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謁見
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階段を登る度、離れていく地面。
一段登る度に地面とお別れしながら僕は切に思う。
何で馬鹿と偉い人は高い所が好きなのか……と。
事の始まりは僕が《聖女》を暗殺しようとしていた暗殺者だと城中に知れ渡った事から始まる。
それは何処からともなく漏れ、恐ろしい程瞬く間に知れ渡り、城中で僕の処分をどうするのかという声が上がった。そこで僕の処分について手を上げたのが三勢力。
僕を護衛にしたい《聖女》。取り敢えず、僕を牢に入れ事情聴取したい騎士団。僕が《聖女》暗殺を企んだと知り、即斬首にしたい皇帝。
「いやぁー、どうしようか? 」
そう呑気にニコニコと笑いながら取り敢えず、アルトワルトの部屋で軟禁中の僕を茶化しに来ながら僕に淹れさせた茶を啜る偽宰相。
どうやら偽宰相は僕の件やフィールとリステルの使者の内、暗殺者がいた件についての後処理に追われているのだが、部下に任せてここに雲隠れしているらしい。
一度、部下に突き出してやろうかと考えもしたが、「実はフックスに付けたアルちゃんの監視魔法で、粗方、君がいた組織の情報を得たって言ったらどうする? 」といい笑顔で脅された。
情報提供して助命してもらおうと考えているのにそれを潰されちゃ堪ったもんじゃない。
粗方情報を得たというのが、本当かは分からないが、この偽宰相を突き出したら確実に痛い目に会うのは明白だ。
三勢力と、ちょくちょく逃げてくる偽宰相。そして毒で僕が倒れた後からちょっと様子のおかしいアルトワルト。
折角、組織の魔の手から一旦は過ぎ去ったというのに人生とはなんと多難の事か。
尽きぬ悩みに頭をグルグルさせている所に……。
「何故、元暗殺者が直々に皇帝に謁見するんすかね……。」
階段を登り、一段、一段、恋しい地面に別れを告げながら登っていく皇帝謁見への道。
僕を斬首しようとしている人に会いに行くなんて怖いッ……と言いたい所だが、僕が今怖がっているのは僕を斬首したい皇帝じゃない。
「……歩き辛い。」
アルトワルトの腰にしがみ付きガタブル震える可哀想な僕にアルトワルトの少し呆れ顔をしつつも目が合うと途端にそっぽを向く。
歩き辛いと文句は言うものの引き剥がす事はしない。
実は僕は騎士達に拘束されて一人で皇帝の前に突き出される予定の筈だった。
しかし、何故だかアルトワルトが付き添ってくれている。仕事も通常通りあった筈なのにこちらを優先してくれた。
ー 仕事じゃなくて僕を優先してくれるんすね。
僕の一歩前を歩くアルトワルトを見て、嬉しくて緩みそうになる表情筋を何とか引き締めつつ、歩いてた。階段を登るまでは……。
「時計塔よりも…、《聖女》の部屋よりも高い場所が謁見の間なんて……。」
何故、人は態々高い建造物を作りたがるのか。
地面が離れて行く度に、高い建造物を作る技術を作り上げた先人達への恨み辛みと落ちるかもという恐怖が募って行く(全く窓には近付いていない)。
「きっと…、皇帝は偉くて馬鹿なんすね…。」
「余の前で余を愚弄するとは…、余程その首、飛ばされたいようだな。」
何時の間にかに開いていた謁見の間の扉。
そしてその部屋の奥には不機嫌な皇帝が座しており、こちらを睨んでいる。
「アンタ…、生き残る気ある? 」
「いやぁー、アルちゃんのお嫁さんは命知らずだねー。」
謁見の間では《聖女》が角砂糖を大量に投入した紅茶を飲みながらこちらを見て呆れ、偽宰相がニコニコと何時ものように笑みを浮かべている。……マイペース過ぎない?
「何でアンタ、ずっとソイツにくっ付いてるの? 」
「高所恐怖症なんすよ。」
「……それは本当に高所恐怖症なの? 一切窓に近付いてないのに、何処に恐怖を覚えてんのよ。」
「高いってだけでもうダメなんすよ。」
「アンタ、本当に暗殺者なの!? 暗殺者がこのくらいの高さで高いってだけビビってて仕事になる訳? 」
お前は本当に暗殺者かという疑いの目で《聖女》が見る。
別に暗殺者は鳶職じゃないんだから態々高所に行く必要なんてない。僕は地面をこよなく愛する元暗殺者だ。
「……《聖女》よ。あまり、その男と話すでない。お主を殺そうとした罪深い者だ。」
不機嫌な声が皇帝の口から漏れる。
皇帝は僕と《聖女》が会話する事が気に食わないようで《聖女》と話している間もずっと腰に佩している剣の柄に手を置いていた。どうやら今すぐにでも僕を斬り捨てたいらしい。
「本当に罪深いのはどちらなのでしょうね。」
《聖女》が皇帝の言葉を鼻で笑う。
皇帝は《聖女》の言葉の意味が分からず、首を傾げた。
「何が言いたい? 」
「……分からない時点で、そもそもアンタ達はおかしいのよ。そう、そもそもここに私とシグリがいる自体、本当なら許されてはいけない事なんだから…。」
はぁー、と長いため息をつき、《聖女》が僕に組織の、エードラム教の事を、話せと促した。
一段登る度に地面とお別れしながら僕は切に思う。
何で馬鹿と偉い人は高い所が好きなのか……と。
事の始まりは僕が《聖女》を暗殺しようとしていた暗殺者だと城中に知れ渡った事から始まる。
それは何処からともなく漏れ、恐ろしい程瞬く間に知れ渡り、城中で僕の処分をどうするのかという声が上がった。そこで僕の処分について手を上げたのが三勢力。
僕を護衛にしたい《聖女》。取り敢えず、僕を牢に入れ事情聴取したい騎士団。僕が《聖女》暗殺を企んだと知り、即斬首にしたい皇帝。
「いやぁー、どうしようか? 」
そう呑気にニコニコと笑いながら取り敢えず、アルトワルトの部屋で軟禁中の僕を茶化しに来ながら僕に淹れさせた茶を啜る偽宰相。
どうやら偽宰相は僕の件やフィールとリステルの使者の内、暗殺者がいた件についての後処理に追われているのだが、部下に任せてここに雲隠れしているらしい。
一度、部下に突き出してやろうかと考えもしたが、「実はフックスに付けたアルちゃんの監視魔法で、粗方、君がいた組織の情報を得たって言ったらどうする? 」といい笑顔で脅された。
情報提供して助命してもらおうと考えているのにそれを潰されちゃ堪ったもんじゃない。
粗方情報を得たというのが、本当かは分からないが、この偽宰相を突き出したら確実に痛い目に会うのは明白だ。
三勢力と、ちょくちょく逃げてくる偽宰相。そして毒で僕が倒れた後からちょっと様子のおかしいアルトワルト。
折角、組織の魔の手から一旦は過ぎ去ったというのに人生とはなんと多難の事か。
尽きぬ悩みに頭をグルグルさせている所に……。
「何故、元暗殺者が直々に皇帝に謁見するんすかね……。」
階段を登り、一段、一段、恋しい地面に別れを告げながら登っていく皇帝謁見への道。
僕を斬首しようとしている人に会いに行くなんて怖いッ……と言いたい所だが、僕が今怖がっているのは僕を斬首したい皇帝じゃない。
「……歩き辛い。」
アルトワルトの腰にしがみ付きガタブル震える可哀想な僕にアルトワルトの少し呆れ顔をしつつも目が合うと途端にそっぽを向く。
歩き辛いと文句は言うものの引き剥がす事はしない。
実は僕は騎士達に拘束されて一人で皇帝の前に突き出される予定の筈だった。
しかし、何故だかアルトワルトが付き添ってくれている。仕事も通常通りあった筈なのにこちらを優先してくれた。
ー 仕事じゃなくて僕を優先してくれるんすね。
僕の一歩前を歩くアルトワルトを見て、嬉しくて緩みそうになる表情筋を何とか引き締めつつ、歩いてた。階段を登るまでは……。
「時計塔よりも…、《聖女》の部屋よりも高い場所が謁見の間なんて……。」
何故、人は態々高い建造物を作りたがるのか。
地面が離れて行く度に、高い建造物を作る技術を作り上げた先人達への恨み辛みと落ちるかもという恐怖が募って行く(全く窓には近付いていない)。
「きっと…、皇帝は偉くて馬鹿なんすね…。」
「余の前で余を愚弄するとは…、余程その首、飛ばされたいようだな。」
何時の間にかに開いていた謁見の間の扉。
そしてその部屋の奥には不機嫌な皇帝が座しており、こちらを睨んでいる。
「アンタ…、生き残る気ある? 」
「いやぁー、アルちゃんのお嫁さんは命知らずだねー。」
謁見の間では《聖女》が角砂糖を大量に投入した紅茶を飲みながらこちらを見て呆れ、偽宰相がニコニコと何時ものように笑みを浮かべている。……マイペース過ぎない?
「何でアンタ、ずっとソイツにくっ付いてるの? 」
「高所恐怖症なんすよ。」
「……それは本当に高所恐怖症なの? 一切窓に近付いてないのに、何処に恐怖を覚えてんのよ。」
「高いってだけでもうダメなんすよ。」
「アンタ、本当に暗殺者なの!? 暗殺者がこのくらいの高さで高いってだけビビってて仕事になる訳? 」
お前は本当に暗殺者かという疑いの目で《聖女》が見る。
別に暗殺者は鳶職じゃないんだから態々高所に行く必要なんてない。僕は地面をこよなく愛する元暗殺者だ。
「……《聖女》よ。あまり、その男と話すでない。お主を殺そうとした罪深い者だ。」
不機嫌な声が皇帝の口から漏れる。
皇帝は僕と《聖女》が会話する事が気に食わないようで《聖女》と話している間もずっと腰に佩している剣の柄に手を置いていた。どうやら今すぐにでも僕を斬り捨てたいらしい。
「本当に罪深いのはどちらなのでしょうね。」
《聖女》が皇帝の言葉を鼻で笑う。
皇帝は《聖女》の言葉の意味が分からず、首を傾げた。
「何が言いたい? 」
「……分からない時点で、そもそもアンタ達はおかしいのよ。そう、そもそもここに私とシグリがいる自体、本当なら許されてはいけない事なんだから…。」
はぁー、と長いため息をつき、《聖女》が僕に組織の、エードラム教の事を、話せと促した。
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