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「あの・・・・・・すいませんでした・・・・・・」

「・・・・・・」

「スカーレット様?」

「キィーーーーーッ」

 威嚇したら爪が伸び、八重歯が伸び、瞳孔が縦長に細くなった。ヴァンパイアとして・・・・・・とても恥ずべき行為だ。

(まぁ、そんなことを知っているヴァンパイアと会うことはないでしょうし、オリバーがそのことを知るはずもないのだけれど・・・・・・というか、知ったら、殺す。眷属にせずに、骨の髄まで血を吸ってミイラにしてやるわっ)

「ふんっ」

「スカーレットさま~」

「アナタ言ったわよね、私に会った時。私のことは襲いませんって」

「それは、ハンターとしてはの話ですよ、やだなぁ」

「そうね、いっそのことハンターの方が良かったわ。まったく、けだもの」

「スカーレット様の方がノリノリだったのに・・・・・・」

「キィーーーーーッ」

「本当に、申し訳ございませんでした。スカーレット様とお別れしなくちゃいけないと思ったら、その・・・・・・たぎってしまって。爪痕を・・・・・・あ痛っ」

「人間の分際で、この私に爪痕を残したいなんて、なんて傲慢、なんて強欲っ。恥を知りなさいっ!!」

「あぁ、叩かないでくださいっ。あぁっ」

「変な声を出すなっ」

「・・・・・・だって、好きなんですもん。あぁ、変な声出したほうじゃないですよっ!! 永遠を生きる貴女様に時々でもいいので記憶に残る存在でいたかったのですっ・・・・・・ん?」

「それで、いいのよ。それで」

 私はびっくりした顔のままの彼の頭を撫でる。

「いいじゃない。私はアナタのままのアナタと一緒に居たいのよ」

「・・・・・・っ。でも、それじゃあ」

「永遠じゃない。でも、それでいいじゃない。私はそれでいい、いいえ、それがいい」

「それじゃあ、30年あるかどうか・・・・・・」

「今、18だったっけ? いいじゃない、30年あれば」

「ボクは年老いて行きます」

「ええ、行くだろうね」

「見た目だって悪くなっていくんですよ」

「うーん、まぁ、それは・・・・・・でも、魂の色は変わらないわよ」

「今みたいに抱いたりだって・・・痛っ」

「調子に乗らないの・・・・・・もう。まぁ、いいわよ、いい子にして、それでいて私をワクワクさせてくれたなら・・・・・・その時にはご褒美を上げる・・・・・・かもしれない」

 ちょっと期待して、がっかりした顔はやっぱり可愛い。まぁ、それが可愛いいからカッコイイ、そしてダンディーになるのならそれもいいじゃないか。食事や運動を管理すれば、大丈夫なはずよ。永遠を生きる私にとって、それは一瞬。でも、その一瞬に様々な体験をできるのは幸せなことだ。

(そう、幸せなこと・・・・・・)

 いつの間にか、オリバーの頭を撫でているようで、自分の心を撫でて落ち着けているような気がした。

「ねぇ、オリバー。アナタはその一瞬でどれだけ輝いて、どれだけ私を輝かせてくれるのかしら?」

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