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チクタクの森

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 「シュゼット…帰りましょうよ。
 私、なんだか怖いわ。」

 「もうっ!あなたは本当に怖がりね!
 私ね、ぴーんとひらめいたんだから。
 今日は絶対にみつかるわ!」



あと数日で別荘を離れるというある夜、私はシュゼットに叩き起こされました。
シュゼットが言うには、今までは昼間にしか探してなかったからみつからなかったんだとのこと。
その夜はたまたま新月でした。
 外は漆黒の闇です。
なのに、シュゼットはそんなことを少しも恐れる事なく、森の中をずんずん進んで行き、私はそれを止めることも出来ずにただ着いて行ったのです。

 夜の森はとても不気味で、私は怖さで足がすくむ程でした。
でも、確かにチクタクの音は、昼間よりもより鮮明に聞こえました。



 「ほら、夜の方が良く聞こえるわ!
 音はこ……」



シュゼットがなぜそこで言葉を途絶えさせたのか、私にはすぐにわかりました。
 少し離れた所を大きな袋がよたよたと歩いていたからです。
 私がびっくりして立ち止まっていると、シュゼットは、慌ててランタンの明かりを消しました。
その途端、周りは真っ暗闇になって、心細くなった私はシュゼットの手をしっかりと握り締めました。




 「シュゼット…」

 「しっ!黙って!」

シュゼットにたしなめられ、私は口をつぐみました。
そして、息を潜め、私達は袋の後をそうっとつけていきました。

よたよた動く袋は、泉のほとりに来るとそこでぴたりと停まりました。
そして、もぞもぞと動いたかと思うと、大きな袋の下から真っ白なうさぎが出てきたのです。
どうやら、人間のような服を着たうさぎが袋を担いで歩いていたようです。
うさぎは、袋の口を縛ってた紐をほどくと、袋をひっくり返して、その中身を泉にざーーっと放り込みました。
やがて、袋が空になると、その袋を折り畳んで、引き返していきました。
 私達はひょこひょこ歩くうさぎの後をこっそりとつけました。
うさぎは真っ白だから、月のない闇夜でもけっこうよく見えました。

どのくらい歩いた時でしょうか?
うさぎは大きな木の根元に近寄り、突然そこに吸い込まれるように姿を消したのです。
 私達は呆気に取られながらも、うさぎが吸い込まれた木の根元に走りました。
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