2 / 54
本編
1
しおりを挟む小さい頃から仲のよかったぼくたち三人。
王太子のレイナルド・バランディンは、体格も良くて頭も良くて、当然、魔力も高い、王族の中の王族と呼ばれてる。
流れるように美しい金髪と、空を映したかのような透き通った空色の瞳。そして、顔の作りも飛び抜けて良くて、小さな頃から婚約の申し出が殺到してたんだ。
もう一人は、公爵家の長男で、アベルシス・ベニート。
レイに負けず劣らずの美丈夫で、キラキラした銀髪に、濁りのない紫色の瞳をしてる。
レイに比べると細く見えるけど、服の下にはきれいに整った筋肉がついていて、剣技だってレイに劣らない。
そして、ぼく。セレスティノ・カレスティア。男爵家次男。どこにでもいそうなミルクティー色の髪と、普通の緑色の瞳。背も低いし、筋肉つかないし、とにかく細い。もう、二人とは真逆のようなぼく。
……正直、なんで貴族のなかでも最下層にいるようなぼくと、レイやアベルのような上級身分の人が友達なのか……ってのは、よくわからない。
王太子のことを『レイ』って愛称で呼ぶことも、貴族の中でも最高位の公爵家の跡取りを『アベル』って、これまた愛称で呼ぶことも、ほんと、なぜなのか、ぼくにもよくわからない。
わからないけど、ぼくたちにとってはこれが普通で、ぼくたちをよく知ってるレイの侍従さんや、アベルの家の人たちは、何も言わない。
ほんと、不思議。
貴族の子どもたちは、十二歳から十八歳まで学院に通うことになる。
そこで、更に深い教養や、世界の成り立ち、魔力の扱い、剣技の向上……などなど、様々な知識と技能を身に着けていくんだ。
魔力が高かったり、頭のいい平民の子も通ってくることがある。
平民には平民の学園があるのだけど、能力の高い子は、折角持ってる力を伸ばし切ることができないんだって。だから、貴族学院に入って、能力を高める必要があるんだとか。
すごいよね!
そういう子達は少なくなくて、みんな、とても努力家なんだ。
ぼくはだめだなぁ。
勉強も自信がないから、いつもレイとアベルに教えてもらってるし、剣技なんて、いくらやっても身につかない。
唯一秀でてるといえば魔力だけで、それだってうまく使いこなせなくて、宝の持ち腐れとよく言われてしまう。
ほんと、ぼくってだめなやつだ。
「セレス、図書館に行こう」
「レイ、アベル」
授業が終わってすぐ、レイとアベルがぼくをむかえに来てくれた。
貴族学院では家柄や成績でクラスが別れてしまうから、レイとアベルは同じクラスだけど、ぼくは違うクラスなんだよね。
「ちょっと待って」
あたふたとカバンに教科書を詰めていたら、周りからひそひそと声がする。
……慣れたけどさ。
ひそひそは、身分も何もかも低いぼくが、王太子と公爵家の跡取りを愛称で呼んで近くにいるから、それに対する中傷。
わかってるよ。
ぼくだって。
でも、二人といると楽しいし、それが普通のことだし。
少しだけ胃はきりきり痛むけれど、いつものことだから。
ぼくがこの二人と一緒にいることを、快く思わない人たちはたくさんいる。
……ほんとに、仕方ないんだ。
わかってるんだ。身分違いだ、って。
でも、ぼくは二人のことが大好きだし、二人だって、嫌な顔ひとつしないんだから。
だから、クラスに友達がいなくても、ぼくは平気。
二人と過ごせるのはこの学院にいる間だけってことも、わかってるけど、それも平気。
学院の最高学年になったぼくたちだから、二人と一緒に過ごせるのは、あと半年もない。
年の終わりの卒業式を迎えたら、レイは王太子として国政に携わって、アベルはレイの側近として、仕事を補佐していくことが決まってるはず。
……ぼくは、男爵家の生まれだし、特別頭がいいわけでもないから、お城の仕事になんてつけない。
領地は兄様がしっかり治めていけるだろうし、ぼくはこんななりだから、学院を卒業したら、すぐにでもお嫁に出されるだろう。
まだその印は現出していないけれど、ぼくの体格や腕力のなさは、ぼくが『孕み側』ってことを否が応でも証明してるみたい。
歴史の中では、『女性』という存在がいたと記されている。ぼくたちのような陰茎を持つのは『男性』で、子供を宿せるのは『女性』だけだったらしい。
でも、あるときから、『女性』はいなくなってしまった。
それと同時に、『男性』の中に、子供を宿せる人が現れた。
全員が宿せるわけではなく、下腹部に『花籠』とか『花印』と呼ばれる印を持った人だけが、子を宿せるんだ。
その印は、十歳から二十歳くらいまでの間で現出して、ピンク色に染まったら、子を宿すための『器官』が成熟したサインなのだそう。
花籠を授かる男性は、だいたいがぼくのように筋肉があまりつかない体質だったり、背が低かったり、全体的に華奢な雰囲気のある人なんだって。
たまに例外はあるらしいけど。
多分ぼくは子を宿す『孕み側』だから、卒業したらお嫁に出される。……もし、貰い手がなかったら、兄様に嫁ぐことになる。
兄弟で婚姻関係を結ぶことも、珍しくないから。
「セレス、考え事か?」
「セレス、どこか具合悪い?」
「ううん。大丈夫。ありがとう、レイ、アベル」
カバンを手にしたまま考え事にふけってしまったから、二人が心配してぼくのところまで来てくれた。
「行こう」
へへ、って笑いかけたら、二人とも笑ってうなずいてくれた。
もうちょっとだけ。
この楽しい時間を過ごしてもいいかな?
80
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった
近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。
それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。
初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息
ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!
迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる