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【第1話】自称モブ男は、恋愛フラグを回避する
魔法フラグは回収するものだ。
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中へ入ってすぐ吹き抜けの天井が出迎える。
此処は他の魔法学校と違って、階段が存在しない。飛行魔法で体を浮かせるか、魔法の箒に乗って飛べない者は入学出来ないんだ。魔法の箒は魔力を注げて、身体能力があったら扱える。飛行魔法は高等部1年で使えたら上出来だ。
当然、俺は飛行魔法で飛び回ったし、コイツも魔法の箒を自在に操って教師陣を驚かせた。
内部に入るのは卒業以来で懐かしい――。
「本当、此処の吹き抜けは壮大だね」
「ああ、そうだな。此処で飛ぶのは、空よりもなんか気持ちよかったな」
「まぁ、空で浮遊魔法は禁止だしね」
真顔で嫌なことを言うな……。
浮遊魔法で空を飛び回れる人間は一握りなのに、魔法の箒で事故が起きるのを防ぐためらしい。
実を言うと、俺は魔法の箒とか乗り物が苦手だ……。平衡感覚って言うか、バランス感覚が悪い。だから、コイツの愛馬に乗るのも怖かったりする……。
――後ろから思い切り抱きつきそうだから。
まぁ、代わりに飛び上がったあとは空気抵抗もない竜種なんかは平気だ。
「よし、講堂に行くぞ」
「ああ、講堂なら危険な魔法も出来ないね」
いつだって笑顔の似合う色男が、モブの俺を選ぶなんて本当に勿体ない。
講堂に入ってすぐ座っている全生徒がこちらへ振り返る。どんな説明をしていたのか分からないが、目をらんらんと輝かせている姿が俺には眩しすぎて痛い……。
早々に軽く自己紹介をしてから、室内で出来る派手な魔法を披露する。
壁や服なんかの色を変える魔法だ。しかも絵の具みたいに飛び散る派手な演出付き――。
生徒を満足させたあと、再び戻ってきて吹き抜けを見たら久しぶりに空を飛びたくなった。
「なぁ、此処なら浮遊魔法使っても良いよな?」
「うん? ああ、大丈夫だよ」
「うはっ……久しぶりだから、飛びづらいな」
俺達以外、誰もいない空間で自由に飛び回る。コイツは相変わらず浮遊魔法が下手みたいで、下からじっと俺のことを見ている。恥じらいもなく一身に向けられる視線は、かえって恥ずかしくなった……。
その瞬間。俺の魔法が暴走する。
「うおっ――」
「――危ない!!」
こんなときでも名前を呼ばないでくれる、コイツは良い奴だ……。でもって、俺はいま完全に恋愛フラグを立てた気がする――。
ソラティオの上に馬乗りになるような体勢で、サーッと血の気が引いた。自分で恋愛フラグ立ててどうするんだよ!?
数秒間。沈黙したあと、俺はコイツの上から降りた。
「わ、悪かった……年甲斐もなく、はしゃぎすぎた――」
「あ、ああ……うん。大丈夫だよ。君の方こそ、大丈夫だった?」
大丈夫と心配された俺は見てはいけないモノを見てしまう。
そんなことあるか? と疑うレベルで、色男で王子様の股間が盛り上がっている。
いやいや……25年間で、接触シーンとかなかったか? 思い出せない。
コイツ……そんなに俺が好き……て、なに勃たせてやがる! これだから男は狼って言われるんだぞ……。
でも、コイツの焦った顔や、俺で元気になる息子も、キラキラして見えるのは気のせいか……。
互いに視線をそらして誤魔化しながら俺達は外へ出て歩きだす。
チラッと視線だけ流したコイツの股間は正常に戻っていた。さすが、王子様って呼ばれるだけある。
「あのさ……もう帰るよな?」
「え……ああ。でも、まだ夕方なんだね」
もう少し一緒にいたいと言いたげな目が合った。恋愛フラグが立っている今はとてつもなく危険だ。
ここは突き放す以外の選択肢はない。だけど……コイツに助けられたのも事実なわけで、2人きりにさえならなかったら大丈夫か……?
しかも何かを訴えかける目が、俺のせいで我慢して見える……。
「あー……もう少し、町を回るか? それとも、夕食」
「是非、夕食を一緒にしたいな」
――即答!!
やっぱり恋愛フラグを折れなかったからか……。いや、ここで負けたら貞操を捨てることになる! 何か良い次の手を……。
「あ……久しぶりに俺の実家で食べないか? お前が来たら、母さんたち喜ぶと思うんだよなぁ」
「え……。そう言われると、町を出てからお邪魔してなかったね。おばさん達が良かったら」
一瞬だけ複雑な顔をしたな。
これは、吉と出るか凶と出るか……。勿論、俺の自室には行かない。逃げ場が失われるし、恋愛フラグの王道だ。これは実家だからと侮った奴から食われる。恐ろしい遊戯だ……。
いざ実家へ戻ってきた俺は、ソラティオを招きいれる。
連絡手段はないため、驚いた顔をしていた両親もソラティオを歓迎して美味しい料理を振る舞ってくれた。
実家には小さなテラスがあって、夜のため小さな蝋燭の入ったランタンを手に椅子へ座る。
白い装飾のされた椅子とテーブルで、中心にランタンを置いて息を吐いた。
「この季節は空気も冷たすぎず良いよな」
「……そうだね。明日からまた、1週間も会えなくなるなんて……」
「あー……まぁ、1週間なんてすぐだろう。俺はとにかくお前は騎士団だし……」
「うん……それでも、同じ町にいないんだなって思ったらさ」
これは完全に恋愛フラグが立っている……。25年間、恋愛フラグを回避してきた俺を舐めるなよ。今回だって、回避してみせる!
それにしても、コイツは本当に強敵だ……。回避しては、気づいたら新たに小さな恋愛フラグを立ててくる……。恋愛フラグの達人かって思うほど卓越しているんじゃないか?
25年間、恋愛フラグを立てる男と自称モブ男を極める俺の真剣勝負だ。
此処は他の魔法学校と違って、階段が存在しない。飛行魔法で体を浮かせるか、魔法の箒に乗って飛べない者は入学出来ないんだ。魔法の箒は魔力を注げて、身体能力があったら扱える。飛行魔法は高等部1年で使えたら上出来だ。
当然、俺は飛行魔法で飛び回ったし、コイツも魔法の箒を自在に操って教師陣を驚かせた。
内部に入るのは卒業以来で懐かしい――。
「本当、此処の吹き抜けは壮大だね」
「ああ、そうだな。此処で飛ぶのは、空よりもなんか気持ちよかったな」
「まぁ、空で浮遊魔法は禁止だしね」
真顔で嫌なことを言うな……。
浮遊魔法で空を飛び回れる人間は一握りなのに、魔法の箒で事故が起きるのを防ぐためらしい。
実を言うと、俺は魔法の箒とか乗り物が苦手だ……。平衡感覚って言うか、バランス感覚が悪い。だから、コイツの愛馬に乗るのも怖かったりする……。
――後ろから思い切り抱きつきそうだから。
まぁ、代わりに飛び上がったあとは空気抵抗もない竜種なんかは平気だ。
「よし、講堂に行くぞ」
「ああ、講堂なら危険な魔法も出来ないね」
いつだって笑顔の似合う色男が、モブの俺を選ぶなんて本当に勿体ない。
講堂に入ってすぐ座っている全生徒がこちらへ振り返る。どんな説明をしていたのか分からないが、目をらんらんと輝かせている姿が俺には眩しすぎて痛い……。
早々に軽く自己紹介をしてから、室内で出来る派手な魔法を披露する。
壁や服なんかの色を変える魔法だ。しかも絵の具みたいに飛び散る派手な演出付き――。
生徒を満足させたあと、再び戻ってきて吹き抜けを見たら久しぶりに空を飛びたくなった。
「なぁ、此処なら浮遊魔法使っても良いよな?」
「うん? ああ、大丈夫だよ」
「うはっ……久しぶりだから、飛びづらいな」
俺達以外、誰もいない空間で自由に飛び回る。コイツは相変わらず浮遊魔法が下手みたいで、下からじっと俺のことを見ている。恥じらいもなく一身に向けられる視線は、かえって恥ずかしくなった……。
その瞬間。俺の魔法が暴走する。
「うおっ――」
「――危ない!!」
こんなときでも名前を呼ばないでくれる、コイツは良い奴だ……。でもって、俺はいま完全に恋愛フラグを立てた気がする――。
ソラティオの上に馬乗りになるような体勢で、サーッと血の気が引いた。自分で恋愛フラグ立ててどうするんだよ!?
数秒間。沈黙したあと、俺はコイツの上から降りた。
「わ、悪かった……年甲斐もなく、はしゃぎすぎた――」
「あ、ああ……うん。大丈夫だよ。君の方こそ、大丈夫だった?」
大丈夫と心配された俺は見てはいけないモノを見てしまう。
そんなことあるか? と疑うレベルで、色男で王子様の股間が盛り上がっている。
いやいや……25年間で、接触シーンとかなかったか? 思い出せない。
コイツ……そんなに俺が好き……て、なに勃たせてやがる! これだから男は狼って言われるんだぞ……。
でも、コイツの焦った顔や、俺で元気になる息子も、キラキラして見えるのは気のせいか……。
互いに視線をそらして誤魔化しながら俺達は外へ出て歩きだす。
チラッと視線だけ流したコイツの股間は正常に戻っていた。さすが、王子様って呼ばれるだけある。
「あのさ……もう帰るよな?」
「え……ああ。でも、まだ夕方なんだね」
もう少し一緒にいたいと言いたげな目が合った。恋愛フラグが立っている今はとてつもなく危険だ。
ここは突き放す以外の選択肢はない。だけど……コイツに助けられたのも事実なわけで、2人きりにさえならなかったら大丈夫か……?
しかも何かを訴えかける目が、俺のせいで我慢して見える……。
「あー……もう少し、町を回るか? それとも、夕食」
「是非、夕食を一緒にしたいな」
――即答!!
やっぱり恋愛フラグを折れなかったからか……。いや、ここで負けたら貞操を捨てることになる! 何か良い次の手を……。
「あ……久しぶりに俺の実家で食べないか? お前が来たら、母さんたち喜ぶと思うんだよなぁ」
「え……。そう言われると、町を出てからお邪魔してなかったね。おばさん達が良かったら」
一瞬だけ複雑な顔をしたな。
これは、吉と出るか凶と出るか……。勿論、俺の自室には行かない。逃げ場が失われるし、恋愛フラグの王道だ。これは実家だからと侮った奴から食われる。恐ろしい遊戯だ……。
いざ実家へ戻ってきた俺は、ソラティオを招きいれる。
連絡手段はないため、驚いた顔をしていた両親もソラティオを歓迎して美味しい料理を振る舞ってくれた。
実家には小さなテラスがあって、夜のため小さな蝋燭の入ったランタンを手に椅子へ座る。
白い装飾のされた椅子とテーブルで、中心にランタンを置いて息を吐いた。
「この季節は空気も冷たすぎず良いよな」
「……そうだね。明日からまた、1週間も会えなくなるなんて……」
「あー……まぁ、1週間なんてすぐだろう。俺はとにかくお前は騎士団だし……」
「うん……それでも、同じ町にいないんだなって思ったらさ」
これは完全に恋愛フラグが立っている……。25年間、恋愛フラグを回避してきた俺を舐めるなよ。今回だって、回避してみせる!
それにしても、コイツは本当に強敵だ……。回避しては、気づいたら新たに小さな恋愛フラグを立ててくる……。恋愛フラグの達人かって思うほど卓越しているんじゃないか?
25年間、恋愛フラグを立てる男と自称モブ男を極める俺の真剣勝負だ。
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