魔法も使えないのは恐怖でしかないはずなのに、拉致されたときと違って一切感じない。それは、グラキエスの態度でも明らかだった。

「ん、ふっ……恋……びと、だから……か?」
「んっ……そうだね。まぁ、恋人でも……こんなことするのは、僕くらいだけど――」

 自覚ある発言に思わず腰が引ける。這うように触れてくる手が、大きく股を拡げた。この格好が今でも慣れず、閉ざされた視覚のせいで更に感覚が研ぎ澄まされて抵抗して身動ぐ。

「ひっ……! ぁっ、舐め……んっ! だめ……」

 研ぎ澄まされる感覚の中で、柔らかい唇と生温かい舌先に舐められた瞬間、痺れるような快感が襲った。大きく仰け反る腰を固定されると、快感は強くなって目隠しされた目の奥がチカチカする。

 大事な部分は触れることもせず、根元の周りを優しく舐められていった。
 艶めかしく動く腰に興奮したようなグラキエスの声が漏れる。

「ハァ……良い眺め」

 グラキエスに嵌められた何かのせいで欲望を堰き止められ、絶頂出来ない感覚に耐えられなくなってくると、目隠しから涙が滴った。気持ちよさともどかしい感情は、グラキエスにも流れ込んでくる。

「ごめん……イグニス。どっちも外してあげる」
「ハァ……ぁっ……ふ、ん……」

 金属音がして手首の拘束が外されると、温かい光が流れ込んできた。
 聖女の回復魔法……こんなことで使うなよと言いたい気持ちを飲み込む。

 目隠しも外されると、ぐしゃぐしゃになった顔で視線が重なった。近づいてくる顔が、涙を掬うように舐め取られていく。
 自由になった両手を下半身に伸ばすと、長い腕に掴まれた。まだ外されていない場所がある。一番取ってほしい堰き止められた分身には、可愛らしい赤いリボンと純金の輪っかがついていた。

 思わず顔に熱が集まっていく。

「――かわいいでしょ。でも、これ以上堰き止めるのは体にも良くないから……イグニスから直接、贈り物が欲しいんだけど」
「は? 直接って……どう……」
「僕が口に咥えるから、そしたらリボンと輪っかを取ってほしいんだ。輪っかは半分に外れるタイプだから」

 嵌められた感覚だったが、繋ぎ目に目を留めた。準備をするように口を寄せるグラキエスが軽く先端を舐めながら咥えて吸う。
 与えられる快感に我慢出来ず声が漏れた。

 これを外した瞬間、確実に今までで味わったことのない絶頂が襲うはずだ。
 ゴクリと唾を飲み込んで、まず贈り物のリボンを解く。

 震える指先へ細長い指が絡められた。羞恥心で耳まで熱くなりながら紐を引き抜く。
 直接結ばれているわけじゃなかったらしく、思わずホッとして短い息が漏れた。
 ただ、添えられた手の指先が輪っかを擦るように回される。

「ぁっ……!」

 擦られるだけで快感が襲い、ビクビクと体全身が性感帯のように震えた。

「ふ、んっ……ぐら、す……」
「……気持ちいいね、イグニス……いっぱぁい、出しちゃおうね」

 わざとらしく羞恥心を煽るような言葉を投げてくるグラキエスの目は、輝きを失ったように笑っていない。本気の男の目をするグラキエスに、酷いことをされている自覚が薄れて胸が高鳴っていく。

 ――グラキエスに飲んでほしい。

 そんな、いやらしい感情が芽生えていた。

 ギュッと唇を噛み締めて、自ら進んで股を大きく開いて見せる。羞恥心で一気に顔が熱くなり、震える指先を輪っかへ添えた。

「――イグニス、とても大胆だね……。凄い、えっちだよ――」
「うっ……るさい……。ハァ……全部、残さず……飲めよ……」
「――うん」

 精一杯の強がりを口にして荒く息を吐きながら震える指で握る。不安と期待が身体の隅々まで満たしていった。
 カチッと音がして輪っかが外れた瞬間、一気に溜まっていた欲望が放出される。

 全身が痙攣するほどの強い快感で、狂ったように身悶える体は押さえつけられ、甲高い喘ぎ声が部屋中に反響した。
 押し寄せる快感に、行き場のない淫らな熱は一点へ集中する。

 長い間、止まらない絶頂を迎えて咽び泣くように喘ぐ中「じゅぷ、じゅぷ」と、口で吸い上げる、いやらしい水音が室内へ響き渡っていた。
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