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本編

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 食事のときも、お風呂に移動するときも、ベッドにいるときも、一人じゃないときは必ずどちらかの肉茎がぼくの中に入ってる。
 ぼくの花籠は一ヶ月位で全部の花が赤く染まった。
 花籠が赤く染まるのは、揺籠に命が宿った証拠。
 手を当てればそこからは小さな鼓動を感じた。
 嬉しくて嬉しくて、ぼくは涙が止まらなかった。



 それから少し目眩をかんじることがあった。
 心が不安定になってるのか、二人の姿が見えないと涙が止まらなくなった。
 ぼく自身にもどうしたらいいかわからなくて、ぼくの様子に気づいたレイが、アベルが常にぼくの傍にいられるように手配してくれた。
 でもぼくの不安や目眩はなかなか良くならなくて、ぼくを心配する二人から一つ提案された。

「一度宮廷医に診てもらおう」

 ……って。
 でも、そのレイの言葉に、ぼくは息が止まった。

「ひ………」
「セレス、大丈夫だから。落ち着いて」
「ひぅ……………ぅ…………」

 宮廷医。
 その人は、お城に務める医療師の人。
 そんな人に見られたら、アベルがことがバレてしまう。レイがみんなを騙していることに気づかれてしまう。正式な伴侶じゃないぼくの揺籠に宿った命を、刈り取られるかもしれない――――

「や………やだ、やだ……っ、大丈夫、だからっ、他の人はやだっ、ぼくの、子供が……っ」
「「セレス」」

 二人がぎゅって抱きしめてくれて、ようやく呼吸が整っていく。
 でも心臓はどきどきしていて、お腹がきゅって痛くなる。

「あ………あ………」
「セレス?」
「おなか……っ、いたい…っ、や、やだっ、ぼくの、赤ちゃん……や、だっ」
「セレスっ」
「レイ、いいから早く呼んできてっ!僕たちじゃ知識が足りなすぎるっ」
「ああ」

 レイがどこかに行ってしまう。

「セレス、セレス、落ち着いて。大丈夫。深呼吸して。ベッドに横になろう」
「あ、べる」
「お腹見せて。………ん、大丈夫。大丈夫だから。あのね、セレス、今の宮廷医の人は、僕を人なんだよ」

 アベルの手がぼくのお腹をゆっくりなでていった。
 ちょっとずつ、痛みが和らいでいく。

「……しんさつ」
「そう。一応、僕、身籠り中ってことになってるからね」
「……っ、それじゃ、アベルが……っ」
「だから、大丈夫なんだよ」

 アベルはぼくの横に寝転がって、ぼくを抱きしめてくれた。

「その人は僕たちの協力者だから。……流石に、王城の中に誰一人協力者味方がいない状況だと、セレスを囲い込むことは不可能だから」
「………」

 初めて聞く話だった。
 …でも、嘘だとは思わない。

「セレスに会わせるつもりはなかった。…けど、やっぱり僕たちには知識が足りない。これでもかなり花籠持ちのこととか揺籠のこととか、身籠ってる間のこととか、調べてきたんだけどね。でもやっぱり専門家の知識が必要だって感じたんだよ。……ごめんね。僕たちが不甲斐ないせいで、セレスを不安にさせて」
「………ううん」

 やっと、気持ちが落ち着いていった。

「お腹が痛くなって余計に不安になったよね。……本当にごめん。不安に思ったり悲しくなったりするのは、お腹の子に悪いってわかってたのに」
「……ううん。もう、大丈夫」
「そう?…よかった」

 微笑んだアベルがぼくにキスをしてくれた。
 舌を絡めて唾液を飲んでるときに、レイが戻ってくる。
 そのレイの後ろに、ローブを着た人がいた。
 アベルは一旦僕から離れて、毛布を口元までかけてくれる。

「セレス、体は」
「……大丈夫。ごめんね。心配かけちゃった……」
「気にするな。配慮に欠けていた俺の責任だ」

 レイがキスをくれる。
 レイも舌を絡めて唾液を飲ませてくれて、またぼくは少し落ち着いた。

「セレス、この人が今の宮廷医であるサリムベルツ・ドーランだ」

 レイに紹介されて、じっとその人を見て、あ、って思った。

「馬車の人」
「ええ。お久し振りですね。セレスティノ・カレスティア様」

 あの日、ぼくを馬車に案内してお茶をくれた執事っぽかった人が、ローブを着ていた。





 サリムベルツさんはぼくの花籠を診て、眉間に皺を寄せた。
 …ぼく、服を着てないから、二人がお腹より上に別の毛布をかけてくれて、下は花籠が見えるくらいまで下げられてる。
 …恥ずかしいけど、診察だから。二人が手を握ってくれているし、大丈夫。
 サリムベルツさんは真っ白の手袋をしてた。手袋越しに花籠に触れられていて、少しホッとする。

「……素晴らしい花籠ですね。これを国民が見たら王族への畏怖が強くなるでしょうね」
「仮にセレスがその立場だったとしても、国民には絶対に見せないが」
「まあそうでしょうね。花籠を晒すことは恥部をみせるのと変わらない。……王族というものは本当にどうかしてる。……おっと、これは不敬に当たりますか?」

 おどけた感じのサリムベルツさんに、レイは「やれやれ」と肩を竦めてみせた。

「……さてと、本題です。セレスティノ様の花籠は、一部が枯れています」
「っ」
「「……」」

 ああ、どうしよう。ぼくのせいだ。ぼくが、二人を信じなかったから。嫌だ、って、言ったから…っ

「ですが、問題はありません」
「……え?」
「母体の魔力枯渇です。殿下とアベル様は、しっかりと魔力を注いでいらっしゃいますか?」
「……注いでいる、が」
「足りてません。足りない分を揺籠は母体から吸収しているんです。魔力枯渇状態は母体の不調として顕れます。目眩や不安感、焦燥、逆に食欲の増進、睡眠時間の拡大などなどまあ、症状は色々ですけどね?」

 ぼくもそうだけど、レイとアベルも愕然としてた。
 多分、みんな、同じこと考えてる。

『え、あれでまだ足りないの?』

 ………って。


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