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壊れた歯車
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その日は冷たい雨がやっと止んだ曇りの日だった。
春が近づき、緩やかに暖かくなっていく季節なのにその日は雪が降りそうな程寒い日。王宮で国王、第一王子毒殺未遂事件が起こった日。
国中がその大事件に大いに驚き、騒いだ。王宮も騎士団も自警団も何処もかしこもバタバタしていて一人の平民の少年が道端で血を流し、死んでいても騒ぎにならない程。
今思えばこの混乱も誰かの思惑だったのかもしれない。王族の毒殺未遂なんてよくある事だ。情報が操作されていて出てこないだけで。
◇
「これもイベントなのだろうか。」
騎士団も今日はバタバタしていて、学園に通っている騎士も学園を公欠し、国民による暴動の鎮圧に動いている。
国王と第一王子の毒殺未遂事件は短時間で王都に広まった。
それは「クーデターが起きた。」とか「国王が毒に倒れた。実は毒を盛った者は他国の間者でこれから混乱に乗じて攻めてくるのだ。」とか尾ひれが付きに付きまくって民達に伝わった。国内で混乱と不安が生じ、暴動がいたる所で起こっている。
「シュネー!! アルヴィンとともに自警団の加勢に行ってくれッ!! シュヴェルトは俺と王都の北東の暴動に行くぞ!! 」
「「「ハイ!!」」」
何が起こっているのか分からず、騎士団と自警団は駆り出される。異様な状況をヒシヒシと感じながらそれでもただひたすら仕事をこなす。
◇
自警団の屯所にアルヴィンとともに行くと、屯所も所々でゲキが飛び、団員達も屯所を出たり入ったりしている。
「応援に来ました。」
「ありがとうございます、騎士様。自警団員だけでは手が足りず…。オイッ、お前達は南方の抑制に迎え!! ……すみません。私も向かうのですみませんが屯所で指揮をお願いします。」
自警団長が団員を何人か連れて走って出て行く。いや、焦ってても応援に来ただけの相手に指揮任しちゃダメでしょ。
「アルヴィン…。」
「……相当混乱してるな。」
暴動を抑える加勢に出された筈なのに屯所で留守番。
私達は何しに来た?
王都の地図を取り出し、暴動が起きた所を伝達係に聞き、バツをつけていく。
「何故こんなに暴動が起きているのだろう。意図的に事を大きくするかのように次々と。」
「……分からない。平民が暴動起こしても骨がないから剣が振るえない。」
「戦闘狂はちょっと黙ってて。」
アルヴィンが不満そうにバツを見つめる。まあ、確かに私達がその意図に気付いても王宮の宰相様方どうにかしてくれないとどうにも出来ないのだが。
「騎士様ッ!! 刃傷沙汰が起こったみたいです。死体を回収したのですみませんがお願いしますッ。」
「刃傷沙汰!? もうそこまで発展してるのか!!」
自警団員が私達の目の前に運んできた死体を担架で運んできたまま放置してまた屯所を出て行く。布に包まれたその死体は私より少し背が小さく、布の上からでも比較的若い死体だと想像出来た。
「……若いな。胸糞悪い。」
「まさか、身元確認しとけとか言わないよな。私達そういうのは専門外だ。」
取り敢えず、ここに置いておく訳にも行かず二人で死体を運ぶ。すると運ぶ最中にひらりと死体に掛けられていた布が飛んだ。
その死体を見て思わず言葉を失った。
胸を刺されたようで湿っている服には赤く血痕がこびり付いており、血を吐いたのかもしれない、口のあたりにも付着している。
瞳孔の開いた緑色の瞳がただ天井を仰いでいる。
「ゲ…ルダ? 」
濡羽色の髪は泥水で汚れ、肌は蒼白になり、死後硬直で身体は硬く固まっている。
ー 何故? 何でゲルダがこんな所でッ!!
私とアルヴィンは動揺して思わず、ゲルダだったものを地面に落としてしまった。ゲルダは人形のようにガタンッと力なく落ちた。
「……他人の…空似じゃないよな。」
アルヴィンは酷く動揺して、思わず後ずさった。
別に死体を見た事がない訳ではなかった。騎士として命を懸けているのだから死に目を見る事だってあった。でも…、それでも目の前に転がるそれは容認出来ないものだった。
『バッドエンドに行く確率は20% ではなく、驚異の10% !! どんな下手なプレイヤーでもバッドエンドに行く事はほぼない。寧ろ、バッドエンドを回収する方が難しくて…。』
ー バッドエンドの方が難しいんじゃなかったのか? 何故ここにゲルダが…。ゲルダがッ。
状況が飲み込めない。
ハッピーエンドに突き進んでいる筈の主人公が…。
でも、だって………。
ー 本当に何が起こっている。
アルヴィンが必死に割り切り、死体に触れる。
「……本当に暴動で死んだのか? それにしては傷が少ない。刃傷だって胸に一つだけだ。殴られた跡とか全くない。それに……。」
「何故身体が濡れているのか…。」
刺されて昨日の雨で出来た水溜りに倒れたにしては身体全身が濡れている。そして暴動から始まってからそこまで経っていないのに身体は死後硬直がかなり進んでいるように見える。
ー 昨日…。ゲルダは死んだのだろうか。
そこまでの考えに至ったが、私達はゲルダをもう一度担架に乗せ運び、布を綺麗に掛け直した。
昨日死んだからって何だっていうんだ。ゲルダが死んだ事実は変わらない。
「……仕事に戻ろう。暴動は収まっていない。」
「ああ。……そうだね。」
悲嘆にくれている暇もない。
暴動は収まっていないのだから。
きっと毒殺未遂の主犯が見つからない限り。
「第二王子が捕まったぞ。」
「はぁ? 何で第二王子!? 」
「何でも第二王子の部屋から国王と第一王子の食事に入っていた毒の瓶と隣国ラフムの間者とのやりとりの書簡が見つかったらしい。」
タチの悪い噂がまた流れている。
自警団の中でさえ。
二人して溜息をつき、地図にバツを書いていく。しかしその噂が流れてから一気に暴動は沈静化していった。
「……まさか本当の事なのか? 」
「余計きな臭くなってきた。」
陰謀の匂いがプンプンと漂う。
自警団だけでも対応できる程、暴動も収まり、私とアルヴィンは城へ戻った。そしてそこで新たな任務を言い渡される。
「明朝。王城前の大広場にて、国王、第一王子毒殺未遂及び国家転覆の罪で第二王子の処断が行う。生活を脅かされた国民達の怒りは強い。それを抑える為の公開型処断だ。我々はつつがなく、行われるように大広場の警備を行う。」
暴動の鎮圧で疲弊しきっていた騎士達はホッと肩の荷を一度下ろした。
主犯が捕まり、国民の前で断罪されれば、国民の怒りは主犯に注がれるだろう。怒りの矛先が定まれば各場所で起こっている暴動も収まりを見せる。
「警備だけでこの暴動が終わるなら幾らでもしてやるよ。」
騎士の一人がそうボヤき、緊張の解けた騎士達は少しだけその言葉に乾いた笑いを浮かべた。
春が近づき、緩やかに暖かくなっていく季節なのにその日は雪が降りそうな程寒い日。王宮で国王、第一王子毒殺未遂事件が起こった日。
国中がその大事件に大いに驚き、騒いだ。王宮も騎士団も自警団も何処もかしこもバタバタしていて一人の平民の少年が道端で血を流し、死んでいても騒ぎにならない程。
今思えばこの混乱も誰かの思惑だったのかもしれない。王族の毒殺未遂なんてよくある事だ。情報が操作されていて出てこないだけで。
◇
「これもイベントなのだろうか。」
騎士団も今日はバタバタしていて、学園に通っている騎士も学園を公欠し、国民による暴動の鎮圧に動いている。
国王と第一王子の毒殺未遂事件は短時間で王都に広まった。
それは「クーデターが起きた。」とか「国王が毒に倒れた。実は毒を盛った者は他国の間者でこれから混乱に乗じて攻めてくるのだ。」とか尾ひれが付きに付きまくって民達に伝わった。国内で混乱と不安が生じ、暴動がいたる所で起こっている。
「シュネー!! アルヴィンとともに自警団の加勢に行ってくれッ!! シュヴェルトは俺と王都の北東の暴動に行くぞ!! 」
「「「ハイ!!」」」
何が起こっているのか分からず、騎士団と自警団は駆り出される。異様な状況をヒシヒシと感じながらそれでもただひたすら仕事をこなす。
◇
自警団の屯所にアルヴィンとともに行くと、屯所も所々でゲキが飛び、団員達も屯所を出たり入ったりしている。
「応援に来ました。」
「ありがとうございます、騎士様。自警団員だけでは手が足りず…。オイッ、お前達は南方の抑制に迎え!! ……すみません。私も向かうのですみませんが屯所で指揮をお願いします。」
自警団長が団員を何人か連れて走って出て行く。いや、焦ってても応援に来ただけの相手に指揮任しちゃダメでしょ。
「アルヴィン…。」
「……相当混乱してるな。」
暴動を抑える加勢に出された筈なのに屯所で留守番。
私達は何しに来た?
王都の地図を取り出し、暴動が起きた所を伝達係に聞き、バツをつけていく。
「何故こんなに暴動が起きているのだろう。意図的に事を大きくするかのように次々と。」
「……分からない。平民が暴動起こしても骨がないから剣が振るえない。」
「戦闘狂はちょっと黙ってて。」
アルヴィンが不満そうにバツを見つめる。まあ、確かに私達がその意図に気付いても王宮の宰相様方どうにかしてくれないとどうにも出来ないのだが。
「騎士様ッ!! 刃傷沙汰が起こったみたいです。死体を回収したのですみませんがお願いしますッ。」
「刃傷沙汰!? もうそこまで発展してるのか!!」
自警団員が私達の目の前に運んできた死体を担架で運んできたまま放置してまた屯所を出て行く。布に包まれたその死体は私より少し背が小さく、布の上からでも比較的若い死体だと想像出来た。
「……若いな。胸糞悪い。」
「まさか、身元確認しとけとか言わないよな。私達そういうのは専門外だ。」
取り敢えず、ここに置いておく訳にも行かず二人で死体を運ぶ。すると運ぶ最中にひらりと死体に掛けられていた布が飛んだ。
その死体を見て思わず言葉を失った。
胸を刺されたようで湿っている服には赤く血痕がこびり付いており、血を吐いたのかもしれない、口のあたりにも付着している。
瞳孔の開いた緑色の瞳がただ天井を仰いでいる。
「ゲ…ルダ? 」
濡羽色の髪は泥水で汚れ、肌は蒼白になり、死後硬直で身体は硬く固まっている。
ー 何故? 何でゲルダがこんな所でッ!!
私とアルヴィンは動揺して思わず、ゲルダだったものを地面に落としてしまった。ゲルダは人形のようにガタンッと力なく落ちた。
「……他人の…空似じゃないよな。」
アルヴィンは酷く動揺して、思わず後ずさった。
別に死体を見た事がない訳ではなかった。騎士として命を懸けているのだから死に目を見る事だってあった。でも…、それでも目の前に転がるそれは容認出来ないものだった。
『バッドエンドに行く確率は20% ではなく、驚異の10% !! どんな下手なプレイヤーでもバッドエンドに行く事はほぼない。寧ろ、バッドエンドを回収する方が難しくて…。』
ー バッドエンドの方が難しいんじゃなかったのか? 何故ここにゲルダが…。ゲルダがッ。
状況が飲み込めない。
ハッピーエンドに突き進んでいる筈の主人公が…。
でも、だって………。
ー 本当に何が起こっている。
アルヴィンが必死に割り切り、死体に触れる。
「……本当に暴動で死んだのか? それにしては傷が少ない。刃傷だって胸に一つだけだ。殴られた跡とか全くない。それに……。」
「何故身体が濡れているのか…。」
刺されて昨日の雨で出来た水溜りに倒れたにしては身体全身が濡れている。そして暴動から始まってからそこまで経っていないのに身体は死後硬直がかなり進んでいるように見える。
ー 昨日…。ゲルダは死んだのだろうか。
そこまでの考えに至ったが、私達はゲルダをもう一度担架に乗せ運び、布を綺麗に掛け直した。
昨日死んだからって何だっていうんだ。ゲルダが死んだ事実は変わらない。
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「ああ。……そうだね。」
悲嘆にくれている暇もない。
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きっと毒殺未遂の主犯が見つからない限り。
「第二王子が捕まったぞ。」
「はぁ? 何で第二王子!? 」
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自警団の中でさえ。
二人して溜息をつき、地図にバツを書いていく。しかしその噂が流れてから一気に暴動は沈静化していった。
「……まさか本当の事なのか? 」
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自警団だけでも対応できる程、暴動も収まり、私とアルヴィンは城へ戻った。そしてそこで新たな任務を言い渡される。
「明朝。王城前の大広場にて、国王、第一王子毒殺未遂及び国家転覆の罪で第二王子の処断が行う。生活を脅かされた国民達の怒りは強い。それを抑える為の公開型処断だ。我々はつつがなく、行われるように大広場の警備を行う。」
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主犯が捕まり、国民の前で断罪されれば、国民の怒りは主犯に注がれるだろう。怒りの矛先が定まれば各場所で起こっている暴動も収まりを見せる。
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