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手がかり

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 「なるほど……そんなことがあったのか。」

うさぎは短い手で無理矢理に腕組みをしながら、ゆっくりと頷きました。 



 「だから、お願い……修理屋がどこに行ったか教えてほしいの。」

 「さっきから何度も言ってるが、俺様は普通のうさぎじゃないんだぞ。
 由緒正しき倉庫番だ。
 修理屋の行き先については、誰にも話すわけにはいかない。」

その言葉はとてもきっぱりとしたもので……
どれだけ粘ってもうさぎが修理屋のことを教えてくれないことを私達は悟りました。



 「シュゼット…行きましょう。」

 「……そうね。」

 私達が立ち上がると、うさぎはやけに大袈裟な咳払いをひとつしました。



 「さてと。わけのわからない双子も帰るようだし、俺様はまた時計の見回りでもするとしよう。」

それはとてもわざとらしい独り言でした。



 「そういえば、修理屋はどうしてるかな。
ここから北東に向かって、人間の足で一ヶ月くらいかかる次の森に向かってる最中なんだろうな。」

 私とシュゼットは真ん丸な目をして、顔を見合わせました。



 「ありがとう、うさぎさん!」

シュゼットはうさぎをぎゅうっと抱き締めました。



 「やめろ!俺様はお礼を言われるようなことは何もしてない。
ただ、独り言を言っただけだ。」

 「素敵な独り言をありがとう!!」

シュゼットはいやがるうさぎをなかなか離しませんでした。
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