チクタクの森【完結編】

偉そうなうさぎ

２

うさぎはますます不機嫌な顔になり、口の中でもごもごと何事かを呟きながらも、私達に着いて来るように言い、ゆっくり歩き始めました。
それにしても、ものすごい数の時計です。
 壁中に吊られた時計の音を聞いていると、なんだか気持ちが悪くなりそうでした。
まだ着かないのかとシュゼットが苛々しながら五回程訊ねた頃、ようやくうさぎは立ち止まり、壁の下の方にあった時計を指さしました。



 「これだ。」

 「へぇ……」

それは他の時計より一回り大きな楕円形の金時計で、真ん中あたりに針が付いています。



 「これは私のなの？それともシュザンヌの？」

 「二人のだ。お前たちは双子だからな。
まぁ、お前たちがもう少し大きくなれば、分裂するだろうけど……」

 「時計が分裂するですって！？」

シュゼットがそう言いながら、その時計を壁から取ると、うさぎはとても怒り出しました。




 「こらっ！時計に触るんじゃないっ！」

 「良いじゃない！
これは私達の時計なんでしょう！？」

 「だめだ！すぐに戻せ！」

 二人がもみ合ううち、何かの拍子に時計は二人の手を離れて宙を舞い、放物線を描いて落下し、固い床に叩き付けられました。



 「あぁっ！針が！」

 床に落ちた途端に針が本体から離れ、それを見て、うさぎはとても驚き困ったような顔をしました。



 「あんた、偉そうな割りには心配性なのね。
こんなもの、修理に出したらすぐに直るわ。」

うさぎは、悲しそうに瞳を伏せたまま、静かに首を振りました。