【完結】自称モブ男は、恋愛フラグを回避する(短編集)

葉瀬満月(はせみつき)

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【第1話】自称モブ男は、恋愛フラグを回避する

真のモブからしたら甘いだろう。

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 まぁ、真のモブに比べたら俺なんて自称でしかないだろう。なんせ、本来のモブには名前なんて存在しない。

 物思いにふけて哀愁を漂わせているソラティオは置いておくことにした俺は、次の週から後悔するはめになるのだった――。


「え……これって、アイツからの手紙?」

 早朝、一人暮らしをしている俺の仮住まいに届けられた手紙を見つめる。
 白い封筒にアイツの文字で、親愛なる君へと書いてあった。

 ベッドへ寝転がりながら風を開いて中の手紙を確認する。手紙を読みながら、アイツから最後に名前を呼ばれたのはいつだったか思い出していた。

 『親愛なる君へ

 実は以前から大規模な魔物討伐が決まっていたんだ。守るべき一般市民の君には打ち明けられなくて、すまない。今週までは会えると思っていたんだけれど、魔物が活発化したらしく手紙を送らせてもらったよ。君の元へ手紙が届く頃には出立していると思う。

 討伐は長期戦になると思うけれど、必ず君の元へ帰ると約束する。だから、戻ったときは……頑張ったねって、褒めて欲しい。世界は広いが、夜に空を見上げて同じ星を見てくれたら嬉しいな。いつでも、君の無事を願っているよ

 ソラティオ』

「おいおい……この台詞は悪い方のフラグだろうが」

 あの色男……。自分から盛大なフラグを立てるんじゃねぇ。
 恋愛フラグ建築士だと思ってたが……なんでもフラグを立てる男だったか。

 俺は急いで家を出る。読まないからって購入していなかった魔法新聞の存在が恋しいなんて……。
 家を出て、ちょうど近くを歩いていた近所のおっちゃんを捕まえて話を聞く。

「魔法新聞には何も書いてなかったぞ? ただ、噂は聞くなー」
「どんな噂だ」
「あー、と……確か。宿屋の息子も騎士団所属で、数日前に手紙が届いたらしくてよ。内容が、魔力暴走マギアラーゼンって書かれていたらしい……」
「なっ――」

 魔力暴走マギアラーゼンなんて言ったら、百年に一度起きるかどうかの魔物による大災害だぞ……。

「まぁ、大丈夫だろうとは言ってたけどな。なんせ、この町から次期騎士団長って言われるソラティオ坊っちゃんがいるんだからよ!」

 そのソラティオが危険なフラグを建築してるんだよ……。
 まさか、俺との恋愛フラグが成就しないから……なんて考えすぎだよな?

 アイツだって俺に次ぐ天才魔法使いなんだから、大丈夫……。でも、フラグが気になるんだよ。俺以外で立てるフラグをほぼすべて折りまくれる奴はいないだろう。

「あー、もう。規制はあるだろうが、行くしかないよな……」

 恋愛フラグ以外も回避させてやる。なんせ俺は真のモブじゃなくて、自称モブ男だから。


 急遽、休暇届を出してから簡単な荷造りをして広場へ向かう。宿屋の店主から話を聞いたところ、場所が遠すぎた。
 王都からも結構歩いた先にある、って呼ばれているところだからだ。

 広い谷の中にある自然と空いた穴で、魔石が多く取れることで有名な場所でもある。
 魔石って言うのは、魔法の媒介だったり魔道具の材料になる万能な鉱物だ。

 基本的に空気中を漂う魔力があるんだけど。魔法を使うために必須級の素で、それが年月をかけて固まった物や、魔物の体内からも摂取出来るんだ。
 要は便利道具で、それが多いところになぜか魔物は巣を作りやすい。
 今回のは少し前に地盤が崩れたとかで、魔石を掘る仕事が出来なくて増えたせいって言ってたな……。

 このことは魔法新聞でも大きく取り上げられていたらしい。
 毎週必ず会ってたのに水臭いだろう。まぁ、俺はアイツの言う守るべき一般市民なわけだけど……。

 自称モブ男は最強の天才魔法使いでもあるんだぞ。


 広場にたどり着いてすぐ、円が描かれた中心部へ向かう。此処は、召喚獣や使い魔を呼び出せる場所だ。安全性や、町に侵入した魔物と誤解して混乱を招かないように。

 当然、一般市民の俺は使い魔なんて飼っていない。つまり、これからやることは一つだ。

「空高く飛ぶ翼、鋼の肉体。我の呼びかけに応えよ――一時召喚テンポラツィオーネ!」

 召喚魔法は高度で扱える者は少ない。でもって、魔法使いの魔力量に応じて選定される。その数、この世界に存在する魔物すべて――。

 召喚魔法を使うのは学生以来だが、どんな奴が来るか楽しみだ。
 だけど、可能ならあまり体が動かなくて良い魔物でありますように――。

 魔法を唱えてすぐ、目の前が白く光る。それは円の中心で球体化していき、暫くして形が見えてきた。
 時間は朝方だったが、少しばかり野次馬っていう観客に見守られている。

 後頭部に二本の白い角。馬のように鼻先から口までは少しだけ長く、蝙蝠のような巨大な羽根と蜥蜴に似た皮膚が体を覆っている。最後は太くて靭やかな尻尾が現れると、観客もざわめき立った。

「……嘘だろう」

 光の中から出てきたのは、この世界で最強と呼ばれるだった。
 また魔法新聞に載ってしまう……。学生のときは、幻の一角獣を召喚して話題を集めたってのに。

 ソラティオたちは馬で目的地に向かったはず。手紙が来る前に出発してるのなら、そろそろ着いててもおかしくない。
 俺は竜種に跨ると脳内で命令する。召喚獣や使い魔は、言語化しなくても頭で浮かべるだけで命令することが可能だ。

 俺を乗せた竜種は双翼を羽ばたかせ、上空へ浮かび上がる。
 目指すは魔窟の穴……。

 死亡フラグなんて、俺がバキバキにへし折ってやる。
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